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いつの間に子どもが……増えたの?
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帰る準備をするために、それぞれが動いていた。私の準備は特にないので、部屋でのんびりと過ごす。
「朝ごはんがまだだったね?」
ぐっすり眠ったおかげか、昨日の不安定さは消えているナイトとライト兄弟に笑いかければ、まだ、寝起きだからか、ぼんやりしていた。話しかけた私を母親と勘違いしたライトが近寄ってきて抱きついている。そこで、意識がハッキリしたらしいナイトがライトを私から引きはがすためにベッドから飛び起きた。
「ライト、その人は、お母さんじゃないから!」
「いいのよ?お母さんでも」
クスクス笑うと、ナイトがさらに慌てていた。朝方、ちゅんちゅんの報告によると、少し離れた領地の子らしい。両親はいるけど、どうもまともに育てられた子らではなく、逃げて来たようだ。服で隠れてはいるが、ライトの首の下当たりに、青あざがチラリと見える。それを隠すように、ナイトがライトを引き寄せた。
「そんなに警戒しなくても。これから、しばらくは私の庇護下になるんだから。この領地に入ったかぎりは、子どもだけで生活はさせませんから。そのつもりで」
「じゃあ、どうするんだ?お屋敷で、こき使われるなら……」
「それもそうね。まぁ、うちの領地はいろいろと事業を展開しているから、役にたたないってことはないと思うし、住みやすい領地だとは思うから、とりあえず、一緒についてきて。このままじゃ、密入領で捕まえないといけなくなるし」
「密入領?」
「そう。このアンバー領は領地に入るときにいろいろと管理をしているの。特に人に関してはきっちりと。商売人にも通行手形なんて渡しているくらい、厳重にね。勝手に入ることを禁じているのよ」
今、言ったことは、半分真実で半分嘘である。ここ最近物騒なことが続くので、最近、領地に入る人を制限しているところではあるが、完全に把握出来ているわけではない。現に、この子たちが二人、紛れているわけだから、完璧なものでないことはあきらかだ。
「朝ごはんを食べたら移動するから、ついてきて」
私は、ナイトとライトを連れて食堂へ向かった。すでに研究員や助手たちでいっぱいになっている食堂の奥の方へジョージアたちがいるのを確認する。こっちよと二人を連れて向かえば、おはようと何気なくジョージアが挨拶してくれる。私もそれに応えて、おはようと返事をすると、こちらを見ていたジョージアが異変に気が付いたようだ。
「いつの間に子どもが……増えたの?」
私の後ろからひょっこり顔を出している二人を見て、ジョージアが目をぱちくりさせている。アデルもジョージアの声に、こちらを見たらしい。開いた口がふさがらない状態のようだ。
「昨夜増えました。こっちがナイトで、こっちがライト。少し離れた領地の子らしいですよ?」
「昨晩はどこに?まさか、アンナのベッドとは言わないよね?」
少し凄むようなジョージアに怯えた兄弟は私の後ろに引っ込んだ。
「当たりですよ?私はソファで過ごしたので、大丈夫ですよ!」
「いや、大丈夫とかの問題では無くて……仮にも領主の寝室に異性が……子どもだけど!子どもだけど異性がいるのはよくないよ?」
アデルが視線を逸らすので、何も言わないようにと視線だけ送っておく。護衛のために、部屋のすみで過ごすこともあるので、静かに黙っていてくれるらしい。
「そうですね。ただ、昨日は緊急性もありましたし、夜中の出来事でしたから」
「アンナは、夜中に何をしているんだい?」
「野菜泥棒……研究泥棒をとっつかまえていましたけど?」
あぁとおでこに手をやり、どうしたものかと弱々しくジョージアが呟いている。そうは言っても、アンジェラと年の変わらないライトを冬の寒空のなか、置いておくわけにも行かない。
「もう、アンナにかける言葉は見つからないけど……無事ならよかった。刺客に襲われる……その刺客が子どもだということもあるから、十分に備えてくれていないと」
「そうですね。以後気を付けますが、ちゅんちゅうの情報は早かったので、とりあえず、保護することにします。孤児院へ行ってもらう予定ではありますが、二人は家族から逃げて来たようなので、ここでこれから暮らすことになるでしょう」
背中に隠れていたナイトとライトを後ろから出して、ジョージアたちに見えるようにした。
「庇護下におくんだね。まだ、小さいこだからな。その方がいいだろう。さっきはよくない態度をとってすまなかった。こっちにきて、一緒にご飯を食べよう」
進めてくれる朝ごはんを食べるために椅子へと座った。昨日はスプーンだけを使って食事をしていたので、気が付かなかったが、マナーがあまりよくないようだ。孤児院へ入ったあかつきには、リアンに教えられることだろう。
「それで、子どもが増えたわけだけど?箱馬車で領地の屋敷まで戻ることになる。子どもを連れての移動だから、馬車に子どもをのせるとして……」
「私が外に出ますから、ジョージア様に中はお願いしてもいいですか?」
元々私はレナンテの背に揺られて、この研究所まできているのだ。ジョージアの許可も降りた。寒さも平気だしと、私たちは、早速屋敷へ向けて出発の準備を終えた。
「朝ごはんがまだだったね?」
ぐっすり眠ったおかげか、昨日の不安定さは消えているナイトとライト兄弟に笑いかければ、まだ、寝起きだからか、ぼんやりしていた。話しかけた私を母親と勘違いしたライトが近寄ってきて抱きついている。そこで、意識がハッキリしたらしいナイトがライトを私から引きはがすためにベッドから飛び起きた。
「ライト、その人は、お母さんじゃないから!」
「いいのよ?お母さんでも」
クスクス笑うと、ナイトがさらに慌てていた。朝方、ちゅんちゅんの報告によると、少し離れた領地の子らしい。両親はいるけど、どうもまともに育てられた子らではなく、逃げて来たようだ。服で隠れてはいるが、ライトの首の下当たりに、青あざがチラリと見える。それを隠すように、ナイトがライトを引き寄せた。
「そんなに警戒しなくても。これから、しばらくは私の庇護下になるんだから。この領地に入ったかぎりは、子どもだけで生活はさせませんから。そのつもりで」
「じゃあ、どうするんだ?お屋敷で、こき使われるなら……」
「それもそうね。まぁ、うちの領地はいろいろと事業を展開しているから、役にたたないってことはないと思うし、住みやすい領地だとは思うから、とりあえず、一緒についてきて。このままじゃ、密入領で捕まえないといけなくなるし」
「密入領?」
「そう。このアンバー領は領地に入るときにいろいろと管理をしているの。特に人に関してはきっちりと。商売人にも通行手形なんて渡しているくらい、厳重にね。勝手に入ることを禁じているのよ」
今、言ったことは、半分真実で半分嘘である。ここ最近物騒なことが続くので、最近、領地に入る人を制限しているところではあるが、完全に把握出来ているわけではない。現に、この子たちが二人、紛れているわけだから、完璧なものでないことはあきらかだ。
「朝ごはんを食べたら移動するから、ついてきて」
私は、ナイトとライトを連れて食堂へ向かった。すでに研究員や助手たちでいっぱいになっている食堂の奥の方へジョージアたちがいるのを確認する。こっちよと二人を連れて向かえば、おはようと何気なくジョージアが挨拶してくれる。私もそれに応えて、おはようと返事をすると、こちらを見ていたジョージアが異変に気が付いたようだ。
「いつの間に子どもが……増えたの?」
私の後ろからひょっこり顔を出している二人を見て、ジョージアが目をぱちくりさせている。アデルもジョージアの声に、こちらを見たらしい。開いた口がふさがらない状態のようだ。
「昨夜増えました。こっちがナイトで、こっちがライト。少し離れた領地の子らしいですよ?」
「昨晩はどこに?まさか、アンナのベッドとは言わないよね?」
少し凄むようなジョージアに怯えた兄弟は私の後ろに引っ込んだ。
「当たりですよ?私はソファで過ごしたので、大丈夫ですよ!」
「いや、大丈夫とかの問題では無くて……仮にも領主の寝室に異性が……子どもだけど!子どもだけど異性がいるのはよくないよ?」
アデルが視線を逸らすので、何も言わないようにと視線だけ送っておく。護衛のために、部屋のすみで過ごすこともあるので、静かに黙っていてくれるらしい。
「そうですね。ただ、昨日は緊急性もありましたし、夜中の出来事でしたから」
「アンナは、夜中に何をしているんだい?」
「野菜泥棒……研究泥棒をとっつかまえていましたけど?」
あぁとおでこに手をやり、どうしたものかと弱々しくジョージアが呟いている。そうは言っても、アンジェラと年の変わらないライトを冬の寒空のなか、置いておくわけにも行かない。
「もう、アンナにかける言葉は見つからないけど……無事ならよかった。刺客に襲われる……その刺客が子どもだということもあるから、十分に備えてくれていないと」
「そうですね。以後気を付けますが、ちゅんちゅうの情報は早かったので、とりあえず、保護することにします。孤児院へ行ってもらう予定ではありますが、二人は家族から逃げて来たようなので、ここでこれから暮らすことになるでしょう」
背中に隠れていたナイトとライトを後ろから出して、ジョージアたちに見えるようにした。
「庇護下におくんだね。まだ、小さいこだからな。その方がいいだろう。さっきはよくない態度をとってすまなかった。こっちにきて、一緒にご飯を食べよう」
進めてくれる朝ごはんを食べるために椅子へと座った。昨日はスプーンだけを使って食事をしていたので、気が付かなかったが、マナーがあまりよくないようだ。孤児院へ入ったあかつきには、リアンに教えられることだろう。
「それで、子どもが増えたわけだけど?箱馬車で領地の屋敷まで戻ることになる。子どもを連れての移動だから、馬車に子どもをのせるとして……」
「私が外に出ますから、ジョージア様に中はお願いしてもいいですか?」
元々私はレナンテの背に揺られて、この研究所まできているのだ。ジョージアの許可も降りた。寒さも平気だしと、私たちは、早速屋敷へ向けて出発の準備を終えた。
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