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大事なことなのに
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「そういえば、こんな大事なこと、あの二人に知らせなくてもいいのか?」
ノクトの指すあの二人というのが、ここにはいないウィルとセバスのことだと言うことはわかっている。領地の屋敷へ戻ってから話すつもりではいるが、正直、あまり乗り気ではない。二人には、友人として領地改革を手伝って欲しいと思っていても、国のいざこざに関わって欲しいとは思えない。二人ともが国に仕える身だというのに、私の一存で、遠ざけたいと密かに思っていることを悟られているのかもしれない。
「領地の屋敷へ戻ったら言うわ。公宮にいる人材が少ないと常々言われてはいるから……重要な場所、公と宰相の側には一人ずつ付いていてくれるけど、それじゃあダメだって言われているの」
「確かに、どちらかにもしくは両方に何かあったとき、連絡が遅れるからなぁ。それこそ、隠し玉くらいの人物が必要になってくるだろうが」
「武官の方は、一人目途がついているの。引き抜きを考えてはいたけど、エリックの補佐になれるよう、推してみるわ。ゴールド公爵家の血筋だから、気に入らないって言われるかもしれないけど、一緒に旅をしてきて、まぁまぁな感じだった。あとは、ちゃんと調査をしたうえでって話になるけど……」
「アンナも考えてはいるんだな?」
「まぁね?近衛だとシルビアもいるしとは思っているの」
「ウィルの部下か」
「そう。元上司で今は部下ね。信用はきちんと調べてある。まぁ、人質もある意味あるから大丈夫」
私から人質という言葉が出たことに驚いているが、貴族なのだから、多少、手を回すようなことはしている。シルビアの実家がコーコナ領に近いので、何かとあるのだ。密かに融通を利かせていることもあるし、多額の投資も行っている。投資額を全て引き上げてしまえば、領地の運営は行き詰るということだ。他の貴族に即金で貸せる金額でもないため、私の力になってくれている。
「……ちなみにどんなことをしているんだい?」
気になったジョージアは私の方をおそるおそると見てくる。
「貴族らしい人質ですよ?」
「……それは、令息令嬢を」
「そんなのいりませんけど?政略結婚の相手には困りませんからね?うちの子たち。ネイトには、すでにいますし……違いますよ?」
「じゃあ、一体……」
「アンナ、人質とは領民のことか?」
「えぇ、貴族的にいうとそうですね。少々、領地が困ったことになっているらしく、資金が足りないそうです」
「……多額の借金をしていれば、裏切れないか。もし、何かあれば、シルビアだけでなく、領地も危ないと。それでも、逃げる領主は逃げるであろう?」
「逃げられないよう、手を打っているだけですよ。シルビアがこちら側であることは、頭痛の種かもしれませんけどね?」
クスクス笑う。私のことを見て、ジョージアは言葉を無くしている。金の貸し借りについて、ジョージアは知らなかったようで。思考を一旦止めてしまったようだ。
「回収の見込みはあるのか?」
「……ありますよ?今は、栄えていない産業を復活させましょう!と口説いているところです」
「何をさせる気なんだ?」
「染色です。なんでも、コーコナ領では出来ないような染色技術があるとかで、私はそれを産業としてうちに提供してほしいと……職人が少ないらしいので、育てているところです」
「なるほど……それは、妥当ではないか?」
「もちろん、不当な要求はしませんよ。他にも、アンバー公爵家の傘下に入ってくれたり強力してくれそうな貴族がいれば声をかけてくれと圧力はかけていますけどね?」
「中立で、貴族からそれなりに信頼があるので、お任せすれば、多少、均衡も保てるのでは?と。一番いいのは、ゴールド公爵家から剥ぎ取るのがいいんですけどね?南の領地のように」
「酷い目にあったからか?」
「泣きっ面に蜂くらいの衝撃的な出来事はあったと思いますよ」
「投資の打ち切り、回収の話か」
私はコクンと頷いた。しばらく、南の領地は公からの支援で生活をする地が多い。何故なら、人口がグッと減ったことによる税収の減少、私を始め大口投資家からの投資打ち切り、作物が育たない現象も起こるだろう。
「どこまで想定しているのやら」
「中級貴族だけは、なるべく取り入れたいのよね。各地で恩を振りまけるだけ振りまいたから、意外と楽に終わるかもしれないし」
「そうはうまくいくとは思えないけど。アンナが思っている以上に複雑だと思うよ?このローズディアという国は」
「さすがですね?ジョージア様は、こちらの国の出自だし、公爵としてよく勉強なさっていますね。私は、アンバー公爵家への味方は欲しいですけど、公の派閥にも人がほしいのですよ。公がしっかりしてくれていれば、私やウィルたちが借りだされることもありませんからね」
「……公にもう少し、しっかりするように手紙でも書いておくとしよう」
公はまだ、力がついていない。多少なり陣営は明るくなったけど、それだけでは、あのゴールド公爵を打ちのめされる。そのため、早急に陣営へ貴族を取り込むための協力者として、シルビアの生まれ育った領地を人質にとったのだ。その説明をすれば、みなが頷いた。
ノクトの指すあの二人というのが、ここにはいないウィルとセバスのことだと言うことはわかっている。領地の屋敷へ戻ってから話すつもりではいるが、正直、あまり乗り気ではない。二人には、友人として領地改革を手伝って欲しいと思っていても、国のいざこざに関わって欲しいとは思えない。二人ともが国に仕える身だというのに、私の一存で、遠ざけたいと密かに思っていることを悟られているのかもしれない。
「領地の屋敷へ戻ったら言うわ。公宮にいる人材が少ないと常々言われてはいるから……重要な場所、公と宰相の側には一人ずつ付いていてくれるけど、それじゃあダメだって言われているの」
「確かに、どちらかにもしくは両方に何かあったとき、連絡が遅れるからなぁ。それこそ、隠し玉くらいの人物が必要になってくるだろうが」
「武官の方は、一人目途がついているの。引き抜きを考えてはいたけど、エリックの補佐になれるよう、推してみるわ。ゴールド公爵家の血筋だから、気に入らないって言われるかもしれないけど、一緒に旅をしてきて、まぁまぁな感じだった。あとは、ちゃんと調査をしたうえでって話になるけど……」
「アンナも考えてはいるんだな?」
「まぁね?近衛だとシルビアもいるしとは思っているの」
「ウィルの部下か」
「そう。元上司で今は部下ね。信用はきちんと調べてある。まぁ、人質もある意味あるから大丈夫」
私から人質という言葉が出たことに驚いているが、貴族なのだから、多少、手を回すようなことはしている。シルビアの実家がコーコナ領に近いので、何かとあるのだ。密かに融通を利かせていることもあるし、多額の投資も行っている。投資額を全て引き上げてしまえば、領地の運営は行き詰るということだ。他の貴族に即金で貸せる金額でもないため、私の力になってくれている。
「……ちなみにどんなことをしているんだい?」
気になったジョージアは私の方をおそるおそると見てくる。
「貴族らしい人質ですよ?」
「……それは、令息令嬢を」
「そんなのいりませんけど?政略結婚の相手には困りませんからね?うちの子たち。ネイトには、すでにいますし……違いますよ?」
「じゃあ、一体……」
「アンナ、人質とは領民のことか?」
「えぇ、貴族的にいうとそうですね。少々、領地が困ったことになっているらしく、資金が足りないそうです」
「……多額の借金をしていれば、裏切れないか。もし、何かあれば、シルビアだけでなく、領地も危ないと。それでも、逃げる領主は逃げるであろう?」
「逃げられないよう、手を打っているだけですよ。シルビアがこちら側であることは、頭痛の種かもしれませんけどね?」
クスクス笑う。私のことを見て、ジョージアは言葉を無くしている。金の貸し借りについて、ジョージアは知らなかったようで。思考を一旦止めてしまったようだ。
「回収の見込みはあるのか?」
「……ありますよ?今は、栄えていない産業を復活させましょう!と口説いているところです」
「何をさせる気なんだ?」
「染色です。なんでも、コーコナ領では出来ないような染色技術があるとかで、私はそれを産業としてうちに提供してほしいと……職人が少ないらしいので、育てているところです」
「なるほど……それは、妥当ではないか?」
「もちろん、不当な要求はしませんよ。他にも、アンバー公爵家の傘下に入ってくれたり強力してくれそうな貴族がいれば声をかけてくれと圧力はかけていますけどね?」
「中立で、貴族からそれなりに信頼があるので、お任せすれば、多少、均衡も保てるのでは?と。一番いいのは、ゴールド公爵家から剥ぎ取るのがいいんですけどね?南の領地のように」
「酷い目にあったからか?」
「泣きっ面に蜂くらいの衝撃的な出来事はあったと思いますよ」
「投資の打ち切り、回収の話か」
私はコクンと頷いた。しばらく、南の領地は公からの支援で生活をする地が多い。何故なら、人口がグッと減ったことによる税収の減少、私を始め大口投資家からの投資打ち切り、作物が育たない現象も起こるだろう。
「どこまで想定しているのやら」
「中級貴族だけは、なるべく取り入れたいのよね。各地で恩を振りまけるだけ振りまいたから、意外と楽に終わるかもしれないし」
「そうはうまくいくとは思えないけど。アンナが思っている以上に複雑だと思うよ?このローズディアという国は」
「さすがですね?ジョージア様は、こちらの国の出自だし、公爵としてよく勉強なさっていますね。私は、アンバー公爵家への味方は欲しいですけど、公の派閥にも人がほしいのですよ。公がしっかりしてくれていれば、私やウィルたちが借りだされることもありませんからね」
「……公にもう少し、しっかりするように手紙でも書いておくとしよう」
公はまだ、力がついていない。多少なり陣営は明るくなったけど、それだけでは、あのゴールド公爵を打ちのめされる。そのため、早急に陣営へ貴族を取り込むための協力者として、シルビアの生まれ育った領地を人質にとったのだ。その説明をすれば、みなが頷いた。
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