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来る途中で

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 みなからの視線を一身に浴びながら、そう言えばという話になった。


「ここに来る前に、黒の貴族……エールにあったのですよ」
「えっ?黒の貴族に?」
「えぇ、そうなんです」
「今度は何?アンナとデートの約束でも取り付けたいみたいな話だったら、丁寧にお断りしておくけど?」


 ジョージアの冷ややかなお断りをみなは生暖かい目で見守ってくれている。私のこととなると、どうも冷静さを欠くらしいので、違いますよと否定する。


「違いますけど、お茶会がしたいと。元々、エールとは茶飲み友達ではあるので、そろそろ、近しい友人たちをアンバー領に招いてお茶会をしてもいいのかなぁ?とは思っているのです」
「……なるほど?」


 棘のある納得ではある。ここにいる中で、エールから被害を被っているいるのは私とジョージアだけなので、エールの噂話を元に、ジョージアが嫌っているのだろうと思っているのかもしれない。実際は、ジョージアの第二夫人であったソフィアとの関係がある人物ではあった。そして、何より、ジョージの父親であるため、ジョージアはいい顔をしない。私はそれも含め、隣の領主であるエールとはそれなりの付き合いをしているわけだが、今回は、あのご婦人が私とのお茶会をご所望という話を受けている。


「ミネルバがね、お誘いくださって遠回しに送り込んできたのよ」
「あぁ、夫人のほうか。バニッシュ領も夫人が支えて成り立っているような領地だからね?」
「まぁ、大きくはミネルバの力でしょうけど、エールはあれでも、顔が広いので、それはそれで有益なところもあるのですよ?」


 ジョージアが見たこともない表情で応戦してくるので、よほど嫌いなのだろう。ノクトとイチアはバニッシュ夫妻を見たことがあるので、なんとなく察してくれているようだった。


「それで、今回は何が目的?アンナからお誘いするようなことってないんじゃないの?」
「今のところはという感じですね。今後に向けて、協力体制をとは思っているので、密に連携を取っていきたいとは思っているのですけど?」
「そんな必要はないんじゃ……」
「先日も言いませんでしたか?」


 何を?と聞き返しそうになっているジョージアは、エールのことで頭がいっぱいになったようで、すっかり抜け落ちてしまったようだ。


「インゼロ帝国の内政が落ち着いてきたのではないかという話ですよ。陸からは、公が手を回してくれていますし、エルドアの方もなんとかなりそうですけど、海から攻められた場合を話したではありませんか?」
「確かに。その場合は、バニッシュ領からだと聞いていた。それで、ミネルバがお茶会を?」
「そうです。対外的に外からの敵に備えましょう!と大々的に宣伝をするような会ではダメですからね。どこに何があるのかわかったものではないので」
「ここに間者がいないとも限らないけど?」
「ジョージア様が言いたいことは、わかりますよ?でも、私にとってノクトとイチアはすでに苦楽を共にしてきた仲間ですし、今更裏切られてもと思っています。内情を筒抜けにされたとしても、二人に何の利益がありますか?」


 少し考えて、家族の安全?と答えたので、私は一蹴した。それこそ、ない話だろう。


「ノクトは今の皇帝をすでに裏切っています。お葬式をしたことで、国に帰ったところで、信用も何もないでしょう。それに、ノクトの奥様が、かなりやり手で、皇帝も強くは出れないと聞いています」
「あの皇帝が?」
「そうですよ?今までは、ノクトの影に隠れて好き放題していたそうですが、表立ってみれば、インゼロ帝国の裏の顔と言ってもいいのですよね?」
「……怖いなぁ?そう思わないか、イチア」
「全くです。本当、侮っているつもりは全くないですけど、敵いませんね?」
「そんなことないわよ?ノクトがこちらに来てくれたからこそ、知り得た情報ですもの。ノクトの妻になるほどの人が、皇帝ごときに恐れをなすとは思ってもいませんでしたからね」
「まぁ、確かに。アンバー領にアンナあり、バニッシュ領にミネルバあり、……うちの領地なら奥がありって……優秀過ぎる女性はもっと取り立てるべきだな。あの甥のように」
「……右腕にならないかですか?そうなったら、実に厄介なので、辞めてもらいたいですけどね?まぁ、こちらには、元皇太子もいますしね」
「……全く役にたたないな。本当、同じ血が通ってるとか思えない。誰に似たのか」


 今頃くしゃみをしているかもしれない。ナタリーの後ろについて、忙しくしているであろう元皇太子ライズ。


「それはそうと、お茶会……どうするんだ?」
「するわよ?もちろん、公都からも人を呼ぶわ。そうしないと……怪しまれるでしょ?春になる少し前。それこそ、誕生日会前あたりがいいかしら?」
「なるほど。それにしても、考えることが多いな……」
「ひとついいかしら?」


 みながこっちを向く。どうやら、聞かない方がいいと判断しらしいリアノたちが席を経ってもいいかというので許可をする。残ったのは、ジョージアとノクト、イチアとアデル。アンジェラもニコニコと座っている。


「何を考えている?ずっと考えていたことがあるのだろ?」
「えぇ、そうね。ダドリー男爵と同じことをしたいと思っているの。ねぇ?候補の令嬢はいないかしら?」


 私は、回りを見回すが……頼りにならない男性たちばかりだ。だからこそ、お茶会で情報を集めるべきだと、私は考えていた。
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