ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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金策公爵、悩みに悩む

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 アデルにおつかいへ向かってもらったら、ノクトとイチアがついてきた。よぉ!なんて軽い挨拶をするものだから打ち合わせ場所で、頭を抱えている私がイラっとしたことに気が付いていないだろう。
 隣で、アンジェラが足をプラプラしながら、話合いを聞いていた。


「リアノのやりたいこともわかる、それに出来たら最高だと思うけど……それには、お金が必要だわ!アンバー領にそのお金はないわよ?」


 会議室は、私とリアノの一騎打ちとばかり、地底湖にかける橋の話で持ちきりだ。観光を考えているなら、仕掛けが必要なのはわかる。それには、人もお金もいる。それはお互いわかってはいるが、妥協できる部分を探してくれてもいいだろうと睨んだ。


「……えらいときに入って来たな?」
「そうですね?出直しましょうか?」
「何を言っているのです?ノクト様もアデルも。今こそ、アンナリーゼ様から私財を勝ち取るときなのですよ?」


 話合いの進み具合を瞬時に悟ったイチアが、リアノの味方になった。狙うは私の私財。元々、私財を切り崩して、領地の改革に使っていたのだ。リアノの要求する金額なら、実際ははした金と言ってもいいくらいの端数で用意出来なくもない。
 私が計画して使うのと、領地改革組が、私の私財をあてにしてものごとを進めるのには雲泥の差がある。


「アンナリーゼ様、お願いします!ここで、私財を使っていただけるのであれば……倍は無理でも、それなりの金額をお返しします!」
「……お金の問題ではないの!私の私財をあてにして領地改革を進めようとしていることが……」
「アンナリーゼ様がなさっていることと、今、こちらからの要求って何が違うのですか?」


 同じですよね?とイチアに詰め寄られると、反論が出来ない。何が違うか……。どこも違わない。私主体で始めたオリーブ農場や搾油事業。貴族を呼び込むための観光業まで言ってのけたのは私なのだ。あいだにリアノが工事のための資金を出してくれと言っている以外、何も今までの事業と買わないのに、『どうしてできないのですか?』と言われれば、言い返せれなくて当然だ。


「わかったわ。出します。出しますから……その代わり、中途半端なことはやめてね?やるからには、徹底的に!」
「もちろん、そのつもりですし、アンナリーゼ様の配下で手を抜くだなんて、ありえませんからね?」


 ニッコリ笑うイチアとリアノが、怖い。いい笑顔過ぎて……怖すぎる。そんな私たちの攻防をジョージアは呆然と聞いていたし、アンジェラはおもしろそうにしていた。あと5年……大きかったら、きっと私の味方ではなく、イチアとリアノの方へついていたに違いない。それが、正解なのだから、その正解を導出せる子になってほしいものだ。


「設計図はきちんとしたものをもう一度出します。予算については、これくらいを予定しておいてください!」
「あの地底湖は、観光資源には持ってこいですからね!神秘的な場所でもありますから。移動通路だけでなく、きちんとその当たりも考えましょう!」


 ノクトとイチアがついてきた理由がわかった気がする。リアノに指示をされて、アデルが指令を真っ当したのだろう。アデルの方を見るが、視線が1回も合わないのは、そういうことなのだろう。やられたなと思う反面、図太くなっている仲間を頼もしくも思える。領地改革は、これからも続くものだ。十分な資金を領地運営だけで捻出できることが1番ではあるが、足りない部分は、補うしかない。領地外からの資金も相当あるはずなのに……
 と思いながら、嵩張る領地改革の資金を恨めしくも思えた。


「今回の資金はお借りすることになりますが、いずれ、私財をお戻しします」
「……長い目で見て返してくれればいいわ。他の誰のものでもない、私の私財だから、アンバーのためなら……」
「いつまでも、アンナリーゼ様の私財を頼るようなことはしませんから。まだ、大きな流れに乗り切らない領地ですから、どうか、見守ってほしいところです」
「わかってはいるのよ。わかっては。今回は、リアノを試したってことで、許してちょうだい」
「領地の今後をどう思っているかですか?」


 頷くと、ノクトが呆れたようにため息をつき、心配はいらないだろ?と笑う。わしゃわしゃとアンジェラの頭を撫でると、話を聞いていたアンジェラはコクンと頷いた。


「ここに大物がいるぞ?アンナが心配しなくても、次がしっかり育ってくる。人間っていうのは、知らず知らずのうちに、自身の想いを託せる存在ができるもんだ。それが子であったり、弟子であったりってな」
「そうね。そこは、あんまり心配はしていないわ。私の回りに集まってくれた友人たちは、みんなそれぞれに光るものがあるもの」
「……俺にもある?アンナの足を引っ張ることしか出来ていない気がするけど」
「そんなことありませんよ。ジョージア様がいたから、私はアンバー領にいるのですし、愛しい我が子がいるのですよ。それに、ジョージア様いてくれないと、誰より私が困ります!」


 そうだそうだと周りから声が上がるので睨むと、ジョージア様以外、誰がこのおてんばを御せるんだ?とノクトがいうと、みなが大笑いをする。真面目な顔を作って、確かにとジョージアもいうので、どういうことですか!と怒ると、そういうとだよ?と笑われたのである。
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