ハニーローズ ～ 『予知夢』から始まった未来変革 ～

大事になってるけど？

　私たちの散策も終わり、ヨハンの研究所へ帰って来た。すでにジョージアたちは戻ってきており、リアノたちと何かを話している。


「ただいま戻りました」


　みなに声をかけると代表でジョージアがどこに行っていたの？と聞いてくる。私たちは顔を見合わせ、ヨハンの研究を見に行っていたのですと答えた。


「ヨハン教授は、また、何か始めたの？」


　同じように考えているのだろう。私だけでなく、同じような言葉が、ジョージアからも出てきた。


「えぇ、今朝、アンジェラが食べていたトマト」
「確かに食べていたね？あれって、新しい研究だったんだ？」
「そうですよ？冬に真夏の野菜が食べられるなんて驚きですよね！」
「たしかに……冬は野菜ものが根菜を中心に変わるけど、明るい色があるだけで、食卓が華やぐ」
「何より、おいしいですからね」
「その研究を見にいっていたんだ？」
「そうですよ？そちらをまかせっきりになってしまって、申し訳なかったのですが……」
「それはいいよ。それよりアンナの意見を聞きたいんだ。いいかな？」


　ここへみなが集まっている理由を聞くと、やはり道を作るのに、大規模な工事が必要だと言うことがわかった。それをどうするのか、冬中には終わらせないと植樹が出来ない等の問題が出てくる。最悪、苗木を一本ずつ運んでという方法もあるが、今後の生活を考えたとき、得策だとは思えない。何かいい案はないのかと見渡せば、リアノが提案してくれるようだ。


「アンナリーゼ様、領地のあちら側を高級宿をやりたいと報告があった。本当ですか？」
「えぇ、そうしたいと思っているの。ただ、通路の問題があるから、今は、優先順位をつけるとしたら、どれくらいになるか考えていたところよ？」
「それなら、1番にしてほしいところだわ。それは可能かしら？」
「いいけど……間に合う？」
「もちろん。その代わり……」
「人が必要ってことね？アデル」
「はいっ！」
「領地の屋敷へ向かってちょうだい。イチアに道路工事をする人員が欲しいと伝えて。リアノ、設計はどうかしら？」
「貴族の観光をと考えているなら、大がかりな工事にしたいわ。材料も一緒に書くから、それもお願いできる？」
「わかりました！それにしても……一体、何をなさるおつもりで？」


　ニコッと笑うリアノ。ごつい男性が意味ありげに笑うと、なかなかの迫力だ。アデルが心持、後ろに下がったことは誰も責めたりしないだろう。


「地底湖の上を渡るようにするわ。そうしないと、観光の目玉になる仕掛けなしではつまらないでしょ？どのみち、ここからでた道路沿いにも、何か目を引くことを考えているのでしょ？」
「……よくわかったわね？」
「領地を盛り上げるために来ているのよ？こんな大きな工事、何か他のことも一緒にしないと、もったいないわよね？」
「確かに。ここから少し離れた場所に、川があるの。そこに、水車をひきたいわ。あと、道路もこっちにまで伸ばして欲しいのだけど、ヨハンの研究所は見えないようにしてほしいの。そんなことできるかしら？」
「もちろんですよ！植樹しましょう。今、育ち盛りの気をどこかから移動させる感じかしら？このオリーブの苗木も植樹までに時間がないのよ」
「挨拶とかも考えないでいいってどういうことですか？」


　私のほうをジックリと見てくる。私が提案して見たら、案外うまくいくのかもしれないわね？と、頷いた。


「忙しくなりそうね？あちこちの要望を出しておかないと。そういえば、模擬戦をすると聞いていますけど……誰が出るのですか？」
「でるのは別として、それって、女装する人だっているってことでだもの？」
「当たり前の話からすれば、アンナリーゼ様っていう存在が強すぎませんか？」


　そんなことないよと笑って誤魔化しているが、リアノはすでに図面にはおこしてあり、アデルが領地の屋敷に届けるだけだ。道路のほうもイチアから話を聞いたうで、進めていこうと思う。期間がある今回の工事。早く綺麗に、ただし手は抜かないし最大限のものをとみなが動き始めた。道路を作るにもイチアの指示がいる。人の確保のため、アデルが早速
　動き始めてくれる。残された私たちは、リアノの設計図を見て道路建設の話を始める。
　本来なら地底湖の上を通りたいのだが、あまり橋を真ん中にしてしまうと、深い地底湖の底には到底しないだろう。なるべく真ん中を通るような格好にするが、基本的には浅そうな場所を選んでそこに道をつけることになった。すでに調べてくれているようで、具体的な話になる。もちろん、図面にも書き込まれており、イチアの準備も早く終わりそうだ。


「地底湖の上を走るだなんて、なんだかとてもステキね？」
「冬は寒そうですけどね？でも、こんなふうに通路が出来たら、益々アンバー領は発展していくにちがいないわ」


　楽しみにね？と笑うと、苦笑いをする一行。それもそのはず、大変な作業になることは、誰しもが予想しているからだ。
　何はともあれ……新しいことをするには、時間もお金も人もかかるんだよと呟いた。