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温室効果Ⅱ
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「元々、ヨハン教授が夏野菜食べたい!からこの研究が始まったのはご存じですか?」
「いいえ、全然知らなかったわ。ヨハンって、ある意味、助手たちにすごく甘やかされているのね?」
私は呆れたというふうにクレアに視線を送ると、本当ですよね?と返って来た。クレアが経緯とう話をしてくれるようで、話を聞くことにした。
トマトでもとよく熟れたトマトを3つもいで、アンジェラたちいる場所へ移動する。
「アデル様もよろしければ、お食べください」
クレアがアデルにトマトを渡すとありがとうございますと手で拭って齧りつく。美味しかったようで、うまい!と言っている。アンジェラも倣って食べようとしていたので、取り上げて、ハンカチでサッと拭いてやる。農薬は使っていないそうなので、拭きとりくらいで十分らしいので、アンジェラに渡すと、早速齧り付いている。大きすぎるトマトは食べにくいようで、零してもいいようにとハンカチでエプロンを作ってやる。
「そうしていると、お母さんって感じがしますね?」
アンジェラの隣に座って世話をしていると、クレアが感心したように言ってくる。私は領地にいなかったり、屋敷にいなかったりと放任しているように見られているようだが、そんなつもりは全くなかった。アンジェラやジョージ、ネイトの成長を間近で見れないもどかしさを抱えながら、出歩いているのだ。決して、子どもたち興味がないわけでもないし、出来ることなら、ずっと構いたいとすら思っているのに、なかなか、出来ないことをもどかしく思っていることをクレアに伝えると「失礼しました」と謝られた。
「いいのよ。実際は、放任してるって言われても仕方がないもの。いつも一緒にいたいのだけど……」
「最近、ジョーを連れて出歩くことが多くなりましたよね?」
「そうね。三人の子どもの中でも、ジョーは広い世界をもっと知っておかなければならないから、連れ出すようにしているわ。ジョージア様の許可がないと、連れてはいけないし、本人の意思もあるからね。そろそろ、レオも連れて行きたいのよね」
「ウィル様が許可すれば行けるのでは?」
「うん、そうだね。最近、馬に乗る練習を始めたって言ってたから、そろそろ、課外授業かなぁ?」
「お役御免になりそうですね?」
「領地内だったら、アデルの出番はたくさんあると思うよ?」
私もトマトに齧りついた。夏ではないので、熟れていても何か一味足りない気がする。ただ、冬に夏野菜が食べられることは、すごい技術なので、この味なら及第点だろう。
「思っていたより瑞々しいよね?」
「そこは、こだわったところではあります。季節野菜のような、甘味が一味足りませんが、冬に食べられるということが大切なのかと。改良はこれからもしていく所存ですが、ヨハン教授の研究熱ととんでもない発想には驚かされますね」
「クレアももちろん、この研究には関わっているのでしょ?」
「はい、もちろんです!私の研究は、おいしい野菜を食卓に届けたいですから。だからって、夏の野菜をとは考えていませんでしたし、あろうことか、無理だって、ヨハン教授のこと、少しバカにしていました。苦節7年、見事に完成したときは、本当に驚きとしか言いようがありませんでしたよ!」
研究者にとって、無理、できない、不可能は発想を鈍らせる言葉で、父から使ってはいけないと聞いたことがあった。面と向かって、ヨハンに言ったのだろう。まさか成功させるとは誰も思ってはいなかったようだ。クレアにとっても、今の状況は予想以上のことだと笑っている。
「研究の幅は増えましたし、こんな施設を作ってもらえたら、もっと、いろいろと試してみたいって、思ってしまいますよね。研究者として。ただ、これは、意外とお金のかかる研究で、もっと安価にできないのかが最近のもうひとつの課題ですね」
「結構お金いるの?」
「そうですね。アンバー領は温暖なほうとはいえ、この温度を保つために、燃料費がかさばります。この施設を量産、維持に関しては、まだまだ先だと考えています」
「そっか。でも、こんなにおいしいの夏野菜が冬に食べられるなら……領地の屋敷にもお裾分けほしいかな?」
アンジェラが大きなトマトを完食したのを見て、クレアは微笑む。子ども好きだとも聞いていたので、嬉しかったのだろう。丹精込めて作ったものを美味しそうに完食してくれたことが。
「もちろんですよ。ここはアンナリーゼ様が出資してくださっている研究費から作られている施設ですから、少し、軌道にも乗ってきていますから、ご要望にはお応えできるかと。楽しみにしていてください!」
クレアは自身のためにもいだトマトを口に入れ、食べている。「もう少しですね」と考えながら味見をしているようで、ポケットからメモ帳を取り出して詳細な記録を書いている。
「研究者って感じだな。そうやっていると」
私もトマトを食べ終わったところ、書き終わったらしく、味の感想を聞いてくるので、感じたままを伝えた。もちろん、おいしいと言えば、クレアは思わず笑みが零れてしまったようだった。
「いいえ、全然知らなかったわ。ヨハンって、ある意味、助手たちにすごく甘やかされているのね?」
私は呆れたというふうにクレアに視線を送ると、本当ですよね?と返って来た。クレアが経緯とう話をしてくれるようで、話を聞くことにした。
トマトでもとよく熟れたトマトを3つもいで、アンジェラたちいる場所へ移動する。
「アデル様もよろしければ、お食べください」
クレアがアデルにトマトを渡すとありがとうございますと手で拭って齧りつく。美味しかったようで、うまい!と言っている。アンジェラも倣って食べようとしていたので、取り上げて、ハンカチでサッと拭いてやる。農薬は使っていないそうなので、拭きとりくらいで十分らしいので、アンジェラに渡すと、早速齧り付いている。大きすぎるトマトは食べにくいようで、零してもいいようにとハンカチでエプロンを作ってやる。
「そうしていると、お母さんって感じがしますね?」
アンジェラの隣に座って世話をしていると、クレアが感心したように言ってくる。私は領地にいなかったり、屋敷にいなかったりと放任しているように見られているようだが、そんなつもりは全くなかった。アンジェラやジョージ、ネイトの成長を間近で見れないもどかしさを抱えながら、出歩いているのだ。決して、子どもたち興味がないわけでもないし、出来ることなら、ずっと構いたいとすら思っているのに、なかなか、出来ないことをもどかしく思っていることをクレアに伝えると「失礼しました」と謝られた。
「いいのよ。実際は、放任してるって言われても仕方がないもの。いつも一緒にいたいのだけど……」
「最近、ジョーを連れて出歩くことが多くなりましたよね?」
「そうね。三人の子どもの中でも、ジョーは広い世界をもっと知っておかなければならないから、連れ出すようにしているわ。ジョージア様の許可がないと、連れてはいけないし、本人の意思もあるからね。そろそろ、レオも連れて行きたいのよね」
「ウィル様が許可すれば行けるのでは?」
「うん、そうだね。最近、馬に乗る練習を始めたって言ってたから、そろそろ、課外授業かなぁ?」
「お役御免になりそうですね?」
「領地内だったら、アデルの出番はたくさんあると思うよ?」
私もトマトに齧りついた。夏ではないので、熟れていても何か一味足りない気がする。ただ、冬に夏野菜が食べられることは、すごい技術なので、この味なら及第点だろう。
「思っていたより瑞々しいよね?」
「そこは、こだわったところではあります。季節野菜のような、甘味が一味足りませんが、冬に食べられるということが大切なのかと。改良はこれからもしていく所存ですが、ヨハン教授の研究熱ととんでもない発想には驚かされますね」
「クレアももちろん、この研究には関わっているのでしょ?」
「はい、もちろんです!私の研究は、おいしい野菜を食卓に届けたいですから。だからって、夏の野菜をとは考えていませんでしたし、あろうことか、無理だって、ヨハン教授のこと、少しバカにしていました。苦節7年、見事に完成したときは、本当に驚きとしか言いようがありませんでしたよ!」
研究者にとって、無理、できない、不可能は発想を鈍らせる言葉で、父から使ってはいけないと聞いたことがあった。面と向かって、ヨハンに言ったのだろう。まさか成功させるとは誰も思ってはいなかったようだ。クレアにとっても、今の状況は予想以上のことだと笑っている。
「研究の幅は増えましたし、こんな施設を作ってもらえたら、もっと、いろいろと試してみたいって、思ってしまいますよね。研究者として。ただ、これは、意外とお金のかかる研究で、もっと安価にできないのかが最近のもうひとつの課題ですね」
「結構お金いるの?」
「そうですね。アンバー領は温暖なほうとはいえ、この温度を保つために、燃料費がかさばります。この施設を量産、維持に関しては、まだまだ先だと考えています」
「そっか。でも、こんなにおいしいの夏野菜が冬に食べられるなら……領地の屋敷にもお裾分けほしいかな?」
アンジェラが大きなトマトを完食したのを見て、クレアは微笑む。子ども好きだとも聞いていたので、嬉しかったのだろう。丹精込めて作ったものを美味しそうに完食してくれたことが。
「もちろんですよ。ここはアンナリーゼ様が出資してくださっている研究費から作られている施設ですから、少し、軌道にも乗ってきていますから、ご要望にはお応えできるかと。楽しみにしていてください!」
クレアは自身のためにもいだトマトを口に入れ、食べている。「もう少しですね」と考えながら味見をしているようで、ポケットからメモ帳を取り出して詳細な記録を書いている。
「研究者って感じだな。そうやっていると」
私もトマトを食べ終わったところ、書き終わったらしく、味の感想を聞いてくるので、感じたままを伝えた。もちろん、おいしいと言えば、クレアは思わず笑みが零れてしまったようだった。
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