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これは何だろう?
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布の家の中はとても温かい。初夏を思わせるほどであり、着ていた厚手の上着を脱いだ。アンジェラも暑そうにしているので脱がせてあげる。軽くなったアンジェラは、パタパタと駆けて行ってしまった。慌てて追いかけると、じっとりしていた汗が額から流れる。
「ジョー待って!」
返事は返ってこず、畑のあいだを走り回っているのか、ガサガサという音が聞こえてくる。あるところで、急に止まったので、駆けつけた。そこには、アンジェラの手におさまらないほど大きなトマトが瑞々しく艶やかになっていた。アンジェラが持っているものだけでなく、畑をキョロキョロと見渡せば、そこかしこに大きなトマトがなっていた。
「見事なものね……」
呆気に取られてしまい、言葉にならなかった。
「ここへ入ったときも思いましたけど……すごいですね?冬だというのに、こんなにたくさんの野菜ものが育つとは……」
「本当ね?私も初めて見たわ」
私たちの会話が聞こえたのだろう。しゃがんで、トマトを持っていたアンジェラがこちらを見て、目を輝かせている。大きいトマトを見てと言わんばかりで、余程うれしいのだろう。
「とっちゃ、ダメだよ?」
アンジェラの表情がみるみるうちに曇っていく。宝物でも見つけたように喜んでいたので、もしかすると、もぐつもりでいたのかもしれない。泣き出しそうなアンジェラに、許可を取ってないからダメなのよと説明してもわかってくれなさそうだ。
「声がしたかと思えば、アンナリーゼ様ではありませんか?」
顔をのぞかせたのはクレアだ。クレアに挨拶をする。今の状況をざっと把握したのか、クレアも屈んで、アンジェラと同じくらいの視線になった。
「おっきぃでしょ?」
「うん、おっきぃ!」
「欲しい?」
クレアに聞かれて、さっきダメだと言われたばかりのアンジェラは私の様子を窺った。クレアもこちらを見て頷いているので、私も頷き返す。
「クレアにお願いをして、とってもいいよって言ってくれたら、それは、ジョーのものだよ」
「本当?」
「えぇ、本当よ。ほら、お願いしてみなさい」
クレアの方を見てから、とってもいいか確認をしている。クスクス笑い声が聞こえるので、とってもいいことになったのだろう。取り方を教えてもらいながら、上手に収穫出来たみたいだった。
「見て!」
立派なトマトを見せながら嬉しそうにしている。よかったね?と声をかけると、満面の笑みで私へトマトを渡してくれる。その大きなトマトを私に渡してくれるようだった。
「ジョー待って!」
返事は返ってこず、畑のあいだを走り回っているのか、ガサガサという音が聞こえてくる。あるところで、急に止まったので、駆けつけた。そこには、アンジェラの手におさまらないほど大きなトマトが瑞々しく艶やかになっていた。アンジェラが持っているものだけでなく、畑をキョロキョロと見渡せば、そこかしこに大きなトマトがなっていた。
「見事なものね……」
呆気に取られてしまい、言葉にならなかった。
「ここへ入ったときも思いましたけど……すごいですね?冬だというのに、こんなにたくさんの野菜ものが育つとは……」
「本当ね?私も初めて見たわ」
私たちの会話が聞こえたのだろう。しゃがんで、トマトを持っていたアンジェラがこちらを見て、目を輝かせている。大きいトマトを見てと言わんばかりで、余程うれしいのだろう。
「とっちゃ、ダメだよ?」
アンジェラの表情がみるみるうちに曇っていく。宝物でも見つけたように喜んでいたので、もしかすると、もぐつもりでいたのかもしれない。泣き出しそうなアンジェラに、許可を取ってないからダメなのよと説明してもわかってくれなさそうだ。
「声がしたかと思えば、アンナリーゼ様ではありませんか?」
顔をのぞかせたのはクレアだ。クレアに挨拶をする。今の状況をざっと把握したのか、クレアも屈んで、アンジェラと同じくらいの視線になった。
「おっきぃでしょ?」
「うん、おっきぃ!」
「欲しい?」
クレアに聞かれて、さっきダメだと言われたばかりのアンジェラは私の様子を窺った。クレアもこちらを見て頷いているので、私も頷き返す。
「クレアにお願いをして、とってもいいよって言ってくれたら、それは、ジョーのものだよ」
「本当?」
「えぇ、本当よ。ほら、お願いしてみなさい」
クレアの方を見てから、とってもいいか確認をしている。クスクス笑い声が聞こえるので、とってもいいことになったのだろう。取り方を教えてもらいながら、上手に収穫出来たみたいだった。
「見て!」
立派なトマトを見せながら嬉しそうにしている。よかったね?と声をかけると、満面の笑みで私へトマトを渡してくれる。その大きなトマトを私に渡してくれるようだった。
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