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私の帰りが遅いので
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手紙を出してから、しばらくヨハンの研究所で滞在することになった。ただでさえ、屋敷を出てから1週間たつのだ。手紙で、こちらの様子を報告しているとはいえ、気になる人も出てきたようだ。
ぼんやり、描いてもらった見取り図を見ていると、馬車が止まる音がする。そろそろ、クレアたちも終結する頃だと外をみれば、見慣れた馬車が止まっていた。
中からはきゃっきゃっと子どもの声が聞こえてくる。
「……ジョージア様が来たのかしら?」
出迎えるように、玄関へと向かえば、初めて訪れる場所にソワソワとしているアンジェラが見えた。
「大人しくしていてくれると思っていたのに」
「アンナ様は人のことを言える資格はないと思いますよ?」
アデルも馬車の音に気が付いたのか、奥から出てきた。隣に並んで、ジョージアたちを出迎える。
「ジョージア様、ようこそおいでくださいました」
「あぁ……アンナ。ここって、アンナの屋敷じゃないよね?」
堂々と主人かのように出迎えるので、ジョージアが戸惑っている。私の顔を見てホッとしたのも束の間、アンジェラが玄関で飛び回っている。珍しいものがたくさんあるこの研究所。アンジェラにとっても、おもちゃ箱のような場所だったらしく、はしゃいでいる。そんな様子を二階から見ていたらしいヨハンが、「お嬢ちゃん!」と叫ぶ。ビクッとして、触ろうとしたものから、アンジェラは手を引っ込めた。
「どこぞのお姫様再来だな……」
呆れたようなヨハンに、ニッコリ笑っておく。私もヨハンの研究所は、ビックリ箱かおもちゃ箱のような場所だった。フレイゼンにいたときも今と同じく珍しいものや見たことがないようなものを飾ってあったり、無造作に置いてあったりで見る機会が多くて、大好きな場所だったのだ。
「あんまり、触らないでくれ」
「どうして?」
子どもの純粋な目で問われると、ヨハンも何か感じたのだろう。口ごもるがすぐに「危ないから」と答えた。それでも納得のできないアンジェラに、ジョージアが「アンジーもおもちゃ壊されたら困るだろ?」と言われて、気が付いたようだ。
おもちゃ箱にはたくさんおもちゃがあるけど、どれもこれもお気に入りで、壊されたら嫌なものも多い。ジョージアの機転の利く一言で、さっきまで飛び回っていたうちの子は静かになった。
「ずいぶん遅かったから迎えに来たよ?」
「私、屋敷に手紙を送ったのですけど?」
「あれ?行き違いになってしまったか」
「そうみたいですね?」
「まぁ、いい。アンジーも領地を見たがっていたから」
そういうジョージアの表情を見て、アンジェラの話はきっと後追いなのだろうと察しがつく。帰りも遅い、連絡もよこさない私にしびれをきらして、迎えに来てくれたのだろう。領地に帰ってきてからでも、休む間もなく、ヨハンの研究所を往復していたのだから心配もしてくれていることがわかった。
「ジョージア様も今晩は、こちらに?」
「少し戻った場所に宿を取ってある。今晩は、アンジーと一緒にそちらに泊まる予定だ」
「……それはあまり良策とは言えませんね?ジョージア様も刺客に狙われているのですから……。こちらで、一緒に休みましょう」
「でも、場所があるのかい?」
「せまいですけど、私用に用意された部屋がありますから、そこで」
「わかった。宿は……」
そのとき、もう一台馬車が停まる音がする。研究所へ顔を出したのはリアノだった。
「お久しぶりです、アンナ様!お元気されてましたか?無理はなさっていません?」
ガタイのいい女装したおじ……お兄さんが入って来た。そのまま抱きかかえられ「少し痩せたのではなくて?」というので、「そんなことないよ?」とニッコリ笑っておく。
「リアノは元気にしていたかしら?」
「お陰様で。毎日、いい汗をかきながら、最高のひと時を過ごしていましたわ!」
「それはよかった。今年はあまり領地にいられなかったから、心配していたの」
「そうなのですか?この領地の民は、アンナ様が思うよりずっと強かですよ。街道もですが、農業も今年は出来がいいらしいですからね!」
「そうなのよね。もしかして、領主ってお呼びじゃない?」
「そんなことないですよ。アンナ様がいるといないとでは、違いますからね?まぁ、いないからと言って、手を抜いているというものは、ほとんどいませんよ」
「それなら、嬉しいわ!」
話が途切れたときに、ジョージアも含めて話をすることにすうる。元々ヨハンへの希望ををジョージアにも話さないといけない。
「ジョージア様、リアノ。手紙にも書いたけど、オリーブを植えて、新しい産業を作り育てていく計画があるの。そこで、リアノには借りたいのよ」
「この頭と、体力有り余ってるようだけど、ヨハンもすぐにわかるよ。もう、オリーブの実がなるような場所、見に行ったりした?」
「まだです。明日、一度見に行こうと思っています」
「俺もそうしようかぁ?」
ジョージアも新規事業には興味があるらしく、私は、明日、アンジェラの子守をすることになりそうだと感じた。
ぼんやり、描いてもらった見取り図を見ていると、馬車が止まる音がする。そろそろ、クレアたちも終結する頃だと外をみれば、見慣れた馬車が止まっていた。
中からはきゃっきゃっと子どもの声が聞こえてくる。
「……ジョージア様が来たのかしら?」
出迎えるように、玄関へと向かえば、初めて訪れる場所にソワソワとしているアンジェラが見えた。
「大人しくしていてくれると思っていたのに」
「アンナ様は人のことを言える資格はないと思いますよ?」
アデルも馬車の音に気が付いたのか、奥から出てきた。隣に並んで、ジョージアたちを出迎える。
「ジョージア様、ようこそおいでくださいました」
「あぁ……アンナ。ここって、アンナの屋敷じゃないよね?」
堂々と主人かのように出迎えるので、ジョージアが戸惑っている。私の顔を見てホッとしたのも束の間、アンジェラが玄関で飛び回っている。珍しいものがたくさんあるこの研究所。アンジェラにとっても、おもちゃ箱のような場所だったらしく、はしゃいでいる。そんな様子を二階から見ていたらしいヨハンが、「お嬢ちゃん!」と叫ぶ。ビクッとして、触ろうとしたものから、アンジェラは手を引っ込めた。
「どこぞのお姫様再来だな……」
呆れたようなヨハンに、ニッコリ笑っておく。私もヨハンの研究所は、ビックリ箱かおもちゃ箱のような場所だった。フレイゼンにいたときも今と同じく珍しいものや見たことがないようなものを飾ってあったり、無造作に置いてあったりで見る機会が多くて、大好きな場所だったのだ。
「あんまり、触らないでくれ」
「どうして?」
子どもの純粋な目で問われると、ヨハンも何か感じたのだろう。口ごもるがすぐに「危ないから」と答えた。それでも納得のできないアンジェラに、ジョージアが「アンジーもおもちゃ壊されたら困るだろ?」と言われて、気が付いたようだ。
おもちゃ箱にはたくさんおもちゃがあるけど、どれもこれもお気に入りで、壊されたら嫌なものも多い。ジョージアの機転の利く一言で、さっきまで飛び回っていたうちの子は静かになった。
「ずいぶん遅かったから迎えに来たよ?」
「私、屋敷に手紙を送ったのですけど?」
「あれ?行き違いになってしまったか」
「そうみたいですね?」
「まぁ、いい。アンジーも領地を見たがっていたから」
そういうジョージアの表情を見て、アンジェラの話はきっと後追いなのだろうと察しがつく。帰りも遅い、連絡もよこさない私にしびれをきらして、迎えに来てくれたのだろう。領地に帰ってきてからでも、休む間もなく、ヨハンの研究所を往復していたのだから心配もしてくれていることがわかった。
「ジョージア様も今晩は、こちらに?」
「少し戻った場所に宿を取ってある。今晩は、アンジーと一緒にそちらに泊まる予定だ」
「……それはあまり良策とは言えませんね?ジョージア様も刺客に狙われているのですから……。こちらで、一緒に休みましょう」
「でも、場所があるのかい?」
「せまいですけど、私用に用意された部屋がありますから、そこで」
「わかった。宿は……」
そのとき、もう一台馬車が停まる音がする。研究所へ顔を出したのはリアノだった。
「お久しぶりです、アンナ様!お元気されてましたか?無理はなさっていません?」
ガタイのいい女装したおじ……お兄さんが入って来た。そのまま抱きかかえられ「少し痩せたのではなくて?」というので、「そんなことないよ?」とニッコリ笑っておく。
「リアノは元気にしていたかしら?」
「お陰様で。毎日、いい汗をかきながら、最高のひと時を過ごしていましたわ!」
「それはよかった。今年はあまり領地にいられなかったから、心配していたの」
「そうなのですか?この領地の民は、アンナ様が思うよりずっと強かですよ。街道もですが、農業も今年は出来がいいらしいですからね!」
「そうなのよね。もしかして、領主ってお呼びじゃない?」
「そんなことないですよ。アンナ様がいるといないとでは、違いますからね?まぁ、いないからと言って、手を抜いているというものは、ほとんどいませんよ」
「それなら、嬉しいわ!」
話が途切れたときに、ジョージアも含めて話をすることにすうる。元々ヨハンへの希望ををジョージアにも話さないといけない。
「ジョージア様、リアノ。手紙にも書いたけど、オリーブを植えて、新しい産業を作り育てていく計画があるの。そこで、リアノには借りたいのよ」
「この頭と、体力有り余ってるようだけど、ヨハンもすぐにわかるよ。もう、オリーブの実がなるような場所、見に行ったりした?」
「まだです。明日、一度見に行こうと思っています」
「俺もそうしようかぁ?」
ジョージアも新規事業には興味があるらしく、私は、明日、アンジェラの子守をすることになりそうだと感じた。
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