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サッパリしたわね!
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昨晩は、ヨハンの研究所に部屋を用意してもらって泊まった。と言っても、結局、ヨハンの研究話に何故か付き合うことになり、もぅ日が昇っている。
今晩は絶対どこかの宿に泊まると心に決め、外に出た。寝ていないからか、それとも、蟲毒の影響なのか、クラっとする。支えてくれる人もいないと思っていたら、こちらも仮眠だけで動いているであろうアデルが苦笑いをして支えてくれる。
「もう、帰って来たの?」
「ダメでしたか?私の主様」
「……なんだか、その言われ方、気持ち悪いわ……」
「言い方というより、アンナリーゼ様の顔色が悪いんですよ?昨夜は寝ましたか?」
ニッコリ笑って、「徹夜ですけど?ほら、あそこに変な人がいるでしょ?」と指を差すとチラッと見た後、残念そうにこちらを見てくる。
「仮眠くらいはしたのですよね?」
「していないわよ?もちろん!」
ニコニコしながら、ヨハンを睨む。元気に動けているのが、本当に不思議だ。研究に没頭すると、寝食を忘れて3日4日起きていると聞いたことがあるが、本当のようだ。私より年上なのに、マネはできないとため息をついた。
「戦争なら、こんなこと日常茶飯事よね?きちんと眠れる人なんて、いないでしょ?」
「普通はそうでしょうね?隊長格は意外とぐっすり眠っていたりするらしいですけど、従属したことがないのでわかりませんけどね?」
「あぁ、ウィルはどこでも寝れるって言ってた。瞬間的に眠るらしいわ。私も出来るっちゃできるけど、毒の影響か、まだ、回復には時間がかかりそうね……」
「ウィル様なら、わかる気がします。なんにしても、あの人は規格外だと思いますよ?」
「ウィルが規格外なら、その上とか、何になるわけ?」
「そういえば……」と苦笑いしている。エリックのことを思い浮かべたのだろう。ウィルより若くして近衛の頂点だ。まぁ、本来はウィルがなるんだとみなが思っていただろう。
「エリック様はまた別の規格外ですね。あの強さは、もう、人外」
「酷いなぁ……私、そのエリックに勝ったんだけど?」
「そうなのですか?」
「アンナリーゼ杯って、知らない?」
「若手の登竜門って言われている杯でしたか?」
「そう。それの優勝者、私。アンナリーゼ杯は元々私のためにウィルたちがふざけて作った大会だしね?」
「出たことありますよ」
どうだった?と好奇心で聞くと、こちらを見てくれなくなった。行きますよ!とはぐらかされ、しかたなく、アデルの後ろを歩いてついていく。
地底湖を抜け、海に出る。指定された場所まで向かうと、この前の下見のときにあった木は切り倒されていた。
「わぁ、すごいね?私が寝込んでいるあいだに、進んだねぇ!サッパリしたわね!」
「本当ですね?こんなに木が倒されているなんて……」
開けた場所からさらに広げていき、今では大きな広場になっている。ここにオリーブ畑と搾油工場を作る予定なので、木を伐り、木の根を掘り起こし、平らにしていかなければならない。苗木がもうこちらにあるので、それも早急にだ。
「見事でしょ?」
ふいに聞きなれた声が私の隣で聞こえてくる。この場の指揮を取っているものが私の元へ着たようだ。
「久しぶりね?リリー!」
「本当ですね、お久しぶりです。お元気にされていましたか?」
「んーここに来るまでに、ちょっといろいろあって、寝込んでいたわ!」
「大丈夫なのですか?ここは潮風があたって、体調が悪い人には向きませんよ!」
「うん、もう大丈夫。今日は、寝てないだけだから、何とかなるわ!」
呆れているリリーに何も言わないでとお願いして、案内をしてもらうことにした。そこには知っている面々もおり、私を見てぺこりと挨拶をしてくれる。
「棟梁とか、手伝いに来てくれているの?」
「えぇ、工場や住民が済むように家の設計などの大まかな話をするために来てくださっていますよ。あとは警備隊も……」
「あっ、本当だ。手を振ってくれているわ!」
「今年はあまり、領地におられなかったので、今日、会えるのを楽しみにしていたものたちですよ!」
「本当?休日に仕事とかではないよね?」
「もちろんです。街道づくりのほうからこちらにも時間がさけるようにと話合いましたから。ノクト様もこちらに合流するという話がありましたよ?」
ノクトも?と驚くと、聞いていませんでしたか?と聞き返される。確かに大工仕事は好きだと、自らのこぎりやらトンカチやらを持ってコーコナでも活躍をしてくれていたが、業やら、こちらでも、手伝ってくれるらしい。
「元常勝将軍の二つ名が泣きそうよね?」
「そんな称号はいらんと、先日ノクト様が言っていましたよ?アンナ様に使われることが、今の楽しみだと」
「……疲れ知らずとか、本当、ノクトといいヨハンといい……無理はしないでほしいわね?」
ため息をつくと、クスクス笑うアデルとリリー。私の顔を見てアンナ様もですからね?と釘を刺されてしまった。無理をしているつもりはなくても、周りからは、そう見えているのだと、反省した。
何はともあれ、だだっ広い土地に驚きながら、植樹の話を聞く。苗木は今、こちらに持てくることが難しいので、ヨハンの研究所近くに置いてある。運ぶ算段もしなくてはいけないのだなと思っているとリリーが手渡してくれるものをアデルと二人で広げてみる。それは、ここに作る予定の町の見取り図であった。
今晩は絶対どこかの宿に泊まると心に決め、外に出た。寝ていないからか、それとも、蟲毒の影響なのか、クラっとする。支えてくれる人もいないと思っていたら、こちらも仮眠だけで動いているであろうアデルが苦笑いをして支えてくれる。
「もう、帰って来たの?」
「ダメでしたか?私の主様」
「……なんだか、その言われ方、気持ち悪いわ……」
「言い方というより、アンナリーゼ様の顔色が悪いんですよ?昨夜は寝ましたか?」
ニッコリ笑って、「徹夜ですけど?ほら、あそこに変な人がいるでしょ?」と指を差すとチラッと見た後、残念そうにこちらを見てくる。
「仮眠くらいはしたのですよね?」
「していないわよ?もちろん!」
ニコニコしながら、ヨハンを睨む。元気に動けているのが、本当に不思議だ。研究に没頭すると、寝食を忘れて3日4日起きていると聞いたことがあるが、本当のようだ。私より年上なのに、マネはできないとため息をついた。
「戦争なら、こんなこと日常茶飯事よね?きちんと眠れる人なんて、いないでしょ?」
「普通はそうでしょうね?隊長格は意外とぐっすり眠っていたりするらしいですけど、従属したことがないのでわかりませんけどね?」
「あぁ、ウィルはどこでも寝れるって言ってた。瞬間的に眠るらしいわ。私も出来るっちゃできるけど、毒の影響か、まだ、回復には時間がかかりそうね……」
「ウィル様なら、わかる気がします。なんにしても、あの人は規格外だと思いますよ?」
「ウィルが規格外なら、その上とか、何になるわけ?」
「そういえば……」と苦笑いしている。エリックのことを思い浮かべたのだろう。ウィルより若くして近衛の頂点だ。まぁ、本来はウィルがなるんだとみなが思っていただろう。
「エリック様はまた別の規格外ですね。あの強さは、もう、人外」
「酷いなぁ……私、そのエリックに勝ったんだけど?」
「そうなのですか?」
「アンナリーゼ杯って、知らない?」
「若手の登竜門って言われている杯でしたか?」
「そう。それの優勝者、私。アンナリーゼ杯は元々私のためにウィルたちがふざけて作った大会だしね?」
「出たことありますよ」
どうだった?と好奇心で聞くと、こちらを見てくれなくなった。行きますよ!とはぐらかされ、しかたなく、アデルの後ろを歩いてついていく。
地底湖を抜け、海に出る。指定された場所まで向かうと、この前の下見のときにあった木は切り倒されていた。
「わぁ、すごいね?私が寝込んでいるあいだに、進んだねぇ!サッパリしたわね!」
「本当ですね?こんなに木が倒されているなんて……」
開けた場所からさらに広げていき、今では大きな広場になっている。ここにオリーブ畑と搾油工場を作る予定なので、木を伐り、木の根を掘り起こし、平らにしていかなければならない。苗木がもうこちらにあるので、それも早急にだ。
「見事でしょ?」
ふいに聞きなれた声が私の隣で聞こえてくる。この場の指揮を取っているものが私の元へ着たようだ。
「久しぶりね?リリー!」
「本当ですね、お久しぶりです。お元気にされていましたか?」
「んーここに来るまでに、ちょっといろいろあって、寝込んでいたわ!」
「大丈夫なのですか?ここは潮風があたって、体調が悪い人には向きませんよ!」
「うん、もう大丈夫。今日は、寝てないだけだから、何とかなるわ!」
呆れているリリーに何も言わないでとお願いして、案内をしてもらうことにした。そこには知っている面々もおり、私を見てぺこりと挨拶をしてくれる。
「棟梁とか、手伝いに来てくれているの?」
「えぇ、工場や住民が済むように家の設計などの大まかな話をするために来てくださっていますよ。あとは警備隊も……」
「あっ、本当だ。手を振ってくれているわ!」
「今年はあまり、領地におられなかったので、今日、会えるのを楽しみにしていたものたちですよ!」
「本当?休日に仕事とかではないよね?」
「もちろんです。街道づくりのほうからこちらにも時間がさけるようにと話合いましたから。ノクト様もこちらに合流するという話がありましたよ?」
ノクトも?と驚くと、聞いていませんでしたか?と聞き返される。確かに大工仕事は好きだと、自らのこぎりやらトンカチやらを持ってコーコナでも活躍をしてくれていたが、業やら、こちらでも、手伝ってくれるらしい。
「元常勝将軍の二つ名が泣きそうよね?」
「そんな称号はいらんと、先日ノクト様が言っていましたよ?アンナ様に使われることが、今の楽しみだと」
「……疲れ知らずとか、本当、ノクトといいヨハンといい……無理はしないでほしいわね?」
ため息をつくと、クスクス笑うアデルとリリー。私の顔を見てアンナ様もですからね?と釘を刺されてしまった。無理をしているつもりはなくても、周りからは、そう見えているのだと、反省した。
何はともあれ、だだっ広い土地に驚きながら、植樹の話を聞く。苗木は今、こちらに持てくることが難しいので、ヨハンの研究所近くに置いてある。運ぶ算段もしなくてはいけないのだなと思っているとリリーが手渡してくれるものをアデルと二人で広げてみる。それは、ここに作る予定の町の見取り図であった。
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