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レディアンナリーゼⅡ
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ふぁあとあくびをする。3日も寝ていれば、体中が痛く、コキコキと体を鳴らす。固まった体をほぐしてから、ベッドから立ち上がろうとする。
「よっと……」
立ち上がるとフラフラとして前に倒れそうになった。ちょうど部屋に入って来たアデルが慌てて駆け寄ってくれ抱きかかえられる。
「大丈夫ですか?アンナリーゼ様」
「……大丈夫だって思ったんだけど、大丈夫じゃないかもしれないわね?」
苦笑いをすると、呆れたようにアデルはため息をついた。無茶をすることは知っているはずでも、いざ、目の前で起こることに対処するのは大変そうだ。
「ごめんね?アデル」
「謝るくらいなら、少し控ええくれると助かるんですけどね?」
「……それは出来ないって知っているでしょ?」
「もちろんです。でも、ご自身の体のことは、もう少しご自愛ください。でないと、困ります。アンナ様は、ご自身のことになると、無頓着がすぎるきがしています」
「そうね。だからこそ、周りが気を付けてくれているのだろうけど……今回は、さすがに私も反省だわ」
もう一度ごめんね?と服の胸元を引っ張り、上目使いに見上げると視線を逸らされた。ねぇ?ともう一度引っ張ってみると、抱きかかえられていた状態から、ベッドへ座らされる。
ちょこんと座ると、アデルは数歩後ろへ下がった。
「今日は、もう一日……」
「今日はレディアンナリーゼを見に行くのよ?早く支度して、ヨハンの研究所へ向かいましょう!」
にっこり笑いながら、ブーツを履くと慌てるアデルにどうかして?と尋ねた。答えをわかった上で、あえて聞いてくるのだろう。
少し身構えるようにしてから、私へ話しかけてくる。
「……移動されるのですか?」
「もちろんよ!ヨハンの研究所と地底湖の向こうも見たいわ!私が眠っているあいだに、作業は進んでいるのでしょ?」
「それは、たぶんそうだと思うんですが……まだ、本調子ではありませんから、もう一日お休みになられては?」
「わかっていて聞いているでしょ?」
「……はぁあ、まぁ……」
歯切れの悪いアデルに、もう大丈夫よと伝えると、それでも心配そうにしてくれる。そんな優しさが嬉しくてありがとうとお礼を言ってみたが、あんまり響いていなさそうだ。
それなら、遠慮なくと荷物の中にある試験管をアデルにとってもらう。万能解毒薬をゴクゴクと飲み干し、もう大丈夫ともう一度アデルに言うと、諦めたように朝食にいきましょうと誘ってくれる。きっと、そこで、朝食を食べられなかったり、まともに歩けなかったりすれば、もう一日、ここに滞在するよう説得されるのだろう。
「そんなに心配しなくても、大丈夫よ?」
「大丈夫ではありませんよ?3日も意識がなく寝込んでいたのですから」
「そうなんだけど、ほら、もうね?」
「アンナ様の大丈夫ほど大丈夫に思えないことはありませんよ!」
珍しく小言を言っているのは、私の意識が戻らなかったことが本当に怖かったのかもしれない。もし、私がアデルのほうであれば、私もきっとアデルにお小言を言い続けるに違いない。ヨハンが大丈夫と言った毒なので、万能解毒薬で回復出来ないということはないと信用をしていたから、私は平然としていられる。今回の毒耐性をつけることにたいして、ヨハンの予想外なことが起こったことは確かなのだろう。
「食事もきちんととるし、無理はしないから!……アデル」
「止めても無駄なことくらいわかっていますけど!お小言の一つや二つ言わせてくれてもよくないですか?」
「ん……そうだね。それは甘んじて受けるよ」
そう言いながら、食堂へと降りていくとヨハンとジニーは朝食をとっているところだった。一に研究、二に研究、三も四も研究で食べるということに興味のなかったヨハンがしっかり朝食を食べている姿がなんだか不思議で仕方がなかった。そんな私の視線を感じたのか、ヨハンが眉間に皺を寄せる。
「朝は食べますよ?昼と夜を食べなかったとしても」
「そうなの?意外だったから驚いたわ!」
「研究者は、頭を使いますからね。朝のエネルギー補給は何より大切なものです」
「……そうなんだ。アンナリーゼ様も、朝だけは食べることをお薦めしますよ!」
「お昼や夜はいいの?」
「体を多く動かされるアンナリーゼ様は食べた方がいいと思いますけどね。俺は別に座ったままが多いから、最低限あればいいかと」
「……体、壊さないようにね?」
「わかっていますよ。足取りもしっかりしていますね?後で触診をしますけど、この分だと、今日は出発できそうだ」
「あぁ……やっぱり」
私の後ろでアデルが残念そうに声をあげる。もう一日休むように言って欲しかったようだ。基本的に研究バカのヨハンもそんな気の優しいことは言わないだろう。
私の前にもヨハンたちと同じ朝食が運ばれてきて、パンを手に取った。フワフワするそのあたたかいパンに齧りつく様子をジッとアデルが見てくる。
「心配しすぎよ?もう、大丈夫だから」
それでも、ジトっとした目で訴えてくるので、私はヨハンの研究所までの道のりをアデルと二人乗りの提案をする。それなら……としぶしぶ了承を得て、朝食に集中ができた。
「それにしても、ヨハンの言ってた薔薇……楽しみだわ!」
昨日のスケッチブックを思い描きながら、朝食をきちんと食べ終わり、もうひとつパンのおかわりをすることにした。
「よっと……」
立ち上がるとフラフラとして前に倒れそうになった。ちょうど部屋に入って来たアデルが慌てて駆け寄ってくれ抱きかかえられる。
「大丈夫ですか?アンナリーゼ様」
「……大丈夫だって思ったんだけど、大丈夫じゃないかもしれないわね?」
苦笑いをすると、呆れたようにアデルはため息をついた。無茶をすることは知っているはずでも、いざ、目の前で起こることに対処するのは大変そうだ。
「ごめんね?アデル」
「謝るくらいなら、少し控ええくれると助かるんですけどね?」
「……それは出来ないって知っているでしょ?」
「もちろんです。でも、ご自身の体のことは、もう少しご自愛ください。でないと、困ります。アンナ様は、ご自身のことになると、無頓着がすぎるきがしています」
「そうね。だからこそ、周りが気を付けてくれているのだろうけど……今回は、さすがに私も反省だわ」
もう一度ごめんね?と服の胸元を引っ張り、上目使いに見上げると視線を逸らされた。ねぇ?ともう一度引っ張ってみると、抱きかかえられていた状態から、ベッドへ座らされる。
ちょこんと座ると、アデルは数歩後ろへ下がった。
「今日は、もう一日……」
「今日はレディアンナリーゼを見に行くのよ?早く支度して、ヨハンの研究所へ向かいましょう!」
にっこり笑いながら、ブーツを履くと慌てるアデルにどうかして?と尋ねた。答えをわかった上で、あえて聞いてくるのだろう。
少し身構えるようにしてから、私へ話しかけてくる。
「……移動されるのですか?」
「もちろんよ!ヨハンの研究所と地底湖の向こうも見たいわ!私が眠っているあいだに、作業は進んでいるのでしょ?」
「それは、たぶんそうだと思うんですが……まだ、本調子ではありませんから、もう一日お休みになられては?」
「わかっていて聞いているでしょ?」
「……はぁあ、まぁ……」
歯切れの悪いアデルに、もう大丈夫よと伝えると、それでも心配そうにしてくれる。そんな優しさが嬉しくてありがとうとお礼を言ってみたが、あんまり響いていなさそうだ。
それなら、遠慮なくと荷物の中にある試験管をアデルにとってもらう。万能解毒薬をゴクゴクと飲み干し、もう大丈夫ともう一度アデルに言うと、諦めたように朝食にいきましょうと誘ってくれる。きっと、そこで、朝食を食べられなかったり、まともに歩けなかったりすれば、もう一日、ここに滞在するよう説得されるのだろう。
「そんなに心配しなくても、大丈夫よ?」
「大丈夫ではありませんよ?3日も意識がなく寝込んでいたのですから」
「そうなんだけど、ほら、もうね?」
「アンナ様の大丈夫ほど大丈夫に思えないことはありませんよ!」
珍しく小言を言っているのは、私の意識が戻らなかったことが本当に怖かったのかもしれない。もし、私がアデルのほうであれば、私もきっとアデルにお小言を言い続けるに違いない。ヨハンが大丈夫と言った毒なので、万能解毒薬で回復出来ないということはないと信用をしていたから、私は平然としていられる。今回の毒耐性をつけることにたいして、ヨハンの予想外なことが起こったことは確かなのだろう。
「食事もきちんととるし、無理はしないから!……アデル」
「止めても無駄なことくらいわかっていますけど!お小言の一つや二つ言わせてくれてもよくないですか?」
「ん……そうだね。それは甘んじて受けるよ」
そう言いながら、食堂へと降りていくとヨハンとジニーは朝食をとっているところだった。一に研究、二に研究、三も四も研究で食べるということに興味のなかったヨハンがしっかり朝食を食べている姿がなんだか不思議で仕方がなかった。そんな私の視線を感じたのか、ヨハンが眉間に皺を寄せる。
「朝は食べますよ?昼と夜を食べなかったとしても」
「そうなの?意外だったから驚いたわ!」
「研究者は、頭を使いますからね。朝のエネルギー補給は何より大切なものです」
「……そうなんだ。アンナリーゼ様も、朝だけは食べることをお薦めしますよ!」
「お昼や夜はいいの?」
「体を多く動かされるアンナリーゼ様は食べた方がいいと思いますけどね。俺は別に座ったままが多いから、最低限あればいいかと」
「……体、壊さないようにね?」
「わかっていますよ。足取りもしっかりしていますね?後で触診をしますけど、この分だと、今日は出発できそうだ」
「あぁ……やっぱり」
私の後ろでアデルが残念そうに声をあげる。もう一日休むように言って欲しかったようだ。基本的に研究バカのヨハンもそんな気の優しいことは言わないだろう。
私の前にもヨハンたちと同じ朝食が運ばれてきて、パンを手に取った。フワフワするそのあたたかいパンに齧りつく様子をジッとアデルが見てくる。
「心配しすぎよ?もう、大丈夫だから」
それでも、ジトっとした目で訴えてくるので、私はヨハンの研究所までの道のりをアデルと二人乗りの提案をする。それなら……としぶしぶ了承を得て、朝食に集中ができた。
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