1,113 / 1,480
レディアンナリーゼⅡ
しおりを挟む
ふぁあとあくびをする。3日も寝ていれば、体中が痛く、コキコキと体を鳴らす。固まった体をほぐしてから、ベッドから立ち上がろうとする。
「よっと……」
立ち上がるとフラフラとして前に倒れそうになった。ちょうど部屋に入って来たアデルが慌てて駆け寄ってくれ抱きかかえられる。
「大丈夫ですか?アンナリーゼ様」
「……大丈夫だって思ったんだけど、大丈夫じゃないかもしれないわね?」
苦笑いをすると、呆れたようにアデルはため息をついた。無茶をすることは知っているはずでも、いざ、目の前で起こることに対処するのは大変そうだ。
「ごめんね?アデル」
「謝るくらいなら、少し控ええくれると助かるんですけどね?」
「……それは出来ないって知っているでしょ?」
「もちろんです。でも、ご自身の体のことは、もう少しご自愛ください。でないと、困ります。アンナ様は、ご自身のことになると、無頓着がすぎるきがしています」
「そうね。だからこそ、周りが気を付けてくれているのだろうけど……今回は、さすがに私も反省だわ」
もう一度ごめんね?と服の胸元を引っ張り、上目使いに見上げると視線を逸らされた。ねぇ?ともう一度引っ張ってみると、抱きかかえられていた状態から、ベッドへ座らされる。
ちょこんと座ると、アデルは数歩後ろへ下がった。
「今日は、もう一日……」
「今日はレディアンナリーゼを見に行くのよ?早く支度して、ヨハンの研究所へ向かいましょう!」
にっこり笑いながら、ブーツを履くと慌てるアデルにどうかして?と尋ねた。答えをわかった上で、あえて聞いてくるのだろう。
少し身構えるようにしてから、私へ話しかけてくる。
「……移動されるのですか?」
「もちろんよ!ヨハンの研究所と地底湖の向こうも見たいわ!私が眠っているあいだに、作業は進んでいるのでしょ?」
「それは、たぶんそうだと思うんですが……まだ、本調子ではありませんから、もう一日お休みになられては?」
「わかっていて聞いているでしょ?」
「……はぁあ、まぁ……」
歯切れの悪いアデルに、もう大丈夫よと伝えると、それでも心配そうにしてくれる。そんな優しさが嬉しくてありがとうとお礼を言ってみたが、あんまり響いていなさそうだ。
それなら、遠慮なくと荷物の中にある試験管をアデルにとってもらう。万能解毒薬をゴクゴクと飲み干し、もう大丈夫ともう一度アデルに言うと、諦めたように朝食にいきましょうと誘ってくれる。きっと、そこで、朝食を食べられなかったり、まともに歩けなかったりすれば、もう一日、ここに滞在するよう説得されるのだろう。
「そんなに心配しなくても、大丈夫よ?」
「大丈夫ではありませんよ?3日も意識がなく寝込んでいたのですから」
「そうなんだけど、ほら、もうね?」
「アンナ様の大丈夫ほど大丈夫に思えないことはありませんよ!」
珍しく小言を言っているのは、私の意識が戻らなかったことが本当に怖かったのかもしれない。もし、私がアデルのほうであれば、私もきっとアデルにお小言を言い続けるに違いない。ヨハンが大丈夫と言った毒なので、万能解毒薬で回復出来ないということはないと信用をしていたから、私は平然としていられる。今回の毒耐性をつけることにたいして、ヨハンの予想外なことが起こったことは確かなのだろう。
「食事もきちんととるし、無理はしないから!……アデル」
「止めても無駄なことくらいわかっていますけど!お小言の一つや二つ言わせてくれてもよくないですか?」
「ん……そうだね。それは甘んじて受けるよ」
そう言いながら、食堂へと降りていくとヨハンとジニーは朝食をとっているところだった。一に研究、二に研究、三も四も研究で食べるということに興味のなかったヨハンがしっかり朝食を食べている姿がなんだか不思議で仕方がなかった。そんな私の視線を感じたのか、ヨハンが眉間に皺を寄せる。
「朝は食べますよ?昼と夜を食べなかったとしても」
「そうなの?意外だったから驚いたわ!」
「研究者は、頭を使いますからね。朝のエネルギー補給は何より大切なものです」
「……そうなんだ。アンナリーゼ様も、朝だけは食べることをお薦めしますよ!」
「お昼や夜はいいの?」
「体を多く動かされるアンナリーゼ様は食べた方がいいと思いますけどね。俺は別に座ったままが多いから、最低限あればいいかと」
「……体、壊さないようにね?」
「わかっていますよ。足取りもしっかりしていますね?後で触診をしますけど、この分だと、今日は出発できそうだ」
「あぁ……やっぱり」
私の後ろでアデルが残念そうに声をあげる。もう一日休むように言って欲しかったようだ。基本的に研究バカのヨハンもそんな気の優しいことは言わないだろう。
私の前にもヨハンたちと同じ朝食が運ばれてきて、パンを手に取った。フワフワするそのあたたかいパンに齧りつく様子をジッとアデルが見てくる。
「心配しすぎよ?もう、大丈夫だから」
それでも、ジトっとした目で訴えてくるので、私はヨハンの研究所までの道のりをアデルと二人乗りの提案をする。それなら……としぶしぶ了承を得て、朝食に集中ができた。
「それにしても、ヨハンの言ってた薔薇……楽しみだわ!」
昨日のスケッチブックを思い描きながら、朝食をきちんと食べ終わり、もうひとつパンのおかわりをすることにした。
「よっと……」
立ち上がるとフラフラとして前に倒れそうになった。ちょうど部屋に入って来たアデルが慌てて駆け寄ってくれ抱きかかえられる。
「大丈夫ですか?アンナリーゼ様」
「……大丈夫だって思ったんだけど、大丈夫じゃないかもしれないわね?」
苦笑いをすると、呆れたようにアデルはため息をついた。無茶をすることは知っているはずでも、いざ、目の前で起こることに対処するのは大変そうだ。
「ごめんね?アデル」
「謝るくらいなら、少し控ええくれると助かるんですけどね?」
「……それは出来ないって知っているでしょ?」
「もちろんです。でも、ご自身の体のことは、もう少しご自愛ください。でないと、困ります。アンナ様は、ご自身のことになると、無頓着がすぎるきがしています」
「そうね。だからこそ、周りが気を付けてくれているのだろうけど……今回は、さすがに私も反省だわ」
もう一度ごめんね?と服の胸元を引っ張り、上目使いに見上げると視線を逸らされた。ねぇ?ともう一度引っ張ってみると、抱きかかえられていた状態から、ベッドへ座らされる。
ちょこんと座ると、アデルは数歩後ろへ下がった。
「今日は、もう一日……」
「今日はレディアンナリーゼを見に行くのよ?早く支度して、ヨハンの研究所へ向かいましょう!」
にっこり笑いながら、ブーツを履くと慌てるアデルにどうかして?と尋ねた。答えをわかった上で、あえて聞いてくるのだろう。
少し身構えるようにしてから、私へ話しかけてくる。
「……移動されるのですか?」
「もちろんよ!ヨハンの研究所と地底湖の向こうも見たいわ!私が眠っているあいだに、作業は進んでいるのでしょ?」
「それは、たぶんそうだと思うんですが……まだ、本調子ではありませんから、もう一日お休みになられては?」
「わかっていて聞いているでしょ?」
「……はぁあ、まぁ……」
歯切れの悪いアデルに、もう大丈夫よと伝えると、それでも心配そうにしてくれる。そんな優しさが嬉しくてありがとうとお礼を言ってみたが、あんまり響いていなさそうだ。
それなら、遠慮なくと荷物の中にある試験管をアデルにとってもらう。万能解毒薬をゴクゴクと飲み干し、もう大丈夫ともう一度アデルに言うと、諦めたように朝食にいきましょうと誘ってくれる。きっと、そこで、朝食を食べられなかったり、まともに歩けなかったりすれば、もう一日、ここに滞在するよう説得されるのだろう。
「そんなに心配しなくても、大丈夫よ?」
「大丈夫ではありませんよ?3日も意識がなく寝込んでいたのですから」
「そうなんだけど、ほら、もうね?」
「アンナ様の大丈夫ほど大丈夫に思えないことはありませんよ!」
珍しく小言を言っているのは、私の意識が戻らなかったことが本当に怖かったのかもしれない。もし、私がアデルのほうであれば、私もきっとアデルにお小言を言い続けるに違いない。ヨハンが大丈夫と言った毒なので、万能解毒薬で回復出来ないということはないと信用をしていたから、私は平然としていられる。今回の毒耐性をつけることにたいして、ヨハンの予想外なことが起こったことは確かなのだろう。
「食事もきちんととるし、無理はしないから!……アデル」
「止めても無駄なことくらいわかっていますけど!お小言の一つや二つ言わせてくれてもよくないですか?」
「ん……そうだね。それは甘んじて受けるよ」
そう言いながら、食堂へと降りていくとヨハンとジニーは朝食をとっているところだった。一に研究、二に研究、三も四も研究で食べるということに興味のなかったヨハンがしっかり朝食を食べている姿がなんだか不思議で仕方がなかった。そんな私の視線を感じたのか、ヨハンが眉間に皺を寄せる。
「朝は食べますよ?昼と夜を食べなかったとしても」
「そうなの?意外だったから驚いたわ!」
「研究者は、頭を使いますからね。朝のエネルギー補給は何より大切なものです」
「……そうなんだ。アンナリーゼ様も、朝だけは食べることをお薦めしますよ!」
「お昼や夜はいいの?」
「体を多く動かされるアンナリーゼ様は食べた方がいいと思いますけどね。俺は別に座ったままが多いから、最低限あればいいかと」
「……体、壊さないようにね?」
「わかっていますよ。足取りもしっかりしていますね?後で触診をしますけど、この分だと、今日は出発できそうだ」
「あぁ……やっぱり」
私の後ろでアデルが残念そうに声をあげる。もう一日休むように言って欲しかったようだ。基本的に研究バカのヨハンもそんな気の優しいことは言わないだろう。
私の前にもヨハンたちと同じ朝食が運ばれてきて、パンを手に取った。フワフワするそのあたたかいパンに齧りつく様子をジッとアデルが見てくる。
「心配しすぎよ?もう、大丈夫だから」
それでも、ジトっとした目で訴えてくるので、私はヨハンの研究所までの道のりをアデルと二人乗りの提案をする。それなら……としぶしぶ了承を得て、朝食に集中ができた。
「それにしても、ヨハンの言ってた薔薇……楽しみだわ!」
昨日のスケッチブックを思い描きながら、朝食をきちんと食べ終わり、もうひとつパンのおかわりをすることにした。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
悲恋を気取った侯爵夫人の末路
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。
順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。
悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──?
カクヨムにも公開してます。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。
10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。
婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。
その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。
それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー?
【作者よりみなさまへ】
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
【完結】どうかその想いが実りますように
おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。
学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。
いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。
貴方のその想いが実りますように……
もう私には願う事しかできないから。
※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗
お読みいただく際ご注意くださいませ。
※完結保証。全10話+番外編1話です。
※番外編2話追加しました。
※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。
【魅了の令嬢】婚約者を簒奪された私。父も兄も激怒し徹底抗戦。我が家は連戦連敗。でも大逆転。王太子殿下は土下座いたしました。そして私は……。
川嶋マサヒロ
恋愛
「僕たちの婚約を破棄しよう」
愛しき婚約者は無情にも、予測していた言葉を口にした。
伯爵令嬢のバシュラール・ディアーヌは婚約破棄を宣告されてしまう。
「あの女のせいです」
兄は怒り――。
「それほどの話であったのか……」
――父は呆れた。
そして始まる貴族同士の駆け引き。
「ディアーヌの執務室だけど、引き払うように通達を出してくれ。彼女も今は、身の置き所がないだろうしね」
「我が家との取引を中止する? いつでも再開できるように、受け入れ体勢は維持するように」
「決闘か……、子供のころ以来だよ。ワクワクするなあ」
令嬢ディアーヌは、残酷な現実を覆せるのか?
さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
いっそあなたに憎まれたい
石河 翠
恋愛
主人公が愛した男には、すでに身分違いの平民の恋人がいた。
貴族の娘であり、正妻であるはずの彼女は、誰も来ない離れの窓から幸せそうな彼らを覗き見ることしかできない。
愛されることもなく、夫婦の営みすらない白い結婚。
三年が過ぎ、義両親からは石女(うまずめ)の烙印を押され、とうとう離縁されることになる。
そして彼女は結婚生活最後の日に、ひとりの神父と過ごすことを選ぶ。
誰にも言えなかった胸の内を、ひっそりと「彼」に明かすために。
これは婚約破棄もできず、悪役令嬢にもドアマットヒロインにもなれなかった、ひとりの愚かな女のお話。
この作品は小説家になろうにも投稿しております。
扉絵は、汐の音様に描いていただきました。ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる