1,108 / 1,513
天気もいいしⅤ
しおりを挟む
「さっきの話……」
遠慮がちにアデルが口を開いた。ジョージのことは、ソフィアを含め、知っているのジョージアと私の友人たち一握りのものたちだけだ。一時期噂話が出回っていたが、髪の色も目の色も黒いジョージは、ソフィアそっくりだと貫き通せば、父親が誰なのかはわからなくてもいいだろう。
ただ、年を重ねていけば、エールの面影も出てくるかもしれない。そのとき、どうするのか、まだ、考えていないが、成人を迎えるときに、ソフィアのことを伝えるつもりではあった。
その伝え方は、ジョージアに一任することにしている。ジョージアの子として、これからも生きていかなくてはいけないのだから。
私に対して、どんな感情をいだくことになるか、また、一緒に育っているアンジェラやネイトをどう思うのか。それは、そのときのジョージにしかわからない。それでも、私たち大人にしてあげられることは、寄り添うことだけだろう。
私以外の大人となるのだろうが。
「何かしら?」
「……ずっと、聞きたかったんです。あの噂話があったから。その……」
「それは、私たちと本人が知っていればいいことだわ。アデルが知ることではないはずよ。それに……いずれ、アンバーをジョージア様から贈られるはずだもの」
そういうと、納得したようなしていないような微妙な表情で、そうですねとアデルが呟いた。私は、そんなアデルの背中に手を置いて、ありがとうという。
「何故です?」
「気にかけてくれたのでしょ?子どもたち……ジョージのこと」
「……でも、それは、いずれアンナ様にとって辛いことになるのではありませんか?」
「ソフィアのことね。……そうかもしれない。でも、そのころには、私はいないかもしれないから」
少し前にでてアデルに笑いかけると、驚いた顔をしていた。そのあと酷く辛そうに顔を歪める。
「そんな顔しないで。まだ、未来は決まっているわけじゃないし、誰にもわからないでしょ?」
「でも、アンナ様は、自身が、その……」
ツカツカとアデルに近寄っていき、言葉を遮るために人差し指で口を塞いだ。それ以上は何も言えず、こちらを見下ろしている。
「それ以上は言わない。だって、不確定要素ばかりなのに、言葉にしてしまうと、本当になってしまいそうだわ。私以外の口からは、なるべく聞きたくない」
にっこり笑いかけると、コクンと頷いてくれる。それを確認して指を戻した。
「アデルにお願いがあるの。もし、未来で、ジョージが困っていたら、ほんの少しでいい。手を貸してあげてね?」
「……それは」
「レオもミアもいずれ、アンジェラの従者になるわ。形はどうあれ、幼いあの子たちとそういう約束をしたの。命の代償にね」
「……ダドリーの子でしたね?」
「うん、血筋はね?でも、あの子たちは、それを捨てて、新しい未来を自分で掴みに来た。だから、私は、手元に置いたの。必要だったっていうのもあるけど、あの二人がアンジェラの孤独な道を一番近くで歩いてくれるはずだから」
「ジョージ様やネイト様は……その」
「ネイトはいずれ、アンバー領の領主になるでしょう。そういう才能が備わっているもの。それと同時にアンバー公爵家の子として、瞳を持っているから。ジョージは、祖父にあたるダドリー男爵領を治めることになるかな。きちんとした爵位を得てね。ジョージア様が授ける爵位よ」
「コーコナ領をですか……そのとき、ジョージ様にお仕えすればいいですか?」
「それは、そのときなって決めて。無責任で悪いけど、アデルには、家族になりたい人もいるわけだし、その先に家族が増えることもあるから」
誰のことを言っているのか想像できるアデルは、あ……とか、えっと……とか口ごもってしまう。私は、リアンにも幸せになって欲しいとも思っているから、アデルの応援もしている。もちろん、先日から顔を出さなかったことにお咎めがないのもその応援の一環で、そのあたり、出来る領主としてもう少し、アデルも敬ってほしいものではあった。
「わかりました。そのときがくれば、どうするかは、アンナ様に相談させていただきます。未来なんて、わかりませんからね。振られることしか想像出来ていませんから」
「リアンは、アデルのこと、嫌いではないと思うよ?」
「好きというわけでもないでしょ?」
「そこは……アデルがなんとかしないといけないところだからね。年の差を気にしているみたいでもあるし……押しすぎず、引きすぎず、程よい感じで頑張ってとしか言えないわね?孤児院のほうも大変そうだし」
「確かに。里親に出した子もいますけど……、手のかかる子はいますから」
「その筆頭がアデルじゃなければいいね?」
「……酷いです!アンナ様」
ぐすんと泣きまねをするアデルをからかう。今日泊まる宿が近くなってきたので、荷馬車を先導していた私たちは各々に指示を出した。荷物番だけを残して、急速に入る。
私が泊まる宿に向かえば、そこにはジニーが待っていた。一人で自由に出回ることは許可されていないので、きっと、そばにディルの子猫がいるのだろう。
「アンナリーゼ様、お久しぶりです」
「ジニー、元気にしていた?」
「はい!おかげさまで」
「ところで、どうして、ここにジニーが?」
「兄がアンナリーゼ様と早々に話がしたいとかで……」
「……つい先日、あったばかりだけど」
「ですよね?私もあと1日くらい待てば?と言ったんですけどね?」
大きなため息とともに、こちらにどうぞと案内される部屋へ向かった。いったい何を話すことになるか……正直怖くて仕方がなかったが、逃げるわけにもいかないので、ジニーの後へと続くのであった。
遠慮がちにアデルが口を開いた。ジョージのことは、ソフィアを含め、知っているのジョージアと私の友人たち一握りのものたちだけだ。一時期噂話が出回っていたが、髪の色も目の色も黒いジョージは、ソフィアそっくりだと貫き通せば、父親が誰なのかはわからなくてもいいだろう。
ただ、年を重ねていけば、エールの面影も出てくるかもしれない。そのとき、どうするのか、まだ、考えていないが、成人を迎えるときに、ソフィアのことを伝えるつもりではあった。
その伝え方は、ジョージアに一任することにしている。ジョージアの子として、これからも生きていかなくてはいけないのだから。
私に対して、どんな感情をいだくことになるか、また、一緒に育っているアンジェラやネイトをどう思うのか。それは、そのときのジョージにしかわからない。それでも、私たち大人にしてあげられることは、寄り添うことだけだろう。
私以外の大人となるのだろうが。
「何かしら?」
「……ずっと、聞きたかったんです。あの噂話があったから。その……」
「それは、私たちと本人が知っていればいいことだわ。アデルが知ることではないはずよ。それに……いずれ、アンバーをジョージア様から贈られるはずだもの」
そういうと、納得したようなしていないような微妙な表情で、そうですねとアデルが呟いた。私は、そんなアデルの背中に手を置いて、ありがとうという。
「何故です?」
「気にかけてくれたのでしょ?子どもたち……ジョージのこと」
「……でも、それは、いずれアンナ様にとって辛いことになるのではありませんか?」
「ソフィアのことね。……そうかもしれない。でも、そのころには、私はいないかもしれないから」
少し前にでてアデルに笑いかけると、驚いた顔をしていた。そのあと酷く辛そうに顔を歪める。
「そんな顔しないで。まだ、未来は決まっているわけじゃないし、誰にもわからないでしょ?」
「でも、アンナ様は、自身が、その……」
ツカツカとアデルに近寄っていき、言葉を遮るために人差し指で口を塞いだ。それ以上は何も言えず、こちらを見下ろしている。
「それ以上は言わない。だって、不確定要素ばかりなのに、言葉にしてしまうと、本当になってしまいそうだわ。私以外の口からは、なるべく聞きたくない」
にっこり笑いかけると、コクンと頷いてくれる。それを確認して指を戻した。
「アデルにお願いがあるの。もし、未来で、ジョージが困っていたら、ほんの少しでいい。手を貸してあげてね?」
「……それは」
「レオもミアもいずれ、アンジェラの従者になるわ。形はどうあれ、幼いあの子たちとそういう約束をしたの。命の代償にね」
「……ダドリーの子でしたね?」
「うん、血筋はね?でも、あの子たちは、それを捨てて、新しい未来を自分で掴みに来た。だから、私は、手元に置いたの。必要だったっていうのもあるけど、あの二人がアンジェラの孤独な道を一番近くで歩いてくれるはずだから」
「ジョージ様やネイト様は……その」
「ネイトはいずれ、アンバー領の領主になるでしょう。そういう才能が備わっているもの。それと同時にアンバー公爵家の子として、瞳を持っているから。ジョージは、祖父にあたるダドリー男爵領を治めることになるかな。きちんとした爵位を得てね。ジョージア様が授ける爵位よ」
「コーコナ領をですか……そのとき、ジョージ様にお仕えすればいいですか?」
「それは、そのときなって決めて。無責任で悪いけど、アデルには、家族になりたい人もいるわけだし、その先に家族が増えることもあるから」
誰のことを言っているのか想像できるアデルは、あ……とか、えっと……とか口ごもってしまう。私は、リアンにも幸せになって欲しいとも思っているから、アデルの応援もしている。もちろん、先日から顔を出さなかったことにお咎めがないのもその応援の一環で、そのあたり、出来る領主としてもう少し、アデルも敬ってほしいものではあった。
「わかりました。そのときがくれば、どうするかは、アンナ様に相談させていただきます。未来なんて、わかりませんからね。振られることしか想像出来ていませんから」
「リアンは、アデルのこと、嫌いではないと思うよ?」
「好きというわけでもないでしょ?」
「そこは……アデルがなんとかしないといけないところだからね。年の差を気にしているみたいでもあるし……押しすぎず、引きすぎず、程よい感じで頑張ってとしか言えないわね?孤児院のほうも大変そうだし」
「確かに。里親に出した子もいますけど……、手のかかる子はいますから」
「その筆頭がアデルじゃなければいいね?」
「……酷いです!アンナ様」
ぐすんと泣きまねをするアデルをからかう。今日泊まる宿が近くなってきたので、荷馬車を先導していた私たちは各々に指示を出した。荷物番だけを残して、急速に入る。
私が泊まる宿に向かえば、そこにはジニーが待っていた。一人で自由に出回ることは許可されていないので、きっと、そばにディルの子猫がいるのだろう。
「アンナリーゼ様、お久しぶりです」
「ジニー、元気にしていた?」
「はい!おかげさまで」
「ところで、どうして、ここにジニーが?」
「兄がアンナリーゼ様と早々に話がしたいとかで……」
「……つい先日、あったばかりだけど」
「ですよね?私もあと1日くらい待てば?と言ったんですけどね?」
大きなため息とともに、こちらにどうぞと案内される部屋へ向かった。いったい何を話すことになるか……正直怖くて仕方がなかったが、逃げるわけにもいかないので、ジニーの後へと続くのであった。
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
「あなたの好きなひとを盗るつもりなんてなかった。どうか許して」と親友に謝られたけど、その男性は私の好きなひとではありません。まあいっか。
石河 翠
恋愛
真面目が取り柄のハリエットには、同い年の従姉妹エミリーがいる。母親同士の仲が悪く、二人は何かにつけ比較されてきた。
ある日招待されたお茶会にて、ハリエットは突然エミリーから謝られる。なんとエミリーは、ハリエットの好きなひとを盗ってしまったのだという。エミリーの母親は、ハリエットを出し抜けてご機嫌の様子。
ところが、紹介された男性はハリエットの好きなひととは全くの別人。しかもエミリーは勘違いしているわけではないらしい。そこでハリエットは伯母の誤解を解かないまま、エミリーの結婚式への出席を希望し……。
母親の束縛から逃れて初恋を叶えるしたたかなヒロインと恋人を溺愛する腹黒ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:23852097)をお借りしております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄の場に相手がいなかった件について
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵令息であるアダルベルトは、とある夜会で婚約者の伯爵令嬢クラウディアとの婚約破棄を宣言する。しかし、その夜会にクラウディアの姿はなかった。
断罪イベントの夜会に婚約者を迎えに来ないというパターンがあるので、では行かなければいいと思って書いたら、人徳あふれるヒロイン(不在)が誕生しました。
カクヨムにも公開しています。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる