ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

文字の大きさ
上 下
1,105 / 1,513

天気もいいしⅡ

しおりを挟む
 動きやすい格好でレナンテに跨る。今日は私とアデルが案内役で、目的地までに人を集める役目もあるので、一泊二日の工程で進むことになった。


「アンナ様、お久しぶりですね?」


 私の隣に馬でつけてきたアデルが話しかけてきた。領地に戻ってから、お役目が回ってくるまで、私のところには顔を出してこなかったので久しぶりであった。


「帰ってきてから、全然顔を合わせなかったね?どこに引っ込んでいたのかなぁ?アデルくんは」
「……なんですか?そのやらしい顔は!」
「そんなことないですよ?まぁ、アデルがどこで誰の手伝いをしているかなんて、私の情報網を使わなくてもわかるんだけどね?」
「なら、なにも言わないでくださいよ。少しずつ距離も縮まってきていい感じなんですから!」」
「それって、アデルが思っているだけよね?」


 チラリとアデルを見てから、興味なさげに前を向く。冬に差し掛かっているとはいえ、天気がいいおかげか、ほんのり暖かい気温の中、リアンのことを思い浮かべる。リアンは、今、侍女の任をとき、コーコナにいた孤児たちの面倒を見てくれている。そんなリアンに想いを寄せているアデルは、今、振り向てもらえるように頑張っているところであった。鬼のいぬ間にならぬ、アンナのいぬ間に、リアンと仲良くなろう作戦で、領地の屋敷内にある孤児院に足しげく通っているのは知っていた。仮にも主人である私が帰った日くらい、出迎えて欲しいところではあるのだか、全くこちらには見向きもしていなかった。


「言っておくけど、私がアデルを拾わなかったら、こんなことも起こらなかったんだからね?感謝くらいしてくれてもいいと思うし、もう少し、私に感心を向けてくれてもいいと思うの」
「アンナ様には、ご注文のとおり振り回されますから、領地の屋敷にいるときだけは、少しでもリアンの側にいてはダメですか?」
「いいけど、あんまりしつこいと嫌われるわよ?」


 そんなことありませんよと余裕ぶって笑うので、ふーんとだけ返事をする。何か仕返しをと考えて、ぼんやり前を見ていると、後ろから名を呼ばれたので振り返った。
 アデルには見向きもせず、名を呼ぶ場所までむかった。すると、馬車が重みに耐えられなくなったのか、ミシミシと悲鳴をあげて、壊れたそうだ。どこからどう見ても動きそうにない馬車を見て、どうしようかな?と考える。隣に来たアデルが、大きなため息をつく。


「このあたり、大きな町には距離があるなぁ……修理をするにしても、今は難しいね?」
「確かに、どちらの道を選んだとしても地獄のようですね?」
「さて、どうしようかしら?」


 アデルに向き直り、指示だ出す。これくらい、おさめろと視線を送るとコクリと頷いた。
 それから、アデルが馬車の確認をしたあと、近づいてくる。


「アンナ様、次の町で馬車を借りてきます。それで、大丈夫そうですか?」
「えぇ、大丈夫。同じを事考えてくれたみたいで、嬉しいわ」


 そういうと、私やオリーブの苗木をざっと見てくれたらしい。アデルは何が必要なのか聞いて確認することなく、町まで行く準備をしていた。道中の護衛は必要ないと伝言して許可を申出した。そのままアデルは馬で駆けて町までいくようだ。私は馬から降りて、壊れた荷馬車の確認をした。
 元々軍人であるアデルは、こういったことにはなれているのか、報告相談がとても手際もいい。私が指示を出すこともなく、次なる一歩がうまくかみ合っている。


「あの、すみません……荷馬車を……その」
「いいわよ。重い荷物を運んでくれているのだもの。無理はせず、休憩も取りましょう。もうすぐ約束している場所だから、慌てなくていいわ」


 そう言って微笑むと、ホッとしたように御者は頬を緩めた。


「……アンナリーゼ様!」


 少し先のところから声がかかり驚いた。こんな場所で誰かに会えるとは思ってもみなかったから。
 そこには、少々めかしこんだ黒の貴族……バニッシュ子爵一行が通りかかった。久しぶりに会うエール。驚いているようで、何をしているのですか?と聞いてきた。


「何って、言えないわ」


 馬車から降りてくるエールに二ッと笑うだけで詳細は言わない。ただ、たくさんの苗木を運んでいる私たちはとにかく目立つのだろう。


「また、新しいことを始めたんですね?この間の香水といい、新しいことを取り入れるのが早いですね。それにしても見たことのない木ですね?」
「興味があっても言わないわよ?」

「なら、着いて行ってもいいですか?」
「ダメよ。アンバー領の貴重な財源になるかもしれないのだから、悪影響は遠慮してほしいの」
「ひどい言われようだな?」


 クスクス笑うエールに、そうかしら?と小首を傾げておく。友人として申し出てくれたとしても、今は、まだ、事業を始めたばかりなので受け入れが、定期的に出来る状態ではなかった。


「わかっているわ。アデルが帰ってくるまでのあいだなら、話し相手になってあげる」


 そう言って木陰で休憩を始めると、みなも少し休むことにしたのだろう。一息入れているように見えた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

『伯爵令嬢 爆死する』

三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。 その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。 カクヨムでも公開しています。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

「あなたの好きなひとを盗るつもりなんてなかった。どうか許して」と親友に謝られたけど、その男性は私の好きなひとではありません。まあいっか。

石河 翠
恋愛
真面目が取り柄のハリエットには、同い年の従姉妹エミリーがいる。母親同士の仲が悪く、二人は何かにつけ比較されてきた。 ある日招待されたお茶会にて、ハリエットは突然エミリーから謝られる。なんとエミリーは、ハリエットの好きなひとを盗ってしまったのだという。エミリーの母親は、ハリエットを出し抜けてご機嫌の様子。 ところが、紹介された男性はハリエットの好きなひととは全くの別人。しかもエミリーは勘違いしているわけではないらしい。そこでハリエットは伯母の誤解を解かないまま、エミリーの結婚式への出席を希望し……。 母親の束縛から逃れて初恋を叶えるしたたかなヒロインと恋人を溺愛する腹黒ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:23852097)をお借りしております。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

処理中です...