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天気もいいしⅡ
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動きやすい格好でレナンテに跨る。今日は私とアデルが案内役で、目的地までに人を集める役目もあるので、一泊二日の工程で進むことになった。
「アンナ様、お久しぶりですね?」
私の隣に馬でつけてきたアデルが話しかけてきた。領地に戻ってから、お役目が回ってくるまで、私のところには顔を出してこなかったので久しぶりであった。
「帰ってきてから、全然顔を合わせなかったね?どこに引っ込んでいたのかなぁ?アデルくんは」
「……なんですか?そのやらしい顔は!」
「そんなことないですよ?まぁ、アデルがどこで誰の手伝いをしているかなんて、私の情報網を使わなくてもわかるんだけどね?」
「なら、なにも言わないでくださいよ。少しずつ距離も縮まってきていい感じなんですから!」」
「それって、アデルが思っているだけよね?」
チラリとアデルを見てから、興味なさげに前を向く。冬に差し掛かっているとはいえ、天気がいいおかげか、ほんのり暖かい気温の中、リアンのことを思い浮かべる。リアンは、今、侍女の任をとき、コーコナにいた孤児たちの面倒を見てくれている。そんなリアンに想いを寄せているアデルは、今、振り向てもらえるように頑張っているところであった。鬼のいぬ間にならぬ、アンナのいぬ間に、リアンと仲良くなろう作戦で、領地の屋敷内にある孤児院に足しげく通っているのは知っていた。仮にも主人である私が帰った日くらい、出迎えて欲しいところではあるのだか、全くこちらには見向きもしていなかった。
「言っておくけど、私がアデルを拾わなかったら、こんなことも起こらなかったんだからね?感謝くらいしてくれてもいいと思うし、もう少し、私に感心を向けてくれてもいいと思うの」
「アンナ様には、ご注文のとおり振り回されますから、領地の屋敷にいるときだけは、少しでもリアンの側にいてはダメですか?」
「いいけど、あんまりしつこいと嫌われるわよ?」
そんなことありませんよと余裕ぶって笑うので、ふーんとだけ返事をする。何か仕返しをと考えて、ぼんやり前を見ていると、後ろから名を呼ばれたので振り返った。
アデルには見向きもせず、名を呼ぶ場所までむかった。すると、馬車が重みに耐えられなくなったのか、ミシミシと悲鳴をあげて、壊れたそうだ。どこからどう見ても動きそうにない馬車を見て、どうしようかな?と考える。隣に来たアデルが、大きなため息をつく。
「このあたり、大きな町には距離があるなぁ……修理をするにしても、今は難しいね?」
「確かに、どちらの道を選んだとしても地獄のようですね?」
「さて、どうしようかしら?」
アデルに向き直り、指示だ出す。これくらい、おさめろと視線を送るとコクリと頷いた。
それから、アデルが馬車の確認をしたあと、近づいてくる。
「アンナ様、次の町で馬車を借りてきます。それで、大丈夫そうですか?」
「えぇ、大丈夫。同じを事考えてくれたみたいで、嬉しいわ」
そういうと、私やオリーブの苗木をざっと見てくれたらしい。アデルは何が必要なのか聞いて確認することなく、町まで行く準備をしていた。道中の護衛は必要ないと伝言して許可を申出した。そのままアデルは馬で駆けて町までいくようだ。私は馬から降りて、壊れた荷馬車の確認をした。
元々軍人であるアデルは、こういったことにはなれているのか、報告相談がとても手際もいい。私が指示を出すこともなく、次なる一歩がうまくかみ合っている。
「あの、すみません……荷馬車を……その」
「いいわよ。重い荷物を運んでくれているのだもの。無理はせず、休憩も取りましょう。もうすぐ約束している場所だから、慌てなくていいわ」
そう言って微笑むと、ホッとしたように御者は頬を緩めた。
「……アンナリーゼ様!」
少し先のところから声がかかり驚いた。こんな場所で誰かに会えるとは思ってもみなかったから。
そこには、少々めかしこんだ黒の貴族……バニッシュ子爵一行が通りかかった。久しぶりに会うエール。驚いているようで、何をしているのですか?と聞いてきた。
「何って、言えないわ」
馬車から降りてくるエールに二ッと笑うだけで詳細は言わない。ただ、たくさんの苗木を運んでいる私たちはとにかく目立つのだろう。
「また、新しいことを始めたんですね?この間の香水といい、新しいことを取り入れるのが早いですね。それにしても見たことのない木ですね?」
「興味があっても言わないわよ?」
「なら、着いて行ってもいいですか?」
「ダメよ。アンバー領の貴重な財源になるかもしれないのだから、悪影響は遠慮してほしいの」
「ひどい言われようだな?」
クスクス笑うエールに、そうかしら?と小首を傾げておく。友人として申し出てくれたとしても、今は、まだ、事業を始めたばかりなので受け入れが、定期的に出来る状態ではなかった。
「わかっているわ。アデルが帰ってくるまでのあいだなら、話し相手になってあげる」
そう言って木陰で休憩を始めると、みなも少し休むことにしたのだろう。一息入れているように見えた。
「アンナ様、お久しぶりですね?」
私の隣に馬でつけてきたアデルが話しかけてきた。領地に戻ってから、お役目が回ってくるまで、私のところには顔を出してこなかったので久しぶりであった。
「帰ってきてから、全然顔を合わせなかったね?どこに引っ込んでいたのかなぁ?アデルくんは」
「……なんですか?そのやらしい顔は!」
「そんなことないですよ?まぁ、アデルがどこで誰の手伝いをしているかなんて、私の情報網を使わなくてもわかるんだけどね?」
「なら、なにも言わないでくださいよ。少しずつ距離も縮まってきていい感じなんですから!」」
「それって、アデルが思っているだけよね?」
チラリとアデルを見てから、興味なさげに前を向く。冬に差し掛かっているとはいえ、天気がいいおかげか、ほんのり暖かい気温の中、リアンのことを思い浮かべる。リアンは、今、侍女の任をとき、コーコナにいた孤児たちの面倒を見てくれている。そんなリアンに想いを寄せているアデルは、今、振り向てもらえるように頑張っているところであった。鬼のいぬ間にならぬ、アンナのいぬ間に、リアンと仲良くなろう作戦で、領地の屋敷内にある孤児院に足しげく通っているのは知っていた。仮にも主人である私が帰った日くらい、出迎えて欲しいところではあるのだか、全くこちらには見向きもしていなかった。
「言っておくけど、私がアデルを拾わなかったら、こんなことも起こらなかったんだからね?感謝くらいしてくれてもいいと思うし、もう少し、私に感心を向けてくれてもいいと思うの」
「アンナ様には、ご注文のとおり振り回されますから、領地の屋敷にいるときだけは、少しでもリアンの側にいてはダメですか?」
「いいけど、あんまりしつこいと嫌われるわよ?」
そんなことありませんよと余裕ぶって笑うので、ふーんとだけ返事をする。何か仕返しをと考えて、ぼんやり前を見ていると、後ろから名を呼ばれたので振り返った。
アデルには見向きもせず、名を呼ぶ場所までむかった。すると、馬車が重みに耐えられなくなったのか、ミシミシと悲鳴をあげて、壊れたそうだ。どこからどう見ても動きそうにない馬車を見て、どうしようかな?と考える。隣に来たアデルが、大きなため息をつく。
「このあたり、大きな町には距離があるなぁ……修理をするにしても、今は難しいね?」
「確かに、どちらの道を選んだとしても地獄のようですね?」
「さて、どうしようかしら?」
アデルに向き直り、指示だ出す。これくらい、おさめろと視線を送るとコクリと頷いた。
それから、アデルが馬車の確認をしたあと、近づいてくる。
「アンナ様、次の町で馬車を借りてきます。それで、大丈夫そうですか?」
「えぇ、大丈夫。同じを事考えてくれたみたいで、嬉しいわ」
そういうと、私やオリーブの苗木をざっと見てくれたらしい。アデルは何が必要なのか聞いて確認することなく、町まで行く準備をしていた。道中の護衛は必要ないと伝言して許可を申出した。そのままアデルは馬で駆けて町までいくようだ。私は馬から降りて、壊れた荷馬車の確認をした。
元々軍人であるアデルは、こういったことにはなれているのか、報告相談がとても手際もいい。私が指示を出すこともなく、次なる一歩がうまくかみ合っている。
「あの、すみません……荷馬車を……その」
「いいわよ。重い荷物を運んでくれているのだもの。無理はせず、休憩も取りましょう。もうすぐ約束している場所だから、慌てなくていいわ」
そう言って微笑むと、ホッとしたように御者は頬を緩めた。
「……アンナリーゼ様!」
少し先のところから声がかかり驚いた。こんな場所で誰かに会えるとは思ってもみなかったから。
そこには、少々めかしこんだ黒の貴族……バニッシュ子爵一行が通りかかった。久しぶりに会うエール。驚いているようで、何をしているのですか?と聞いてきた。
「何って、言えないわ」
馬車から降りてくるエールに二ッと笑うだけで詳細は言わない。ただ、たくさんの苗木を運んでいる私たちはとにかく目立つのだろう。
「また、新しいことを始めたんですね?この間の香水といい、新しいことを取り入れるのが早いですね。それにしても見たことのない木ですね?」
「興味があっても言わないわよ?」
「なら、着いて行ってもいいですか?」
「ダメよ。アンバー領の貴重な財源になるかもしれないのだから、悪影響は遠慮してほしいの」
「ひどい言われようだな?」
クスクス笑うエールに、そうかしら?と小首を傾げておく。友人として申し出てくれたとしても、今は、まだ、事業を始めたばかりなので受け入れが、定期的に出来る状態ではなかった。
「わかっているわ。アデルが帰ってくるまでのあいだなら、話し相手になってあげる」
そう言って木陰で休憩を始めると、みなも少し休むことにしたのだろう。一息入れているように見えた。
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