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どうやるつもり?

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 ジョージアに寄り添っている心地よい。この場所をいつか離れなくてはならないのかと思うと、残念でならなかった。


「どうかした?」
「いえ、私の力が弱くなってから、未来ってどれくらい変わってしまったのでしょう?」
「アンナはさ、断片的でも未来が見えているから、俺らより先のことを考えてしまうことも多いと思うんだ」
「確かに」
「でも、逆に明日をもわからない俺らにとって、今を生きてより良い明日を迎えるための選択をして、生活を続けているわけだよね」
「そうですね。私も、未来は見えてもは、そこは変わらないつもりではあるのですけど……」
「うーん、少し違う気がする。より良い明日を願ってはいるだろうけど、さらにより良い何年も先を見ているよ。アンナは、自身の最後まで知っているから、焦る気持ちもあるんじゃないのかな?」


 そうですか?とジョージアを見上げると頷く。焦らなくてもいいよって言ってくれるが、心の中で自問自答する。何度も何度もしつづけてきた質問。『本当にこれで大丈夫なの?』と。


「そんな顔しないで。どんなときでも、俺はアンナの味方だし、他にもいるだろう?」
「わかっています。みんなに助けられていることも」
「それなら安心だね。あんなに助けられていることもあるけど、アンナを助けていることもあると思うから。一人じゃないってことだけは、忘れないで。困ったことがあれば、助け合えばいい。そのための仲間なんでしょ?」
「……えぇ、そうですね。きっと、私に迷惑かけられるなんて、みんな何とも思っていませんから」
「あぁ、むしろ、次は何するの?って感じだもんね」


 クスクス笑うジョージア。アンバー領の改革で、私たちのことを把握してきてくれたようだ。


「領地は、イチアもいるからなんとかなりそうだけど、国の方はね?」
「そうですね。一枚岩どころか、何枚にも割れていますから」
「新興貴族は、第三勢力にだっけ?」
「大半は、うまみのあるゴールド公爵家の傘下だと思います。準男爵や男爵位は公爵がさせていますから」
「ゴールド公爵ね?どうやるつもり?内側の敵はなかなか強敵だと思うけど?」
「強敵くらいならなんとかなりそうですけどね……強いんですよ。私たちより遥かに」
「こっちは、公爵になって数年だしね。アンナは筆頭貴族なのにね」
「そんなこといって……本来なら、ジョージア様が筆頭貴族ですよね?」
「……面目ないけど、その役目は俺では難しいよ。アンナの腰巾着くらいには成れるだろうけどね」


 笑い始めるジョージアにもうと腕を叩くと痛いよ?と顔を顰める。それほど強く叩いたわけではないのに、酷いな……と呟くと、そうだねと微笑む。優しい微笑みに見惚れているとこちら顎をくいっとされてキスをする。

 ……おかえりと挨拶はしたけど、キスはしなかったな。

 目を瞑ると、ギュっと抱き寄せられる。さっきまで、真面目な話をしていたはずなのに……と頭の隅で考えていたが、少しだけ忘れることにした。


「……真面目な話、してたよね?ゴールド公爵攻略の話」
「ジョージア様がキスをしてきたのですけど?」
「先にアンナが甘えてきたんじゃない?」
「嫌ですか?なら……」
「嫌だなんて、とんでもない!奥様、できることなら、もう少しこちらへ」


 笑いながら、自身の膝の上に私を乗せ、はぁ……落ち着くと呟いている。


「どうかしたのですか?」
「ん?アンナがいるんだなって……甘い香りを嗅ぐと思えて」
「嗅がないでください!私、今日は……」
「いいよ。アンナはいつでもお菓子のような甘い香りがするから。同じ香水つけていても、するんだよね」
「……恥ずかしいので、辞めましょう」
「そう?じゃあ、ゴールド公爵の話をしようか?」


 お願いしますというと、夜会での話になった。終わりの夜会で話しかけてきた人物のことを思い出したようで、誰だっけ?と言っていた。


「ルチル・ゴールドですか?」
「あぁ、そうそう。ゴールド公爵の嫡男。あんまり素行がよくなって聞くけど、どうなの?」
「一般的な貴族令息って感じですよ?」
「一般的なね?例えば……夜遊びとか?」
「ジョージア様の身に覚えるあることばかりじゃないですかね?綺麗なお姉さんに囲まれるの好きですよね?」
「そんなことないよ?アンナがこうしてくれているだけで、満足なのに」
「そうですか?新婚当初、いろんな女性の香水の香りをさせていましたけど?」
「あれは、公のお付き合いでね?って、ルチル・ゴールドはもっと酷いってきくし!」


 いろいろありますよ?と言って、指折り数えていく。子どもはかろうじでいないらしいが、そこらじゅうで遊びまわっていると聞いていた。ジニーもそのうちの一人で、今回の命の危険が伴った。


「すごく感謝されていたよね?」
「一応、命の恩人ですからね。ルチル・ゴールド程度じゃ、公爵は落とせませんけど、陣営に積極的に加えなくとも、二重スパイのような形で情報提供はしてくれるようになるかもしれませんね。危なくなったら、我が子でも、殺すでしょうがね」
「……ゴールド公爵ならやりかねないね」


 今ある手札で、1番の手札ではあるが、たいしたものではないことも確かだ。我が子でもゴールド公爵は切り捨てられるのだから、どうしたものかと悩むのであった。
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