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大荷物
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「姫さんたちよく眠れた?」
大あくびをしながら、ウィルが食堂に降りてくる。朝は宿屋の食堂でご飯を食べれるよう手配をしていたので、私たちは向い合って食べているところだった。
「おおきなあくびね?」
「……ん、一応、俺、護衛だからさ……、ちょいちょい見回りとか行ってたんだよね?こういうちょっと町から離れたところって、悪いことしたくなる輩もいるからさ。あと、酔っ払いをうちに送って行ったりとか……」
「それはお疲れ様。屋敷に帰ったら、休んでいいわ」
「もちろん、そうする。それより、レナンテを走らせないでくれると助かる」
もう一度多くなあくびをしながら椅子にかけ、出された朝食をのそのそと食べている。夜襲なんてことも、訓練でしているはずなのだが、公都からも同じように警備についていてくれたようなので、さすがに限界がきたようだ。
仮眠をと言いたいところではあるが、屋敷に半日と少しで戻れるのであれば、その方がゆっくりできるだろう。
「早々に出ましょうか?ウィルも早く休みたいでしょ?」
「連日、アンナの周りを守ってくれているなんて……すまないね」
「……ジョージア様、姫さんを守っているわけじゃないよ。むしろ、今は、ジョージア様の護衛だな。姫さんは守らなくても大丈夫だし」
「俺の?でも、道中一緒に……」
「姫さんは護衛も付けずにふらふらとするから、ディルとデリアからのお達しで、必ず誰かが付き添うようにって……」
「……それって」
「姫さんは、何をしでかすかわからないから、監視役的なやつだね」
ふぉあと大きなあくびをひとつしたあと、食べ終わったと席をたつ。私たちも荷物は持ってきていたので、そのまま宿代を払いに向かった。
行ってらっしゃいと見送られ、私たちは屋敷に向かって馬を歩かせる。
「それにしても、向こう側ってあんなに広いんだな……俺、何度か行ったことはあるけど、驚いた」
「貝殻拾いね?」
「そう。あんなに奥の方は広がっているんだな。オリーブだっけ?」
「えぇ、そうよ」
「育つといいな。俺はあんまり好きじゃないけど、目新しいものが好きな人間も多いだろうから、どうなるか楽しみだな」
「好き嫌いがあるのよね。ジョージア様も好きじゃないですか?」
「オリーブオイルだっけ?」
はいと返事をすると城での夜会の軽食にたまにあるよね?というだけで、特に感想はない。食べたことがないということがわかる。
「一度、食べてみてくださいよ!きっと気に入ると思うので」
「女性陣は気に入っていたけど、セバスは普通って言ってなかったか?」
「普段使っている油とは、少し違うものね。まずは、市場で受け入れられる必要があるわね。どうするべきかは、これから考えるとして……」
「やっぱり、軽食で出すのがいいと思う。純度を変えて、料金も変える……いつもの手法だな」
「そうね。他に何かあればいいんだけど……いい案あるかしら?」
「茶会を開くのは?」
ジョージアが言うとあぁ!と思わず声がでる。
公爵家に嫁いできてから、お茶会を開いたことがなく、すっかり存在を忘れていた。
「お茶会という存在がすっかり抜けてしまいました」
「昨日、秘密のお茶会の話をしていたからね。アンナがお茶会をすると言えば、そこそこ人が集まるだろうし、そこで、また、例のごとく……」
「わかりました。手配いたしましょう。あまり人を集めたくない気もするのですが……公都で準備を進めますね?」
「次の社交の季節に向かってだね」
えぇと頷くと、デリアも復職しているころだろうから任せるといえば、それがいいと頷いてくれる。アンバー領へ来たがってはいるのだが、まだ、子どもが小さい。母親と離すにはしのびなくあちらでの仕事はないものかと考えていたところだ。公爵家のおもてなしをするにあたっては、私の手となり足となり動いてもらわないといけない。私以上に私を知っているデリアであれば、お茶会の準備などすぐに出来てしまうことだろう。
それからは、お茶会の話をする。どんな催し物があればいいか、どんな料理を出すか、アンバー公爵家らしいものがいい。そうすると、公が来たいと言い出しそうだと話しているうちに領地の屋敷へとついた。
「ずいぶん、大荷物だなぁ……」
「あれは、オリーブの苗木かしら?」
「と、いうことは……もうきたのか?あの二人」
「そういうことね?」
急ぎましょうと屋敷へと向かう。厩舎まで行き馬を頼んだあと、三人が中へ入ると、そこには、セバスやイチアが談笑しているところであった。
「早かったのね?」
私の問いかけに、振り向いたルーイがぺこりと頭を下げた。
「遅くなってすみません」
「ぜんぜん!遅くなんてないわ。今まで、私たちオリーブを植える予定の場所を見に行ってたの」
「決めてあるのですか?」
「もちろん!苗木も持ってきてくれることもわかっていたから、詳しい人に相談しに行っていたの」
「そうだったんですか。それで、どうですか……?」
「うん、大丈夫そう。苗木をすぐには植えられそうにはないんだけど……」
「土の問題ですね?それでも、なんとかなるって算段なら……よかった」
ルーイはホッとしたように微笑んだ。状況の説明をしたいと執務室へ来るように案内をする。窓から見える馬車に乗ったオリーブの苗木が、エルドアでした約束より思ったより多く感じるのは木のせいではないだろうと、こっそり馬車の数を数えたのであった。
大あくびをしながら、ウィルが食堂に降りてくる。朝は宿屋の食堂でご飯を食べれるよう手配をしていたので、私たちは向い合って食べているところだった。
「おおきなあくびね?」
「……ん、一応、俺、護衛だからさ……、ちょいちょい見回りとか行ってたんだよね?こういうちょっと町から離れたところって、悪いことしたくなる輩もいるからさ。あと、酔っ払いをうちに送って行ったりとか……」
「それはお疲れ様。屋敷に帰ったら、休んでいいわ」
「もちろん、そうする。それより、レナンテを走らせないでくれると助かる」
もう一度多くなあくびをしながら椅子にかけ、出された朝食をのそのそと食べている。夜襲なんてことも、訓練でしているはずなのだが、公都からも同じように警備についていてくれたようなので、さすがに限界がきたようだ。
仮眠をと言いたいところではあるが、屋敷に半日と少しで戻れるのであれば、その方がゆっくりできるだろう。
「早々に出ましょうか?ウィルも早く休みたいでしょ?」
「連日、アンナの周りを守ってくれているなんて……すまないね」
「……ジョージア様、姫さんを守っているわけじゃないよ。むしろ、今は、ジョージア様の護衛だな。姫さんは守らなくても大丈夫だし」
「俺の?でも、道中一緒に……」
「姫さんは護衛も付けずにふらふらとするから、ディルとデリアからのお達しで、必ず誰かが付き添うようにって……」
「……それって」
「姫さんは、何をしでかすかわからないから、監視役的なやつだね」
ふぉあと大きなあくびをひとつしたあと、食べ終わったと席をたつ。私たちも荷物は持ってきていたので、そのまま宿代を払いに向かった。
行ってらっしゃいと見送られ、私たちは屋敷に向かって馬を歩かせる。
「それにしても、向こう側ってあんなに広いんだな……俺、何度か行ったことはあるけど、驚いた」
「貝殻拾いね?」
「そう。あんなに奥の方は広がっているんだな。オリーブだっけ?」
「えぇ、そうよ」
「育つといいな。俺はあんまり好きじゃないけど、目新しいものが好きな人間も多いだろうから、どうなるか楽しみだな」
「好き嫌いがあるのよね。ジョージア様も好きじゃないですか?」
「オリーブオイルだっけ?」
はいと返事をすると城での夜会の軽食にたまにあるよね?というだけで、特に感想はない。食べたことがないということがわかる。
「一度、食べてみてくださいよ!きっと気に入ると思うので」
「女性陣は気に入っていたけど、セバスは普通って言ってなかったか?」
「普段使っている油とは、少し違うものね。まずは、市場で受け入れられる必要があるわね。どうするべきかは、これから考えるとして……」
「やっぱり、軽食で出すのがいいと思う。純度を変えて、料金も変える……いつもの手法だな」
「そうね。他に何かあればいいんだけど……いい案あるかしら?」
「茶会を開くのは?」
ジョージアが言うとあぁ!と思わず声がでる。
公爵家に嫁いできてから、お茶会を開いたことがなく、すっかり存在を忘れていた。
「お茶会という存在がすっかり抜けてしまいました」
「昨日、秘密のお茶会の話をしていたからね。アンナがお茶会をすると言えば、そこそこ人が集まるだろうし、そこで、また、例のごとく……」
「わかりました。手配いたしましょう。あまり人を集めたくない気もするのですが……公都で準備を進めますね?」
「次の社交の季節に向かってだね」
えぇと頷くと、デリアも復職しているころだろうから任せるといえば、それがいいと頷いてくれる。アンバー領へ来たがってはいるのだが、まだ、子どもが小さい。母親と離すにはしのびなくあちらでの仕事はないものかと考えていたところだ。公爵家のおもてなしをするにあたっては、私の手となり足となり動いてもらわないといけない。私以上に私を知っているデリアであれば、お茶会の準備などすぐに出来てしまうことだろう。
それからは、お茶会の話をする。どんな催し物があればいいか、どんな料理を出すか、アンバー公爵家らしいものがいい。そうすると、公が来たいと言い出しそうだと話しているうちに領地の屋敷へとついた。
「ずいぶん、大荷物だなぁ……」
「あれは、オリーブの苗木かしら?」
「と、いうことは……もうきたのか?あの二人」
「そういうことね?」
急ぎましょうと屋敷へと向かう。厩舎まで行き馬を頼んだあと、三人が中へ入ると、そこには、セバスやイチアが談笑しているところであった。
「早かったのね?」
私の問いかけに、振り向いたルーイがぺこりと頭を下げた。
「遅くなってすみません」
「ぜんぜん!遅くなんてないわ。今まで、私たちオリーブを植える予定の場所を見に行ってたの」
「決めてあるのですか?」
「もちろん!苗木も持ってきてくれることもわかっていたから、詳しい人に相談しに行っていたの」
「そうだったんですか。それで、どうですか……?」
「うん、大丈夫そう。苗木をすぐには植えられそうにはないんだけど……」
「土の問題ですね?それでも、なんとかなるって算段なら……よかった」
ルーイはホッとしたように微笑んだ。状況の説明をしたいと執務室へ来るように案内をする。窓から見える馬車に乗ったオリーブの苗木が、エルドアでした約束より思ったより多く感じるのは木のせいではないだろうと、こっそり馬車の数を数えたのであった。
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