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ちょっといいかなぁ?
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夕飯時より少し遅い時間に食堂へ入ったため、私たちが食べ終わるころには人はほとんどおらず、酔いつぶれた客が数人と私たちより遅く入って来た客たちがいるだけだった。
「急に静かになったな」
おかみさんの薦めで、スープ以外にも何点かの料理が運ばれてきた。揚げ物や焼き物は貴族社会ではなかなかお目にかかれないものばかりで、ジョージアの食が止まらなかった。
少しお腹をさするようにしながら、周りを見渡したらしい。
お水はいかが?とおかみさんが近寄ってくるので、少し話をしたいと切り出した。
「ちょっといいかなぁ?」
「なんでしょう?美人さんのお話なら、なんなりと」
冗談にクスクス笑いながら、お水を足してくれ、話をすることになった。
「おかみさんは、生まれもそだちもアンバーの人?」
「そうだよ。生まれも育ちもアンバーだけど、生まれも育ちも隣の村だ。結婚してこっちの町へ引っ越してきたんだよ」
「隣の村から……村だと、だいぶ貧しかったりした?」
「アンバー領はどこもかしこも似たようなものだったからね。他の領地へ出たことがないから、他は知らないけど、生活は凄く苦しかったよ」
「そっか……そうだよね」
アンバー領へ来たときのことを思い出す。酷い有様で、とてもじゃないが、公爵領だとは言えない状態であった。ゴミ掃除をしたのが、昨日のことのように懐かしく思い出していた。
「あぁ、そうだ。ここしばらくは、美人さんたちが見た通り、客もたくさん入るし、売り上げもいい。何より仕入れがすごく楽になった」
「それはどうして?」
「美人さんたちは知っているかわからないけど、公爵様に外国から奥様が来てね?その奥様がまぁやり手だ。ボロボロだった領地を改革してくださって……私たちは長年、領主に見捨てられたんだとばかり思っていたからね。町や村を綺麗にしているんだって聞いたとき、涙が出るほど嬉しかった」
「あぁ、あれだな。あれ。俺もその場に参加してた!」
「おや、お兄さんもいたのかい?気が付かなかった」
「そうかもな。今よりずっとかボロきてたし」
「確かに。私らもそうだよ。あのとき先導してくれていた女の子が領主の奥様だって聞いたとき、ビックリしたわ」
「えっ?そんな話が出回っていたの?」
私はおかみさんの話に驚いていると、小声で知らぬは本人ばかりだな?とため息が聞こえて来た。
「出回るも何も、見たことのないお嬢さんにみなが正体を気にしてた。アンナリーゼ様という方らしいわ。私は、炊き出しのほうに参加させてもらっていたから、どんな人か見ていないんだけど、そうさね……美人さんのような人だって聞いているよ。気立てのいいハッキリものを言って、愚痴はこぼさない。公爵様とは政略結婚だったって聞いて気の毒に思ったもんだ」
「どこらへんが気の毒なの?」
「政略結婚だっていうことかしら?こんな領地に嫁いでこないといけないなんて、災難だと思う。私たちにとっては、女神のような存在だけどね?公爵様は、本当に素晴らしい方を夫人に迎えられたとそこだけは評価しているのよ!」
ジョージアが私の手をギュっと握ってくる。ジョージアがした領地への指示は、決して間違ったものではなかった。資金も投入すべき場所へしていたし、きちんと評価されるべきものだ。ただ、事情が多かっただけで、今は、どうすることも出来ない領民からの信用を私という存在で繋ぎとめている。
「そうなんだ。私は政略結婚も領地のお掃除も嫌だって思ったことないわ。領民は本当に大変だったと思うけど……今あるのも、みながもう一度、領主である私を信じて立ち上がってくれたおかげだと思うの」
「……?」
「私、アンバー公爵です。お話聞けて嬉しかったわ。本当は、貴族である私たちが、領民へ謝らないといけないのに、私の手を取ってくれたこと、本当に嬉しかったの」
「……公爵様?じゃあ、あの……私たちを助けてくださった……?」
「私は何もしていないわ。少し動いただけで、実際は、領民のみんなが領地を愛してくれていたから、成り立っているのよ。ありがとうは私の方だわ!」
おかみさんの手をとりありがとうと伝えると、厨房へ聞こえるように声をかける。中から大慌てで出てきた小太りの料理人は、何事か!と血相を変えて出てきた。私のことを見知っているらしく、「公爵様」と呟いた。
「こんなきたねぇ店によく来てくれたものです。ありがとうございます」
「そんなことないよ!料理も美味しかったし!おかみさんはすごく上手で、いっぱい食べちゃった」
「そう言っていただけると、嬉しいです」
「いつも、領地に出るときは、なるべく領民に話を聞くようにしているんだけど、困っていることとかない?」
料理人とおかみさんは顔を見合わせてからこちらを見た。その顔には笑顔があり、何もございませんと返事が返ってくる。
「本当に?」
「えぇ、本当にです。しいと言えば……いつまも、この領地でいらしてくだされば、どんなに嬉しいか」
「それなら……私、叶えられそう。私の命尽きるまで、アンバー公爵だもの。ジョージア様に捨てられたとしても、私がここの領主なのは変わらないわ!至らぬところも多いだろうけど、よろしくね!」
ニッコリ笑いかけると、嬉しそうにしながら、何度も何度も二人が頷いてくれた。領地のこと聞けたら……と寄ったはずが、嬉しい話を聞けて満足だった。
「急に静かになったな」
おかみさんの薦めで、スープ以外にも何点かの料理が運ばれてきた。揚げ物や焼き物は貴族社会ではなかなかお目にかかれないものばかりで、ジョージアの食が止まらなかった。
少しお腹をさするようにしながら、周りを見渡したらしい。
お水はいかが?とおかみさんが近寄ってくるので、少し話をしたいと切り出した。
「ちょっといいかなぁ?」
「なんでしょう?美人さんのお話なら、なんなりと」
冗談にクスクス笑いながら、お水を足してくれ、話をすることになった。
「おかみさんは、生まれもそだちもアンバーの人?」
「そうだよ。生まれも育ちもアンバーだけど、生まれも育ちも隣の村だ。結婚してこっちの町へ引っ越してきたんだよ」
「隣の村から……村だと、だいぶ貧しかったりした?」
「アンバー領はどこもかしこも似たようなものだったからね。他の領地へ出たことがないから、他は知らないけど、生活は凄く苦しかったよ」
「そっか……そうだよね」
アンバー領へ来たときのことを思い出す。酷い有様で、とてもじゃないが、公爵領だとは言えない状態であった。ゴミ掃除をしたのが、昨日のことのように懐かしく思い出していた。
「あぁ、そうだ。ここしばらくは、美人さんたちが見た通り、客もたくさん入るし、売り上げもいい。何より仕入れがすごく楽になった」
「それはどうして?」
「美人さんたちは知っているかわからないけど、公爵様に外国から奥様が来てね?その奥様がまぁやり手だ。ボロボロだった領地を改革してくださって……私たちは長年、領主に見捨てられたんだとばかり思っていたからね。町や村を綺麗にしているんだって聞いたとき、涙が出るほど嬉しかった」
「あぁ、あれだな。あれ。俺もその場に参加してた!」
「おや、お兄さんもいたのかい?気が付かなかった」
「そうかもな。今よりずっとかボロきてたし」
「確かに。私らもそうだよ。あのとき先導してくれていた女の子が領主の奥様だって聞いたとき、ビックリしたわ」
「えっ?そんな話が出回っていたの?」
私はおかみさんの話に驚いていると、小声で知らぬは本人ばかりだな?とため息が聞こえて来た。
「出回るも何も、見たことのないお嬢さんにみなが正体を気にしてた。アンナリーゼ様という方らしいわ。私は、炊き出しのほうに参加させてもらっていたから、どんな人か見ていないんだけど、そうさね……美人さんのような人だって聞いているよ。気立てのいいハッキリものを言って、愚痴はこぼさない。公爵様とは政略結婚だったって聞いて気の毒に思ったもんだ」
「どこらへんが気の毒なの?」
「政略結婚だっていうことかしら?こんな領地に嫁いでこないといけないなんて、災難だと思う。私たちにとっては、女神のような存在だけどね?公爵様は、本当に素晴らしい方を夫人に迎えられたとそこだけは評価しているのよ!」
ジョージアが私の手をギュっと握ってくる。ジョージアがした領地への指示は、決して間違ったものではなかった。資金も投入すべき場所へしていたし、きちんと評価されるべきものだ。ただ、事情が多かっただけで、今は、どうすることも出来ない領民からの信用を私という存在で繋ぎとめている。
「そうなんだ。私は政略結婚も領地のお掃除も嫌だって思ったことないわ。領民は本当に大変だったと思うけど……今あるのも、みながもう一度、領主である私を信じて立ち上がってくれたおかげだと思うの」
「……?」
「私、アンバー公爵です。お話聞けて嬉しかったわ。本当は、貴族である私たちが、領民へ謝らないといけないのに、私の手を取ってくれたこと、本当に嬉しかったの」
「……公爵様?じゃあ、あの……私たちを助けてくださった……?」
「私は何もしていないわ。少し動いただけで、実際は、領民のみんなが領地を愛してくれていたから、成り立っているのよ。ありがとうは私の方だわ!」
おかみさんの手をとりありがとうと伝えると、厨房へ聞こえるように声をかける。中から大慌てで出てきた小太りの料理人は、何事か!と血相を変えて出てきた。私のことを見知っているらしく、「公爵様」と呟いた。
「こんなきたねぇ店によく来てくれたものです。ありがとうございます」
「そんなことないよ!料理も美味しかったし!おかみさんはすごく上手で、いっぱい食べちゃった」
「そう言っていただけると、嬉しいです」
「いつも、領地に出るときは、なるべく領民に話を聞くようにしているんだけど、困っていることとかない?」
料理人とおかみさんは顔を見合わせてからこちらを見た。その顔には笑顔があり、何もございませんと返事が返ってくる。
「本当に?」
「えぇ、本当にです。しいと言えば……いつまも、この領地でいらしてくだされば、どんなに嬉しいか」
「それなら……私、叶えられそう。私の命尽きるまで、アンバー公爵だもの。ジョージア様に捨てられたとしても、私がここの領主なのは変わらないわ!至らぬところも多いだろうけど、よろしくね!」
ニッコリ笑いかけると、嬉しそうにしながら、何度も何度も二人が頷いてくれた。領地のこと聞けたら……と寄ったはずが、嬉しい話を聞けて満足だった。
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