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お気に召したようで
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馬に揺られて帰るには、時間が足りなかった。暗くなったので、近くの宿屋で休むことにする。ジョージアと私の部屋とウィルの部屋を別にとった。
「ご飯を食べに行きましょうか?」
宿屋は夕食の時刻を済んでいたため、馬たちを預け、ウィルを誘って食堂へと向かう。町の食堂へ向かうのは、ジョージアは初めてのようで、私の後ろに恐々とついてくる。ウィルは逆に私と冗談を言いながらお店に入れば、いらっしゃいより先にあら、いい男とお店のおかみさんが頬を染めている。
私は、ウィルとジョージア様を交互に見つめ、おかみさんにニコリと笑った。
「どっちのほうがいい男?」
「どっちも捨てがたいね?こっちのお兄さんが体つきもいいし、逞しくて、守ってくれそうだ。そっちのお兄さんは頭のよさそうな育ちのいい感じがするね?貴族の令息か何かかな?」
「ふふっ、おかみさんは、見る目があるんだね?でも、どっちも私のだから、あげないよ?」
ジョージアとウィルのあいだに入って、両方の腕を二人の腕に絡ませた。そりゃいいと大笑いしているおかみさんが、席を案内してくれた。
それぞれ椅子にかけると、注文をとっていくの、店で1判美味しいのちょうだい!というと、あいよ!と去っていく。
去り際に、おかみさんがクスクス笑いながら、それより、お嬢さんがとびっきりのべっぴんだね?と褒めてくれた。
ありがとう!というと、サービスだよ!と葡萄酒を三人分置いてくれる。
「姫さんは飲めないだろ?」
「……おかみさん、ごめんね。私、お酒は弱くて……」
「あらあら、それなら、別のとびっきりを出してあげるよ!」
私の前に置かれた葡萄酒をウィルがひょいっと飲んでしまった。私はそれを見つめていたのだが、何も言わないジョージアを不思議に思い、そちらを向く。あまりこういう食堂へ行くことがないので、どうやら戸惑っているようだ。
「ジョージア様、せっかくいただいたのですから飲んでください。ウィルなんてもう二杯も飲んでしまいましたよ?」
「自分が治める領地だと言われてきたのに、いざ、その生活圏内に入ると、慣れなくて……」
「公爵っていうのは、公族の一員と言ってもいいくらいの地位ですからね?なかなか、こんな場所へ来ることなんてないでしょうに」
「ウィル!」
「あぁ、そうだな。公都では、街を出歩くこともあるが、領地ではあまり出歩かないから、こうしているのが不思議なくらいだ」
「俺なんて、領主の息子だっていっても、子爵ですからね。しかも爵位が継げない三男じゃ、平民と変わらない。貴族の気取った料理より、こういうがやがやしているところの方が、落ち着きますよ。姫さんもそうじゃないの?」
ウィルの言葉に頷くと、意外そうにしている。私も侯爵家の娘と言っても、型どおりではなかったので、トワイス国の王都でもフレイゼン領でも出歩くことが多く、町の食堂を訪れることも多い。ここでは、たくさんの町の人の声も聞けるので、こういう機会を重宝していたりもする。
おかみさんがほこほこと温かそうな料理を運んできてくれるので、思わず頬が緩んだ。
「おいしそう!」
「まだ、食べてないのにかい?」
「においだけでわかるよ!絶対おいしいって。さっきまで馬で走っていたから、体が冷えてるし、嬉しいわ!」
どうぞと目の前に置かれたお皿から湯気がまだ立っていた。
「これはシチュー?」
「ちょっと違うけど、似たようなものかなぁ?領主様が養豚場を作っただろう?」
「うん、確かね?」
「そこで出来る豚をじっくり煮詰めてとろっとろにしてあるんだ。味はシンプルに塩だけだけど、これがかなりうまい。ブタからのうまみに野菜の甘さも相まって、最高の一品だよ!」
ジョージアの前にもう一皿置き、ウィルの分を取りに向かう。お皿以外に、私にとっておきの飲み物を持ってきてくれ、そのあとパンを置いてくれた。
「焼きたてのパンだから、冷めないうちにどうぞ召し上がれ!」
早速スプーンをブタ目掛けて差すと、崩れるように半分になった。それを口に入れると、溶けてなくなるようだった。
「おいひぃー!」
「そうかいそうか。嬉しいね!」
「とってもおいしいわ!ジョージア様もウィルも早く食べてみて!」
私に促され、まず、ウィルが口に運んだ。そちらも口の中で溶けていったようで、驚いた表情でこちらをみた。それに促されるように、ジョージアも口に運ぶ。屋敷で出された者以外をほとんど食べたことがないジョージアにとっても驚きのうまさだったのだろう。口に運ぶスピードが早く、すぐに一皿無くなってしまった。もうひとつと頼むので、おかみさんは嬉しそうに厨房に取りに行ってくれた。
「こんなにおいしいものを食べたのは、初めてかもしれない」
「そうなのですか?一般的にある料理だとは思いますけど……喜んでもらえたなら、よかったです。ウィルもね?」
「満足だ。けど、もう1杯、いいかな?」
そう言って杯をあげるので頷くと、おかみさん!と呼んでいる。杯を見て、ジョージアの分の料理とウィルの葡萄酒を持ってきてくれる。
二杯目の料理も全て綺麗にたいらげ、お気に召してくれたようで、何よりだと、ジョージアに笑いかけた。
「ご飯を食べに行きましょうか?」
宿屋は夕食の時刻を済んでいたため、馬たちを預け、ウィルを誘って食堂へと向かう。町の食堂へ向かうのは、ジョージアは初めてのようで、私の後ろに恐々とついてくる。ウィルは逆に私と冗談を言いながらお店に入れば、いらっしゃいより先にあら、いい男とお店のおかみさんが頬を染めている。
私は、ウィルとジョージア様を交互に見つめ、おかみさんにニコリと笑った。
「どっちのほうがいい男?」
「どっちも捨てがたいね?こっちのお兄さんが体つきもいいし、逞しくて、守ってくれそうだ。そっちのお兄さんは頭のよさそうな育ちのいい感じがするね?貴族の令息か何かかな?」
「ふふっ、おかみさんは、見る目があるんだね?でも、どっちも私のだから、あげないよ?」
ジョージアとウィルのあいだに入って、両方の腕を二人の腕に絡ませた。そりゃいいと大笑いしているおかみさんが、席を案内してくれた。
それぞれ椅子にかけると、注文をとっていくの、店で1判美味しいのちょうだい!というと、あいよ!と去っていく。
去り際に、おかみさんがクスクス笑いながら、それより、お嬢さんがとびっきりのべっぴんだね?と褒めてくれた。
ありがとう!というと、サービスだよ!と葡萄酒を三人分置いてくれる。
「姫さんは飲めないだろ?」
「……おかみさん、ごめんね。私、お酒は弱くて……」
「あらあら、それなら、別のとびっきりを出してあげるよ!」
私の前に置かれた葡萄酒をウィルがひょいっと飲んでしまった。私はそれを見つめていたのだが、何も言わないジョージアを不思議に思い、そちらを向く。あまりこういう食堂へ行くことがないので、どうやら戸惑っているようだ。
「ジョージア様、せっかくいただいたのですから飲んでください。ウィルなんてもう二杯も飲んでしまいましたよ?」
「自分が治める領地だと言われてきたのに、いざ、その生活圏内に入ると、慣れなくて……」
「公爵っていうのは、公族の一員と言ってもいいくらいの地位ですからね?なかなか、こんな場所へ来ることなんてないでしょうに」
「ウィル!」
「あぁ、そうだな。公都では、街を出歩くこともあるが、領地ではあまり出歩かないから、こうしているのが不思議なくらいだ」
「俺なんて、領主の息子だっていっても、子爵ですからね。しかも爵位が継げない三男じゃ、平民と変わらない。貴族の気取った料理より、こういうがやがやしているところの方が、落ち着きますよ。姫さんもそうじゃないの?」
ウィルの言葉に頷くと、意外そうにしている。私も侯爵家の娘と言っても、型どおりではなかったので、トワイス国の王都でもフレイゼン領でも出歩くことが多く、町の食堂を訪れることも多い。ここでは、たくさんの町の人の声も聞けるので、こういう機会を重宝していたりもする。
おかみさんがほこほこと温かそうな料理を運んできてくれるので、思わず頬が緩んだ。
「おいしそう!」
「まだ、食べてないのにかい?」
「においだけでわかるよ!絶対おいしいって。さっきまで馬で走っていたから、体が冷えてるし、嬉しいわ!」
どうぞと目の前に置かれたお皿から湯気がまだ立っていた。
「これはシチュー?」
「ちょっと違うけど、似たようなものかなぁ?領主様が養豚場を作っただろう?」
「うん、確かね?」
「そこで出来る豚をじっくり煮詰めてとろっとろにしてあるんだ。味はシンプルに塩だけだけど、これがかなりうまい。ブタからのうまみに野菜の甘さも相まって、最高の一品だよ!」
ジョージアの前にもう一皿置き、ウィルの分を取りに向かう。お皿以外に、私にとっておきの飲み物を持ってきてくれ、そのあとパンを置いてくれた。
「焼きたてのパンだから、冷めないうちにどうぞ召し上がれ!」
早速スプーンをブタ目掛けて差すと、崩れるように半分になった。それを口に入れると、溶けてなくなるようだった。
「おいひぃー!」
「そうかいそうか。嬉しいね!」
「とってもおいしいわ!ジョージア様もウィルも早く食べてみて!」
私に促され、まず、ウィルが口に運んだ。そちらも口の中で溶けていったようで、驚いた表情でこちらをみた。それに促されるように、ジョージアも口に運ぶ。屋敷で出された者以外をほとんど食べたことがないジョージアにとっても驚きのうまさだったのだろう。口に運ぶスピードが早く、すぐに一皿無くなってしまった。もうひとつと頼むので、おかみさんは嬉しそうに厨房に取りに行ってくれた。
「こんなにおいしいものを食べたのは、初めてかもしれない」
「そうなのですか?一般的にある料理だとは思いますけど……喜んでもらえたなら、よかったです。ウィルもね?」
「満足だ。けど、もう1杯、いいかな?」
そう言って杯をあげるので頷くと、おかみさん!と呼んでいる。杯を見て、ジョージアの分の料理とウィルの葡萄酒を持ってきてくれる。
二杯目の料理も全て綺麗にたいらげ、お気に召してくれたようで、何よりだと、ジョージアに笑いかけた。
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