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オリーブの畑
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レナンテが機嫌よく駆ける。私も背に揺られ、風をきっていく。
「気持ちいいな……」
私もレナンテも生き生きとしていると、後ろから待って!と声がかかる。ジョージアもウィルもあまりにも距離が離れてしまったので焦って追いかけてくるが、まだ、距離があった。
木の下で二人を待っていると、やっと追いついてきた。
「……姫さん、早すぎ!レナンテをもうちょっとさぁ?」
「レナンテも久しぶりのお出かけだから、嬉しいんでしょ?それより、その馬たち、軍場でしょ?」
「そうだけど?」
「レナンテが特別な馬なんだろ?」
「そう思う……レナンテも軍馬だけど、特別だよね?」
「衰え知らずな馬だな」
レナンテを撫でると、私の手に擦り寄ってくる。懐いているように見えているだろうが、どちらかと言えば、認めてもらえたという方が正しいだろう。なんせ、自尊心の強い馬だから。
「レナンテ、本当、他のやつに懐かないよな?」
「ノクトは乗ってなかったか?」
珍しくジョージアとウィルの話があったようで、疲れた牡馬たちの首をかいてやっていた。
「そろそろ進んでもいいかしら?」
「……姫さん、待って!まだ、こいつら一息も着けてないから」
「そう言ったって……女の子であるレナンテが難なくかけられるのに、どうして……」
「レナンテは、特別なんだって!近衛の馬でもここまで体の強い馬はそうそういないから!」
「そうなのか?」
「当たり前です!レナンテは、近衛団長が乗るはずの馬だったんですから」
「認められなかったということか」
「ホント、じゃじゃ馬はじゃじゃ馬どおしで、気が合うんですかねぇ?」
「失礼ね!」
ウィルを睨むとレナンテもじろりとウィルの方を見ていた。
「姫さん、そっくり……」
大きくため息をついたところで、先に進むことになった。馬も小休止をとれたことで、多少、ホッとしているように見えるが、それもつかの間のことであった。
「姫さん、レナンテは歩かせて。俺らは駆け足にするから」
「わかったわ」
足並みを揃えるため、私を真ん中にジョージアとウィルが脇を固める。
「今日は何をしに行くの?」
「ヨハンのところで、麻薬に対応するものはないのかとか、蟲毒のことを聞こうかと。あとは、オリーブ畑の話かしら?」
「麻薬は、コーコナ領でのことか」
「そうね。コーコナだけでは無くて、その周辺にも広がっていたようね」
「ヨハンもコーコナで育てていたよな?」
「あれは、痛み止めようとしてね。ちゃんと分量も決まっているわ」
「どういうときに使うんだい?」
「詳しくは知らないですけど、病の進行が進んで治療が出来ず、痛みが出てきたときとか、手足の切断とかの激痛を伴うときとからしいです。詳しくはヨハンへ」
ヨハンに教えてもらった内容をそのままジョージアに伝えると、感心していた。私が使うものではないので、あまり馴染みがない。
「万能解毒剤で麻薬の中毒って治るの?」
「治るとは言えないらしいよ。緩和させるみたいな効果があるとは聞いているわ」
「緩和か。エルドアにありったけのを置いてきたじゃん?」
「えぇ、そうね。あれ、飲み切ったら、王様は元に戻るの?」
エルドアの王を思い出し、首を横に振る。多少なりの回復はあるだろう。薬を断つことでもしかしたらもっと大変なことになるかもしれない。
今は、王太子が代わりに政治が出来るのだから、正直なところ、復権を願っているものは少ないのではないかと仮説を話したころには、ヨハンの研究所の前までこれた。
助手にヨハンがいるか確認をすると、研究室に籠っているそうだ。
私は案内をすると申し出てくれた見知らぬ助手に断りをいれ、勝手にヨハンの部屋へと入って行く。私を見て、ヨハンが大きなため息をついている。お互い、顔を合わせたくない人物……と、笑うしかなかった。
「ヨハン、話を聞いてほしいのだけど?」
「アンナ様の話なんて聞いたら最後。とんでもないことに巻き込まれますから、遠慮します」
「遠慮しないで!」
ヨハンに睨まれたが、怯むことなく足の文立て場もない部屋の中に自身が座る場所を作って腰掛けた。
「それで?」
「麻薬と蟲毒のことと、オリーブの話を……」
「麻薬も蟲毒に対する対策もなにもないよ。オリーブって何?今度は、何を始めるんだ?」
「オリーブオイルを作りたくて。エルドアへ行ったとき、見つけたの」
「確かに特産品だったな。それで、どこで作るつもり?土地はあっても、適さない」
「んーやっぱりそうなの?」
「まぁ、それは、やってみないとってところはあるけど、領地内では難しい」
「じゃあ、地底湖の先ならどう?」
海のある場所のことをいうと、ふむと考え始めた。何か、思いついたのだろう。
「ここからも近いな。あっちの土地なら、あるいは……。調べてみるか?」
「お願いできる?オリーブの植樹……私、成功させたいわ!」
「成功させたくないものがあるなら、それを逆に教えてくれ」
「……それは、ないわね?成功することを願うことが多いもの」
「まぁいい。それで、いつからいくんだ?」
「今からでも行ってくれるなら、嬉しいかな?」
ニコニコとヨハンに笑顔を向けると、相当な不満があるらしく表情にでている。新しいことをするつもりだということに多少機嫌がなおったのか、嬉しそうに出かける準備を整えている。私も男装に着替えて、地底湖の向こう側目掛けて、私たちは歩き始めた。
「気持ちいいな……」
私もレナンテも生き生きとしていると、後ろから待って!と声がかかる。ジョージアもウィルもあまりにも距離が離れてしまったので焦って追いかけてくるが、まだ、距離があった。
木の下で二人を待っていると、やっと追いついてきた。
「……姫さん、早すぎ!レナンテをもうちょっとさぁ?」
「レナンテも久しぶりのお出かけだから、嬉しいんでしょ?それより、その馬たち、軍場でしょ?」
「そうだけど?」
「レナンテが特別な馬なんだろ?」
「そう思う……レナンテも軍馬だけど、特別だよね?」
「衰え知らずな馬だな」
レナンテを撫でると、私の手に擦り寄ってくる。懐いているように見えているだろうが、どちらかと言えば、認めてもらえたという方が正しいだろう。なんせ、自尊心の強い馬だから。
「レナンテ、本当、他のやつに懐かないよな?」
「ノクトは乗ってなかったか?」
珍しくジョージアとウィルの話があったようで、疲れた牡馬たちの首をかいてやっていた。
「そろそろ進んでもいいかしら?」
「……姫さん、待って!まだ、こいつら一息も着けてないから」
「そう言ったって……女の子であるレナンテが難なくかけられるのに、どうして……」
「レナンテは、特別なんだって!近衛の馬でもここまで体の強い馬はそうそういないから!」
「そうなのか?」
「当たり前です!レナンテは、近衛団長が乗るはずの馬だったんですから」
「認められなかったということか」
「ホント、じゃじゃ馬はじゃじゃ馬どおしで、気が合うんですかねぇ?」
「失礼ね!」
ウィルを睨むとレナンテもじろりとウィルの方を見ていた。
「姫さん、そっくり……」
大きくため息をついたところで、先に進むことになった。馬も小休止をとれたことで、多少、ホッとしているように見えるが、それもつかの間のことであった。
「姫さん、レナンテは歩かせて。俺らは駆け足にするから」
「わかったわ」
足並みを揃えるため、私を真ん中にジョージアとウィルが脇を固める。
「今日は何をしに行くの?」
「ヨハンのところで、麻薬に対応するものはないのかとか、蟲毒のことを聞こうかと。あとは、オリーブ畑の話かしら?」
「麻薬は、コーコナ領でのことか」
「そうね。コーコナだけでは無くて、その周辺にも広がっていたようね」
「ヨハンもコーコナで育てていたよな?」
「あれは、痛み止めようとしてね。ちゃんと分量も決まっているわ」
「どういうときに使うんだい?」
「詳しくは知らないですけど、病の進行が進んで治療が出来ず、痛みが出てきたときとか、手足の切断とかの激痛を伴うときとからしいです。詳しくはヨハンへ」
ヨハンに教えてもらった内容をそのままジョージアに伝えると、感心していた。私が使うものではないので、あまり馴染みがない。
「万能解毒剤で麻薬の中毒って治るの?」
「治るとは言えないらしいよ。緩和させるみたいな効果があるとは聞いているわ」
「緩和か。エルドアにありったけのを置いてきたじゃん?」
「えぇ、そうね。あれ、飲み切ったら、王様は元に戻るの?」
エルドアの王を思い出し、首を横に振る。多少なりの回復はあるだろう。薬を断つことでもしかしたらもっと大変なことになるかもしれない。
今は、王太子が代わりに政治が出来るのだから、正直なところ、復権を願っているものは少ないのではないかと仮説を話したころには、ヨハンの研究所の前までこれた。
助手にヨハンがいるか確認をすると、研究室に籠っているそうだ。
私は案内をすると申し出てくれた見知らぬ助手に断りをいれ、勝手にヨハンの部屋へと入って行く。私を見て、ヨハンが大きなため息をついている。お互い、顔を合わせたくない人物……と、笑うしかなかった。
「ヨハン、話を聞いてほしいのだけど?」
「アンナ様の話なんて聞いたら最後。とんでもないことに巻き込まれますから、遠慮します」
「遠慮しないで!」
ヨハンに睨まれたが、怯むことなく足の文立て場もない部屋の中に自身が座る場所を作って腰掛けた。
「それで?」
「麻薬と蟲毒のことと、オリーブの話を……」
「麻薬も蟲毒に対する対策もなにもないよ。オリーブって何?今度は、何を始めるんだ?」
「オリーブオイルを作りたくて。エルドアへ行ったとき、見つけたの」
「確かに特産品だったな。それで、どこで作るつもり?土地はあっても、適さない」
「んーやっぱりそうなの?」
「まぁ、それは、やってみないとってところはあるけど、領地内では難しい」
「じゃあ、地底湖の先ならどう?」
海のある場所のことをいうと、ふむと考え始めた。何か、思いついたのだろう。
「ここからも近いな。あっちの土地なら、あるいは……。調べてみるか?」
「お願いできる?オリーブの植樹……私、成功させたいわ!」
「成功させたくないものがあるなら、それを逆に教えてくれ」
「……それは、ないわね?成功することを願うことが多いもの」
「まぁいい。それで、いつからいくんだ?」
「今からでも行ってくれるなら、嬉しいかな?」
ニコニコとヨハンに笑顔を向けると、相当な不満があるらしく表情にでている。新しいことをするつもりだということに多少機嫌がなおったのか、嬉しそうに出かける準備を整えている。私も男装に着替えて、地底湖の向こう側目掛けて、私たちは歩き始めた。
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