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話はまとまったことだし、少し出かけたいわ
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「よかったわ、二人の結婚式が領地で行えることになって。私たち、友人として、セバスの結婚を喜んでいるの」
「ありがとう。素直に嬉しいよ。アンナリーゼ様に祝ってもらえるなんてね?」
「呼びたい人がいたら、呼んでちょうだい。貴族用の屋敷はないけど、それなりのものを用意することにするから」
「うん、ありがとう。でも、僕らが呼ぶのは両親と文官仲間数人だけ。僕の友人もみんなここにいるから、わざわざ呼ぶ人もいないよ」
ニッコリ笑うセバスに、式への参加する人が誰なのか名簿を出してもらうようにだけ言った。領地前の道を通行止めにしてするのだ。盛大ではなくても、セバスたちにも来てくれた招待客も楽しめる1日にしたい。領主として、友人として、セバスのために出来ることは惜しまないつもりだった。
「その心遣いだけで嬉しいんだけど……」
「それじゃあ、私の気が済まないから、頼ってちょうだい。それだけのことを私たちにはしてくれているのだって、もっと自覚した方がいいよ?」
ねっ?と話すと、ダリアと見つめ合って頷くセバス。見ているこっちが赤面しそうだった。
「……じゃあ、お言葉に甘えることにするね。予算は言ったとおりだから、それの範囲でお願いできるかなぁ?」
「もちろんよ!うちから提供できるのは、料理人と領地で取れた食糧かしら?あぁ、大きなケーキも焼いてもらいましょ!」
「程々にお願いね?」
セバスが、若干の苦笑いをしながら、私やナタリーの顔を窺っている。こういう催し物を張り切って采配を取るのは、私とナタリーとニコライなので、念を押された形になった。
でも、もう遅い。私たちは入念に話合い、お金と知恵を出しあい、見事に手配済みであった。二人もあっと喜ぶような結婚式ができると考えていた。
「さて、話はまとまったことだし、少し出かけたいわ」
「アンナよ、ちょっと待て」
「どうかした?」
「もうひとつ重要なことを忘れておる」
なんだっけ?と小首を傾げていると、オリーブのことだとノクトに指摘される。そう言えば、先に遮ってまで、セバスたちの結婚の話をしたことを思い出した。
「オリーブのことね。忘れていたわ!」
「そんなことだろうと思っていた。それで、どうなっているんだ?」
オリーブのことについては、オリーブ農家から一人、オリーブオイルの抽出の技能をもつものが一人、エルドアから来ることを伝える。すでに手を打ってあったことにノクトは満足気に頷いている。
私だって、領主になってから遊びまわっているだけではない。ちゃんと、根回しもしてこれるのだと、ノクトを睨んだが、できることはすでに知っていると言われると、嬉しくなる。
「それくらい出来て当たり前だと思うかもしれないが、領主でそこまで事細かく考えることができるものは、少ない。アンナは、やはり、領主に向いているのだなぁ」
「そんなこと、言われたことなんてないけど?」
「姫さんは、自分がやりたいことをしているだけだから、ノクト……褒めない方がいい」
「ウィル、酷い!私のこと、そんなふうに思っていたの?」
「でも、実際そうだろう?」
反論できずにいると、そこがアンナのいいところでは?とジョージアが微笑んでくる。さすがね!と微笑み返すと、微妙な雰囲気になるのがわかった。
結婚して何年も経つし、離れている時間が長いけど……私の気持ちは変わらないわ。
「そんな空気になられると、困るのだけど?」
「それはこっちのセリフじゃない?そういうのは、二人のときにして。俺ら、姫さんたちのそういうのに免疫はあっても目の当たりにすると、なんとも言えない気持ちになるから」
「わかったわ。それより、オリーブの話だけど……」
「あぁ、あの新しく発見した土地にするのか?」
コクンと頷くと、イチアがさっと地図を開いてくれる。元の地図を使って、新しく作り直したものだ。公国へも提出済みで、領地の全体をみれるようなものであった。
「この部分にどうかと思うの」
指し示す場所にみなが注視する。元々領地として考えていなかった土地には、建物らしいものは何もない。雑木林があるので、ここを開拓したいと申し出た。すると、イチアが、もう少し先のほうを示す。そこは、人工的に植えられた林があると報告を受けていたばしょであった。
「こちらの方がいいかと。温かくないとダメなのですよね?」
「そうなの。少しでも温かみのあるところに植えることが必要だわ」
「それなら、ここの林を開拓した方がいい。木が必要な建物を建てる予定はないけど、このあたりの林の針葉樹は実にいい木材になるらしい」
「それなら、それをセバスたちの家にしてほしいわ!」
領地の屋敷でダリア共々一緒に住むと考えていたようだが、家を買うことになったというと、ジョージアとノクトは驚いていた。イチアは話を聞いていたようだったので、どこにするのですか?と尋ねていた。同じ地図をみながら、領主の屋敷に近い場所がいいと、ここらあたりと手で円を描いている。
その様子をみれば、現実味を帯びてきて、私の頬は緩むのであった。
「ありがとう。素直に嬉しいよ。アンナリーゼ様に祝ってもらえるなんてね?」
「呼びたい人がいたら、呼んでちょうだい。貴族用の屋敷はないけど、それなりのものを用意することにするから」
「うん、ありがとう。でも、僕らが呼ぶのは両親と文官仲間数人だけ。僕の友人もみんなここにいるから、わざわざ呼ぶ人もいないよ」
ニッコリ笑うセバスに、式への参加する人が誰なのか名簿を出してもらうようにだけ言った。領地前の道を通行止めにしてするのだ。盛大ではなくても、セバスたちにも来てくれた招待客も楽しめる1日にしたい。領主として、友人として、セバスのために出来ることは惜しまないつもりだった。
「その心遣いだけで嬉しいんだけど……」
「それじゃあ、私の気が済まないから、頼ってちょうだい。それだけのことを私たちにはしてくれているのだって、もっと自覚した方がいいよ?」
ねっ?と話すと、ダリアと見つめ合って頷くセバス。見ているこっちが赤面しそうだった。
「……じゃあ、お言葉に甘えることにするね。予算は言ったとおりだから、それの範囲でお願いできるかなぁ?」
「もちろんよ!うちから提供できるのは、料理人と領地で取れた食糧かしら?あぁ、大きなケーキも焼いてもらいましょ!」
「程々にお願いね?」
セバスが、若干の苦笑いをしながら、私やナタリーの顔を窺っている。こういう催し物を張り切って采配を取るのは、私とナタリーとニコライなので、念を押された形になった。
でも、もう遅い。私たちは入念に話合い、お金と知恵を出しあい、見事に手配済みであった。二人もあっと喜ぶような結婚式ができると考えていた。
「さて、話はまとまったことだし、少し出かけたいわ」
「アンナよ、ちょっと待て」
「どうかした?」
「もうひとつ重要なことを忘れておる」
なんだっけ?と小首を傾げていると、オリーブのことだとノクトに指摘される。そう言えば、先に遮ってまで、セバスたちの結婚の話をしたことを思い出した。
「オリーブのことね。忘れていたわ!」
「そんなことだろうと思っていた。それで、どうなっているんだ?」
オリーブのことについては、オリーブ農家から一人、オリーブオイルの抽出の技能をもつものが一人、エルドアから来ることを伝える。すでに手を打ってあったことにノクトは満足気に頷いている。
私だって、領主になってから遊びまわっているだけではない。ちゃんと、根回しもしてこれるのだと、ノクトを睨んだが、できることはすでに知っていると言われると、嬉しくなる。
「それくらい出来て当たり前だと思うかもしれないが、領主でそこまで事細かく考えることができるものは、少ない。アンナは、やはり、領主に向いているのだなぁ」
「そんなこと、言われたことなんてないけど?」
「姫さんは、自分がやりたいことをしているだけだから、ノクト……褒めない方がいい」
「ウィル、酷い!私のこと、そんなふうに思っていたの?」
「でも、実際そうだろう?」
反論できずにいると、そこがアンナのいいところでは?とジョージアが微笑んでくる。さすがね!と微笑み返すと、微妙な雰囲気になるのがわかった。
結婚して何年も経つし、離れている時間が長いけど……私の気持ちは変わらないわ。
「そんな空気になられると、困るのだけど?」
「それはこっちのセリフじゃない?そういうのは、二人のときにして。俺ら、姫さんたちのそういうのに免疫はあっても目の当たりにすると、なんとも言えない気持ちになるから」
「わかったわ。それより、オリーブの話だけど……」
「あぁ、あの新しく発見した土地にするのか?」
コクンと頷くと、イチアがさっと地図を開いてくれる。元の地図を使って、新しく作り直したものだ。公国へも提出済みで、領地の全体をみれるようなものであった。
「この部分にどうかと思うの」
指し示す場所にみなが注視する。元々領地として考えていなかった土地には、建物らしいものは何もない。雑木林があるので、ここを開拓したいと申し出た。すると、イチアが、もう少し先のほうを示す。そこは、人工的に植えられた林があると報告を受けていたばしょであった。
「こちらの方がいいかと。温かくないとダメなのですよね?」
「そうなの。少しでも温かみのあるところに植えることが必要だわ」
「それなら、ここの林を開拓した方がいい。木が必要な建物を建てる予定はないけど、このあたりの林の針葉樹は実にいい木材になるらしい」
「それなら、それをセバスたちの家にしてほしいわ!」
領地の屋敷でダリア共々一緒に住むと考えていたようだが、家を買うことになったというと、ジョージアとノクトは驚いていた。イチアは話を聞いていたようだったので、どこにするのですか?と尋ねていた。同じ地図をみながら、領主の屋敷に近い場所がいいと、ここらあたりと手で円を描いている。
その様子をみれば、現実味を帯びてきて、私の頬は緩むのであった。
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