1,084 / 1,513
領地の屋敷はあったかい
しおりを挟む
笑いあっていると、片付きましたか?とリアンが食堂へ入って来た。結構な時間を使っていたはずなのに、一向に片付いて行かない食堂。リアンが苦笑いをしてバケツに入った雑巾を絞り出す。
「ごめんね?リアン」
「いいのですよ。このままだと夕飯に間に合いそうにありませんから……」
テキパキと粉だらけの床を拭きとってくれる。掃き掃除をしたはずだが、リアンが拭いた場所はさらに綺麗になった。
「俺らは、掃除をしているうちにはいるのか?」
ジョージアの言いたいことはわかるが、こんなふうに荒らした食堂を綺麗にしてもらうのは、気がとがめたのでバツとして私たちが掃除をしているのだが、そもそも、掃除をしたことがない公爵二人と子どもでは、綺麗にならない。
リアンが、バケツに雑巾を洗いに向かったところで、アデルも入って来た。床を拭いているリアンを見て、アデルも雑巾や仲間を引き連れ戻って来た。
「手伝います。見た感じ、終わりそうにないですし」
三人のメイドと一人の下男がバケツもひとつ持ってきて反対側から拭き始めた。
私とジョージアはみなにごめんねと謝ると、私たちの仕事ですからと頼もしい返事をくれる。掃き掃除だけ、ジョージアと二人で終わらせ、子どもたちの方へ向かう。さっきまでケンカをしていたはずの二人は、一生懸命机を拭くことで、どうやら仲直りをしたらしい。メイドたちが机の足元まできたとき、褒めてくれることも嬉しいようで、ときおりニッコリ笑っていた。
「本当、あの子たちのおかげで、今、こうしているっていうのにね?」
「全くだよ。アンナのことになると、二人ともが張り切りだすから……」
「なんて返せばいいのかわからないですけど、嬉しいかな」
「……こんな状況でも?」
「考え物だけど、嬉しい。私、あの子たちに愛されているなって」
「アンジーやジョージだけじゃないけどね?」
ちょっと拗ねたようなジョージアの頬にキスをする。帰ってきて早々、粉事件になったものだから、すっかり忘れていたのだ。
ぶすっとしていたジョージアの口元も少し緩む。
「ジョージア様に折り入って相談したいことがあるんでした」
「なんだい?ここで聞けること?」
「人がいない方がいいですね。ちょっと、いろいろとありましたから」
「あぁ、エルドアでのことだね。驚かないからね?」
何かしてきたのだろう?とは思っているらしいジョージアに微笑んでおく。手伝ってもらったおかげで、綺麗に食堂は片付いたので、夕飯までのあいだの時間がとれそうだ。
「みんな、手伝ってくれてありがとう。お礼といっては少ないのだけど……」
ナタリーとリアンにお願いしておいたお菓子をそれぞれ持っていくように伝えると、嬉しそうに調理場へと向かった。
未だ汚れた服を着ている私たち家族は、それぞれ着替えることになった。アンジェラとジョージの手を握り、私は子ども部屋へと歩き始める。その後ろをジョージアとリアンがついてくる。
「じゃあ、俺も着替えてくるから、執務室でいい?」
「えぇ、それで。たぶん、ウィルやセバスもいると思うから」
子ども部屋へ子どもたちを連れていけば、中でヒーナが待っていてくれた。エマはクローゼットから服を取り出して着ているようだ。
「こちらは任せられますね?」
リアンに言われ、ヒーナとエマが頷き、マリアが後ろでそわそわとしていた。
「マリアももう、働いているの?」
「まだまだ見習いですが、飲み込みが早いので、10歳ごろには、侍女に昇格するかもしれませんね」
「そうかもしれないわね」
マリアが、エマの選んだ服を持ち、着替えを手伝っている姿を見ると、なんだかほっこりする。
私の部屋に入れば、リアンがクローゼットへ向かい、豪奢なドレスではなく、質素な服を持ってきてくれた。領地にいるあいだの服ではあるが、とても楽なワンピースにサッと着替える。リアンに孤児院へ戻るように言えば、失礼しますと部屋を出ていく。
そのまま、執務室へ向かうと、すでに集まっている。ジョージア、ウィル、セバス、ダリア、ノクト、イチアが指定の席に座っている。
「よぉ!アンナ、元気にしていたか?」
「もちろんよ!ノクト。南の領地では、手伝ってくれてありがとう」
「いいってことよ。俺も病にはかかっていたからな。それで、何かもらってきたのか?」
「そうね……その話はあとにしましょうか?」
見慣れぬ女性の方に視線を送り、ノクトが首を傾げている。この領地改革の人数も少ない中、女性が静かに末席に座っていたら、気になるだろう。
「まずは、私とウィルの連携で、病は終息したと行ってもいいかなぁ?コーコナにも通達はしてきたから、大丈夫だと思うけど」
「向こうも何か始めたのでしょ?」
「そうなのよ……小さなアンバー領みたいなことをね」
「貧民街ですよね?」
「そう。ちょっと、そこに問題があったから、綺麗にしてきたわ」
「人身売買と麻薬でしたね」
「閉鎖された場所だったから、そういうのの巣窟になっていたから。コーコナのことは、ココナが中心に進めてくれているから、大丈夫だと信じましょ!」
他に報告があるのよねと苦笑いをすれば、いつものことだろう?という表情を崩さないノクトと何を持ち込んできた?と身構えるイチア。
情報を仕入れてはいたようだが、全部は拾いきれていないという話で、私は説明をすることになった。
「ごめんね?リアン」
「いいのですよ。このままだと夕飯に間に合いそうにありませんから……」
テキパキと粉だらけの床を拭きとってくれる。掃き掃除をしたはずだが、リアンが拭いた場所はさらに綺麗になった。
「俺らは、掃除をしているうちにはいるのか?」
ジョージアの言いたいことはわかるが、こんなふうに荒らした食堂を綺麗にしてもらうのは、気がとがめたのでバツとして私たちが掃除をしているのだが、そもそも、掃除をしたことがない公爵二人と子どもでは、綺麗にならない。
リアンが、バケツに雑巾を洗いに向かったところで、アデルも入って来た。床を拭いているリアンを見て、アデルも雑巾や仲間を引き連れ戻って来た。
「手伝います。見た感じ、終わりそうにないですし」
三人のメイドと一人の下男がバケツもひとつ持ってきて反対側から拭き始めた。
私とジョージアはみなにごめんねと謝ると、私たちの仕事ですからと頼もしい返事をくれる。掃き掃除だけ、ジョージアと二人で終わらせ、子どもたちの方へ向かう。さっきまでケンカをしていたはずの二人は、一生懸命机を拭くことで、どうやら仲直りをしたらしい。メイドたちが机の足元まできたとき、褒めてくれることも嬉しいようで、ときおりニッコリ笑っていた。
「本当、あの子たちのおかげで、今、こうしているっていうのにね?」
「全くだよ。アンナのことになると、二人ともが張り切りだすから……」
「なんて返せばいいのかわからないですけど、嬉しいかな」
「……こんな状況でも?」
「考え物だけど、嬉しい。私、あの子たちに愛されているなって」
「アンジーやジョージだけじゃないけどね?」
ちょっと拗ねたようなジョージアの頬にキスをする。帰ってきて早々、粉事件になったものだから、すっかり忘れていたのだ。
ぶすっとしていたジョージアの口元も少し緩む。
「ジョージア様に折り入って相談したいことがあるんでした」
「なんだい?ここで聞けること?」
「人がいない方がいいですね。ちょっと、いろいろとありましたから」
「あぁ、エルドアでのことだね。驚かないからね?」
何かしてきたのだろう?とは思っているらしいジョージアに微笑んでおく。手伝ってもらったおかげで、綺麗に食堂は片付いたので、夕飯までのあいだの時間がとれそうだ。
「みんな、手伝ってくれてありがとう。お礼といっては少ないのだけど……」
ナタリーとリアンにお願いしておいたお菓子をそれぞれ持っていくように伝えると、嬉しそうに調理場へと向かった。
未だ汚れた服を着ている私たち家族は、それぞれ着替えることになった。アンジェラとジョージの手を握り、私は子ども部屋へと歩き始める。その後ろをジョージアとリアンがついてくる。
「じゃあ、俺も着替えてくるから、執務室でいい?」
「えぇ、それで。たぶん、ウィルやセバスもいると思うから」
子ども部屋へ子どもたちを連れていけば、中でヒーナが待っていてくれた。エマはクローゼットから服を取り出して着ているようだ。
「こちらは任せられますね?」
リアンに言われ、ヒーナとエマが頷き、マリアが後ろでそわそわとしていた。
「マリアももう、働いているの?」
「まだまだ見習いですが、飲み込みが早いので、10歳ごろには、侍女に昇格するかもしれませんね」
「そうかもしれないわね」
マリアが、エマの選んだ服を持ち、着替えを手伝っている姿を見ると、なんだかほっこりする。
私の部屋に入れば、リアンがクローゼットへ向かい、豪奢なドレスではなく、質素な服を持ってきてくれた。領地にいるあいだの服ではあるが、とても楽なワンピースにサッと着替える。リアンに孤児院へ戻るように言えば、失礼しますと部屋を出ていく。
そのまま、執務室へ向かうと、すでに集まっている。ジョージア、ウィル、セバス、ダリア、ノクト、イチアが指定の席に座っている。
「よぉ!アンナ、元気にしていたか?」
「もちろんよ!ノクト。南の領地では、手伝ってくれてありがとう」
「いいってことよ。俺も病にはかかっていたからな。それで、何かもらってきたのか?」
「そうね……その話はあとにしましょうか?」
見慣れぬ女性の方に視線を送り、ノクトが首を傾げている。この領地改革の人数も少ない中、女性が静かに末席に座っていたら、気になるだろう。
「まずは、私とウィルの連携で、病は終息したと行ってもいいかなぁ?コーコナにも通達はしてきたから、大丈夫だと思うけど」
「向こうも何か始めたのでしょ?」
「そうなのよ……小さなアンバー領みたいなことをね」
「貧民街ですよね?」
「そう。ちょっと、そこに問題があったから、綺麗にしてきたわ」
「人身売買と麻薬でしたね」
「閉鎖された場所だったから、そういうのの巣窟になっていたから。コーコナのことは、ココナが中心に進めてくれているから、大丈夫だと信じましょ!」
他に報告があるのよねと苦笑いをすれば、いつものことだろう?という表情を崩さないノクトと何を持ち込んできた?と身構えるイチア。
情報を仕入れてはいたようだが、全部は拾いきれていないという話で、私は説明をすることになった。
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説

わたしを捨てた騎士様の末路
夜桜
恋愛
令嬢エレナは、騎士フレンと婚約を交わしていた。
ある日、フレンはエレナに婚約破棄を言い渡す。その意外な理由にエレナは冷静に対処した。フレンの行動は全て筒抜けだったのだ。
※連載

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。

『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる