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セバスたちの結婚式の構想Ⅱ
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「あの、お誕生日会というのは何でしょうか?私、知らなくて」
「毎年、私の子どもの誕生日会を領地全体でするの。一種のお祭りみたいな感じかなぁ?」
「それは、何故ですか?」
「深い理由は、特にないよね?」
三人に投げかけると、そうですねと返って来た。
お誕生日会は、ついでに名付けただけで、何年も続くことになるとは思ってもなかったのだ。
「領民が楽しみにしているってことは、深く浸透しているのですね?」
「うん、そうだね。元々はアンバー領の改革のひとつで、掃除とかいろいろしてて、食べ物を配ったりしていたのが始まりだったかしら?お金があっても物価が高すぎて買えないとかだったから、現物を渡していたの。あとは、改革の中のひとつに、アンバー領の領民の把握という名目で、クッキーを配って、住んでいる人の把握とか、セバスの提案で住民票を作って、人の管理をしたりとか、一斉に何かしたかったときに、日が近かったのもあってね……」
「あのとき、アンジェラ様は1歳でしたからね。知らない人に囲まれて、楽しそうでしたけど」
三人は、アンバー領の再興に深く関わっているため、懐かしいのだろう。
「それから、毎年しているのよね」
「今は、領地のみんなが楽しみにしている日なんだ。領地の屋敷のものが料理を振る舞ったり、他の領地からも露店がでたりするからね。これもそれも、心にも懐にも少しでも余裕ができて来たって意味だと思う。僕らが領地に初めて行ったときは、そんな余裕すらなかったからね」
「そうなのですね。私も楽しみになりました」
「だから、結婚式を領地でするなら、そのあとになるかな?すぐに始まりの夜会もあるから、忙しくなるけど……」
「結婚式は、セバスチャン様の良い時期で大丈夫です。春はどこも忙しいですし……秋も収穫などもあるでしょうから」
「冬も冬で忙しいのよね?慶事だから、はやいとこしましょう。まだ、じかんがあるわけだし」
「年始の社交界には顔をださないのですか?」
ダリアの質問はもっともだが、私たちは苦笑いをしておく。場合によっては行くこともあるが、農作物がない時期こそ、手仕事やら勉強会やら、忙しくなるのだ。
「うーん、いけたら行くって感じかなぁ?むしろ、行きたくないわ。よっぽどの用事があれば、公から直接、呼び出しがあるから、それまでは領地で引きこもりよ!私、領地でのびのびしている方が好きだし」
「公爵がこれではダメですけどね?社交界の華が泣きますよ?」
「大丈夫よ。こんなことで、枯れたりしないから」
ナタリーに笑顔で返しておいて、ドレスの草案はナタリーと詰めるように言っておく。領地への移動時間に決めておくことになった。
「それと、さっきの4つのものは、どうする?」
「青いもの、新しいもの、古いもの、借りるものだよね。青いもの、新しいものは揃えられるけど、古いものはなぁ……何か持ってる?」
「いえ、何も」
「セバスのお母様に借りれるものはないのかしら?」
「なるほど、それは聞いてみる。僕の母のものでも、ダリアは大丈夫?」
「もちろんです。素敵な義母様ですから、そうなったら、嬉しいです」
領地へ向かうまでは、アンバーの屋敷へとも思っていたが、セバスが公都にあるトライド男爵の屋敷へ連れていくということで、ダリアはそこにいる。両親もセバスが戻って来るということで、ちょうどこちらに来ていたようで、挨拶も済ませ、結婚の許しも得たそうだ。保証人として、私の名が出れば、トライド男爵も首を横に振ることはできなかったようだ。
こういうときの権力って、役に立つから助かるのよねとしみじみ思えた瞬間だ。
「領地に帰ったら、まずは家の話もしようと思っていたの」
「やっぱり、屋敷を出た方がいいよね?」
「そうね。仮住まいならいいけど……ちょっと、気を遣うわ。私はともかく」
「わかった。どこか、屋敷から遠くない場所で家を探すよ」
「いっそのこと、屋敷を建ててほしいんだけどな……?」
「あぁ、貴族の永住計画?」
コクンと頷くと、セバスはうーんと唸る。確かにセバスは王宮の文官。いつ辞めてもいいとは言ってくれてはいるが、正直なところ、席はあったほうがいいと思っている。
「ウィルより先に買うっていうと、なんだか、ちょっと気が引けちゃって。でも、そうだなぁ……そろそろ、拠点を決めないととは思っているから、決めるよ。土地と上物については、どうしたらいいの?」
「私がそこの手配はさせていただきます。お屋敷から近い方がいいと思うので、実は見繕ってあるんです。お三人様分の土地は」
「三人ってことは、私も入っている?」
「もちろんです。買われるかどうかは、ナタリー様しだいですけど」
「嬉しいわ!私は小さな家でいいの。隠れ家的なもので十分。貴族令嬢と言っても、もう、再婚するつもりはないし、のんびりとアンバー領で過ごしたいって思っているから」
「ぴったりな場所ですから、きっと気に入ると思いますよ!」
思わぬところで、ナタリーの喜ぶ顔がみれた。なんだか、アンバー領にしばりつけてしまったような気がしたが、当のナタリーがその気なら問題はないだろう。
「どうせなら、ウィルにも一緒に買わせてしまいましょう!どうせ、ウィルも一生をアンバー領で過ごしたいって思っているのだから」
ウィルの屋敷の話は、ウィルから聞いたことがあると言えば、ナタリーとセバスが、一緒に買うことを決めてしまった。ゆくゆくはと言っていたウィルもこの際、屋敷を構えて、領地の屋敷を出ていく日もそう遠くないのかもしれないと思えた。
「毎年、私の子どもの誕生日会を領地全体でするの。一種のお祭りみたいな感じかなぁ?」
「それは、何故ですか?」
「深い理由は、特にないよね?」
三人に投げかけると、そうですねと返って来た。
お誕生日会は、ついでに名付けただけで、何年も続くことになるとは思ってもなかったのだ。
「領民が楽しみにしているってことは、深く浸透しているのですね?」
「うん、そうだね。元々はアンバー領の改革のひとつで、掃除とかいろいろしてて、食べ物を配ったりしていたのが始まりだったかしら?お金があっても物価が高すぎて買えないとかだったから、現物を渡していたの。あとは、改革の中のひとつに、アンバー領の領民の把握という名目で、クッキーを配って、住んでいる人の把握とか、セバスの提案で住民票を作って、人の管理をしたりとか、一斉に何かしたかったときに、日が近かったのもあってね……」
「あのとき、アンジェラ様は1歳でしたからね。知らない人に囲まれて、楽しそうでしたけど」
三人は、アンバー領の再興に深く関わっているため、懐かしいのだろう。
「それから、毎年しているのよね」
「今は、領地のみんなが楽しみにしている日なんだ。領地の屋敷のものが料理を振る舞ったり、他の領地からも露店がでたりするからね。これもそれも、心にも懐にも少しでも余裕ができて来たって意味だと思う。僕らが領地に初めて行ったときは、そんな余裕すらなかったからね」
「そうなのですね。私も楽しみになりました」
「だから、結婚式を領地でするなら、そのあとになるかな?すぐに始まりの夜会もあるから、忙しくなるけど……」
「結婚式は、セバスチャン様の良い時期で大丈夫です。春はどこも忙しいですし……秋も収穫などもあるでしょうから」
「冬も冬で忙しいのよね?慶事だから、はやいとこしましょう。まだ、じかんがあるわけだし」
「年始の社交界には顔をださないのですか?」
ダリアの質問はもっともだが、私たちは苦笑いをしておく。場合によっては行くこともあるが、農作物がない時期こそ、手仕事やら勉強会やら、忙しくなるのだ。
「うーん、いけたら行くって感じかなぁ?むしろ、行きたくないわ。よっぽどの用事があれば、公から直接、呼び出しがあるから、それまでは領地で引きこもりよ!私、領地でのびのびしている方が好きだし」
「公爵がこれではダメですけどね?社交界の華が泣きますよ?」
「大丈夫よ。こんなことで、枯れたりしないから」
ナタリーに笑顔で返しておいて、ドレスの草案はナタリーと詰めるように言っておく。領地への移動時間に決めておくことになった。
「それと、さっきの4つのものは、どうする?」
「青いもの、新しいもの、古いもの、借りるものだよね。青いもの、新しいものは揃えられるけど、古いものはなぁ……何か持ってる?」
「いえ、何も」
「セバスのお母様に借りれるものはないのかしら?」
「なるほど、それは聞いてみる。僕の母のものでも、ダリアは大丈夫?」
「もちろんです。素敵な義母様ですから、そうなったら、嬉しいです」
領地へ向かうまでは、アンバーの屋敷へとも思っていたが、セバスが公都にあるトライド男爵の屋敷へ連れていくということで、ダリアはそこにいる。両親もセバスが戻って来るということで、ちょうどこちらに来ていたようで、挨拶も済ませ、結婚の許しも得たそうだ。保証人として、私の名が出れば、トライド男爵も首を横に振ることはできなかったようだ。
こういうときの権力って、役に立つから助かるのよねとしみじみ思えた瞬間だ。
「領地に帰ったら、まずは家の話もしようと思っていたの」
「やっぱり、屋敷を出た方がいいよね?」
「そうね。仮住まいならいいけど……ちょっと、気を遣うわ。私はともかく」
「わかった。どこか、屋敷から遠くない場所で家を探すよ」
「いっそのこと、屋敷を建ててほしいんだけどな……?」
「あぁ、貴族の永住計画?」
コクンと頷くと、セバスはうーんと唸る。確かにセバスは王宮の文官。いつ辞めてもいいとは言ってくれてはいるが、正直なところ、席はあったほうがいいと思っている。
「ウィルより先に買うっていうと、なんだか、ちょっと気が引けちゃって。でも、そうだなぁ……そろそろ、拠点を決めないととは思っているから、決めるよ。土地と上物については、どうしたらいいの?」
「私がそこの手配はさせていただきます。お屋敷から近い方がいいと思うので、実は見繕ってあるんです。お三人様分の土地は」
「三人ってことは、私も入っている?」
「もちろんです。買われるかどうかは、ナタリー様しだいですけど」
「嬉しいわ!私は小さな家でいいの。隠れ家的なもので十分。貴族令嬢と言っても、もう、再婚するつもりはないし、のんびりとアンバー領で過ごしたいって思っているから」
「ぴったりな場所ですから、きっと気に入ると思いますよ!」
思わぬところで、ナタリーの喜ぶ顔がみれた。なんだか、アンバー領にしばりつけてしまったような気がしたが、当のナタリーがその気なら問題はないだろう。
「どうせなら、ウィルにも一緒に買わせてしまいましょう!どうせ、ウィルも一生をアンバー領で過ごしたいって思っているのだから」
ウィルの屋敷の話は、ウィルから聞いたことがあると言えば、ナタリーとセバスが、一緒に買うことを決めてしまった。ゆくゆくはと言っていたウィルもこの際、屋敷を構えて、領地の屋敷を出ていく日もそう遠くないのかもしれないと思えた。
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