1,075 / 1,480
セバスたちの結婚式の構想
しおりを挟む
私たちは、ナタリーが描くウエディングドレスの草案を見ていく。確かに、どれもこれも素敵なもので、私まで悩ましい。
「好きなものを選んでください。一生に一度だと思えば、セバスは特別なものをダリア様に贈ると思うので!」
「……いいのですか?」
「もちろんだよ。僕、これでも、アンナリーゼ様のおかげで小金持ちではあるから。ダリアがいいと思うものを選んで」
「ありがとうございます」
ニコリと笑いかけるダリアに少々しまりのないセバスの顔にナタリーと視線を合わせてクスっと笑いあった。
どうやら、セバスにとって、ダリアこそが、運命の女性だったようだ。聡明なうえに、気配り上手であるダリアは、この貴族社会ではなかなかいない女性ではある。強い女性というなら、ナタリーやカレンのような人ではあるが、どちらとも違う。
「セバスが結婚しないでいたのは、もしかすると、ダリアとこうなる運命だったのかもしれないわね?」
「本当に、そう思いますわ!仲睦まじくて、羨ましい。バツのついた私と違って、幸せになってもらいたいものです」
二人が寄り添って、ドレスを見ている。こっちもあっちもというので、2着用意したらどうかと提案した。
「それはいいですね?結婚式は、基本的に1着が主流ですが、アンナリーゼ様のときはお色のものも着られましたものね。例えばですが、ダリア様の好きな色に染め上げることはできますよ?もちろん、最初からその糸で作ることも可能ですが」
「そうだったんだ。アンナリーゼ様の結婚式は色のドレスも着られたんだね?」
「うん、ジョージア様が選んでくださったわ!セバスたちもそうしたら?きっと、ダリアも喜ぶでしょ?」
「……それは、結構な金額になるのではないですか?」
「うーん、そうね。ドレス2着となると……それなりにするわね。でも、覚えていて?」
「何でしょうか?」
ほらっと笑いかけながらドレスをつまむ。すると、思い出したようで、ハッとした顔になった。
「私のエルドアで着ていたドレスをご提供するという話でしたか?」
「そう。全部買い取らせてもらうわ。それと、1着のドレス、あと青いものの用意はするわね?」
「いいのですか?着古したものですのに……」
「いいのよ。ナタリーの研究のための犠牲ですから。新品を解体することもあるのだから、その方がいいわ。そう思うでしょ?」
「えぇ、もちろんです。新品は値が張りますからね……お古を大量にいただけるなら、そのぶん、研究費が浮きます。ニコライもそれでいいかしら?」
「はい、もちろんです。ナタリー様の研究費の分を、ダリア様のドレスに回すということですよね?店としては、かまいません」
私たちは合意したので、その方向で取引をすることにした。セバスが、ドレスの草案を持って、んーと唸っているのを見ると、変な感じがする。興味のかけらもないのかと思っていたが、そうではなくて、贈る相手がいなかったからという理由につきるのかとによによとしてしまった。
「セバス」
「どうかされましたか?」
「白いドレスとベールは用意してくれるのでしょ?」
「もちろんだよ!宝飾品も全部ね。あぁ、そうだ。さっき言ってた青いものって何?」
「花嫁が持つといいとされるものよ。青いもの、新しいもの、古いもの、借りたもの。青いものは、私たちが見繕うわ。いいでしょ?」
「もちろん!あとは、新しいもの、古いもの、借りたものだよね?」
「えぇ、そうね。私はベールを新しく作ってもらったの。古いものは母から、借りたものはエリザベスから手袋を借りたわ」
「なるほど……結婚式と一言に言ってもいろいろ準備が必要なんだね?ドレスって、どれくらいでできるものなの?」
ナタリーにセバスが聞くと、指折り数え始める。春だと、社交の季節ものあるので、私のドレスの作成もあるがと聞いたようだ。
「セバスが春に結婚式を予定するなら、そこまでには合わせるわ。アンナリーゼ様のドレスを気にしているのなら、もう、だいたいの構図は出来上がっていて、今、作り始めているところだから、気にする必要はないの」
「さすがナタリーだね。じゃあ、ダリアはいつがいいかなぁ?できれば、来年の春にある始まりの夜会までにはと思っているんだけど……急すぎるかな?」
「いいえ、それでかまいません」
「じゃあ、決まりだね。アンジェラ様たちのお誕生日前後でお願いしてもいいかい?」
「後の方がいいかもしれないわね?屋敷中が忙しいから」
「そうだね。誕生日会が終わったあと……」
ナタリーとセバスは当たり前のようにアンジェラたちの誕生日会の話を進めているのだが、今年も予定があるようだ。私は話に割り込んでいく。
「今年も誕生日会はするつもり?」
「もちろんだよ!アンジェラ様たちの誕生日会は、僕らが楽しみでもあり、領民みんながアンジェラ様の成長を喜んでいるんだから!」
「アンナリーゼ様とアンジェラ様は、アンバー領にとって、それだけ大切なお方々なのですよ。たぶん、今年も領民の方から、そんな声が上がっていると思います」
「そうですね。僕も含め、職人や商売人は稼ぎどきでもありますからね」
「出店料も今年もしっかり取りますからね!見ていてください。アンナリーゼ様」
すっかり、誕生日会の話に変わりそうな雰囲気だが、ダリアがオロオロとしている。とにかく、今は結婚式の話をするべきだと、暴走した三人を止めるのであった。
「好きなものを選んでください。一生に一度だと思えば、セバスは特別なものをダリア様に贈ると思うので!」
「……いいのですか?」
「もちろんだよ。僕、これでも、アンナリーゼ様のおかげで小金持ちではあるから。ダリアがいいと思うものを選んで」
「ありがとうございます」
ニコリと笑いかけるダリアに少々しまりのないセバスの顔にナタリーと視線を合わせてクスっと笑いあった。
どうやら、セバスにとって、ダリアこそが、運命の女性だったようだ。聡明なうえに、気配り上手であるダリアは、この貴族社会ではなかなかいない女性ではある。強い女性というなら、ナタリーやカレンのような人ではあるが、どちらとも違う。
「セバスが結婚しないでいたのは、もしかすると、ダリアとこうなる運命だったのかもしれないわね?」
「本当に、そう思いますわ!仲睦まじくて、羨ましい。バツのついた私と違って、幸せになってもらいたいものです」
二人が寄り添って、ドレスを見ている。こっちもあっちもというので、2着用意したらどうかと提案した。
「それはいいですね?結婚式は、基本的に1着が主流ですが、アンナリーゼ様のときはお色のものも着られましたものね。例えばですが、ダリア様の好きな色に染め上げることはできますよ?もちろん、最初からその糸で作ることも可能ですが」
「そうだったんだ。アンナリーゼ様の結婚式は色のドレスも着られたんだね?」
「うん、ジョージア様が選んでくださったわ!セバスたちもそうしたら?きっと、ダリアも喜ぶでしょ?」
「……それは、結構な金額になるのではないですか?」
「うーん、そうね。ドレス2着となると……それなりにするわね。でも、覚えていて?」
「何でしょうか?」
ほらっと笑いかけながらドレスをつまむ。すると、思い出したようで、ハッとした顔になった。
「私のエルドアで着ていたドレスをご提供するという話でしたか?」
「そう。全部買い取らせてもらうわ。それと、1着のドレス、あと青いものの用意はするわね?」
「いいのですか?着古したものですのに……」
「いいのよ。ナタリーの研究のための犠牲ですから。新品を解体することもあるのだから、その方がいいわ。そう思うでしょ?」
「えぇ、もちろんです。新品は値が張りますからね……お古を大量にいただけるなら、そのぶん、研究費が浮きます。ニコライもそれでいいかしら?」
「はい、もちろんです。ナタリー様の研究費の分を、ダリア様のドレスに回すということですよね?店としては、かまいません」
私たちは合意したので、その方向で取引をすることにした。セバスが、ドレスの草案を持って、んーと唸っているのを見ると、変な感じがする。興味のかけらもないのかと思っていたが、そうではなくて、贈る相手がいなかったからという理由につきるのかとによによとしてしまった。
「セバス」
「どうかされましたか?」
「白いドレスとベールは用意してくれるのでしょ?」
「もちろんだよ!宝飾品も全部ね。あぁ、そうだ。さっき言ってた青いものって何?」
「花嫁が持つといいとされるものよ。青いもの、新しいもの、古いもの、借りたもの。青いものは、私たちが見繕うわ。いいでしょ?」
「もちろん!あとは、新しいもの、古いもの、借りたものだよね?」
「えぇ、そうね。私はベールを新しく作ってもらったの。古いものは母から、借りたものはエリザベスから手袋を借りたわ」
「なるほど……結婚式と一言に言ってもいろいろ準備が必要なんだね?ドレスって、どれくらいでできるものなの?」
ナタリーにセバスが聞くと、指折り数え始める。春だと、社交の季節ものあるので、私のドレスの作成もあるがと聞いたようだ。
「セバスが春に結婚式を予定するなら、そこまでには合わせるわ。アンナリーゼ様のドレスを気にしているのなら、もう、だいたいの構図は出来上がっていて、今、作り始めているところだから、気にする必要はないの」
「さすがナタリーだね。じゃあ、ダリアはいつがいいかなぁ?できれば、来年の春にある始まりの夜会までにはと思っているんだけど……急すぎるかな?」
「いいえ、それでかまいません」
「じゃあ、決まりだね。アンジェラ様たちのお誕生日前後でお願いしてもいいかい?」
「後の方がいいかもしれないわね?屋敷中が忙しいから」
「そうだね。誕生日会が終わったあと……」
ナタリーとセバスは当たり前のようにアンジェラたちの誕生日会の話を進めているのだが、今年も予定があるようだ。私は話に割り込んでいく。
「今年も誕生日会はするつもり?」
「もちろんだよ!アンジェラ様たちの誕生日会は、僕らが楽しみでもあり、領民みんながアンジェラ様の成長を喜んでいるんだから!」
「アンナリーゼ様とアンジェラ様は、アンバー領にとって、それだけ大切なお方々なのですよ。たぶん、今年も領民の方から、そんな声が上がっていると思います」
「そうですね。僕も含め、職人や商売人は稼ぎどきでもありますからね」
「出店料も今年もしっかり取りますからね!見ていてください。アンナリーゼ様」
すっかり、誕生日会の話に変わりそうな雰囲気だが、ダリアがオロオロとしている。とにかく、今は結婚式の話をするべきだと、暴走した三人を止めるのであった。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜
O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。
しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。
…無いんだったら私が作る!
そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。
最強魔導師エンペラー
ブレイブ
ファンタジー
魔法が当たり前の世界 魔法学園ではF~ZZにランク分けされており かつて実在したZZクラス1位の最強魔導師エンペラー 彼は突然行方不明になった。そして現在 三代目エンペラーはエンペラーであるが 三代目だけは知らぬ秘密があった
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
引きこもりが乙女ゲームに転生したら
おもち
ファンタジー
小中学校で信頼していた人々に裏切られ
すっかり引きこもりになってしまった
女子高生マナ
ある日目が覚めると大好きだった乙女ゲームの世界に転生していて⁉︎
心機一転「こんどこそ明るい人生を!」と意気込むものの‥
転生したキャラが思いもよらぬ人物で--
「前世であったことに比べればなんとかなる!」前世で培った強すぎるメンタルで
男装して乙女ゲームの物語無視して突き進む
これは人を信じることを諦めた少女
の突飛な行動でまわりを巻き込み愛されていく物語
ただひたすら剣を振る、そして俺は剣聖を継ぐ
ゲンシチ
ファンタジー
剣の魅力に取り憑かれたギルバート・アーサーは、物心ついた時から剣の素振りを始めた。
雨の日も風の日も、幼馴染――『ケイ・ファウストゥス』からの遊びの誘いも断って、剣を振り続けた。
そして十五歳になった頃には、魔力付与なしで大岩を斬れるようになっていた。
翌年、特待生として王立ルヴリーゼ騎士学院に入学したギルバートだったが、試験の結果を受けて《Eクラス》に振り分けられた。成績的には一番下のクラスである。
剣の実力は申し分なかったが、魔法の才能と学力が平均を大きく下回っていたからだ。
しかし、ギルバートの受難はそれだけではなかった。
入学早々、剣の名門ローズブラッド家の天才剣士にして学年首席の金髪縦ロール――『リリアン・ローズブラッド』に決闘を申し込まれたり。
生徒会長にして三大貴族筆頭シルバーゴート家ご令嬢の銀髪ショートボブ――『リディエ・シルバーゴート』にストーキングされたり。
帝国の魔剣士学園から留学生としてやってきた炎髪ポニーテール――『フレア・イグニスハート』に因縁をつけられたり。
三年間の目まぐるしい学院生活で、数え切れぬほどの面倒ごとに見舞われることになる。
だが、それでもギルバートは剣を振り続け、学院を卒業すると同時に剣の師匠ハウゼンから【剣聖】の名を継いだ――
※カクヨム様でも連載してます。
踏み台令嬢はへこたれない
三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる