1,064 / 1,513
オリーブの先
しおりを挟む
「オリーブ園の先は、海なのね?」
ゆっくり見て回っていたら、いつの間にか、オリーブ農園の端まできていたらしい。そこで、やっと、甘い雰囲気から抜け出してくれたらしいダリアが声をかけてくれた。
「この地は、海も近く、温暖でオリーブを育てるにはとても向いている場所です」
「そうなの?」
「えぇ、オリーブは日の光を好みます。上から浴びる太陽に海からの照り返しが、実の生育にはとてもよいとされています」
「なるほど……最適な場所ということね。セバス、こういう環境って、例の場所なら、どうかしら?」
「地底湖を越えた場所ですよね?」
頷くと、セバスが気候や気温などの質問をダリアにしていく。その質問事態が適格で、ダリアはただ頷くだけでよさそうであった。
「凄いですわ!セバス様。私、まだ、この土地のことを話していないのに……その知識はどこからですか?」
「アンナリーゼ様の兄であるサシャ様とアンバー領で活躍中の師匠からの話だよ。二人とも、凄い人なんだ。いつか、ダリアにも会わせてみたいな」
「……イチアは領地にいるし、お兄様なら、呼んだらきっとすぐに来てくれると思うわよ?呼んでおく?」
「いえ、忙しい方ですから、そこは……」
「領地の見学も来たいと言っていたことだし、一度来るように連絡しておくわ!」
話が脱線していくが、セバスの知識がオリーブを育てることは難しくないと判断してくれた。苗木をもらい、領地で育てることに異論はないだろう。
「あとは、育てるのには、農夫が必要ね?誰も見たことがないかもしれないオリーブを上手に育てるには、その担い手が不可欠だと思うのよね」
「ヨハン教授に任せたらダメなの?」
「ヨハンならできるかもしれないけど、ヨハンだけではダメよね?まずは、オリーブの収穫をできるように木を育てるところからしないといけないし、次に収穫量を増やすこと、さらに加工の技術やいろいろな者が必要なのよ。引き抜きしたいと言っても、なかなか難しいでしょうね?」
「そっか。加工までの工程があるのか……俺、そういうのサッパリダメだから、頭に入ってなかったわ」
「でしょ?オリーブの苗木をもらったとして、まずは、収穫までにどれくらいかかるかよね」
私はうーんと考えていると、ダリアがなんなく答えてくれた。
「オリーブの苗木の大きさにもよりますが、だいたい植樹から3年ほどかかると言われています。アンナリーゼ様がいうように、オリーブの実を成らすだけならいいのですが、良い品質のオリーブを育てるにもなかなか難しいのですよ」
「良い品質のものじゃなかったらどうなるんだ?」
「ウィル、そんなの当たり前なことでしょ?」
「なんだよ、ナタリー」
「質のいいオリーブオイルが出来ないってことじゃないかしら?」
「えぇ、ナタリー様が言う通り。良い品質の実からは良い品質のオリーブオイルができます。品質の悪いものからオイルを作ろうとすると、独特の香りが強くなりすぎて、おいしいと感じなくなります。どうしてオリーブの苗木を渡すことになった経緯はしりませんが、実ひとつで、瓶1本の味が決まります。均一で品質のよいものだけを集めて、最高のオリーブオイルを作ることは、ここらの農家の誇りともいえますよ!」
ウィルがダリアの説明に関心をしている。もちろん、私たちだって知らない知識が多いので、ダリアの話に聞き入ってしまった。
「……なるほど。実が取れるまで三年あるのね。その間に工場を整えることが1つね。あとは、やはりオリーブを作ってくれる農家さんが欲しいわね」
「こちらで、研修を毎年しています。よかったら、その農家さんたちにも秘密裏に、勉強をしにこれないか聞いてみましょうか?農家さんたちにも、新しい農作物を作るきっかけも知識も必要だと思うので……」
「お願い出来るなら、そうしたいわ。領地の人員だけでは、オリーブを育てるまで、手が回らないと思うから」
私たちは考えられる範囲ではあったが、領地の現状を踏まえて話合っていく。その中で、ダリアが、何かを考えているようだった。
「あの、もしかしたら、オリーブのことをよく知っている人物に気が付きました。礼儀知らずで貴族には嫌われるものですけど……」
「そんなの、全然大丈夫。なんとでもやりようがあるし、もし、オリーブオイルが新しくハニーアンバー店の目玉商品となるならば、誇らしいでしょう」
「そうだといいのですが……ここの農園の息子のことなのです。放蕩息子とみなに言われていますが、私は、その腕を見込んでいます。こちらに……」
そう言って、ダリアは少しだけ小高い場所へと私たちを案内してくれた。小山になっているので、オリーブ農園の様子がよく見えた。見事な木々にため息をついてしまうと、大袈裟だな?と後ろの一際大きなオリーブの木のの上から私たちを見て来た。値踏みをするような不躾なその視線に笑顔を作り、こんにちは!と挨拶をする。渋々、向こうも挨拶をしてくれるが、どうやら、歓迎されていないように感じた。
初めての場所で、新しいものを見聞きしたので、忘れないうちにと、頭の中を整理をしているところであった。
ゆっくり見て回っていたら、いつの間にか、オリーブ農園の端まできていたらしい。そこで、やっと、甘い雰囲気から抜け出してくれたらしいダリアが声をかけてくれた。
「この地は、海も近く、温暖でオリーブを育てるにはとても向いている場所です」
「そうなの?」
「えぇ、オリーブは日の光を好みます。上から浴びる太陽に海からの照り返しが、実の生育にはとてもよいとされています」
「なるほど……最適な場所ということね。セバス、こういう環境って、例の場所なら、どうかしら?」
「地底湖を越えた場所ですよね?」
頷くと、セバスが気候や気温などの質問をダリアにしていく。その質問事態が適格で、ダリアはただ頷くだけでよさそうであった。
「凄いですわ!セバス様。私、まだ、この土地のことを話していないのに……その知識はどこからですか?」
「アンナリーゼ様の兄であるサシャ様とアンバー領で活躍中の師匠からの話だよ。二人とも、凄い人なんだ。いつか、ダリアにも会わせてみたいな」
「……イチアは領地にいるし、お兄様なら、呼んだらきっとすぐに来てくれると思うわよ?呼んでおく?」
「いえ、忙しい方ですから、そこは……」
「領地の見学も来たいと言っていたことだし、一度来るように連絡しておくわ!」
話が脱線していくが、セバスの知識がオリーブを育てることは難しくないと判断してくれた。苗木をもらい、領地で育てることに異論はないだろう。
「あとは、育てるのには、農夫が必要ね?誰も見たことがないかもしれないオリーブを上手に育てるには、その担い手が不可欠だと思うのよね」
「ヨハン教授に任せたらダメなの?」
「ヨハンならできるかもしれないけど、ヨハンだけではダメよね?まずは、オリーブの収穫をできるように木を育てるところからしないといけないし、次に収穫量を増やすこと、さらに加工の技術やいろいろな者が必要なのよ。引き抜きしたいと言っても、なかなか難しいでしょうね?」
「そっか。加工までの工程があるのか……俺、そういうのサッパリダメだから、頭に入ってなかったわ」
「でしょ?オリーブの苗木をもらったとして、まずは、収穫までにどれくらいかかるかよね」
私はうーんと考えていると、ダリアがなんなく答えてくれた。
「オリーブの苗木の大きさにもよりますが、だいたい植樹から3年ほどかかると言われています。アンナリーゼ様がいうように、オリーブの実を成らすだけならいいのですが、良い品質のオリーブを育てるにもなかなか難しいのですよ」
「良い品質のものじゃなかったらどうなるんだ?」
「ウィル、そんなの当たり前なことでしょ?」
「なんだよ、ナタリー」
「質のいいオリーブオイルが出来ないってことじゃないかしら?」
「えぇ、ナタリー様が言う通り。良い品質の実からは良い品質のオリーブオイルができます。品質の悪いものからオイルを作ろうとすると、独特の香りが強くなりすぎて、おいしいと感じなくなります。どうしてオリーブの苗木を渡すことになった経緯はしりませんが、実ひとつで、瓶1本の味が決まります。均一で品質のよいものだけを集めて、最高のオリーブオイルを作ることは、ここらの農家の誇りともいえますよ!」
ウィルがダリアの説明に関心をしている。もちろん、私たちだって知らない知識が多いので、ダリアの話に聞き入ってしまった。
「……なるほど。実が取れるまで三年あるのね。その間に工場を整えることが1つね。あとは、やはりオリーブを作ってくれる農家さんが欲しいわね」
「こちらで、研修を毎年しています。よかったら、その農家さんたちにも秘密裏に、勉強をしにこれないか聞いてみましょうか?農家さんたちにも、新しい農作物を作るきっかけも知識も必要だと思うので……」
「お願い出来るなら、そうしたいわ。領地の人員だけでは、オリーブを育てるまで、手が回らないと思うから」
私たちは考えられる範囲ではあったが、領地の現状を踏まえて話合っていく。その中で、ダリアが、何かを考えているようだった。
「あの、もしかしたら、オリーブのことをよく知っている人物に気が付きました。礼儀知らずで貴族には嫌われるものですけど……」
「そんなの、全然大丈夫。なんとでもやりようがあるし、もし、オリーブオイルが新しくハニーアンバー店の目玉商品となるならば、誇らしいでしょう」
「そうだといいのですが……ここの農園の息子のことなのです。放蕩息子とみなに言われていますが、私は、その腕を見込んでいます。こちらに……」
そう言って、ダリアは少しだけ小高い場所へと私たちを案内してくれた。小山になっているので、オリーブ農園の様子がよく見えた。見事な木々にため息をついてしまうと、大袈裟だな?と後ろの一際大きなオリーブの木のの上から私たちを見て来た。値踏みをするような不躾なその視線に笑顔を作り、こんにちは!と挨拶をする。渋々、向こうも挨拶をしてくれるが、どうやら、歓迎されていないように感じた。
初めての場所で、新しいものを見聞きしたので、忘れないうちにと、頭の中を整理をしているところであった。
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。

わたしを捨てた騎士様の末路
夜桜
恋愛
令嬢エレナは、騎士フレンと婚約を交わしていた。
ある日、フレンはエレナに婚約破棄を言い渡す。その意外な理由にエレナは冷静に対処した。フレンの行動は全て筒抜けだったのだ。
※連載

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・


親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる