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オリーブ畑を散策
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ほら立ってとセバスとダリアい声をかけ立たせる。土埃をトントンとお互いのを払い、二人は笑いあっている。
「なんだか、いいわね。微笑ましいっていうか……」
「何を言ってるのか……姫さんとジョージア様も俺らからみたら、あんな感じだけど?なぁ、ナタリー」
「本当ですよね?もぅ、こっちが恥ずかしくなるくらい……では、ないですけど、ジョージア様がアンナリーゼ様にベタベタと……嘆かわしい!」
セバスとダリアが仲良くて微笑ましいよね?って言ったつもりが、明後日の方向へ話が飛んでいってしまった。このまま話を続けていくと、あまりよい感じがしないので、早々に苦笑いをして切り上げておく。
「そういえば、私たち、このオリーブ農園を見て回るんでしたね?」
ナタリーが思い出したようにいい、別のことで盛り上がって、当初の目的を忘れていたことを思い出した。
「そうだったわね!二人には悪いのだけど、少し農園を歩きながら、説明を聞きたいのだけど……いいかしら?」
「もちろんだよ!」
「はい、喜んでご案内します」
二人が照れながらこちらを見るので、私たちまで恥ずかしくなってしまう。
「この空気の中、歩くのか……ちょっと、あれだな?」
「仕方ないじゃない。まだ、正式に決まったわけではなくても、ほとんど決まっているのだから……これ程、相性のいい組み合わせってあるのね」
「アンナリーゼ様、さっきから、チラチラと見すぎですよ?手をつなぎたいなら、私が」
「なんなら、俺もあいてる」
「ウィル……ナタリー……」
仲良さそうに寄り添うセバスとダリアの二人を羨ましそうに見てしまっていたらしい。差し出された、ウィルとナタリーの手を素直に握ることにした。二人ともそんな私に驚いていたが、満足そうに微笑んでいた。
「なんだか、お父様とお母様に手を繋いでもらって歩いているみたい」
「アンナリーゼ様の想い出ですか?」
「えぇ、そうなの。少し遠出をするときは、いつも兄も一緒だったんだけど、あの日は、新しい本を買ってもらったばかりで、兄がついてこなかったのよね。それで、両親を一人占め出来た」
「姫さんのとこ、親父殿は姫さんに甘いけど、お母様はとんでもなく厳しい印象だよな」
「そう見える?」
「私も思っていました。でも、夫人は、優しさ故の厳しさなのかなぁ?とも受取っていたので、今の話を聞いて納得がいきましたわ」
「ナタリーのいう通り。私が、ローズディアへいずれ嫁にいくならば、味方のいない場所で、どれほど大変な目に合っても、俯かずにいられるようにって、お母様なりの応援だったのよ」
そういう優しさもあるんだなとウィルが感心していた。貴族令嬢のほとんどは、他領へ嫁に行くことが多い。ナタリーもそのうちの一人ではあるのだが、夫の家に嫁ぐと、当然、侍従たちとうまく合わないこともあるし、ましてや政略結婚なら、最初のうちから夫とすら合わないこともある。それを危惧して、母は私に強くあれるようにと、甘やかさずにいてくれた。ときおり、兄が側にいないときだけ、ほんの少し優しいときがあった。それが、想い出の中にある、両親と手を繋ぐことだった。
「姫さんのところは、子どもが三人いるから、あいだに子どもが入るんだよな?」
「当たり前じゃない?私の隣にはジョージ、真ん中にアンジェラ、ジョージア様の隣にネイトって感じね、いつも」
「そうですね。いつもジョージ様が、アンナリーゼ様の側にいますよね?」
「懐かれているよね……本当の親子じゃないし、むしろ、その母は姫さんとお嬢の命を狙ったものだったのにな」
「そうね。いつかは、話すときが来ると思うの。アンジェラもネイトもジョージとは似ていないし、私やジョージア様とも似ていないからね。正直、話す日が来るのが怖いわ」
「話さないって、選択肢もあるんじゃないのか?」
「それもね、考えたの。ジョージア様とは、子どもたちの未来の話はたくさんするのよ?」
意外そうにウィルは見下ろしてくるが、私だって子どもたちは可愛い。領地や国中を飛び回っているから、なかなか、子どもたちとの時間は取れていない現状ではあるが、想いは誰にも負けるつもりはなかった。
「私、ソフィアのことをジョージには知っていてほしいと思っているの。命をかけて出産したのよ?私とジョージア様、侍従たちやあなたたちが知っていればいいとも思うかもしれないけど……ソフィアが、死の直前にジョージのことを心配していたと、私たちのエゴかもしれないけど、知っていて欲しいの」
「そんなもん?」
「わからない」
「ジョージ様は大丈夫ですかね?」
「それもわからない。だから、一人だけでなく、ネイトも含め、三人に伝えるつもり。姉弟として、力を合わせていってほしいって。完全に願わくわって感じだけど」
ウィルとナタリーと繋いだ手に力を込める。ジョージに対して、私が出来ることは多くなく、限られている。
「私が出来ることって、ジョージをギュっと抱きしめて、愛情を注ぐだけしかないのよね。それも、どこまで届けられるのかは、わからないけど……子どもたち三人には、同じだけの愛情を注ぎたいといつも思っているの」
少し俯き加減である私の手を優しくひいいてくれる。忙しくなく日々を送っているからか、穏やかな時間が、私の中で流れていった。
後ろの二人は、相変わらず、甘い雰囲気をかもしだし、私たちもその影響か、普段話さないような話をゆっくりできた。
「なんだか、いいわね。微笑ましいっていうか……」
「何を言ってるのか……姫さんとジョージア様も俺らからみたら、あんな感じだけど?なぁ、ナタリー」
「本当ですよね?もぅ、こっちが恥ずかしくなるくらい……では、ないですけど、ジョージア様がアンナリーゼ様にベタベタと……嘆かわしい!」
セバスとダリアが仲良くて微笑ましいよね?って言ったつもりが、明後日の方向へ話が飛んでいってしまった。このまま話を続けていくと、あまりよい感じがしないので、早々に苦笑いをして切り上げておく。
「そういえば、私たち、このオリーブ農園を見て回るんでしたね?」
ナタリーが思い出したようにいい、別のことで盛り上がって、当初の目的を忘れていたことを思い出した。
「そうだったわね!二人には悪いのだけど、少し農園を歩きながら、説明を聞きたいのだけど……いいかしら?」
「もちろんだよ!」
「はい、喜んでご案内します」
二人が照れながらこちらを見るので、私たちまで恥ずかしくなってしまう。
「この空気の中、歩くのか……ちょっと、あれだな?」
「仕方ないじゃない。まだ、正式に決まったわけではなくても、ほとんど決まっているのだから……これ程、相性のいい組み合わせってあるのね」
「アンナリーゼ様、さっきから、チラチラと見すぎですよ?手をつなぎたいなら、私が」
「なんなら、俺もあいてる」
「ウィル……ナタリー……」
仲良さそうに寄り添うセバスとダリアの二人を羨ましそうに見てしまっていたらしい。差し出された、ウィルとナタリーの手を素直に握ることにした。二人ともそんな私に驚いていたが、満足そうに微笑んでいた。
「なんだか、お父様とお母様に手を繋いでもらって歩いているみたい」
「アンナリーゼ様の想い出ですか?」
「えぇ、そうなの。少し遠出をするときは、いつも兄も一緒だったんだけど、あの日は、新しい本を買ってもらったばかりで、兄がついてこなかったのよね。それで、両親を一人占め出来た」
「姫さんのとこ、親父殿は姫さんに甘いけど、お母様はとんでもなく厳しい印象だよな」
「そう見える?」
「私も思っていました。でも、夫人は、優しさ故の厳しさなのかなぁ?とも受取っていたので、今の話を聞いて納得がいきましたわ」
「ナタリーのいう通り。私が、ローズディアへいずれ嫁にいくならば、味方のいない場所で、どれほど大変な目に合っても、俯かずにいられるようにって、お母様なりの応援だったのよ」
そういう優しさもあるんだなとウィルが感心していた。貴族令嬢のほとんどは、他領へ嫁に行くことが多い。ナタリーもそのうちの一人ではあるのだが、夫の家に嫁ぐと、当然、侍従たちとうまく合わないこともあるし、ましてや政略結婚なら、最初のうちから夫とすら合わないこともある。それを危惧して、母は私に強くあれるようにと、甘やかさずにいてくれた。ときおり、兄が側にいないときだけ、ほんの少し優しいときがあった。それが、想い出の中にある、両親と手を繋ぐことだった。
「姫さんのところは、子どもが三人いるから、あいだに子どもが入るんだよな?」
「当たり前じゃない?私の隣にはジョージ、真ん中にアンジェラ、ジョージア様の隣にネイトって感じね、いつも」
「そうですね。いつもジョージ様が、アンナリーゼ様の側にいますよね?」
「懐かれているよね……本当の親子じゃないし、むしろ、その母は姫さんとお嬢の命を狙ったものだったのにな」
「そうね。いつかは、話すときが来ると思うの。アンジェラもネイトもジョージとは似ていないし、私やジョージア様とも似ていないからね。正直、話す日が来るのが怖いわ」
「話さないって、選択肢もあるんじゃないのか?」
「それもね、考えたの。ジョージア様とは、子どもたちの未来の話はたくさんするのよ?」
意外そうにウィルは見下ろしてくるが、私だって子どもたちは可愛い。領地や国中を飛び回っているから、なかなか、子どもたちとの時間は取れていない現状ではあるが、想いは誰にも負けるつもりはなかった。
「私、ソフィアのことをジョージには知っていてほしいと思っているの。命をかけて出産したのよ?私とジョージア様、侍従たちやあなたたちが知っていればいいとも思うかもしれないけど……ソフィアが、死の直前にジョージのことを心配していたと、私たちのエゴかもしれないけど、知っていて欲しいの」
「そんなもん?」
「わからない」
「ジョージ様は大丈夫ですかね?」
「それもわからない。だから、一人だけでなく、ネイトも含め、三人に伝えるつもり。姉弟として、力を合わせていってほしいって。完全に願わくわって感じだけど」
ウィルとナタリーと繋いだ手に力を込める。ジョージに対して、私が出来ることは多くなく、限られている。
「私が出来ることって、ジョージをギュっと抱きしめて、愛情を注ぐだけしかないのよね。それも、どこまで届けられるのかは、わからないけど……子どもたち三人には、同じだけの愛情を注ぎたいといつも思っているの」
少し俯き加減である私の手を優しくひいいてくれる。忙しくなく日々を送っているからか、穏やかな時間が、私の中で流れていった。
後ろの二人は、相変わらず、甘い雰囲気をかもしだし、私たちもその影響か、普段話さないような話をゆっくりできた。
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