1,061 / 1,518
オリーブ畑で恋実る?
しおりを挟む
さぁ着きましたと、馬車が停まるのと同時にダリアは立ち上がる。オリーブ農園は何度も足しげく通っていたらしいことを聞いていたので、降りる前に何故かと問うた。
「単純に、オリーブが好きなだけです。花ももちろんですが、扉を開けてみてください。年中緑の葉をその身につけているのです。初夏のころには、白い花を咲かせますが、私は、青々としている葉が、潮風に揺れるさまが好きで、ときおり、息抜きにきていました」
「年中、葉が落ちない種類なのね?」
「えぇ、このあたりの実の収穫は終わっていますが、秋から冬にかけて、実をつけます」
馬車から降りると、確かに潮風が吹き抜けていき、独特の匂いが鼻を刺激する。よくよく見ていると、微妙に木や葉の種類が違うような気がしたので、聞いてみる。
「オリーブの苗木が育って実をつけるには、だいたい三年がかかります。その中で、少しでも早く実をつけるようにするために、大き目の苗木を植えたり、受粉しやすいように複数本植えます。そのときに、同じ種類の苗木とより、違う種類とを交互に植えたりすることで、受粉させやすくして、実を大量にとれるようにと工夫がされているのですよ」
知らないことを聞くと、素直に凄いなと関心をしてしまう。オリーブ農家でもないのによく知っている。やはり、知識が豊富なのだと見つめていると微笑んだ。
「自由に見ても大丈夫?」
「もちろんです!ここの農場には王妃様が触れを出してくれているので、好きなだけどうぞごらんください」
私が歩き出そうとすると、追いついてきたナタリーやセバス、ヒーナが待ったをかけた。ウィルも先行しようとする私をとめようとしたので謝る。どうせならといいことを思いついたとニコリと笑うと、友人たちはよからぬことをと思っている表情をこちらに向けてくる。
「ここからは二手に別れましょう。それと、ここではなんだけど……改めて紹介をするわ。ダリア」
「えぇ、お願いします。まずは、そちらのご令嬢からお願いできますか?」
「わかったわ!彼女はナタリー・カラマス。ローズディア公国カラマス子爵の妹よ。今は、私の領地で、女性が就業できるように尽力をしているわ。その一環で、ハニーアンバー店のドレスのデザインも手がけているの」
「アンナリーゼ様が着られているドレスもナタリー様が?」
「私が、アンナリーゼ様のドレスを作らせていただいています」
「どのドレスを見ても素敵だと思っていたの。ナタリー様が作っていらしたのなら、納得ですわ」
女性同士何か通づるものがあったのだろうか?頷きあっている二人は、にこやかに握手を交わしている。
「あとは、侍女のヒーナ。アンバー領へ嫁いでくれるなら話しておくわ。インゼロ帝国の元戦争屋よ。わけあって、私たちの側においているの。腕は確かだから、気を付けてね?」
「ヒーナね?よろしく」
「こちらこそ。アンナリーゼ様に預けられただなんて、不運としか思えないですけど……」
苦笑いするダリアの肩をポンと叩くと、望むところですとヒーナを挑戦的に見据えた。こちらは、何を考えているのかわからない。
「こっちが、ウィル・サーラーね?」
「えぇ、夜会に出てたから知っているわ。お噂はかねがね」
「その噂のどれくらいが本当かは知らないけど……姫さんほど、無茶はしてないからな?」
「そうなのですか?こちらでは、いろいろな武勇伝のようなものも伝わっています」
「例えば?」
ウィルが問うと、少し考えたようにして、ダリアが頷いた。
「学園在学中のことで、当時シルキー公女の護衛と、シルキー公女の自由について、剣で戦ったと聞いていますよ!」
「あぁ……それは、姫さんのほうだ。俺、あの日は、審判してたし」
「そのあと、私と一緒に踊っていたと思うけど?」
ウィルの方を見上げると、そうだっけ?ととぼけている。目立つことは、基本的に私がしたとしてしまいたいらしく、肩を竦めていた。
「まぁ、いいわ。最後に……セバス、こちらに」
少しだけ距離を置いて緊張気味にしているセバスを私の隣に立たせた。背中に手を当てれば、幾分か、緊張は解けたようだ。
「セバスチャン・トライドよ。私の領地で、領地の改革を手伝ってもらっているの。爵位は男爵。馬に乗るのはちょっと苦手だけど、頭の出来は素晴らしいのよ?私の友人出もあるわ!」
「……セバスチャン・トライドです。この度、円卓での話し合いに宰相代理として参加していました。一時期、外されてしまいましたが……」
ふふっと突然笑うダリアに事情を知らないセバス。誰も気付かずにいたのだが、馬車の中で話していたこととダリアは繋がったようだった。
「お会いできて嬉しいです。セバスチャン様。私のことをお側に置いてくださるのだとか」
「……え、あぁ……えっと、その」
未だに慣れないらしいセバスは、あたふたし始めたが、それも一瞬のこと。ひとつ息を吐いて整えたあと、ニコリとダリアに笑いかける。
「ちょうど、いい場所ですね。オリーブには平和と知恵という意味の花言葉があります。あなたが望んだ未来とは違う形になったかもしれませんが、僕たちにとって、戦争は起こしたくないもの。平和を望んで剣ではなく、僕は円卓で戦いました。援軍を得て、勝利しましたが、僕たちの勝ち……平和を掴めました。でも、本当に良かったのか……という疑問も残ってはいます。それを証明するために、これからあなたに……ダリア・ウェスティンの知恵を借りたい。両国の未来のために」
私たちはニヤニヤしながら、オリーブの木の下でセバスがダリアに手を差し伸べているのを見つめていた。コクンと頷き、その手を取ってくれる。
二人の行く先が、幸せなものになれば……と、私たちは願わずにはいられなかった。
「単純に、オリーブが好きなだけです。花ももちろんですが、扉を開けてみてください。年中緑の葉をその身につけているのです。初夏のころには、白い花を咲かせますが、私は、青々としている葉が、潮風に揺れるさまが好きで、ときおり、息抜きにきていました」
「年中、葉が落ちない種類なのね?」
「えぇ、このあたりの実の収穫は終わっていますが、秋から冬にかけて、実をつけます」
馬車から降りると、確かに潮風が吹き抜けていき、独特の匂いが鼻を刺激する。よくよく見ていると、微妙に木や葉の種類が違うような気がしたので、聞いてみる。
「オリーブの苗木が育って実をつけるには、だいたい三年がかかります。その中で、少しでも早く実をつけるようにするために、大き目の苗木を植えたり、受粉しやすいように複数本植えます。そのときに、同じ種類の苗木とより、違う種類とを交互に植えたりすることで、受粉させやすくして、実を大量にとれるようにと工夫がされているのですよ」
知らないことを聞くと、素直に凄いなと関心をしてしまう。オリーブ農家でもないのによく知っている。やはり、知識が豊富なのだと見つめていると微笑んだ。
「自由に見ても大丈夫?」
「もちろんです!ここの農場には王妃様が触れを出してくれているので、好きなだけどうぞごらんください」
私が歩き出そうとすると、追いついてきたナタリーやセバス、ヒーナが待ったをかけた。ウィルも先行しようとする私をとめようとしたので謝る。どうせならといいことを思いついたとニコリと笑うと、友人たちはよからぬことをと思っている表情をこちらに向けてくる。
「ここからは二手に別れましょう。それと、ここではなんだけど……改めて紹介をするわ。ダリア」
「えぇ、お願いします。まずは、そちらのご令嬢からお願いできますか?」
「わかったわ!彼女はナタリー・カラマス。ローズディア公国カラマス子爵の妹よ。今は、私の領地で、女性が就業できるように尽力をしているわ。その一環で、ハニーアンバー店のドレスのデザインも手がけているの」
「アンナリーゼ様が着られているドレスもナタリー様が?」
「私が、アンナリーゼ様のドレスを作らせていただいています」
「どのドレスを見ても素敵だと思っていたの。ナタリー様が作っていらしたのなら、納得ですわ」
女性同士何か通づるものがあったのだろうか?頷きあっている二人は、にこやかに握手を交わしている。
「あとは、侍女のヒーナ。アンバー領へ嫁いでくれるなら話しておくわ。インゼロ帝国の元戦争屋よ。わけあって、私たちの側においているの。腕は確かだから、気を付けてね?」
「ヒーナね?よろしく」
「こちらこそ。アンナリーゼ様に預けられただなんて、不運としか思えないですけど……」
苦笑いするダリアの肩をポンと叩くと、望むところですとヒーナを挑戦的に見据えた。こちらは、何を考えているのかわからない。
「こっちが、ウィル・サーラーね?」
「えぇ、夜会に出てたから知っているわ。お噂はかねがね」
「その噂のどれくらいが本当かは知らないけど……姫さんほど、無茶はしてないからな?」
「そうなのですか?こちらでは、いろいろな武勇伝のようなものも伝わっています」
「例えば?」
ウィルが問うと、少し考えたようにして、ダリアが頷いた。
「学園在学中のことで、当時シルキー公女の護衛と、シルキー公女の自由について、剣で戦ったと聞いていますよ!」
「あぁ……それは、姫さんのほうだ。俺、あの日は、審判してたし」
「そのあと、私と一緒に踊っていたと思うけど?」
ウィルの方を見上げると、そうだっけ?ととぼけている。目立つことは、基本的に私がしたとしてしまいたいらしく、肩を竦めていた。
「まぁ、いいわ。最後に……セバス、こちらに」
少しだけ距離を置いて緊張気味にしているセバスを私の隣に立たせた。背中に手を当てれば、幾分か、緊張は解けたようだ。
「セバスチャン・トライドよ。私の領地で、領地の改革を手伝ってもらっているの。爵位は男爵。馬に乗るのはちょっと苦手だけど、頭の出来は素晴らしいのよ?私の友人出もあるわ!」
「……セバスチャン・トライドです。この度、円卓での話し合いに宰相代理として参加していました。一時期、外されてしまいましたが……」
ふふっと突然笑うダリアに事情を知らないセバス。誰も気付かずにいたのだが、馬車の中で話していたこととダリアは繋がったようだった。
「お会いできて嬉しいです。セバスチャン様。私のことをお側に置いてくださるのだとか」
「……え、あぁ……えっと、その」
未だに慣れないらしいセバスは、あたふたし始めたが、それも一瞬のこと。ひとつ息を吐いて整えたあと、ニコリとダリアに笑いかける。
「ちょうど、いい場所ですね。オリーブには平和と知恵という意味の花言葉があります。あなたが望んだ未来とは違う形になったかもしれませんが、僕たちにとって、戦争は起こしたくないもの。平和を望んで剣ではなく、僕は円卓で戦いました。援軍を得て、勝利しましたが、僕たちの勝ち……平和を掴めました。でも、本当に良かったのか……という疑問も残ってはいます。それを証明するために、これからあなたに……ダリア・ウェスティンの知恵を借りたい。両国の未来のために」
私たちはニヤニヤしながら、オリーブの木の下でセバスがダリアに手を差し伸べているのを見つめていた。コクンと頷き、その手を取ってくれる。
二人の行く先が、幸せなものになれば……と、私たちは願わずにはいられなかった。
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。

白い結婚はそちらが言い出したことですわ
来住野つかさ
恋愛
サリーは怒っていた。今日は幼馴染で喧嘩ばかりのスコットとの結婚式だったが、あろうことかバーティでスコットの友人たちが「白い結婚にするって言ってたよな?」「奥さんのこと色気ないとかさ」と騒ぎながら話している。スコットがその気なら喧嘩買うわよ! 白い結婚上等よ! 許せん! これから舌戦だ!!

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
「あなたの好きなひとを盗るつもりなんてなかった。どうか許して」と親友に謝られたけど、その男性は私の好きなひとではありません。まあいっか。
石河 翠
恋愛
真面目が取り柄のハリエットには、同い年の従姉妹エミリーがいる。母親同士の仲が悪く、二人は何かにつけ比較されてきた。
ある日招待されたお茶会にて、ハリエットは突然エミリーから謝られる。なんとエミリーは、ハリエットの好きなひとを盗ってしまったのだという。エミリーの母親は、ハリエットを出し抜けてご機嫌の様子。
ところが、紹介された男性はハリエットの好きなひととは全くの別人。しかもエミリーは勘違いしているわけではないらしい。そこでハリエットは伯母の誤解を解かないまま、エミリーの結婚式への出席を希望し……。
母親の束縛から逃れて初恋を叶えるしたたかなヒロインと恋人を溺愛する腹黒ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:23852097)をお借りしております。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる