ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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オリーブ畑で恋実る?

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 さぁ着きましたと、馬車が停まるのと同時にダリアは立ち上がる。オリーブ農園は何度も足しげく通っていたらしいことを聞いていたので、降りる前に何故かと問うた。


「単純に、オリーブが好きなだけです。花ももちろんですが、扉を開けてみてください。年中緑の葉をその身につけているのです。初夏のころには、白い花を咲かせますが、私は、青々としている葉が、潮風に揺れるさまが好きで、ときおり、息抜きにきていました」
「年中、葉が落ちない種類なのね?」
「えぇ、このあたりの実の収穫は終わっていますが、秋から冬にかけて、実をつけます」


 馬車から降りると、確かに潮風が吹き抜けていき、独特の匂いが鼻を刺激する。よくよく見ていると、微妙に木や葉の種類が違うような気がしたので、聞いてみる。


「オリーブの苗木が育って実をつけるには、だいたい三年がかかります。その中で、少しでも早く実をつけるようにするために、大き目の苗木を植えたり、受粉しやすいように複数本植えます。そのときに、同じ種類の苗木とより、違う種類とを交互に植えたりすることで、受粉させやすくして、実を大量にとれるようにと工夫がされているのですよ」


 知らないことを聞くと、素直に凄いなと関心をしてしまう。オリーブ農家でもないのによく知っている。やはり、知識が豊富なのだと見つめていると微笑んだ。


「自由に見ても大丈夫?」
「もちろんです!ここの農場には王妃様が触れを出してくれているので、好きなだけどうぞごらんください」


 私が歩き出そうとすると、追いついてきたナタリーやセバス、ヒーナが待ったをかけた。ウィルも先行しようとする私をとめようとしたので謝る。どうせならといいことを思いついたとニコリと笑うと、友人たちはよからぬことをと思っている表情をこちらに向けてくる。


「ここからは二手に別れましょう。それと、ここではなんだけど……改めて紹介をするわ。ダリア」
「えぇ、お願いします。まずは、そちらのご令嬢からお願いできますか?」
「わかったわ!彼女はナタリー・カラマス。ローズディア公国カラマス子爵の妹よ。今は、私の領地で、女性が就業できるように尽力をしているわ。その一環で、ハニーアンバー店のドレスのデザインも手がけているの」
「アンナリーゼ様が着られているドレスもナタリー様が?」
「私が、アンナリーゼ様のドレスを作らせていただいています」
「どのドレスを見ても素敵だと思っていたの。ナタリー様が作っていらしたのなら、納得ですわ」


 女性同士何か通づるものがあったのだろうか?頷きあっている二人は、にこやかに握手を交わしている。


「あとは、侍女のヒーナ。アンバー領へ嫁いでくれるなら話しておくわ。インゼロ帝国の元戦争屋よ。わけあって、私たちの側においているの。腕は確かだから、気を付けてね?」
「ヒーナね?よろしく」
「こちらこそ。アンナリーゼ様に預けられただなんて、不運としか思えないですけど……」


 苦笑いするダリアの肩をポンと叩くと、望むところですとヒーナを挑戦的に見据えた。こちらは、何を考えているのかわからない。


「こっちが、ウィル・サーラーね?」
「えぇ、夜会に出てたから知っているわ。お噂はかねがね」
「その噂のどれくらいが本当かは知らないけど……姫さんほど、無茶はしてないからな?」
「そうなのですか?こちらでは、いろいろな武勇伝のようなものも伝わっています」
「例えば?」


 ウィルが問うと、少し考えたようにして、ダリアが頷いた。


「学園在学中のことで、当時シルキー公女の護衛と、シルキー公女の自由について、剣で戦ったと聞いていますよ!」
「あぁ……それは、姫さんのほうだ。俺、あの日は、審判してたし」
「そのあと、私と一緒に踊っていたと思うけど?」


 ウィルの方を見上げると、そうだっけ?ととぼけている。目立つことは、基本的に私がしたとしてしまいたいらしく、肩を竦めていた。


「まぁ、いいわ。最後に……セバス、こちらに」


 少しだけ距離を置いて緊張気味にしているセバスを私の隣に立たせた。背中に手を当てれば、幾分か、緊張は解けたようだ。


「セバスチャン・トライドよ。私の領地で、領地の改革を手伝ってもらっているの。爵位は男爵。馬に乗るのはちょっと苦手だけど、頭の出来は素晴らしいのよ?私の友人出もあるわ!」
「……セバスチャン・トライドです。この度、円卓での話し合いに宰相代理として参加していました。一時期、外されてしまいましたが……」


 ふふっと突然笑うダリアに事情を知らないセバス。誰も気付かずにいたのだが、馬車の中で話していたこととダリアは繋がったようだった。


「お会いできて嬉しいです。セバスチャン様。私のことをお側に置いてくださるのだとか」
「……え、あぁ……えっと、その」


 未だに慣れないらしいセバスは、あたふたし始めたが、それも一瞬のこと。ひとつ息を吐いて整えたあと、ニコリとダリアに笑いかける。


「ちょうど、いい場所ですね。オリーブには平和と知恵という意味の花言葉があります。あなたが望んだ未来とは違う形になったかもしれませんが、僕たちにとって、戦争は起こしたくないもの。平和を望んで剣ではなく、僕は円卓で戦いました。援軍を得て、勝利しましたが、僕たちの勝ち……平和を掴めました。でも、本当に良かったのか……という疑問も残ってはいます。それを証明するために、これからあなたに……ダリア・ウェスティンの知恵を借りたい。両国の未来のために」


 私たちはニヤニヤしながら、オリーブの木の下でセバスがダリアに手を差し伸べているのを見つめていた。コクンと頷き、その手を取ってくれる。
 二人の行く先が、幸せなものになれば……と、私たちは願わずにはいられなかった。
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