1,045 / 1,480
お見苦しいところをⅡ
しおりを挟む
「なんとも、私の知らないことが多い。エルドア以外にも情報収集を広げるべきだなぁ」
「それは、大変必要なことだと思いますよ!公も昔は、遊び惚けていましたからね……今は、少しだけ、情報収集の仕方もうまくなって、いろいろな情報を持っています」
「……アンバー公は、公から何か相談をされたりしているのか?」
「そうですね。呼び出されたりはよくあります。公の本来の後ろ盾は、公妃の実家であるゴールド公爵家ですが、少し、私たちと考え方が違うので、相いれません。同じく国を想う方ではあるとおもいますが……」
なるほど……と頷き、考えるように俯いた。
本心はあっても、他国の人に言えるものではない。完全に命を狙われる側にいる私は、ゴールド公爵からしたら、小賢しいに決まっているし、相談役として、自信の後ろ盾をアンバー公爵家とした公に思うところがあるだろう。今、この瞬間にも、ゴールド公爵家よりの文官や貴族がいる中で言えるわけもなく、それにこんな問題は大なり小なりどこの国も抱えている問題ではあるので、濁しておくに限る。
現にエルドアは、王派と王太子派に別れてしまっているのだから。今、目の前の円卓に座っているもののほとんどが、気のふれた王派の重鎮ばかりであった。
「それにしても、先程はお見苦しいところをお見せしましたわ!」
「いえ、それには及びません。こちらの方こそ……と、言わざるえない。そう思いませんか?伯爵」
遅れて入ってきたのは、エルドア一の策士であるダリア・ウェスティン。王派である彼女は、インゼロ帝国との開戦を望む派閥のものだった。この場に現れたということは、王太子が動いたこと、また、私が円卓へ近づいたという連絡をもらって、慌てて来たのだろう。
「えぇ、そうですわね。王太子殿下に置かれましては、私が、開戦派ということはご存じですよね?」
「えぇ、もちろんです。何故、開戦したいのか……その口から、聞かせ願えるかな?」
悪ふざけでもしようかというふうに笑う二人を見て、何が本当の笑顔なのか疑いたくなる。
王太子もだけど、策士だけあってダリアは何を考えているのか、サッパリ読めないわね。私が、この場に来たから、行けとお偉い様から言われてきたのでしょうけど……さて、どちらの味方につくのかしら?
私は、何も言わずに座るだけですもの。
「セバス。そろそろ、話合いを始めましょうか?」
私たちも席につくことにした。屋敷で決めた通り、私は円卓に加わらず、外から周りを見渡す。逆に王太子とダリアは円卓に加わり、私たちの様子を窺っていた。
「こんな大事なところで、少々粗っぽいことをしてしまったこと、お詫び申し上げます」
立ち上がって、みなに頭をさげ、私は着席する。それを見て、みながそれぞれの席に着いた。コホンと咳払いをした王太子の隣にはダリアが座っていた。
「では、さっそく、今の状況を聞かせていただきますか?私は本日付けで公より、この円卓へ加わるよう辞令をいただきました。本来なら、国の重要な話合いで、何度も責任者が替わることは、大変申し訳なく思っていますが、本国から不正の話が出た以上、お恥ずかし話ではありますが、交替させていただきました」
「それはよい。こちらも同じだから。責任者として、私がローズディアとの話合いの席につこう。ひとつ聞いてもいいかい?」
何なりととセバスがいうと、王太子とダリアは私の方を見ていた。言いたいことはわかるが、私は、一領主。お忍びで、エルドアに遊びに来ているだけの観光客がそんな席につけるわけもない。ニッコリ笑っておいた。
「アンバー公は、ここの席にはつかないのかな?」
「はい、アンバー公爵は、友人である私の送迎をしてくださるので後ろにいますが、話合いには参加いたしません。公よりエルドアとの対話を任されたのは、私ですから」
にこやかにしているはずのセバスの雰囲気が一気に変わった。イチアが教えた交渉術の中に、ちょっとした雰囲気を変えるということも有効だと話を聞いたことがある。いつもは、ふんわりしているにも関わらず、そういう場でだけ、存在感を示すというのは、なかなか脅威だそうだ。
感じ取れるセバスは、とても頼もしく、見ていてもかっこいい。
それでも何か言いかける王太子に、発言しても?と聞けば、もちろんだと返ってきた。
「円卓の席に私をお誘いいただいても、私は国のことに関しては、何も関われないのです。一領主として、公の後ろ盾として、助言をすることはあっても、私にはなんの権限もございませんから」
ニッコリ笑い、話しかけないでくださいね?と王太子とダリアに視線を送ると、では……と、セバスが話を始めた。やはり、数日の間に、話が開戦の方向へ向かっていたようで、頭の痛くなるような言葉が飛び交う。司会進行役だけをして、静かに聞きながらメモを取るセバス。王太子も静かに聞いていた。ダリアだけが、この場の全てを知っているようで、憂いた顔が印象的だ。
円卓であるため、セバス以外の表情がよく見えた。誰がどんなふうに考えているのか、手に取るようにわかりおもしろい。
みんな、タヌキとまでいかないのね。戦争になって負けた場合の話合いは、されてない……か。勝てる見込みなんて、ほぼないと思うけど。インゼロ帝国は、内政を整えているとはいえ、武力は近隣では1番の国だからね。
それぞれの話を聞き終え、セバスが一言。
珍しく怒ったような声音に私は、そうなるわよね?と同情したのである。
「それは、大変必要なことだと思いますよ!公も昔は、遊び惚けていましたからね……今は、少しだけ、情報収集の仕方もうまくなって、いろいろな情報を持っています」
「……アンバー公は、公から何か相談をされたりしているのか?」
「そうですね。呼び出されたりはよくあります。公の本来の後ろ盾は、公妃の実家であるゴールド公爵家ですが、少し、私たちと考え方が違うので、相いれません。同じく国を想う方ではあるとおもいますが……」
なるほど……と頷き、考えるように俯いた。
本心はあっても、他国の人に言えるものではない。完全に命を狙われる側にいる私は、ゴールド公爵からしたら、小賢しいに決まっているし、相談役として、自信の後ろ盾をアンバー公爵家とした公に思うところがあるだろう。今、この瞬間にも、ゴールド公爵家よりの文官や貴族がいる中で言えるわけもなく、それにこんな問題は大なり小なりどこの国も抱えている問題ではあるので、濁しておくに限る。
現にエルドアは、王派と王太子派に別れてしまっているのだから。今、目の前の円卓に座っているもののほとんどが、気のふれた王派の重鎮ばかりであった。
「それにしても、先程はお見苦しいところをお見せしましたわ!」
「いえ、それには及びません。こちらの方こそ……と、言わざるえない。そう思いませんか?伯爵」
遅れて入ってきたのは、エルドア一の策士であるダリア・ウェスティン。王派である彼女は、インゼロ帝国との開戦を望む派閥のものだった。この場に現れたということは、王太子が動いたこと、また、私が円卓へ近づいたという連絡をもらって、慌てて来たのだろう。
「えぇ、そうですわね。王太子殿下に置かれましては、私が、開戦派ということはご存じですよね?」
「えぇ、もちろんです。何故、開戦したいのか……その口から、聞かせ願えるかな?」
悪ふざけでもしようかというふうに笑う二人を見て、何が本当の笑顔なのか疑いたくなる。
王太子もだけど、策士だけあってダリアは何を考えているのか、サッパリ読めないわね。私が、この場に来たから、行けとお偉い様から言われてきたのでしょうけど……さて、どちらの味方につくのかしら?
私は、何も言わずに座るだけですもの。
「セバス。そろそろ、話合いを始めましょうか?」
私たちも席につくことにした。屋敷で決めた通り、私は円卓に加わらず、外から周りを見渡す。逆に王太子とダリアは円卓に加わり、私たちの様子を窺っていた。
「こんな大事なところで、少々粗っぽいことをしてしまったこと、お詫び申し上げます」
立ち上がって、みなに頭をさげ、私は着席する。それを見て、みながそれぞれの席に着いた。コホンと咳払いをした王太子の隣にはダリアが座っていた。
「では、さっそく、今の状況を聞かせていただきますか?私は本日付けで公より、この円卓へ加わるよう辞令をいただきました。本来なら、国の重要な話合いで、何度も責任者が替わることは、大変申し訳なく思っていますが、本国から不正の話が出た以上、お恥ずかし話ではありますが、交替させていただきました」
「それはよい。こちらも同じだから。責任者として、私がローズディアとの話合いの席につこう。ひとつ聞いてもいいかい?」
何なりととセバスがいうと、王太子とダリアは私の方を見ていた。言いたいことはわかるが、私は、一領主。お忍びで、エルドアに遊びに来ているだけの観光客がそんな席につけるわけもない。ニッコリ笑っておいた。
「アンバー公は、ここの席にはつかないのかな?」
「はい、アンバー公爵は、友人である私の送迎をしてくださるので後ろにいますが、話合いには参加いたしません。公よりエルドアとの対話を任されたのは、私ですから」
にこやかにしているはずのセバスの雰囲気が一気に変わった。イチアが教えた交渉術の中に、ちょっとした雰囲気を変えるということも有効だと話を聞いたことがある。いつもは、ふんわりしているにも関わらず、そういう場でだけ、存在感を示すというのは、なかなか脅威だそうだ。
感じ取れるセバスは、とても頼もしく、見ていてもかっこいい。
それでも何か言いかける王太子に、発言しても?と聞けば、もちろんだと返ってきた。
「円卓の席に私をお誘いいただいても、私は国のことに関しては、何も関われないのです。一領主として、公の後ろ盾として、助言をすることはあっても、私にはなんの権限もございませんから」
ニッコリ笑い、話しかけないでくださいね?と王太子とダリアに視線を送ると、では……と、セバスが話を始めた。やはり、数日の間に、話が開戦の方向へ向かっていたようで、頭の痛くなるような言葉が飛び交う。司会進行役だけをして、静かに聞きながらメモを取るセバス。王太子も静かに聞いていた。ダリアだけが、この場の全てを知っているようで、憂いた顔が印象的だ。
円卓であるため、セバス以外の表情がよく見えた。誰がどんなふうに考えているのか、手に取るようにわかりおもしろい。
みんな、タヌキとまでいかないのね。戦争になって負けた場合の話合いは、されてない……か。勝てる見込みなんて、ほぼないと思うけど。インゼロ帝国は、内政を整えているとはいえ、武力は近隣では1番の国だからね。
それぞれの話を聞き終え、セバスが一言。
珍しく怒ったような声音に私は、そうなるわよね?と同情したのである。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜
O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。
しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。
…無いんだったら私が作る!
そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
【短編版】カイルとシャルロットの冒険
神谷モロ
ファンタジー
俺の名前はカイル・ラングレン。
平民の生まれでたまたま魔力適性があったのか、魔法学院に入学することが出来た。
だが、劣等生だった俺は貴族に馬鹿にされる学生生活を送っていた。
だけど、それも、今は懐かしい、戻れるならあの日に戻りたいと思うことがある。
平和だったのだ。
ある日、突然、ドラゴンの襲撃を受けて、俺たちの王国は滅んだ。
運よく生き延びた俺と同級生で年下の少女、シャルロットは冒険者として今、生きている。
フェンリル娘と異世界無双!!~ダメ神の誤算で生まれたデミゴッド~
華音 楓
ファンタジー
主人公、間宮陸人(42歳)は、世界に絶望していた。
そこそこ順風満帆な人生を送っていたが、あるミスが原因で仕事に追い込まれ、そのミスが連鎖反応を引き起こし、最終的にはビルの屋上に立つことになった。
そして一歩を踏み出して身を投げる。
しかし、陸人に訪れたのは死ではなかった。
眩しい光が目の前に現れ、周囲には白い神殿のような建物があり、他にも多くの人々が突如としてその場に現れる。
しばらくすると、神を名乗る人物が現れ、彼に言い渡したのは、異世界への転移。
陸人はこれから始まる異世界ライフに不安を抱えつつも、ある意味での人生の再スタートと捉え、新たな一歩を踏み出す決意を固めた……はずだった……
この物語は、間宮陸人が幸か不幸か、異世界での新たな人生を満喫する物語である……はずです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる