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お見苦しいところをⅡ

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「なんとも、私の知らないことが多い。エルドア以外にも情報収集を広げるべきだなぁ」
「それは、大変必要なことだと思いますよ!公も昔は、遊び惚けていましたからね……今は、少しだけ、情報収集の仕方もうまくなって、いろいろな情報を持っています」
「……アンバー公は、公から何か相談をされたりしているのか?」
「そうですね。呼び出されたりはよくあります。公の本来の後ろ盾は、公妃の実家であるゴールド公爵家ですが、少し、私たちと考え方が違うので、相いれません。同じく国を想う方ではあるとおもいますが……」


 なるほど……と頷き、考えるように俯いた。
 本心はあっても、他国の人に言えるものではない。完全に命を狙われる側にいる私は、ゴールド公爵からしたら、小賢しいに決まっているし、相談役として、自信の後ろ盾をアンバー公爵家とした公に思うところがあるだろう。今、この瞬間にも、ゴールド公爵家よりの文官や貴族がいる中で言えるわけもなく、それにこんな問題は大なり小なりどこの国も抱えている問題ではあるので、濁しておくに限る。
 現にエルドアは、王派と王太子派に別れてしまっているのだから。今、目の前の円卓に座っているもののほとんどが、気のふれた王派の重鎮ばかりであった。


「それにしても、先程はお見苦しいところをお見せしましたわ!」
「いえ、それには及びません。こちらの方こそ……と、言わざるえない。そう思いませんか?伯爵」


 遅れて入ってきたのは、エルドア一の策士であるダリア・ウェスティン。王派である彼女は、インゼロ帝国との開戦を望む派閥のものだった。この場に現れたということは、王太子が動いたこと、また、私が円卓へ近づいたという連絡をもらって、慌てて来たのだろう。


「えぇ、そうですわね。王太子殿下に置かれましては、私が、開戦派ということはご存じですよね?」
「えぇ、もちろんです。何故、開戦したいのか……その口から、聞かせ願えるかな?」


 悪ふざけでもしようかというふうに笑う二人を見て、何が本当の笑顔なのか疑いたくなる。

 王太子もだけど、策士だけあってダリアは何を考えているのか、サッパリ読めないわね。私が、この場に来たから、行けとお偉い様から言われてきたのでしょうけど……さて、どちらの味方につくのかしら?
 私は、何も言わずに座るだけですもの。


「セバス。そろそろ、話合いを始めましょうか?」


 私たちも席につくことにした。屋敷で決めた通り、私は円卓に加わらず、外から周りを見渡す。逆に王太子とダリアは円卓に加わり、私たちの様子を窺っていた。


「こんな大事なところで、少々粗っぽいことをしてしまったこと、お詫び申し上げます」


 立ち上がって、みなに頭をさげ、私は着席する。それを見て、みながそれぞれの席に着いた。コホンと咳払いをした王太子の隣にはダリアが座っていた。


「では、さっそく、今の状況を聞かせていただきますか?私は本日付けで公より、この円卓へ加わるよう辞令をいただきました。本来なら、国の重要な話合いで、何度も責任者が替わることは、大変申し訳なく思っていますが、本国から不正の話が出た以上、お恥ずかし話ではありますが、交替させていただきました」
「それはよい。こちらも同じだから。責任者として、私がローズディアとの話合いの席につこう。ひとつ聞いてもいいかい?」


 何なりととセバスがいうと、王太子とダリアは私の方を見ていた。言いたいことはわかるが、私は、一領主。お忍びで、エルドアに遊びに来ているだけの観光客がそんな席につけるわけもない。ニッコリ笑っておいた。


「アンバー公は、ここの席にはつかないのかな?」
「はい、アンバー公爵は、友人である私の送迎をしてくださるので後ろにいますが、話合いには参加いたしません。公よりエルドアとの対話を任されたのは、私ですから」


 にこやかにしているはずのセバスの雰囲気が一気に変わった。イチアが教えた交渉術の中に、ちょっとした雰囲気を変えるということも有効だと話を聞いたことがある。いつもは、ふんわりしているにも関わらず、そういう場でだけ、存在感を示すというのは、なかなか脅威だそうだ。
 感じ取れるセバスは、とても頼もしく、見ていてもかっこいい。
 それでも何か言いかける王太子に、発言しても?と聞けば、もちろんだと返ってきた。


「円卓の席に私をお誘いいただいても、私は国のことに関しては、何も関われないのです。一領主として、公の後ろ盾として、助言をすることはあっても、私にはなんの権限もございませんから」


 ニッコリ笑い、話しかけないでくださいね?と王太子とダリアに視線を送ると、では……と、セバスが話を始めた。やはり、数日の間に、話が開戦の方向へ向かっていたようで、頭の痛くなるような言葉が飛び交う。司会進行役だけをして、静かに聞きながらメモを取るセバス。王太子も静かに聞いていた。ダリアだけが、この場の全てを知っているようで、憂いた顔が印象的だ。
 円卓であるため、セバス以外の表情がよく見えた。誰がどんなふうに考えているのか、手に取るようにわかりおもしろい。

 みんな、タヌキとまでいかないのね。戦争になって負けた場合の話合いは、されてない……か。勝てる見込みなんて、ほぼないと思うけど。インゼロ帝国は、内政を整えているとはいえ、武力は近隣では1番の国だからね。

 それぞれの話を聞き終え、セバスが一言。

 珍しく怒ったような声音に私は、そうなるわよね?と同情したのである。
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