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公からの手紙
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私たちは、それぞれ持っている情報を出しあい、次なる円卓に向かってどうするのがいいのか考えた。
円卓には、すでにこちらの思惑とは別の者が席についていることがわかっているので、まとまりつつある話合いをひっくり返す方法を話合う。
「公からの手紙がまず届くことが1つ目の難題かしら?」
「まぁ、見張られているでしょうね?」
「何らかの方法を考えてくれているといいけど……さすがに現状を伝えているのだから」
「そんな機転ききますかね?」
エルドア国との円卓ではなく、私たちは別の円卓でため息をついた。これまでの実績を考えれば、そこまで気を回してくれるとは思えない。
そのとき、ノックがされたので、入室の許可をだした。メイドが手紙を持っていたので、公からかと、一瞬思ったが、どうやら違うようだ。
「誰からの手紙?」
「……カレンからの手紙だわ。私がここにいること……知っているの?」
「まぁ、ふうを開けてみて、確認しよう」
ヒーナに渡すと、カレンからの手紙の封を切ってくれた。中を確認すれば、さらに封筒が入っており、そこには、公の印が押されている。
「公からの手紙だわ!」
「えっ?」
「ほら、見て!」
私たちはカレンの手紙から出てきた私宛の封筒に驚いた。先程まで、散々、公の悪口を言っていたので、みなの驚きも気まずい雰囲気もわかる。
「今回は、どこからか、学習したようね?」
「本当だな。こんな手を使ってくるとは……よほどきいたか?セバスやキースの命が狙われていると書いたことが」
「一国の交渉人が、死の淵に立たされれば、まずいと思うのが普通の考えですものね。セバスはアンナリーゼ様の腹心とも言えますから、公も今回は、さすがに気を回しているのでしょうね?」
「それだといいけど……公もだんだんそれらしくなってきているよね?」
「ここで、公のいいところを論じてても仕方がないけど、今回は、本当に助かったわね。たぶん、この手紙、そのままだと届かなかったはずよ」
みなが公の手紙を見て頷いた。封を切ると、中には任命書とセバスとキースに対する気遣いが書いてあった。さすがにそれを見て、ホッとしたのと同時に気遣いがされたことが嬉しかったようで、二人の口元が緩む。
「これでほしいものは届いたわね?あとは、王太子の動向ね……円卓へこちらがつけるようになった連絡をしないと」
「侯爵を通してですか?」
「うーん、侯爵を通してできるといいんだけど、見張られてるわよね?」
「じゃあ、俺が行ってこようか?」
「……どうどうと行くのはいいんだけど、さすがにね。小鳥に頼みましょうかね」
「小鳥にか」
「えぇ、そうね。裏から行ったほうが、確実かなって。ウィルも危ないことないし」
小鳥を呼ぶと、鳴く。それに合わせて、ひとり言を呟いた。そのやり取りをみなが不思議そうに見ている。
「小鳥とは、こうやって合図を取り合っているんだな」
「そっか。みんな知らなかったのよね?手紙を書くから少し待っていて」
ヒーナが紙とペンを持って来て、サラサラと手紙を書く。送り元がアンバー公爵だとわかるように、紋章をつけて窓辺に手紙を置くと消えた。
「これで、届くの?本当に優秀だよな……姫さんの小鳥」
「でしょ?私、お父様からもらったもののなかで、1番素敵な贈り物だと思うわ」
「俺も欲しい……でも、使いどころがないよな」
「ディルの子猫たちも優秀なんだよ!」
「そろそろ、先日の結果もきけそうですか?」
私は頷くと、セバスはさすがだなと呟いている。公爵家の情報網はとても広い。ディル曰く、私の小鳥はそのうえをいくわけだが、ここにいるみなは頷きあっていた。
「本当、優秀な人材が揃っているよな。姫さんの回りって」
「それは、あなたたちも含めてってことだよ。国の機関に入ったら、みな本当に優秀な人材だと思うわ。公が密かに狙っているんだから」
「それは、よくきく話だけど……」
信じられないという表情をするセバス。何度も何度も言っているが身内びいきなだけだと思っているらしい。
本当のことだけどな……信じてくれないんだよね。
「さて、円卓の席に座る準備はできたわね?みんな、いいかしら?」
「アンナリーゼ様は、行かれるのですか?」
「行かないほうがいいかなって思っているけど、必要なら行くわ!」
セバスに笑いかければ、みなが頷きあう。
私たちの戦う準備は、やっと整った。
円卓には、すでにこちらの思惑とは別の者が席についていることがわかっているので、まとまりつつある話合いをひっくり返す方法を話合う。
「公からの手紙がまず届くことが1つ目の難題かしら?」
「まぁ、見張られているでしょうね?」
「何らかの方法を考えてくれているといいけど……さすがに現状を伝えているのだから」
「そんな機転ききますかね?」
エルドア国との円卓ではなく、私たちは別の円卓でため息をついた。これまでの実績を考えれば、そこまで気を回してくれるとは思えない。
そのとき、ノックがされたので、入室の許可をだした。メイドが手紙を持っていたので、公からかと、一瞬思ったが、どうやら違うようだ。
「誰からの手紙?」
「……カレンからの手紙だわ。私がここにいること……知っているの?」
「まぁ、ふうを開けてみて、確認しよう」
ヒーナに渡すと、カレンからの手紙の封を切ってくれた。中を確認すれば、さらに封筒が入っており、そこには、公の印が押されている。
「公からの手紙だわ!」
「えっ?」
「ほら、見て!」
私たちはカレンの手紙から出てきた私宛の封筒に驚いた。先程まで、散々、公の悪口を言っていたので、みなの驚きも気まずい雰囲気もわかる。
「今回は、どこからか、学習したようね?」
「本当だな。こんな手を使ってくるとは……よほどきいたか?セバスやキースの命が狙われていると書いたことが」
「一国の交渉人が、死の淵に立たされれば、まずいと思うのが普通の考えですものね。セバスはアンナリーゼ様の腹心とも言えますから、公も今回は、さすがに気を回しているのでしょうね?」
「それだといいけど……公もだんだんそれらしくなってきているよね?」
「ここで、公のいいところを論じてても仕方がないけど、今回は、本当に助かったわね。たぶん、この手紙、そのままだと届かなかったはずよ」
みなが公の手紙を見て頷いた。封を切ると、中には任命書とセバスとキースに対する気遣いが書いてあった。さすがにそれを見て、ホッとしたのと同時に気遣いがされたことが嬉しかったようで、二人の口元が緩む。
「これでほしいものは届いたわね?あとは、王太子の動向ね……円卓へこちらがつけるようになった連絡をしないと」
「侯爵を通してですか?」
「うーん、侯爵を通してできるといいんだけど、見張られてるわよね?」
「じゃあ、俺が行ってこようか?」
「……どうどうと行くのはいいんだけど、さすがにね。小鳥に頼みましょうかね」
「小鳥にか」
「えぇ、そうね。裏から行ったほうが、確実かなって。ウィルも危ないことないし」
小鳥を呼ぶと、鳴く。それに合わせて、ひとり言を呟いた。そのやり取りをみなが不思議そうに見ている。
「小鳥とは、こうやって合図を取り合っているんだな」
「そっか。みんな知らなかったのよね?手紙を書くから少し待っていて」
ヒーナが紙とペンを持って来て、サラサラと手紙を書く。送り元がアンバー公爵だとわかるように、紋章をつけて窓辺に手紙を置くと消えた。
「これで、届くの?本当に優秀だよな……姫さんの小鳥」
「でしょ?私、お父様からもらったもののなかで、1番素敵な贈り物だと思うわ」
「俺も欲しい……でも、使いどころがないよな」
「ディルの子猫たちも優秀なんだよ!」
「そろそろ、先日の結果もきけそうですか?」
私は頷くと、セバスはさすがだなと呟いている。公爵家の情報網はとても広い。ディル曰く、私の小鳥はそのうえをいくわけだが、ここにいるみなは頷きあっていた。
「本当、優秀な人材が揃っているよな。姫さんの回りって」
「それは、あなたたちも含めてってことだよ。国の機関に入ったら、みな本当に優秀な人材だと思うわ。公が密かに狙っているんだから」
「それは、よくきく話だけど……」
信じられないという表情をするセバス。何度も何度も言っているが身内びいきなだけだと思っているらしい。
本当のことだけどな……信じてくれないんだよね。
「さて、円卓の席に座る準備はできたわね?みんな、いいかしら?」
「アンナリーゼ様は、行かれるのですか?」
「行かないほうがいいかなって思っているけど、必要なら行くわ!」
セバスに笑いかければ、みなが頷きあう。
私たちの戦う準備は、やっと整った。
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