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厚紙を広げていく。絵が描かれているのだが、アンジェラ画伯の描いたものだから、まずは読解から始まる。
「……これってさ?」
「うちの画伯が描いたものだよ。何か私に伝えたかったんだと思う。まぁ、この形は、花だよね?」
「花ですか?」
「アンジェラは、何を伝えたかったんだろう?」
うーんと頭を捻りながら、考える。花はわかったけど、それが、紫色をしている。花の色は多種多様だから、紫の花なんて、珍しくもないのだ。
「姫さんさぁ?」
「何?」
「お嬢に、絵も習わしたほうがいいんじゃない?さすがに、これは……わからない」
「……絵ね。私もあんまり上手じゃないから、遺伝じゃないかしら?」
「アンナリーゼ様は、配色はとてもいいですよ?」
「……今は、姫さんじゃなくて、お嬢のほうだね」
うんと頷き、私たちは、再度考えた。いつもなら、ジョージアかリアンが側にいて、何がどうなっているのか説明をしてくれるのだが、今回は、それが期待できない。
紫の花から、紫の雫が垂れて、その下で、人?らしいものが、横たわっている。
「……この花って、毒花なんじゃない?雫が落ちた先に、人が横たわってる」
「あぁ、確かに」
「このピンク色の髪の人はアンナ様ではありませんか?」
エレーナも参戦し、絵の解読に勤しむ。まさか、大人が六人も揃って、アンジェラが描いた絵を解読しているとは、つゆほどにも思わないだろう。
「これ、俺かな?黄色い髪だ」
「じゃあ、こっちはヒーナ?」
「茶色いのは、私でしょうか?」
侯爵は困り顔をしながら、茶色い髪の男性を指さした。そして、倒れている人物は、青い髪をしていた。確か、エルドア王族の髪の色は、青だったと記憶している。
それに気が付いたエレーナはハッとしたように口元を押さえ、こちらに視線を向けてくる。ただ、背景を見る限り、これは、王宮か離宮だ。
やはり、そのどちらかで会った場合、何か悪いことが起こる……その『予知』なのだろうと思えた。
「これ、離宮ではありませんか?」
アンジェラが描いた絵の中、とても不思議な形をした柱がある。飾り柱だと思うのだが、真ん中だけ細くなっている……そんなものだった。
「私、この柱は見たことがあります。離宮にある、応接室で拝見しました」
「エレーナ、それは、本当?」
「えぇ、王太子妃様のお茶会に呼ばれたのは、この社交の季節でした。離宮で、催されたのは、王太子妃様が、離宮の中でも特別、応接室を気に入っていらっしゃるからだとか」
「それなら……、やはり、外で会う方がいいですね」
頷きあう。ただ、やはり、花の毒は気になった。
なんだろう……とても、気になるな。
「姫さん、どうしたんだ?」
「紫の花がやっぱり気になって。エルドアには、紫の花で、毒のあるものって、あるのかしら?」
「……すみません、詳しくなくて」
私は、記憶のなかを辿っていく。紫の花で、毒のあるもの。
この国の花ではない?例えば……国土の広いインゼロ帝国なら、もしかすればあるのかもしれない。
「もしかしたらなんだけど」
「何か思い当たることがあるのか?」
「インゼロ帝国に組みしているものが、王太子を煙たがっているとしたら?その罪をクロック侯爵に押し付けてしまったら?」
「邪魔者は、一気にいなくなったりしますね?」
「旦那様」
「……まぁ、立場的に、あまり目立つような存在ではなくても、後ろ盾が、フレイゼン侯爵とアンバー公爵ですからね。それだけでも、相手にはしたくないとは思います」
「加えて新しい事業をしていて、それの収益も出てきてるからね」
私たちがこうして話合いをしているあいだに、相手も策を練っているということだ。全容が見えない今、動きにくいのは私たちで、国を全掌握している相手側は、私たちの小さな反攻が滑稽に思えるだろう。
再度、扉がノックされる。入るように許可を出せば、メイドが、あの封筒を持ってきた。
「殿下からの手紙です。読みますね?」
封筒を開けて、一通り目を通す侯爵が私に、それを渡してくれる。暗号文のようで、読みずらいのだが、基本的に何パターンもあるが、そのうちのひとつだ。私でも読めるので、読んでいく。
「決まりね。あまり仰々しくならないように、宝飾店には連絡を」
「わかりました。先程は一報でしたが、連絡します」
お願いねと、部屋から出る。私たちに与えられた部屋へと戻り、ウィルたちが見てきた街の様子を聞くことにした。
「姫さんさ、今回のこと、かなり大事になってきたな?」
「そうだね。まさか、こんなに早く、戦争をすると言い出すおバカな貴族が現れるとは、思いもしなかったわ」
「アンナリーゼ様の予想では、まだ、先なのですよね?」
「えぇ、あと15年ほど先。アンジェラが学園を卒業するころかしら」
「……こんなに早くなったのには、何かあるのでしょうか?」
「さぁ、何もわからないわ。私の知らないところで、ことは動いていたのかもしれないし、私も万能ではないから。未来は常に変わってきているし、私の力も弱まっている。きっと、これからは、アンジェラのほうが、きちんとしたことがわかるようになると思うわ」
ソファに深くかけ、事の状況を整理していくしかない。何はともあれ、戦争なんて起こさせてはいけない。そのための私の一生を無駄になんてできないと、グッと手を握った。
「……これってさ?」
「うちの画伯が描いたものだよ。何か私に伝えたかったんだと思う。まぁ、この形は、花だよね?」
「花ですか?」
「アンジェラは、何を伝えたかったんだろう?」
うーんと頭を捻りながら、考える。花はわかったけど、それが、紫色をしている。花の色は多種多様だから、紫の花なんて、珍しくもないのだ。
「姫さんさぁ?」
「何?」
「お嬢に、絵も習わしたほうがいいんじゃない?さすがに、これは……わからない」
「……絵ね。私もあんまり上手じゃないから、遺伝じゃないかしら?」
「アンナリーゼ様は、配色はとてもいいですよ?」
「……今は、姫さんじゃなくて、お嬢のほうだね」
うんと頷き、私たちは、再度考えた。いつもなら、ジョージアかリアンが側にいて、何がどうなっているのか説明をしてくれるのだが、今回は、それが期待できない。
紫の花から、紫の雫が垂れて、その下で、人?らしいものが、横たわっている。
「……この花って、毒花なんじゃない?雫が落ちた先に、人が横たわってる」
「あぁ、確かに」
「このピンク色の髪の人はアンナ様ではありませんか?」
エレーナも参戦し、絵の解読に勤しむ。まさか、大人が六人も揃って、アンジェラが描いた絵を解読しているとは、つゆほどにも思わないだろう。
「これ、俺かな?黄色い髪だ」
「じゃあ、こっちはヒーナ?」
「茶色いのは、私でしょうか?」
侯爵は困り顔をしながら、茶色い髪の男性を指さした。そして、倒れている人物は、青い髪をしていた。確か、エルドア王族の髪の色は、青だったと記憶している。
それに気が付いたエレーナはハッとしたように口元を押さえ、こちらに視線を向けてくる。ただ、背景を見る限り、これは、王宮か離宮だ。
やはり、そのどちらかで会った場合、何か悪いことが起こる……その『予知』なのだろうと思えた。
「これ、離宮ではありませんか?」
アンジェラが描いた絵の中、とても不思議な形をした柱がある。飾り柱だと思うのだが、真ん中だけ細くなっている……そんなものだった。
「私、この柱は見たことがあります。離宮にある、応接室で拝見しました」
「エレーナ、それは、本当?」
「えぇ、王太子妃様のお茶会に呼ばれたのは、この社交の季節でした。離宮で、催されたのは、王太子妃様が、離宮の中でも特別、応接室を気に入っていらっしゃるからだとか」
「それなら……、やはり、外で会う方がいいですね」
頷きあう。ただ、やはり、花の毒は気になった。
なんだろう……とても、気になるな。
「姫さん、どうしたんだ?」
「紫の花がやっぱり気になって。エルドアには、紫の花で、毒のあるものって、あるのかしら?」
「……すみません、詳しくなくて」
私は、記憶のなかを辿っていく。紫の花で、毒のあるもの。
この国の花ではない?例えば……国土の広いインゼロ帝国なら、もしかすればあるのかもしれない。
「もしかしたらなんだけど」
「何か思い当たることがあるのか?」
「インゼロ帝国に組みしているものが、王太子を煙たがっているとしたら?その罪をクロック侯爵に押し付けてしまったら?」
「邪魔者は、一気にいなくなったりしますね?」
「旦那様」
「……まぁ、立場的に、あまり目立つような存在ではなくても、後ろ盾が、フレイゼン侯爵とアンバー公爵ですからね。それだけでも、相手にはしたくないとは思います」
「加えて新しい事業をしていて、それの収益も出てきてるからね」
私たちがこうして話合いをしているあいだに、相手も策を練っているということだ。全容が見えない今、動きにくいのは私たちで、国を全掌握している相手側は、私たちの小さな反攻が滑稽に思えるだろう。
再度、扉がノックされる。入るように許可を出せば、メイドが、あの封筒を持ってきた。
「殿下からの手紙です。読みますね?」
封筒を開けて、一通り目を通す侯爵が私に、それを渡してくれる。暗号文のようで、読みずらいのだが、基本的に何パターンもあるが、そのうちのひとつだ。私でも読めるので、読んでいく。
「決まりね。あまり仰々しくならないように、宝飾店には連絡を」
「わかりました。先程は一報でしたが、連絡します」
お願いねと、部屋から出る。私たちに与えられた部屋へと戻り、ウィルたちが見てきた街の様子を聞くことにした。
「姫さんさ、今回のこと、かなり大事になってきたな?」
「そうだね。まさか、こんなに早く、戦争をすると言い出すおバカな貴族が現れるとは、思いもしなかったわ」
「アンナリーゼ様の予想では、まだ、先なのですよね?」
「えぇ、あと15年ほど先。アンジェラが学園を卒業するころかしら」
「……こんなに早くなったのには、何かあるのでしょうか?」
「さぁ、何もわからないわ。私の知らないところで、ことは動いていたのかもしれないし、私も万能ではないから。未来は常に変わってきているし、私の力も弱まっている。きっと、これからは、アンジェラのほうが、きちんとしたことがわかるようになると思うわ」
ソファに深くかけ、事の状況を整理していくしかない。何はともあれ、戦争なんて起こさせてはいけない。そのための私の一生を無駄になんてできないと、グッと手を握った。
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