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宝飾品を買いましょう
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「ドレスは、何着か持ってきたのだけど……よくて、円卓だけだと思っていたから、宝飾品はあまり考えていなかったのよね。お金は……ほどほどにしか持ってきていないから、それなりのものにしましょう」
「アンナリーゼ様、店主が……白目を向いていますよ?」
大丈夫?と声をかけても、意識がフワフワしているようだったので、扉を開けて、店員を呼ぶ。
「誰かきて!店主の具合が悪そうよ!」
「アンナ様!そのようなことは、私がしますから……」
「いいわ。たいしたことしてないし」
慌ててやってくる店員を部屋に入れると、店主がソファに寝込んで慌てていた。
「申し訳ありません、店主がこのような……」
「うぅん、いいのよ。それより、早く店主をなんとかしてあげて。あと、気が付いてからでいいから、クロック侯爵家へ宝飾品を見せにきてと言っておいて。私たちはお暇しますから」
それとともにナタリーとエレーナ立ち上がり、私に続く。どう見ても、侍女が貴族を従えて歩いているような構図ではるので、店員たちは微妙な顔を見合わせて戸惑いを前面に出していた。
「ここの店員は、まだまだね。そこは、あえて、表情に出しちゃダメだよね?」
ふふっと笑いながら馬車に乗ろうとしたところで、店主が気が付いたのか、慌てて私たちを追いかけてきた。
「お待ちください!アンバー公」
私をアンバー公と呼ぶ店主に驚く店員たちを置いて、私の前へ店主が追いついた。
「あら?気が付いた」
「……とんだ失態を。申し訳ありません。あの、もしよろしければ、もう一度、部屋へお戻りいただけるでしょうか?お手間を取らせて申し訳ありませんが……」
少し震えた声であるが、今、私を帰すわけにはいかないという気概は感じ取れたので、頷く。
「最高の品を見せていただける?私に似合うね?」
「かしこまりました。では、先程のお部屋へご案内します」
店主自ら、私たちの前を歩いて案内をする姿に慌てて宝飾品を持ちに行く店員たち。もてなす準備を大慌てでしている様子が、申し訳なく思えた。
さてさて、どんなものが買えるかしら?手持ちのお金で足りる?
先程の応接室へ迎えば、整えられた机の上。短時間でここまでできる店はなかなかない。基本的に貴族が店を訪れることはないので、する必要がないからだ。
「先程、陛下に会いに行かれるとおっしゃられていましたが……」
「うん、急に思いついたの」
どうぞと席を進められ、私はソファの真ん中へ、エレーナは隣に、ナタリーは反対側へと座る。店主は、膝をつき、私たちと視線をあわせていた。
「私も驚いているのですけど……どういうことでしたか?」
「いろいろ考えてみたのだけど、私、エルドアの王にはお会いしたことがなかったなと思って。一度、お会いできないかしら?と……お願いしてみてほしいのだけど。お忍びでセバスを迎えに行くつもりだったけど、せっかくなら、って思って」
「せっかくならで、王には会えないんじゃないですか?」
アンナリーゼ様は……とため息をつくナタリーに、そうかしら?と微笑んでおく。エルドアは公より年上の王太子がいるのだが、たしか……私を何妃か忘れたが、望んでいると聞いたことがある。
それなら、お会いしたいですと言えば、会ってくれるのではないか……なんて、甘い考えを出しているわけではあるのだが、きっと、大丈夫だろう。
「……屋敷に帰ってから、旦那様にお伝えしますが、あまり、期待はなさらないでください」
「えぇ、突飛なことだったし、気にしないは。謁見が出来たときのことを考えて、宝飾品を買わせてもらおうと思うの。私、今回、表に出るつもりはなかったから、そういうものは、一切持ってきていないのよね」
ノックがされ、入出許可とともに、数人の店員が化粧箱を持って入ってくる。大きさからみれば、単品ではなく、セットものが入っているだろうことはわかった。ここからは、商人としての見せどころかしら?と、ニコリと笑う。
「こちらにある最高品質のものを取り揃えています。王侯に会われるのであれば、統一感を出させていただいたほうがいいと思いまして……」
「セットね。及第点よ。見せてちょうだい」
店員は、戸惑いながらも箱の蓋を開けていく。どれもこれも素晴らしいものばかりだ。
見たことのない色の宝石に目が奪われる。
「これは、エメラルド、こちらはルビー、あとこれは……?見たことがない宝石だわ!」
「……これは、我が国で取れるアレキサンドライトと呼ばれる石でございます」
「アレキサンドライト?……聞いたこと、ないわね?」
「それは、そうだと思います。この石は、国外から出ることがない希少なものでございますから」
「なるほど……それを私にみせたということは……」
コクンと頷く店主に、なかなかやるわねと心の中で唸った。
目の前に置かれたエメラルドやルビーなら、相場がわかるから、交渉することができる。ただ、希少のものなら相場がわからない上に、この国でしかとれないものなら、値は、ほぼ言い値になるだろう。
「考えたわね?」
「……いえ、そんなことはございません。これをつけて、社交界へ向かわれるアンバー公を見てみたいと素直に思ったのでお出しいたしました。可能であれば、この宝石をローズディアの社交界でも……」
「えぇ、わかったわ。じゃあ、値段交渉いたしましょう!」
私は、置かれたアレキサンドライトの宝飾品を手に取った。ルビーとは少し違う趣がある赤に私は、心惹かれたのである。
もし、エルドアの王と謁見が出来なかったとしても、この宝飾品を手に入れた価値は高いと判断した。
「アンナリーゼ様、店主が……白目を向いていますよ?」
大丈夫?と声をかけても、意識がフワフワしているようだったので、扉を開けて、店員を呼ぶ。
「誰かきて!店主の具合が悪そうよ!」
「アンナ様!そのようなことは、私がしますから……」
「いいわ。たいしたことしてないし」
慌ててやってくる店員を部屋に入れると、店主がソファに寝込んで慌てていた。
「申し訳ありません、店主がこのような……」
「うぅん、いいのよ。それより、早く店主をなんとかしてあげて。あと、気が付いてからでいいから、クロック侯爵家へ宝飾品を見せにきてと言っておいて。私たちはお暇しますから」
それとともにナタリーとエレーナ立ち上がり、私に続く。どう見ても、侍女が貴族を従えて歩いているような構図ではるので、店員たちは微妙な顔を見合わせて戸惑いを前面に出していた。
「ここの店員は、まだまだね。そこは、あえて、表情に出しちゃダメだよね?」
ふふっと笑いながら馬車に乗ろうとしたところで、店主が気が付いたのか、慌てて私たちを追いかけてきた。
「お待ちください!アンバー公」
私をアンバー公と呼ぶ店主に驚く店員たちを置いて、私の前へ店主が追いついた。
「あら?気が付いた」
「……とんだ失態を。申し訳ありません。あの、もしよろしければ、もう一度、部屋へお戻りいただけるでしょうか?お手間を取らせて申し訳ありませんが……」
少し震えた声であるが、今、私を帰すわけにはいかないという気概は感じ取れたので、頷く。
「最高の品を見せていただける?私に似合うね?」
「かしこまりました。では、先程のお部屋へご案内します」
店主自ら、私たちの前を歩いて案内をする姿に慌てて宝飾品を持ちに行く店員たち。もてなす準備を大慌てでしている様子が、申し訳なく思えた。
さてさて、どんなものが買えるかしら?手持ちのお金で足りる?
先程の応接室へ迎えば、整えられた机の上。短時間でここまでできる店はなかなかない。基本的に貴族が店を訪れることはないので、する必要がないからだ。
「先程、陛下に会いに行かれるとおっしゃられていましたが……」
「うん、急に思いついたの」
どうぞと席を進められ、私はソファの真ん中へ、エレーナは隣に、ナタリーは反対側へと座る。店主は、膝をつき、私たちと視線をあわせていた。
「私も驚いているのですけど……どういうことでしたか?」
「いろいろ考えてみたのだけど、私、エルドアの王にはお会いしたことがなかったなと思って。一度、お会いできないかしら?と……お願いしてみてほしいのだけど。お忍びでセバスを迎えに行くつもりだったけど、せっかくなら、って思って」
「せっかくならで、王には会えないんじゃないですか?」
アンナリーゼ様は……とため息をつくナタリーに、そうかしら?と微笑んでおく。エルドアは公より年上の王太子がいるのだが、たしか……私を何妃か忘れたが、望んでいると聞いたことがある。
それなら、お会いしたいですと言えば、会ってくれるのではないか……なんて、甘い考えを出しているわけではあるのだが、きっと、大丈夫だろう。
「……屋敷に帰ってから、旦那様にお伝えしますが、あまり、期待はなさらないでください」
「えぇ、突飛なことだったし、気にしないは。謁見が出来たときのことを考えて、宝飾品を買わせてもらおうと思うの。私、今回、表に出るつもりはなかったから、そういうものは、一切持ってきていないのよね」
ノックがされ、入出許可とともに、数人の店員が化粧箱を持って入ってくる。大きさからみれば、単品ではなく、セットものが入っているだろうことはわかった。ここからは、商人としての見せどころかしら?と、ニコリと笑う。
「こちらにある最高品質のものを取り揃えています。王侯に会われるのであれば、統一感を出させていただいたほうがいいと思いまして……」
「セットね。及第点よ。見せてちょうだい」
店員は、戸惑いながらも箱の蓋を開けていく。どれもこれも素晴らしいものばかりだ。
見たことのない色の宝石に目が奪われる。
「これは、エメラルド、こちらはルビー、あとこれは……?見たことがない宝石だわ!」
「……これは、我が国で取れるアレキサンドライトと呼ばれる石でございます」
「アレキサンドライト?……聞いたこと、ないわね?」
「それは、そうだと思います。この石は、国外から出ることがない希少なものでございますから」
「なるほど……それを私にみせたということは……」
コクンと頷く店主に、なかなかやるわねと心の中で唸った。
目の前に置かれたエメラルドやルビーなら、相場がわかるから、交渉することができる。ただ、希少のものなら相場がわからない上に、この国でしかとれないものなら、値は、ほぼ言い値になるだろう。
「考えたわね?」
「……いえ、そんなことはございません。これをつけて、社交界へ向かわれるアンバー公を見てみたいと素直に思ったのでお出しいたしました。可能であれば、この宝石をローズディアの社交界でも……」
「えぇ、わかったわ。じゃあ、値段交渉いたしましょう!」
私は、置かれたアレキサンドライトの宝飾品を手に取った。ルビーとは少し違う趣がある赤に私は、心惹かれたのである。
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