上 下
994 / 1,480

セバスの援護射撃はどうする?

しおりを挟む
「屋敷のことは、セバスが帰ってきてから考えることにするよ。領主の屋敷に近い方がいいからなぁ……」
「遠くてもいいんじゃないか?」
「えっ?」
「遠くてもいいんじゃないかなぁ?って」


 ジョージアがボソボソと呟いているとウィルがこちらに視線を送ってくる。言いたいことはわかる。わかるけど……私に何を言わせたいのだろう?二人とも。


「ジョージア様、ウィルとセバスが屋敷を建てるために土地が欲しいということになったら、許可を出してもいいですよね?ウィルの屋敷は、のちのちレオやミアが使うことになりますから……少し近い方がいいんですよね」
「……そうなんだ?それは、残念」
「お嬢の護衛になりたいそうですからね?レオは」
「……それは、まだ、早くないかい?」
「アンジェラの護衛は、まだ、わからないけど、将来、何になるにしても、私は応援するわ!もちろん、ミアも」
「そりゃ、助かるよ」


 やんわり、話を逸らしておく。これ以上のゴタゴタは、遠慮願いたいので、ニコッと二人に笑いかけておく。
 伝わったのか、口を開きかけていたジョージアが黙った。


「セバスは、今、エルドアにいるんだよね?」
「そうよ。宰相の変わりにって。ひとつの経験よねって」
「姫さんって、ときたま、無茶をいうよね?特にセバスと俺に」
「できると思うから、言うんだけど……それに似合った成果をちゃんと出しているじゃない」
「……そりゃ、姫さんに応えたいって思ってるからね。それを考えたら、もしかして……デリアもか?」
「デリアは、もっとすごいことしてるらしいね?アンバー公爵家のメイドになる前に。俺は知らないけど」
「……それは、知らない方がいいんじゃないですかね」


 ウィルがしれっと言い放ったことで、また、険悪になりそうなのはなんでなんだろう……と、ため息をついてしまう。


「セバスの話をしようとしているんですけど……どうして、そう睨み合っているのですか?セバスが国を背負って苦しい中、頑張ってくれているのに!」
「……それもそうだな。で、今、セバスはどうなっているんだ?」
「開戦派が結構粘っているようなんだよね。こんなことになっているなんて思わなくて……少しだけ、そんな噂を聞いていたけど、ここまで大火になっていたとは」
「そんなに?」
「そう。ウィルが南の領地行ってたでしょ?」
「ん。それで?」
「ウィルをもっとエルドアの方に寄せてほしいって……面倒なことばかり言ってきたのよね。南の領地は、戦いができるような状況じゃないし、ウィルも戦いのために南の領地へ行っているわけじゃないって、抗議までしていたのよ」
「そんなことあったんだ?」


 ウィルは知らなかったようで、へぇーって言っているだけだ。私、手紙に書いたと思うんだけど?と思いながら、小首を傾げた。


「あっ、それ……手紙に書いたよ?って顔?」
「そう、そうなのよ!私、書いたよね?そっちにエルドアからの使者が向かうといけないから」
「んー手紙はね、読んでたんだけど……それどころじゃなかったからね。普通に。わかるでしょ?」
「さっき、話を聞いたから伝わった。そっちには、使者は行かなかったの?」
「……さぁ?どうだったろう?一所にはいられないからね。すれ違っていたのかもしれない。あんなにごった返しているところでは、俺一人見つけるのは無理だ。それより、あんな感染者だらけの中に来ていて大丈夫……じゃ、ないだろ?」
「……本当だ。ローズディアだけでも、大変なことになっているのに、隣国までって」
「まぁ、たぶん、国へ帰る前に、たぶん、どこかで倒れて療養所へ連れていかれたのかもしれないわ」
「それなら、いいけど……」
「南の領地は、酷かったって報告あったけど……」
「酷かった……の一言では、とてもじゃないですけど」
「そうか……アンバー領はアンナのおかげで、一人の感染者も出ずに……えっと……一人でたんだっけ?」
「領地外から入ってきたから、違いますよ」
「そっか。そうだね。南の領地の復興は、少しでも力になれることがあれば、アンバー領も何かするつもりだよ」
「それはいい。本当に、ひどかったから。特に麦の収穫時期だったから、今年の収穫はほとんど見込めないって話を聞いているので、今後の公からの支援要請しだい」
「そうね。領地には、備蓄もあるから、他の領地より、余裕があるし……これは、商売のねらい目でもあるから、出し惜しみはしないわ!」


 両の拳を握り、やってやるわ!と言うと、二人に見られた。何を考えているのかは、わかる。商魂たくましく次へ繋がる取引をできるよう、ニコライとちゃんと話合わないといけないと話せば、ため息が漏れるのは必然であった。


「そういや、さっき言ってた、ウェスティン伯爵?」
「あの女伯爵か……」


 ジョージアは苦手意識がついたのか、ちょっと、ウンザリした声が漏れてくるが、ウィルはまだ、見知らぬダリアに少し興味があるようだった。


「それで、チェスで勝って、伯爵が欲しいと言って、アンナは何をしようとしているの?まだ、何も聞いていないよ?」


 ジョージアは、私のほうを見て、なんとなく、無茶なこと言い出すんだよねと言っているあたり、さすが、私の旦那様だと、心から笑みがこぼれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

悲恋を気取った侯爵夫人の末路

三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。 順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。 悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──? カクヨムにも公開してます。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

逃した番は他国に嫁ぐ

基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」 婚約者との茶会。 和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。 獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。 だから、グリシアも頷いた。 「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」 グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。 こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...