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南の領地での報告会Ⅷ
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「それで、何を考えているの?」
「もしものときのために、医術が使える近衛が欲しいなって。戦争が、もし、起こったとき、少しでも兵が生きられるようにと思って」
「確かに。それは、考えたこともなかったわ。応急処置は、それぞれは習うけど、医術が使える近衛か……今は、そういうものはいないの?」
「ほとんどいない。応急処置に毛が生えたくらいかな。俺の隊にいるのも」
私は腕を組みながら、うーんと悩む。戦争は、命の取り合いだ。兵は兵と捨て置く王が多いのも昔の歴史を辿れば多いことも知っている。
「貴族も一緒なのよね。領民が徴兵で戦場に送られたとしても、領民を人とも思わないものもいる。今のように、大規模な戦争を百年単位でしていないから、備えもないのが現状だし……」
「確かに。大規模な戦場の場合、矢面に出るのは、各地から集められた領民だな」
「それなら、私は、アンバー領やコーコナ領の民を守るために、何かしないといけないわね。補給部隊がいいですとは、言えないでしょうから」
「そのために何か技術をつけるのか?」
「……それは、違う気はするけど、少しイチアと話をしてみるわ。私だけでは、さすがに思いつかないし」
「あぁ、その方がいいな。もしもときの備えを姫さんはずっとしてきたんだから、領民への備えも十分にあったほうがいい」
私は頷きながら、ウィルの言葉を書き留めた。
近衛に医術ができるものがいれば、今回のようなときにも、派遣できるわね。それなら、国としても、変な褒賞は出さなくていいだろうし、賢い方法があるはずね。
「ウィルは、さすがの目の付けどころね。今回の件で、先を見据えられるのは、いいわ!公も夜会で言ったように、アンバー領を学都とする予定で、医者を育てる機関を作るつもりなのよ。まだ、もう少し先だと考えていたけど、ゆっくりもしていられないわね?」
「そうだな。医術って、難しいんだろ?」
「みたいね。私は全然わからないけど、今回の件で、ヨハンに対する評価が貴族の中でとてもあがっているから、寄付金やら出資金やらを募れば、すぐに大きなお金が動くことになると思う。ヨハンの助手たちの引き抜きも激化するかもしれないし……その前に、手を打たないといけないわね」
「何かあるの?」
「公に3年から6年の間、アンバー領へ医術を学びに来たものを外には出さないと制約でもさせましょう。アンバー領で学びたかったら、その制約の元、勉強してもらうということで」
なるほどなと感心しているウィルであったが、何か引っかかることもあるらしく、ちょっといいかと?と続いた。なんとなく言いたいことはわかったので、先に言わせてもらうことにした。
「ウィルが考えていることは、実践だよね?本で学んだり、先生となるものから学んだとしても、実際、現場に出てみてどうかってことでしょ?」
「そう、よくわかったな?」
「もちろん。私がそうだからね。まずは、やってみるって……ただ、私のやってみると受け入れた人たちのやってみるでは、少々、重さが違うわね。医術は直接人の命に関わることだから」
「あぁ、だからこそ、現場にでるべきだとは思うんだけど……」
「医術を学んですぐの人に診てほしいと思う?」
「いいや、思わないな」
「よくて、五人で班を作っての巡回ね」
「どういうこと?」
私の提案をウィルは聞きたがった。元々近衛にも取り入れたいと言った手前、腕っぷしもそこそこ欲しいとか考えているのだろう。
「私が今、思いつくまま考えたのは、四人の生徒と一人の教師役が班になって、許可を得た領地で研修をするというものよ。いろいろな事態を考えて、2班ずつがいいと思うけど」
「なるほど。それには、ヨハン教授の助手が引き抜きをされると、難しいな?」
「最初の集める人員は、領地の町医者の助手や見習いをしているものを重点的に教えたらいいと思うのよね?」
「たしか、南の領地で、どうかしら?とか言ってたやつらがいたな」
私が町医者を探し回った領地では、そういう話をした。そのとき出会った助手や見習い、医師たちは、私の提案を快く受けてくれそうだった。
まだ、こちらの受け入れが整わないので、もう少し待ってくれと言ってあるが、本格的に公からも話があった今、準備を早急に整えないといけない。
「今なら、アンバー領に近衛を借りているから、その中から手をあげてくれる人がいれば、同時進行で、準備ができそうよ?ただ、近衛には、応急処置の心得しかないから、最低でも5,6年の月日をようするかもしれないわ」
「人の命を扱うんだ。月日は関係ないと思う。ただ、人を育てるには、毎年、一定数のものが、その勉学について行かないと、近衛の入れ替わりも激しいから……」
「そうね。そのあたり……これは、公や宰相と相談する案件ね。領地に帰る前に会いに行きましょう。もちろん、ウィルも一緒にね」
「……こんなときに、セバスがいてくれたら、心強いのにな」
「セバスはセバスで、今は、戦っているのですもの。頼れないし、むしろ、私たちが援護しないといけないわ!」
ウィルの提案をメモし、公への面会の手配、イチアへの受け入れについての相談の手紙を書かないといけなくなった。少しでも、苦しむ人が減るように……私だけでなく、ウィルからの提案が何より嬉しい。
「もしものときのために、医術が使える近衛が欲しいなって。戦争が、もし、起こったとき、少しでも兵が生きられるようにと思って」
「確かに。それは、考えたこともなかったわ。応急処置は、それぞれは習うけど、医術が使える近衛か……今は、そういうものはいないの?」
「ほとんどいない。応急処置に毛が生えたくらいかな。俺の隊にいるのも」
私は腕を組みながら、うーんと悩む。戦争は、命の取り合いだ。兵は兵と捨て置く王が多いのも昔の歴史を辿れば多いことも知っている。
「貴族も一緒なのよね。領民が徴兵で戦場に送られたとしても、領民を人とも思わないものもいる。今のように、大規模な戦争を百年単位でしていないから、備えもないのが現状だし……」
「確かに。大規模な戦場の場合、矢面に出るのは、各地から集められた領民だな」
「それなら、私は、アンバー領やコーコナ領の民を守るために、何かしないといけないわね。補給部隊がいいですとは、言えないでしょうから」
「そのために何か技術をつけるのか?」
「……それは、違う気はするけど、少しイチアと話をしてみるわ。私だけでは、さすがに思いつかないし」
「あぁ、その方がいいな。もしもときの備えを姫さんはずっとしてきたんだから、領民への備えも十分にあったほうがいい」
私は頷きながら、ウィルの言葉を書き留めた。
近衛に医術ができるものがいれば、今回のようなときにも、派遣できるわね。それなら、国としても、変な褒賞は出さなくていいだろうし、賢い方法があるはずね。
「ウィルは、さすがの目の付けどころね。今回の件で、先を見据えられるのは、いいわ!公も夜会で言ったように、アンバー領を学都とする予定で、医者を育てる機関を作るつもりなのよ。まだ、もう少し先だと考えていたけど、ゆっくりもしていられないわね?」
「そうだな。医術って、難しいんだろ?」
「みたいね。私は全然わからないけど、今回の件で、ヨハンに対する評価が貴族の中でとてもあがっているから、寄付金やら出資金やらを募れば、すぐに大きなお金が動くことになると思う。ヨハンの助手たちの引き抜きも激化するかもしれないし……その前に、手を打たないといけないわね」
「何かあるの?」
「公に3年から6年の間、アンバー領へ医術を学びに来たものを外には出さないと制約でもさせましょう。アンバー領で学びたかったら、その制約の元、勉強してもらうということで」
なるほどなと感心しているウィルであったが、何か引っかかることもあるらしく、ちょっといいかと?と続いた。なんとなく言いたいことはわかったので、先に言わせてもらうことにした。
「ウィルが考えていることは、実践だよね?本で学んだり、先生となるものから学んだとしても、実際、現場に出てみてどうかってことでしょ?」
「そう、よくわかったな?」
「もちろん。私がそうだからね。まずは、やってみるって……ただ、私のやってみると受け入れた人たちのやってみるでは、少々、重さが違うわね。医術は直接人の命に関わることだから」
「あぁ、だからこそ、現場にでるべきだとは思うんだけど……」
「医術を学んですぐの人に診てほしいと思う?」
「いいや、思わないな」
「よくて、五人で班を作っての巡回ね」
「どういうこと?」
私の提案をウィルは聞きたがった。元々近衛にも取り入れたいと言った手前、腕っぷしもそこそこ欲しいとか考えているのだろう。
「私が今、思いつくまま考えたのは、四人の生徒と一人の教師役が班になって、許可を得た領地で研修をするというものよ。いろいろな事態を考えて、2班ずつがいいと思うけど」
「なるほど。それには、ヨハン教授の助手が引き抜きをされると、難しいな?」
「最初の集める人員は、領地の町医者の助手や見習いをしているものを重点的に教えたらいいと思うのよね?」
「たしか、南の領地で、どうかしら?とか言ってたやつらがいたな」
私が町医者を探し回った領地では、そういう話をした。そのとき出会った助手や見習い、医師たちは、私の提案を快く受けてくれそうだった。
まだ、こちらの受け入れが整わないので、もう少し待ってくれと言ってあるが、本格的に公からも話があった今、準備を早急に整えないといけない。
「今なら、アンバー領に近衛を借りているから、その中から手をあげてくれる人がいれば、同時進行で、準備ができそうよ?ただ、近衛には、応急処置の心得しかないから、最低でも5,6年の月日をようするかもしれないわ」
「人の命を扱うんだ。月日は関係ないと思う。ただ、人を育てるには、毎年、一定数のものが、その勉学について行かないと、近衛の入れ替わりも激しいから……」
「そうね。そのあたり……これは、公や宰相と相談する案件ね。領地に帰る前に会いに行きましょう。もちろん、ウィルも一緒にね」
「……こんなときに、セバスがいてくれたら、心強いのにな」
「セバスはセバスで、今は、戦っているのですもの。頼れないし、むしろ、私たちが援護しないといけないわ!」
ウィルの提案をメモし、公への面会の手配、イチアへの受け入れについての相談の手紙を書かないといけなくなった。少しでも、苦しむ人が減るように……私だけでなく、ウィルからの提案が何より嬉しい。
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