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南の領地での報告会Ⅱ

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「ジョージア様のお許しが出たことだし、ウィルを呼びましょう。リアン、手紙を書くから、近衛の訓練場へ届けてくれるかしら?」


 二つ返事でリアンが手配してくれるので、私も執務室へと向かう。ウィルへの手紙は簡素なもので、許しが出たからお昼から来てとサラサラ書き、リアンへ渡す。
 あとは、本人がレオやミアを連れて、来てくれるだけなのだが、もしかしたら、子どもたちは、あとから来るのではないかと考えていた。


「さて、セバス空の報告書とウェスティン伯爵への手紙を書きましょうか」


 届いている手紙を読めば、刻一刻と状況が変わり、セバスがエルドアのタヌキたちに負けないよう粘っている様子がわかる。


「やっぱり、好戦的な貴族が多いのね……エルドアって。負けたときのことは、考えないのかしら?それとも、エルドアの中枢部には、インゼロの戦争屋が混じっているのかしら?商人として、貴族たちに取り入ると聞いたことがあるのよね」


 ニコライが言っていた話を思い出す。ハニーアンバー店は、三国展開している唯一の店だった。情報を得るためにそうしているところではあるのだが、定期的にニコライが自ら店を回って、貴族との繋がりを作る役目を担っている。
 特にエルドアに対しては、融通のきく貴族が少ないことから、ニコライを通していることが多かった。
 後ろ盾が私だと、警戒する貴族も多いのだが、奥様の、愛人たちの、娘のお願いに弱いものたちは、仕方なくでも、ニコライを屋敷に呼ぶことも多い。
 ニコライの言葉を借りるなら、女性の飽くなき美に対する熱意は、お金になりますからね!と豪語するように、エルドアでの売り上げも他国の商店と考えれば、決して少なくはなかった。


「今、インゼロから入ってきているものは何かしら?娯楽的なもの?それとも快楽的なもの?食べ物?嗜好品?」


 ニコライが送ってきてくれたリストを見ながら、貴族たちの動向を探ってみながら、セバスの報告を読んだ。

「ん……どうなのかしら?店先に並ぶのは、どれもこれも、普通に扱われているものばかりだわ。ひとつあるとすれば、ほんの軽い媚薬。お遊びようの香水みたいなものね。高級娼館なんかにあるようなものだわ。街で売るのは、どうかしていると思うけど……うちの今年の目玉に揃えて来ているのかしら?」
「それは、どういうこと?」
「ジョージア様」


 子どもたちに勉強を教えてきたようで、執務室へ入ってきた。私がブツブツと話しているのを聞いて質問をしてきたのだ。


「今年のハニーアンバー店の目玉商品は、香水としました。今までとは違い、小さな瓶で、試してもらったり、新しい香りに挑戦したり……」
「領地で開発していたものだったね?」
「えぇ、そうです。それに対抗するように、エルドアでは媚薬が売られているのですよね。インゼロ製の」
「何か繋がりが?」
「あるのか、どうかは、正直わかりませんけど、どういうわけか、瓶が似ているという噂を聞きつけて、ニコライがその実物を手に入れるために動いてくれているようなのです」
「商売敵が、貴族たちに取り入ったということ?」


 コクと頷くと、その影響について話してほしいとソファにかけた。私もそちらに移動して、南の領地での媚薬が使われていたことを話した。ジニーが使っていた物について話すと、ジョージアも難しい顔になる。


「それって、エルドアの貴族の中にも、ジニーのようなもの混ざっているということ?」
「その可能性がありますね。ニコライにお願いして調べてもらいたいところですが、これは、ヒーナのようなものが後ろにいる可能性が高いので、これ以上の調査は控えるように連絡をします。ディルの子猫がついていたとしても、向こうは本物ですからね。ニコライを失うわけにはいきませんから」
「ヒーナのようなものたちは、どこにいるのだ?」
「可能性の高いのは、高級娼館ですよ。夜会での情報と差分ないくらいの上質な情報は、ベッドの上から取れるものらしいですからね」
「へぇーそうなんだ?」
「興味ありますか?」
「……いや、ねぇ?」
「行ってきてもかまいませんよ?」
「二度と、アンバーの扉は開かれることがなさそうだから、やめておくよ。それにしても、アンナの周りには、そういうところへ行く人っているのかい?」
「いないから、困っているのですよ……一人、心当たりはありますけど、今年は病が流行った関係で、ミネルバにくれぐれもアンバー領を越えること無きよう伝えてあるので、大人しく領地にいるのでしょうけど」
「あぁ、黒の貴族?」
「そうです。あの方なら、喜んで向かってくれそうですけど、よそ様の旦那様にお願いすることではありませんからね」


 確かにとジョージアが苦笑いをする。何度か、ニコライの手紙を読み直しているジョージアが、ふと穀物のことで気が付いたようだ。


「今年は、エルドアでも豊作だと聞いていたが、穀物の輸入が多いんだな?」
「本当ですか?」
「あぁ、確か……昨年の報告が」


 立ち上がり、本棚の一角へ向かった。私のいない間に他の国の動向を報告という形でまとめてあるものが国から渡されることがある。ジョージアは私が広い視野で見てという話から、公にお願いして取り寄せてくれていたようだ。


「ここだ。1割から2割程度ではあるが、輸入量が増えている。インゼロからだから、何かあるのかもしれないな?」


 ジョージアに見せてもらった報告書と見比べながら、把握しているエルドアの情報を纏めることにした。
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