982 / 1,480
南の領地での報告会Ⅱ
しおりを挟む
「ジョージア様のお許しが出たことだし、ウィルを呼びましょう。リアン、手紙を書くから、近衛の訓練場へ届けてくれるかしら?」
二つ返事でリアンが手配してくれるので、私も執務室へと向かう。ウィルへの手紙は簡素なもので、許しが出たからお昼から来てとサラサラ書き、リアンへ渡す。
あとは、本人がレオやミアを連れて、来てくれるだけなのだが、もしかしたら、子どもたちは、あとから来るのではないかと考えていた。
「さて、セバス空の報告書とウェスティン伯爵への手紙を書きましょうか」
届いている手紙を読めば、刻一刻と状況が変わり、セバスがエルドアのタヌキたちに負けないよう粘っている様子がわかる。
「やっぱり、好戦的な貴族が多いのね……エルドアって。負けたときのことは、考えないのかしら?それとも、エルドアの中枢部には、インゼロの戦争屋が混じっているのかしら?商人として、貴族たちに取り入ると聞いたことがあるのよね」
ニコライが言っていた話を思い出す。ハニーアンバー店は、三国展開している唯一の店だった。情報を得るためにそうしているところではあるのだが、定期的にニコライが自ら店を回って、貴族との繋がりを作る役目を担っている。
特にエルドアに対しては、融通のきく貴族が少ないことから、ニコライを通していることが多かった。
後ろ盾が私だと、警戒する貴族も多いのだが、奥様の、愛人たちの、娘のお願いに弱いものたちは、仕方なくでも、ニコライを屋敷に呼ぶことも多い。
ニコライの言葉を借りるなら、女性の飽くなき美に対する熱意は、お金になりますからね!と豪語するように、エルドアでの売り上げも他国の商店と考えれば、決して少なくはなかった。
「今、インゼロから入ってきているものは何かしら?娯楽的なもの?それとも快楽的なもの?食べ物?嗜好品?」
ニコライが送ってきてくれたリストを見ながら、貴族たちの動向を探ってみながら、セバスの報告を読んだ。
「ん……どうなのかしら?店先に並ぶのは、どれもこれも、普通に扱われているものばかりだわ。ひとつあるとすれば、ほんの軽い媚薬。お遊びようの香水みたいなものね。高級娼館なんかにあるようなものだわ。街で売るのは、どうかしていると思うけど……うちの今年の目玉に揃えて来ているのかしら?」
「それは、どういうこと?」
「ジョージア様」
子どもたちに勉強を教えてきたようで、執務室へ入ってきた。私がブツブツと話しているのを聞いて質問をしてきたのだ。
「今年のハニーアンバー店の目玉商品は、香水としました。今までとは違い、小さな瓶で、試してもらったり、新しい香りに挑戦したり……」
「領地で開発していたものだったね?」
「えぇ、そうです。それに対抗するように、エルドアでは媚薬が売られているのですよね。インゼロ製の」
「何か繋がりが?」
「あるのか、どうかは、正直わかりませんけど、どういうわけか、瓶が似ているという噂を聞きつけて、ニコライがその実物を手に入れるために動いてくれているようなのです」
「商売敵が、貴族たちに取り入ったということ?」
コクと頷くと、その影響について話してほしいとソファにかけた。私もそちらに移動して、南の領地での媚薬が使われていたことを話した。ジニーが使っていた物について話すと、ジョージアも難しい顔になる。
「それって、エルドアの貴族の中にも、ジニーのようなもの混ざっているということ?」
「その可能性がありますね。ニコライにお願いして調べてもらいたいところですが、これは、ヒーナのようなものが後ろにいる可能性が高いので、これ以上の調査は控えるように連絡をします。ディルの子猫がついていたとしても、向こうは本物ですからね。ニコライを失うわけにはいきませんから」
「ヒーナのようなものたちは、どこにいるのだ?」
「可能性の高いのは、高級娼館ですよ。夜会での情報と差分ないくらいの上質な情報は、ベッドの上から取れるものらしいですからね」
「へぇーそうなんだ?」
「興味ありますか?」
「……いや、ねぇ?」
「行ってきてもかまいませんよ?」
「二度と、アンバーの扉は開かれることがなさそうだから、やめておくよ。それにしても、アンナの周りには、そういうところへ行く人っているのかい?」
「いないから、困っているのですよ……一人、心当たりはありますけど、今年は病が流行った関係で、ミネルバにくれぐれもアンバー領を越えること無きよう伝えてあるので、大人しく領地にいるのでしょうけど」
「あぁ、黒の貴族?」
「そうです。あの方なら、喜んで向かってくれそうですけど、よそ様の旦那様にお願いすることではありませんからね」
確かにとジョージアが苦笑いをする。何度か、ニコライの手紙を読み直しているジョージアが、ふと穀物のことで気が付いたようだ。
「今年は、エルドアでも豊作だと聞いていたが、穀物の輸入が多いんだな?」
「本当ですか?」
「あぁ、確か……昨年の報告が」
立ち上がり、本棚の一角へ向かった。私のいない間に他の国の動向を報告という形でまとめてあるものが国から渡されることがある。ジョージアは私が広い視野で見てという話から、公にお願いして取り寄せてくれていたようだ。
「ここだ。1割から2割程度ではあるが、輸入量が増えている。インゼロからだから、何かあるのかもしれないな?」
ジョージアに見せてもらった報告書と見比べながら、把握しているエルドアの情報を纏めることにした。
二つ返事でリアンが手配してくれるので、私も執務室へと向かう。ウィルへの手紙は簡素なもので、許しが出たからお昼から来てとサラサラ書き、リアンへ渡す。
あとは、本人がレオやミアを連れて、来てくれるだけなのだが、もしかしたら、子どもたちは、あとから来るのではないかと考えていた。
「さて、セバス空の報告書とウェスティン伯爵への手紙を書きましょうか」
届いている手紙を読めば、刻一刻と状況が変わり、セバスがエルドアのタヌキたちに負けないよう粘っている様子がわかる。
「やっぱり、好戦的な貴族が多いのね……エルドアって。負けたときのことは、考えないのかしら?それとも、エルドアの中枢部には、インゼロの戦争屋が混じっているのかしら?商人として、貴族たちに取り入ると聞いたことがあるのよね」
ニコライが言っていた話を思い出す。ハニーアンバー店は、三国展開している唯一の店だった。情報を得るためにそうしているところではあるのだが、定期的にニコライが自ら店を回って、貴族との繋がりを作る役目を担っている。
特にエルドアに対しては、融通のきく貴族が少ないことから、ニコライを通していることが多かった。
後ろ盾が私だと、警戒する貴族も多いのだが、奥様の、愛人たちの、娘のお願いに弱いものたちは、仕方なくでも、ニコライを屋敷に呼ぶことも多い。
ニコライの言葉を借りるなら、女性の飽くなき美に対する熱意は、お金になりますからね!と豪語するように、エルドアでの売り上げも他国の商店と考えれば、決して少なくはなかった。
「今、インゼロから入ってきているものは何かしら?娯楽的なもの?それとも快楽的なもの?食べ物?嗜好品?」
ニコライが送ってきてくれたリストを見ながら、貴族たちの動向を探ってみながら、セバスの報告を読んだ。
「ん……どうなのかしら?店先に並ぶのは、どれもこれも、普通に扱われているものばかりだわ。ひとつあるとすれば、ほんの軽い媚薬。お遊びようの香水みたいなものね。高級娼館なんかにあるようなものだわ。街で売るのは、どうかしていると思うけど……うちの今年の目玉に揃えて来ているのかしら?」
「それは、どういうこと?」
「ジョージア様」
子どもたちに勉強を教えてきたようで、執務室へ入ってきた。私がブツブツと話しているのを聞いて質問をしてきたのだ。
「今年のハニーアンバー店の目玉商品は、香水としました。今までとは違い、小さな瓶で、試してもらったり、新しい香りに挑戦したり……」
「領地で開発していたものだったね?」
「えぇ、そうです。それに対抗するように、エルドアでは媚薬が売られているのですよね。インゼロ製の」
「何か繋がりが?」
「あるのか、どうかは、正直わかりませんけど、どういうわけか、瓶が似ているという噂を聞きつけて、ニコライがその実物を手に入れるために動いてくれているようなのです」
「商売敵が、貴族たちに取り入ったということ?」
コクと頷くと、その影響について話してほしいとソファにかけた。私もそちらに移動して、南の領地での媚薬が使われていたことを話した。ジニーが使っていた物について話すと、ジョージアも難しい顔になる。
「それって、エルドアの貴族の中にも、ジニーのようなもの混ざっているということ?」
「その可能性がありますね。ニコライにお願いして調べてもらいたいところですが、これは、ヒーナのようなものが後ろにいる可能性が高いので、これ以上の調査は控えるように連絡をします。ディルの子猫がついていたとしても、向こうは本物ですからね。ニコライを失うわけにはいきませんから」
「ヒーナのようなものたちは、どこにいるのだ?」
「可能性の高いのは、高級娼館ですよ。夜会での情報と差分ないくらいの上質な情報は、ベッドの上から取れるものらしいですからね」
「へぇーそうなんだ?」
「興味ありますか?」
「……いや、ねぇ?」
「行ってきてもかまいませんよ?」
「二度と、アンバーの扉は開かれることがなさそうだから、やめておくよ。それにしても、アンナの周りには、そういうところへ行く人っているのかい?」
「いないから、困っているのですよ……一人、心当たりはありますけど、今年は病が流行った関係で、ミネルバにくれぐれもアンバー領を越えること無きよう伝えてあるので、大人しく領地にいるのでしょうけど」
「あぁ、黒の貴族?」
「そうです。あの方なら、喜んで向かってくれそうですけど、よそ様の旦那様にお願いすることではありませんからね」
確かにとジョージアが苦笑いをする。何度か、ニコライの手紙を読み直しているジョージアが、ふと穀物のことで気が付いたようだ。
「今年は、エルドアでも豊作だと聞いていたが、穀物の輸入が多いんだな?」
「本当ですか?」
「あぁ、確か……昨年の報告が」
立ち上がり、本棚の一角へ向かった。私のいない間に他の国の動向を報告という形でまとめてあるものが国から渡されることがある。ジョージアは私が広い視野で見てという話から、公にお願いして取り寄せてくれていたようだ。
「ここだ。1割から2割程度ではあるが、輸入量が増えている。インゼロからだから、何かあるのかもしれないな?」
ジョージアに見せてもらった報告書と見比べながら、把握しているエルドアの情報を纏めることにした。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜
O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。
しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。
…無いんだったら私が作る!
そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
【短編版】カイルとシャルロットの冒険
神谷モロ
ファンタジー
俺の名前はカイル・ラングレン。
平民の生まれでたまたま魔力適性があったのか、魔法学院に入学することが出来た。
だが、劣等生だった俺は貴族に馬鹿にされる学生生活を送っていた。
だけど、それも、今は懐かしい、戻れるならあの日に戻りたいと思うことがある。
平和だったのだ。
ある日、突然、ドラゴンの襲撃を受けて、俺たちの王国は滅んだ。
運よく生き延びた俺と同級生で年下の少女、シャルロットは冒険者として今、生きている。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる