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お星を掴んできましたわⅤ
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後ろでクスっと笑ったのはウィル。目標としていた学都に向けて、強力な後ろ盾を得られることになった。
ただ、アンバー領。細々と階段を上るように領地の改善をしていっている中で、急には人を受け入れる準備は、もちろんない。
領地へ帰ってから、イチアに相談だな……と考えていたが、いつだったか語ったアンバー領の未来が、形になっていっていることをウィルも感じたのだろう。
途方もない道のりだと思っていたけど……みなのおかげで、道は少しずつでも前に進んで行っていたのね。
公の手を離し、ウィルに立ち上がるように促す。今度は、ウィルが勲章授与される番だ。
一歩引くと、ウィルが立ちあがる。
「ウィル・サーラーには、近衛を代表して、アンバー公爵とヨハン教授の護衛をしてもらっていた。病の流行る南の領地での活動、アンバー公からも報告を受けている。この度、インゼロ帝国から流れてきた戦争屋への牽制も見事であったと聞いている。疲弊した国をアンバー公と共に守ってくれたこと、感謝する」
「ありがたき幸せ。ローズディア公国は、我が祖国。守ることは、近衛ならば当たり前でございます」
「今回のこと、サーラーが前線に出ていなければ、もしかしてもあったかもしれぬ。エルドアからも、防衛のためにあちらよりに来てほしいという要望があったくらいだからな……この国で、そなたを知るものは、それほど多くないかもしれないが、他国には、その名が聞こえていっているようだ」
「……それは、名誉なことです。若輩者でありながら、他国でどのようなかたちであれ、名が広まることは、ローズディアにウィル・サーラーありと。これもアンバー公アンナリーゼがあってのことです」
「ここでも、アンナリーゼか?」
「えぇ、私が、いち近衛ではなく、隊長になろうと目指したきっかけですから」
ニコリと笑いかけるウィルに、公は頷いた。宰相から、勲章を受取り、ウィルの胸元へつける。今日は、式典も兼ねているので、今までもらったものまでついているその胸元へ、新しい星が輝く。
私も、公がウィルの胸元に星をつけているのをジッと見つめていた。数年で、この星の数は、やはり異例ではある。輝く星をみて満足に頷いた。
公は私とウィルの間に歩み出た。
「後ろを向け」
そう言われ、階段の方を向けば、私は右手をウィルは左手を取られ、公は両手で私たちの手をあげて私たちが星を掴んだことをみなに示した。
「なんだか、変な感じだな……アンナリーゼが真ん中にいて、右にウィル、左にナタリー、そのとなりにセバスがいつもいるのが、俺のイメージだが……」
「残念です、公。ジョージア様がいないですよ。あの人、姫さ……アンナリーゼ様のこととなると、見境なくなるんで……そこは、ナタリーではなくてですね?」
「ジョージアというのか。それなら、右隣にしてやりたいが……ウィルは、右側を譲る気はないのか?」
「……あぁ、そっか。右隣が……ジョージア様」
「ジョージアもウィルたちにまで……」
「違いますよ?ウィルは、私にとって右腕です。だから、領地での席は、私の右隣。ジョージア様が左隣。私たちにとっての常識なんです」
「そんな席順まであるのか?」
えぇと返答すると、少し驚いたようにこちらを見てくる。
「俺にもそんな人物がいれば、少しは違ったのだろうか?」
「そうですね。これからでも、遅くないですよ?」
「遅いだろう。もう……」
「何故です?公は、その席に座ったのは、ほんの少し前。今からでも、見つけたらいいじゃないですか?」
「そういうのは、権力を持つ前から、見つけておくものではないのか?」
ふふっ、そうですねと答えると大きなため息をついた。アンナリーゼが悪いのだと呟いた公を見上げると、こちら睨む。何か言いたげであるので、どうぞと言えば、遠慮なしだった。
「アンナリーゼが俺の求婚を断らなければよかったんだ」
「……それは、何度もお断りしていますけど?」
「普通は、断らないものだぞ?公世子だったのだから。年上はいやだった……のか?」
「……それは、関係なくないですか?」
「何故だ?ウィル」
「たぶんですけど、ノクトに求婚されれば、喜んで嫁に行くと思うんですよね?常勝将軍の隣で、軍師イチアと共に勇ましく剣を携えて……」
「ウィル!」
視線を上に向け、考えているそぶりをする公を肘でつついてやると、なんだ?と見下ろしてきた。
「ジョージアがいなければ、そういう未来もありえたということか……」
「まぁ、ジョージア様と結婚してなければ、姫さんの王子様が絶対手放したりしなかったでしょうね?」
茶化すウィルを睨んで、私は階段を下りた。いつまでもここで、公とウィルのおもちゃにされては困る。一段下りたところで、持ち上げていた手を握り直し、公が耳元で囁く。
「一曲踊ろう」
「先程も踊りましたけど?」
「祝いごとだ、何度踊ってもいいだろう?」
「ウィルは、どうするのですか?」
「さすがに、男とは……踊りたくないなぁ?」
「では、公妃様と踊ってはいかがですか?まだ、公妃様と踊っていらっしゃらないのですから。ほら、ゴールド公爵への顔もたちますし」
ニッコリ笑うと、ため息を疲れてしまった。いい案だと思っているだろう?とちょっと棘のある声で私を詰ってから、手を離し、公妃へと視線をむける。
「踊らないか?一曲」
「アンナリーゼ様と踊るのではないですか?」
「聞こえていたのか?」
「もちろんですけど!」
「まだ、そなたと踊っていないだろう?せっかくの夜会だ。踊ろう」
降りかけた階段をのぼり、公妃の手を取った公は私たちに振り返り、一言言わせてくれと迫る。
「アンナリーゼとウィルも一緒に踊れ!これは、命令だ!」
「……だ、そうよ?」
「……俺、姫さんと踊るのは、バルコニーだけで十分です」
絶対だと譲ってくれそうにない公にウィルと視線を合わせて渋々大広間へと歩み出す。エスコートはもちろんしてくれたので、階段から落ちることはなかったが、まさかの公の反撃に手を取り合って踊る。まさかに2回目に、二人とも苦笑いだった。
ただ、アンバー領。細々と階段を上るように領地の改善をしていっている中で、急には人を受け入れる準備は、もちろんない。
領地へ帰ってから、イチアに相談だな……と考えていたが、いつだったか語ったアンバー領の未来が、形になっていっていることをウィルも感じたのだろう。
途方もない道のりだと思っていたけど……みなのおかげで、道は少しずつでも前に進んで行っていたのね。
公の手を離し、ウィルに立ち上がるように促す。今度は、ウィルが勲章授与される番だ。
一歩引くと、ウィルが立ちあがる。
「ウィル・サーラーには、近衛を代表して、アンバー公爵とヨハン教授の護衛をしてもらっていた。病の流行る南の領地での活動、アンバー公からも報告を受けている。この度、インゼロ帝国から流れてきた戦争屋への牽制も見事であったと聞いている。疲弊した国をアンバー公と共に守ってくれたこと、感謝する」
「ありがたき幸せ。ローズディア公国は、我が祖国。守ることは、近衛ならば当たり前でございます」
「今回のこと、サーラーが前線に出ていなければ、もしかしてもあったかもしれぬ。エルドアからも、防衛のためにあちらよりに来てほしいという要望があったくらいだからな……この国で、そなたを知るものは、それほど多くないかもしれないが、他国には、その名が聞こえていっているようだ」
「……それは、名誉なことです。若輩者でありながら、他国でどのようなかたちであれ、名が広まることは、ローズディアにウィル・サーラーありと。これもアンバー公アンナリーゼがあってのことです」
「ここでも、アンナリーゼか?」
「えぇ、私が、いち近衛ではなく、隊長になろうと目指したきっかけですから」
ニコリと笑いかけるウィルに、公は頷いた。宰相から、勲章を受取り、ウィルの胸元へつける。今日は、式典も兼ねているので、今までもらったものまでついているその胸元へ、新しい星が輝く。
私も、公がウィルの胸元に星をつけているのをジッと見つめていた。数年で、この星の数は、やはり異例ではある。輝く星をみて満足に頷いた。
公は私とウィルの間に歩み出た。
「後ろを向け」
そう言われ、階段の方を向けば、私は右手をウィルは左手を取られ、公は両手で私たちの手をあげて私たちが星を掴んだことをみなに示した。
「なんだか、変な感じだな……アンナリーゼが真ん中にいて、右にウィル、左にナタリー、そのとなりにセバスがいつもいるのが、俺のイメージだが……」
「残念です、公。ジョージア様がいないですよ。あの人、姫さ……アンナリーゼ様のこととなると、見境なくなるんで……そこは、ナタリーではなくてですね?」
「ジョージアというのか。それなら、右隣にしてやりたいが……ウィルは、右側を譲る気はないのか?」
「……あぁ、そっか。右隣が……ジョージア様」
「ジョージアもウィルたちにまで……」
「違いますよ?ウィルは、私にとって右腕です。だから、領地での席は、私の右隣。ジョージア様が左隣。私たちにとっての常識なんです」
「そんな席順まであるのか?」
えぇと返答すると、少し驚いたようにこちらを見てくる。
「俺にもそんな人物がいれば、少しは違ったのだろうか?」
「そうですね。これからでも、遅くないですよ?」
「遅いだろう。もう……」
「何故です?公は、その席に座ったのは、ほんの少し前。今からでも、見つけたらいいじゃないですか?」
「そういうのは、権力を持つ前から、見つけておくものではないのか?」
ふふっ、そうですねと答えると大きなため息をついた。アンナリーゼが悪いのだと呟いた公を見上げると、こちら睨む。何か言いたげであるので、どうぞと言えば、遠慮なしだった。
「アンナリーゼが俺の求婚を断らなければよかったんだ」
「……それは、何度もお断りしていますけど?」
「普通は、断らないものだぞ?公世子だったのだから。年上はいやだった……のか?」
「……それは、関係なくないですか?」
「何故だ?ウィル」
「たぶんですけど、ノクトに求婚されれば、喜んで嫁に行くと思うんですよね?常勝将軍の隣で、軍師イチアと共に勇ましく剣を携えて……」
「ウィル!」
視線を上に向け、考えているそぶりをする公を肘でつついてやると、なんだ?と見下ろしてきた。
「ジョージアがいなければ、そういう未来もありえたということか……」
「まぁ、ジョージア様と結婚してなければ、姫さんの王子様が絶対手放したりしなかったでしょうね?」
茶化すウィルを睨んで、私は階段を下りた。いつまでもここで、公とウィルのおもちゃにされては困る。一段下りたところで、持ち上げていた手を握り直し、公が耳元で囁く。
「一曲踊ろう」
「先程も踊りましたけど?」
「祝いごとだ、何度踊ってもいいだろう?」
「ウィルは、どうするのですか?」
「さすがに、男とは……踊りたくないなぁ?」
「では、公妃様と踊ってはいかがですか?まだ、公妃様と踊っていらっしゃらないのですから。ほら、ゴールド公爵への顔もたちますし」
ニッコリ笑うと、ため息を疲れてしまった。いい案だと思っているだろう?とちょっと棘のある声で私を詰ってから、手を離し、公妃へと視線をむける。
「踊らないか?一曲」
「アンナリーゼ様と踊るのではないですか?」
「聞こえていたのか?」
「もちろんですけど!」
「まだ、そなたと踊っていないだろう?せっかくの夜会だ。踊ろう」
降りかけた階段をのぼり、公妃の手を取った公は私たちに振り返り、一言言わせてくれと迫る。
「アンナリーゼとウィルも一緒に踊れ!これは、命令だ!」
「……だ、そうよ?」
「……俺、姫さんと踊るのは、バルコニーだけで十分です」
絶対だと譲ってくれそうにない公にウィルと視線を合わせて渋々大広間へと歩み出す。エスコートはもちろんしてくれたので、階段から落ちることはなかったが、まさかの公の反撃に手を取り合って踊る。まさかに2回目に、二人とも苦笑いだった。
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