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ゴールド公爵とその令息
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「ジョージア様は、楽しみだったんですか?」
「何が?」
「終わりの夜会にでることです。ここ数年、私と一緒に行動していましたから、出ていませんよね?」
「あぁ、終わりの夜会か。確かに楽しみだったかなぁ?アンナの考えているようなことではないけど」
「なんです?」
「ジョージアは、もっと、アンナリーゼを貴族たちに自慢したいんだろうさ」
「私をですか?」
「そうだ。結局、本人には伝わっていないようだがな……アンナリーゼのこと、本当に可愛いと思っているんだぞ?」
「そうなのですか?ジョージア様」
覗き込むようにジョージアを見上げると、少し頬を赤らめ視線を逸らしてしまった。
「公は何を言っているのか。確かにアンナは、国1番の美人で頭もよくて強いけども!」
ジョージアの後ろで大きなため息が聞こえてきたひょこっとそちらを見ると、ヒーナが、がっかりしたようにため息をついていた。
「どうしたの?」
「……何でもありません」
「何でもないことないよね?」
「……ヒーナは、たぶん、ジョージア様が不憫でならないのじゃないでしょうか?」
「アデル!」
「ヒーナ、きちんと思ったことは言わないと、伝わらないぞ?特にアンナリーゼ様に、察しては、至難の業だ」
「……アーデールゥ?」
「アデルも、不憫だよ」
大きなため息をジョージアとヒーナが同時にはいたので、公が笑い始めた。
「ヒーナと言ったか?アンバー公爵家にだいぶ馴染んだではないか?まだ、アンナリーゼに、あまり振り回されていないようだが、いい傾向だろう」
「……ありがとうございます」
不満そうな声と満面の笑みが合っていないが、貴族らしいと言えば貴族らしい。ヒーナは、どこで、そんなことを覚えたのか、少々変な方向に馴染んでしまったようだ。
「さて、無駄話はここまで。夜会が始まるから行こう。今日は、公妃も勲章授与のときは出席するからな。くれぐれも……」
「私が問題を起こしているわけでは、ありませんよ!公が、しっかり、手綱をひいてくれているか、スカートの裾を踏んでおいてください」
参りましょうか?とジョージアの手をとり、用意された部屋から、先に出ていく。やれやれ……という声が聞こえてきたが無視をして、扉を閉めた。
「そういや、なんとか伯爵って、いつ会うんだい?」
「たぶん、会場にいるのだと思います。とりあえず、私たちが、公に挨拶したあと、しばらくは、好きにしていてもいいと思いますよ。公が紹介してくれるって言っていたから、顔を知っていたとしても、近づかないでしょうから」
「なるほど、公への挨拶が終わってからだと、1時間後か。それまでのご予定はありますか?奥様」
「特にありませんよ?旦那様。あぁ、でも、挨拶にこられたら、お相手をしないといけない方も見えますから……」
大広間に入って前の方へ向かう途中、ゴールド公爵と目が合った。終わりの夜会は、私がこないので、独壇場のような場であったはずなのだから、その睨みは、真摯に受取っておく。
「ふぅ……嫌ですね。あの方から挨拶を受けないといけないとか」
「ゴールド公爵かい?」
「えぇ、そうです。たぶん、来ますよ?一応、嫡男を病から救ったのですから。どんなにバカな子でも、一応、次期公爵ですからね……見捨てられなくて、残念そうですね。あっ、ほら、そのバカな嫡男が隣にいますよ?」
クスクスと扇子で顔を隠して笑うと、ジョージアもゴールド公爵の方を見ていた。
「行きましょう。私たちには、私たちの順番がありますから」
公への挨拶をしないといけないので、1番前まで向かう。それに続き、貴族たちも爵位順に並び始めた。ゴールド公爵は、私たちの後ではあるが、近くにはまだ、来たくないのだろう。遠巻きに見られていた。
そんな中、一人の青年が私へと近づいてくる。見知った人とはいえ、一応、敵対しているはずの陣営なので、気軽に声をかけていいのだろうか?こういうところが、ゴールド公爵の機嫌を損なうのではないかと、こちらの方がヒヤヒヤする。
「アンナリーゼ様、お久しぶりでございます」
「あら、ルチル。久しぶりね!」
私の手をとり、甲にキスをする。本来ありえない光景に、みながシンっと静まり返った。
「あまり、そういうことを公の場でするものじゃなくてよ?」
「そうでしょうか?親愛なるアンナリーゼ様に会えたのですから、当然ではありませんか?」
「いいの?お父様がものすごい形相でこちらを睨んでいるわ!」
後ろのゴールド公爵を指摘してやると、苦笑いをするルチル。少し、寂しそうな目をしたあと、貴族らしく、ニコリと笑った。
「いいのですよ。私は、私であって、父とは違います」
向き直ってジョージアの方を見た。手を前に出してきて、挨拶する。握手を求めていたようで、ジョージアは躊躇いを見せず、その手を握り返した。
「どれくらいぶりでしょうか?初めて挨拶したとき以来です。ジョージア様とご挨拶できるなんて。ルチル・ゴールドです。南の領地では、奥様のアンナリーゼ様に助けられ、命拾いをしました。素晴らしい方を奥様に迎えられましたね。羨ましいです!」
社交辞令かとも思えた挨拶であったが、ジョージアは優しい微笑みをした。それは、私を一歩、ジョージアから遠ざけるに十分なものであった。
「何が?」
「終わりの夜会にでることです。ここ数年、私と一緒に行動していましたから、出ていませんよね?」
「あぁ、終わりの夜会か。確かに楽しみだったかなぁ?アンナの考えているようなことではないけど」
「なんです?」
「ジョージアは、もっと、アンナリーゼを貴族たちに自慢したいんだろうさ」
「私をですか?」
「そうだ。結局、本人には伝わっていないようだがな……アンナリーゼのこと、本当に可愛いと思っているんだぞ?」
「そうなのですか?ジョージア様」
覗き込むようにジョージアを見上げると、少し頬を赤らめ視線を逸らしてしまった。
「公は何を言っているのか。確かにアンナは、国1番の美人で頭もよくて強いけども!」
ジョージアの後ろで大きなため息が聞こえてきたひょこっとそちらを見ると、ヒーナが、がっかりしたようにため息をついていた。
「どうしたの?」
「……何でもありません」
「何でもないことないよね?」
「……ヒーナは、たぶん、ジョージア様が不憫でならないのじゃないでしょうか?」
「アデル!」
「ヒーナ、きちんと思ったことは言わないと、伝わらないぞ?特にアンナリーゼ様に、察しては、至難の業だ」
「……アーデールゥ?」
「アデルも、不憫だよ」
大きなため息をジョージアとヒーナが同時にはいたので、公が笑い始めた。
「ヒーナと言ったか?アンバー公爵家にだいぶ馴染んだではないか?まだ、アンナリーゼに、あまり振り回されていないようだが、いい傾向だろう」
「……ありがとうございます」
不満そうな声と満面の笑みが合っていないが、貴族らしいと言えば貴族らしい。ヒーナは、どこで、そんなことを覚えたのか、少々変な方向に馴染んでしまったようだ。
「さて、無駄話はここまで。夜会が始まるから行こう。今日は、公妃も勲章授与のときは出席するからな。くれぐれも……」
「私が問題を起こしているわけでは、ありませんよ!公が、しっかり、手綱をひいてくれているか、スカートの裾を踏んでおいてください」
参りましょうか?とジョージアの手をとり、用意された部屋から、先に出ていく。やれやれ……という声が聞こえてきたが無視をして、扉を閉めた。
「そういや、なんとか伯爵って、いつ会うんだい?」
「たぶん、会場にいるのだと思います。とりあえず、私たちが、公に挨拶したあと、しばらくは、好きにしていてもいいと思いますよ。公が紹介してくれるって言っていたから、顔を知っていたとしても、近づかないでしょうから」
「なるほど、公への挨拶が終わってからだと、1時間後か。それまでのご予定はありますか?奥様」
「特にありませんよ?旦那様。あぁ、でも、挨拶にこられたら、お相手をしないといけない方も見えますから……」
大広間に入って前の方へ向かう途中、ゴールド公爵と目が合った。終わりの夜会は、私がこないので、独壇場のような場であったはずなのだから、その睨みは、真摯に受取っておく。
「ふぅ……嫌ですね。あの方から挨拶を受けないといけないとか」
「ゴールド公爵かい?」
「えぇ、そうです。たぶん、来ますよ?一応、嫡男を病から救ったのですから。どんなにバカな子でも、一応、次期公爵ですからね……見捨てられなくて、残念そうですね。あっ、ほら、そのバカな嫡男が隣にいますよ?」
クスクスと扇子で顔を隠して笑うと、ジョージアもゴールド公爵の方を見ていた。
「行きましょう。私たちには、私たちの順番がありますから」
公への挨拶をしないといけないので、1番前まで向かう。それに続き、貴族たちも爵位順に並び始めた。ゴールド公爵は、私たちの後ではあるが、近くにはまだ、来たくないのだろう。遠巻きに見られていた。
そんな中、一人の青年が私へと近づいてくる。見知った人とはいえ、一応、敵対しているはずの陣営なので、気軽に声をかけていいのだろうか?こういうところが、ゴールド公爵の機嫌を損なうのではないかと、こちらの方がヒヤヒヤする。
「アンナリーゼ様、お久しぶりでございます」
「あら、ルチル。久しぶりね!」
私の手をとり、甲にキスをする。本来ありえない光景に、みながシンっと静まり返った。
「あまり、そういうことを公の場でするものじゃなくてよ?」
「そうでしょうか?親愛なるアンナリーゼ様に会えたのですから、当然ではありませんか?」
「いいの?お父様がものすごい形相でこちらを睨んでいるわ!」
後ろのゴールド公爵を指摘してやると、苦笑いをするルチル。少し、寂しそうな目をしたあと、貴族らしく、ニコリと笑った。
「いいのですよ。私は、私であって、父とは違います」
向き直ってジョージアの方を見た。手を前に出してきて、挨拶する。握手を求めていたようで、ジョージアは躊躇いを見せず、その手を握り返した。
「どれくらいぶりでしょうか?初めて挨拶したとき以来です。ジョージア様とご挨拶できるなんて。ルチル・ゴールドです。南の領地では、奥様のアンナリーゼ様に助けられ、命拾いをしました。素晴らしい方を奥様に迎えられましたね。羨ましいです!」
社交辞令かとも思えた挨拶であったが、ジョージアは優しい微笑みをした。それは、私を一歩、ジョージアから遠ざけるに十分なものであった。
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