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私、落としたい殿方がいるのです!
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リアンへ提案をした孤児たちの話は、すんなりまとまった。これを領地にいるイチアへ連絡をし、ヨハンの助手たちにいろいろと片付けてもらわないといけない。
「これ、イチアがいてくれて、本当に助かるわ……いなかったら、領地に帰ってから、大慌てでいろいろとしないといけないだろうし」
「孤児院の話?」
「そうです。孤児たちに部屋を与えて終わりではないですからね。生活ができるようにしないといけませんから」
「そうだね。食器類はさすがにあるし、台所も領主の屋敷だから揃っているけど、ベッドだけはね……早々に手配してもらわないといけないよね」
「部屋割りの話もありますしね……男女分けないといけないですから、いろいろと必要なものはありますし」
「……そう考えると、イチアに押し付けてしまって申し訳ないね?」
「そうなんですけど、向こうにはテクトたちもいますから」
「元大店の店主がいれば、心強いってことか」
ジョージアと執務室で孤児院のことを手紙に書いたことを話した。ちょうど、次の世代の話もイチアから聞いていたので、孤児たちへ教育をしたらどうかということも追記する。策士イチアのことだ。思い描く未来は、また、広がっていくように思えた。
「ところで」
「なんですか?」
「もおうすぐ、終わりの夜会の日だよね?アンナは、公から招待状をもらっているんだっけ?」
「えぇ、そうですよ。今年もお断りしようとしていたのですがね……たぶん、ゴールド侯爵がきますから」
「よほど嫌っているんだね?」
「そんなことないですよ?私に対して、裏表がなくて、好ましいとすら思っています」
「殺されそうになっているのに……」
「ジョージア様には手を出さないなら、いいじゃないですか?あと、子どもたちにも」
「もうすぐ、公世子の話をするつもりらしいけどね。アンナどころじゃないんだろうね?」
「あぁ、そんな話があるのですか?」
「しらばっくれちゃって……本当は知っているんだろ?」
コテリと首を傾げ、どうでしたかね?と笑っておく。公から以前に話をされたことがあっても、そこれは、私が決めることではなく、公が決めることだと伝えてある。ただ、後ろについている、ゴールド公爵のことも少しは考えておいたほうがいいとも言ってはあるので、もう少し、公世子を決めるのは、後になるのではないかと思っていた。
「ジョージア様は、どう思われますか?」
「公世子のこと?」
「えぇ、そうです。公妃の子が相応しいと思いますか?」
「……それは、なんとも。俺も会ったことがないからね。デビュタントもまだだろ?」
「そうでした。レオよりひとつ上ですか?」
「そうだったかな?来年あたりかもしれないな」
「デビュタントを向かえれば、一気にそういう話になりそうですね」
「アンバー公爵としては、何かするつもり?」
ジョージアの瞳が探るようにこちらを見てくるが、私は首を横に振る。
「そうなんだ?アンナのことだから、てっきり、第二妃の子を推薦するのかと思っていたよ?」
「そんなことはしませんよ。面倒ごとには巻き込まれたくないので。あと数年は、領地でのびのびと子育てをして……」
「子育て……と、いうより、アンナがのびのびと領地にいたいんじゃないの?」
「……ジョージア様は、公都の方が好きですか?」
少し考えているようで、どうだろう?と呟いた。しばらくしてから、微笑む。
「アンナがいる場所が、好きだな。領地で自由に走り回っているアンナはとても可愛らしいし、公都で澄ました顔してみなを虜にしているアンナは自慢だし、結局のところ、アンナという人間がいれば、俺はどこでもいいんだよ」
「本当ですか?」
「本当。でも、基本的に、俺のところからはすぐに飛んでいってしまうからなぁ……」
はぁ……と大仰にため息をつかれた。身に覚えのあることなので、反論もできずだ。
ただ、それでもいいとジョージアの目は言っているので、ありがとうと呟いた。
「どういたしまして。それで、話はもどるけど……夜会はどうするの?」
「もちろん、ジョージア様にエスコートを……」
「じゃ、なくて。何か表彰されるんじゃなかった?」
「そう、でしたね?すっかり忘れていました!公が私とウィルとヨハンを表彰してくれるって話がありましたね?」
「……それが無かったら、帰ってこなかったのにって顔してる」
「だって、コーコナ領での仕事、まだ、残っていたんですよ?それでも、これは受けるべきですし、公がどうしてもって始まりのときに言っていたので」
「目に見える功績をみなの前で披露したいのだろう?アンナだけでなく、ウィルもだし、ヨハンにも。それが、ゴールド公爵への牽制にもなるって考えているんじゃないか?」
「そんなことくらいで、なりませんけどね?ただ、いいことをすれば、中立の貴族が私に興味を示すかもしれませんよね。私、落としたい殿方がいるのです!」
頬に手をやり、恋する乙女のように恥じらうとジョージアが焦っていた。アンナ?と心配そうにこちらにフラフラと近づいてくるのでどうしたの?と問えば、尋常じゃないほど、落としたい殿方について、語らされることになった。
一通り話せば、なんだかホッとしたような表情になり、額の汗を軽くぬぐっていた。
「これ、イチアがいてくれて、本当に助かるわ……いなかったら、領地に帰ってから、大慌てでいろいろとしないといけないだろうし」
「孤児院の話?」
「そうです。孤児たちに部屋を与えて終わりではないですからね。生活ができるようにしないといけませんから」
「そうだね。食器類はさすがにあるし、台所も領主の屋敷だから揃っているけど、ベッドだけはね……早々に手配してもらわないといけないよね」
「部屋割りの話もありますしね……男女分けないといけないですから、いろいろと必要なものはありますし」
「……そう考えると、イチアに押し付けてしまって申し訳ないね?」
「そうなんですけど、向こうにはテクトたちもいますから」
「元大店の店主がいれば、心強いってことか」
ジョージアと執務室で孤児院のことを手紙に書いたことを話した。ちょうど、次の世代の話もイチアから聞いていたので、孤児たちへ教育をしたらどうかということも追記する。策士イチアのことだ。思い描く未来は、また、広がっていくように思えた。
「ところで」
「なんですか?」
「もおうすぐ、終わりの夜会の日だよね?アンナは、公から招待状をもらっているんだっけ?」
「えぇ、そうですよ。今年もお断りしようとしていたのですがね……たぶん、ゴールド侯爵がきますから」
「よほど嫌っているんだね?」
「そんなことないですよ?私に対して、裏表がなくて、好ましいとすら思っています」
「殺されそうになっているのに……」
「ジョージア様には手を出さないなら、いいじゃないですか?あと、子どもたちにも」
「もうすぐ、公世子の話をするつもりらしいけどね。アンナどころじゃないんだろうね?」
「あぁ、そんな話があるのですか?」
「しらばっくれちゃって……本当は知っているんだろ?」
コテリと首を傾げ、どうでしたかね?と笑っておく。公から以前に話をされたことがあっても、そこれは、私が決めることではなく、公が決めることだと伝えてある。ただ、後ろについている、ゴールド公爵のことも少しは考えておいたほうがいいとも言ってはあるので、もう少し、公世子を決めるのは、後になるのではないかと思っていた。
「ジョージア様は、どう思われますか?」
「公世子のこと?」
「えぇ、そうです。公妃の子が相応しいと思いますか?」
「……それは、なんとも。俺も会ったことがないからね。デビュタントもまだだろ?」
「そうでした。レオよりひとつ上ですか?」
「そうだったかな?来年あたりかもしれないな」
「デビュタントを向かえれば、一気にそういう話になりそうですね」
「アンバー公爵としては、何かするつもり?」
ジョージアの瞳が探るようにこちらを見てくるが、私は首を横に振る。
「そうなんだ?アンナのことだから、てっきり、第二妃の子を推薦するのかと思っていたよ?」
「そんなことはしませんよ。面倒ごとには巻き込まれたくないので。あと数年は、領地でのびのびと子育てをして……」
「子育て……と、いうより、アンナがのびのびと領地にいたいんじゃないの?」
「……ジョージア様は、公都の方が好きですか?」
少し考えているようで、どうだろう?と呟いた。しばらくしてから、微笑む。
「アンナがいる場所が、好きだな。領地で自由に走り回っているアンナはとても可愛らしいし、公都で澄ました顔してみなを虜にしているアンナは自慢だし、結局のところ、アンナという人間がいれば、俺はどこでもいいんだよ」
「本当ですか?」
「本当。でも、基本的に、俺のところからはすぐに飛んでいってしまうからなぁ……」
はぁ……と大仰にため息をつかれた。身に覚えのあることなので、反論もできずだ。
ただ、それでもいいとジョージアの目は言っているので、ありがとうと呟いた。
「どういたしまして。それで、話はもどるけど……夜会はどうするの?」
「もちろん、ジョージア様にエスコートを……」
「じゃ、なくて。何か表彰されるんじゃなかった?」
「そう、でしたね?すっかり忘れていました!公が私とウィルとヨハンを表彰してくれるって話がありましたね?」
「……それが無かったら、帰ってこなかったのにって顔してる」
「だって、コーコナ領での仕事、まだ、残っていたんですよ?それでも、これは受けるべきですし、公がどうしてもって始まりのときに言っていたので」
「目に見える功績をみなの前で披露したいのだろう?アンナだけでなく、ウィルもだし、ヨハンにも。それが、ゴールド公爵への牽制にもなるって考えているんじゃないか?」
「そんなことくらいで、なりませんけどね?ただ、いいことをすれば、中立の貴族が私に興味を示すかもしれませんよね。私、落としたい殿方がいるのです!」
頬に手をやり、恋する乙女のように恥じらうとジョージアが焦っていた。アンナ?と心配そうにこちらにフラフラと近づいてくるのでどうしたの?と問えば、尋常じゃないほど、落としたい殿方について、語らされることになった。
一通り話せば、なんだかホッとしたような表情になり、額の汗を軽くぬぐっていた。
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