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あと2日

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 チャコに後を任せ、気絶している女性たちを連れ屋敷に戻った。


「チャコだけだと、不安でしたが、ディルさんが残ってくれてよかったですね?」
「ココナが復活するまで、コーコナに残ってくれることになったから……チャコもシークもきっと、大変だと思うわ。ディルって、優しそうに見えて、めちゃくちゃ、厳しいし……あんまり、できないと、切り捨てられる」


 かつて、屋敷に来たばかりのころのことを思い出す。猫をかぶっていたとはいえ、もう少しで、ディルの公爵家筆頭執事の信用を失うところだったのだ。正直、ジョージア様との別居は、私にとって、ツラい時期となったが、それ以上に手に入れたものが大きかったので、よしとなっている。


「考えただけで、震え上がりますね?」
「アデルは、まだ、近衛だし、基本的にアンバー領にいることが多くなるから、まだ、大丈夫よ!」
「そうも言ってられません。アンナの夜会の護衛をすることになっているので、張り付いてますし……ウィル様がいるから、まぁ、お呼びではないでしょうが、今後の良好な関係を考えると……」


 大きくため息をつくアデルに、頑張ろうねと声をかけた。
 屋敷着いてから、この屋敷の1番上の階にあるメイドたちの部屋へ女性たちを連れていく。二人のメイドに目を覚ますまでの介抱を頼み、私室へと戻った。


「メイドたちで、大丈夫なのですか?暗示が解けてなかったら……」
「ただのメイドなら危ないけど、ディルの子飼いの子猫たちだから、大丈夫」
「……子猫たち。こんなところにもですか?ディルさん、何人育てているんですか!」
「さぁ?普通は、行儀見習いで、下級貴族から子どもが来るんだけど、貴族と名のつくものは、お金がいるからね」
「もしかしなくてもですけど、アンバー公爵家の侍従たちは、平民なのですか?」
「そうよ。ディルが一人一人教育しているのよ。お給金に見合う仕事をすれば、もちろん、身入りが良くなるって教えて以来、さらに洗礼された侍従が増えた気がするわ」
「それって、ディルさんたちの前だけでって、ことないですか?」


 疑うようにこちらを見てくる。侍従のうち、そういう人も多い。貴族なんて、特に、労働に対して、忌避するきらいがあるから、主人や上位の者たちの前だけちゃんとしている人が多い。


「それはね、まぁ、やり方が色々あるのよ。私が公都の屋敷をあけがちだから、手は打ってあるの。残念だけど、評価に値しない場合はっていうのはみなが知っているから、手を取り合って頑張ってくれているわ」
「手を取り合って?それって……」
「サボることは、悪いことではないからね。息抜きもしないと、疲れてしまうわ。ずっと、屋敷で篭っているのですもの」

 私は、私室から繋がる侍女の部屋へと入っていく。ココナの様子をみてくれていたのは、医術を勉強していたメイドであった。


「どうかしら?」
「熱がかなり出てきたので、解熱剤をのませました。あとは、ココナさんが、頑張って乗り越えてもらえたら」
「そう。引き続き、よろしくね」


 私はココナの部屋から出て行く。後ろについていたアデルに素っ気ないと言われたが、私に出来ることはないからと返事をした。


「そういえば、コーコナの滞在は、あと2日になりましたね?どうされますか?」
「町の引越しの話、始めちゃったんだけど、他にもみたいから、明日は違う場所へ行こうかなって思ってる。ディルとは、この後打ち合わせして任せるわ。その後の引き継ぎは、ココナにしてくれるし」
「スピアはどうしますか?」


 忘れていわわけではないけど、今日から来ていたなと頭の片隅に浮かんだ。

 今日、なんだか、いろいろあったから、仕方ないよね。


「スピアについては、アンバー領へ連れて行こうと思っているわ。セバスが帰ってくるまでは、イチアに文官として使えるよう、鍛えてもらうつもり」
「文官に?」
「そう。私たちには、圧倒的に足りないのよ。領地が離れているから余計に」


 現状をアデルに伝えると、目を白黒させている。深刻な状況だということに気がつかないということは、それだけ、今、集まっている者たちが優秀すぎるということだ。


「それって、みんなが優秀だってことですよね?」
「そうだよ!私も狙って声をかけてきたけど、イチアは、特別だよね。ノクトが連れてきてくれたんだけど……私にとっては、どんな宝石より高くて安い買い物だったと思うわ。基本的に私の周りは優秀だし、お金には変えられないよね」


 明日の打ち合わせをしようと、執務室へと入って行くとスピアが、ちょこんと座って待っていた。
 あまりにも可愛らしく見えるスピアを呼ぶとパッとこちらを向いた。一人で待つこの執務室は少し不安だったのかもしれない。


「さて、明日の話をしようと思うの。スピアも入ってちょうだい」


 ソファに浅くかけ、話を聞こうとするスピアは、まるでアンジェラのように瞳を輝かせていた。
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