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普通じゃないってことだよな?
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「大丈夫ですか?」
私が声をかける前に、シークが町医者に声をかけていた。私がコーコナの領主だと話したことに、腰をぬかしたようで、可哀想に立てなくなっていた。口をあぐあぐとしている様子が、チャコとシークの二人で町医者を憐れんいるのがわかる。
「……」
「先生、大丈夫か?」
チャコが、ゆっくり立たせようとしたが、どうも足腰に力が入らなくなってしまったらしい。
椅子を借りて来たとシークが差し出し、助手と一緒に町医者を座らせている。放心もしているので、しばらくは、話を聞いたりできないだろう。
「あのさ?」
「何?」
「自覚ある?公爵だっていう」
「もちろん、あるわよ?」
「そうしたら、こんなところで、ホイホイ自分が公爵だって言わなくないか?狙われるぞ?」
「そうは言っても……常時何人かの暗殺者が近くで見守ってくれるから、むしろ、安心なんだよね?」
「暗殺者って、そんなもの、どこに?」
「いるわよ!あの人とその人とたぶん、その子もそうよね?あとは……」
「ちょい待ち!」
暗殺者や刺客を次々指さしていく。それに焦るチャコ。普通じゃない状況に目を白黒させていた。相手側も、バツの悪そうな顔はするけど、襲ってきたりはしない。公爵暗殺で捕まったとき、自分の命が惜しいというのもあるだろうが、私に勝てる暗殺者がいないことが、何よりもこの暗黙の秩序を守っている要因であった。
「普通じゃないってことだよな?」
「そういうこと。味方に守ってもらっているのではなく、敵方が私を見張る役目と同時に、見守ってくれているのよ。護衛人数が少ないのは、そういう理由だからってことないんだけどさ。ただたんに、お金がないだけだから」
「懐事情まで、ありがとさん。それにしたって……敵方に守られているなんて、聞いたことないぞ?」
「そうだよね。私も聞いたことない!」
人気ものですからと苦笑いしておく。ほとんどが、私と公との仲を裂きたいと考えているものや、私を公爵から引きずり落としたいゴールド公爵家陣営からの指示ではあるのだが、気にしていない。
「……公爵様」
弱々しく、私を呼ぶ声。さっきの町医者であった。どうしたの?と聞くと、震えながら、謝ってくれる。その謝罪を聞きながら、私は許しをだした。そうしないと、いつまでも、公爵を怒らせた町医者として、有名になってしまうからだ。
「ただいま戻りました!」
馬が駆けてきた蹄の音が聞こえると思っていたら、アデルが屋敷へココナを連れていってから、戻ってきてくれた。その後ろには、ディルが同じように馬に跨っている。
「ディルさんって、何者なんですかね?近衛でも、これ程馬を乗りこなす人は少ないですよ?」
できるディルを見せられ、アデルは戸惑っているようだった。
「アデル様に褒めていただけるのなら、アンバー公爵家、筆頭執事として鼻が高いですよ!」
「……執事にしておくのが、もったいない人だね?」
「ディルがいるから、公爵家はうまくいっているんだから、もっと褒めていいよ!」
「アンナ様まで、あまり変なことを言わないでください」
雑談していると、町医者からの視線が痛い。
「そういえば、ココナは、どうしたの?」
「ココナには、しばらくの間、休むように伝えてあります。側に医術の心得があるメイドをおいてありますので、何かあれば、すぐに対応してくれるはずです」
「そう、よかった。熱が出るって話だから、気になっていたのよね」
「大丈夫です。ココナの意識はありますから、ヨハン教授の解熱剤を服用して眠らせてきました」
「心配だけど、仕方がないわ。あと、あそこにいる女性たちを屋敷に運びたいの。馬車って手配できる?」
「かしこまりました。荷馬車でもいいですかね?」
「箱馬車では、窮屈よね。荷馬車でお願い」
「……あの、女性たちは、どうなさるのですか?」
おそるおそる、町の人が聞く。私は、女性たちに麻薬が使われている可能性があること、洗脳されていることなどを状況を説明した。治療を施し、社会復帰できるよう、整えると伝えると、不安そうにしている人がいる。この中には、この町の人の娘もいるようで、代表して聞いてくれたらしい。
「私の主治医に相談して、どうにか元の生活ができるようにならないか手をうってみるわ。薬が抜けるまで、本人も苦しむことになるけど……元の生活に戻れるようにしたいのよ。親元でも治療はできると思われるけど、これはお互いにつらい治療になるから、私が預かることにするわ!教育も含めてね!」
「……頼んでも、いいのでしょうか?」
一人の男性が、前に歩みでた。娘さんが、捕らえた女性の中にいるのだそうだ。
「お願いします。娘を助けてください。どんなこともするので!」
「なら、あなたは、ここの地で、領地をよくする手伝いをお願います。みなさんも、お願いしますね?」
ニコッと微笑む。不安はあるだろうが、その男性は、涙ぐむ。娘をいきなり、老人に攫われたらしく、次に会ったときには、もう、誰だかわからないくらいになっていたらしい。
ヨハンに治療法があるのか、聞いてみないといけないが、できることなら、父も娘も救いたいと強く想った。
私が声をかける前に、シークが町医者に声をかけていた。私がコーコナの領主だと話したことに、腰をぬかしたようで、可哀想に立てなくなっていた。口をあぐあぐとしている様子が、チャコとシークの二人で町医者を憐れんいるのがわかる。
「……」
「先生、大丈夫か?」
チャコが、ゆっくり立たせようとしたが、どうも足腰に力が入らなくなってしまったらしい。
椅子を借りて来たとシークが差し出し、助手と一緒に町医者を座らせている。放心もしているので、しばらくは、話を聞いたりできないだろう。
「あのさ?」
「何?」
「自覚ある?公爵だっていう」
「もちろん、あるわよ?」
「そうしたら、こんなところで、ホイホイ自分が公爵だって言わなくないか?狙われるぞ?」
「そうは言っても……常時何人かの暗殺者が近くで見守ってくれるから、むしろ、安心なんだよね?」
「暗殺者って、そんなもの、どこに?」
「いるわよ!あの人とその人とたぶん、その子もそうよね?あとは……」
「ちょい待ち!」
暗殺者や刺客を次々指さしていく。それに焦るチャコ。普通じゃない状況に目を白黒させていた。相手側も、バツの悪そうな顔はするけど、襲ってきたりはしない。公爵暗殺で捕まったとき、自分の命が惜しいというのもあるだろうが、私に勝てる暗殺者がいないことが、何よりもこの暗黙の秩序を守っている要因であった。
「普通じゃないってことだよな?」
「そういうこと。味方に守ってもらっているのではなく、敵方が私を見張る役目と同時に、見守ってくれているのよ。護衛人数が少ないのは、そういう理由だからってことないんだけどさ。ただたんに、お金がないだけだから」
「懐事情まで、ありがとさん。それにしたって……敵方に守られているなんて、聞いたことないぞ?」
「そうだよね。私も聞いたことない!」
人気ものですからと苦笑いしておく。ほとんどが、私と公との仲を裂きたいと考えているものや、私を公爵から引きずり落としたいゴールド公爵家陣営からの指示ではあるのだが、気にしていない。
「……公爵様」
弱々しく、私を呼ぶ声。さっきの町医者であった。どうしたの?と聞くと、震えながら、謝ってくれる。その謝罪を聞きながら、私は許しをだした。そうしないと、いつまでも、公爵を怒らせた町医者として、有名になってしまうからだ。
「ただいま戻りました!」
馬が駆けてきた蹄の音が聞こえると思っていたら、アデルが屋敷へココナを連れていってから、戻ってきてくれた。その後ろには、ディルが同じように馬に跨っている。
「ディルさんって、何者なんですかね?近衛でも、これ程馬を乗りこなす人は少ないですよ?」
できるディルを見せられ、アデルは戸惑っているようだった。
「アデル様に褒めていただけるのなら、アンバー公爵家、筆頭執事として鼻が高いですよ!」
「……執事にしておくのが、もったいない人だね?」
「ディルがいるから、公爵家はうまくいっているんだから、もっと褒めていいよ!」
「アンナ様まで、あまり変なことを言わないでください」
雑談していると、町医者からの視線が痛い。
「そういえば、ココナは、どうしたの?」
「ココナには、しばらくの間、休むように伝えてあります。側に医術の心得があるメイドをおいてありますので、何かあれば、すぐに対応してくれるはずです」
「そう、よかった。熱が出るって話だから、気になっていたのよね」
「大丈夫です。ココナの意識はありますから、ヨハン教授の解熱剤を服用して眠らせてきました」
「心配だけど、仕方がないわ。あと、あそこにいる女性たちを屋敷に運びたいの。馬車って手配できる?」
「かしこまりました。荷馬車でもいいですかね?」
「箱馬車では、窮屈よね。荷馬車でお願い」
「……あの、女性たちは、どうなさるのですか?」
おそるおそる、町の人が聞く。私は、女性たちに麻薬が使われている可能性があること、洗脳されていることなどを状況を説明した。治療を施し、社会復帰できるよう、整えると伝えると、不安そうにしている人がいる。この中には、この町の人の娘もいるようで、代表して聞いてくれたらしい。
「私の主治医に相談して、どうにか元の生活ができるようにならないか手をうってみるわ。薬が抜けるまで、本人も苦しむことになるけど……元の生活に戻れるようにしたいのよ。親元でも治療はできると思われるけど、これはお互いにつらい治療になるから、私が預かることにするわ!教育も含めてね!」
「……頼んでも、いいのでしょうか?」
一人の男性が、前に歩みでた。娘さんが、捕らえた女性の中にいるのだそうだ。
「お願いします。娘を助けてください。どんなこともするので!」
「なら、あなたは、ここの地で、領地をよくする手伝いをお願います。みなさんも、お願いしますね?」
ニコッと微笑む。不安はあるだろうが、その男性は、涙ぐむ。娘をいきなり、老人に攫われたらしく、次に会ったときには、もう、誰だかわからないくらいになっていたらしい。
ヨハンに治療法があるのか、聞いてみないといけないが、できることなら、父も娘も救いたいと強く想った。
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