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次の世代を
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三人でお茶を飲みながら、お茶会の話をしていたところだったので、タンザが何に反応したのか、わからなかった。
「アンナ様、そ、そ、そのこぉー!」
私の指先の大きな蚕を見て、タンザが指さす。瞳孔まで開いてしまっているのじゃないかと思うほど、目を見開いている。
「……大丈夫?」
「大丈夫です!ここ2ヶ月ほど、ずぅーっと、この子を探していたのです!」
「この子?」
「アンナ様が、触っている、その子です!」
視線の先が、大きな蚕へと向かう。アデルもコットンもちょっと引き気味ではあるが、タンザだけは、生き別れの子に出会ったかのようである。
「この子は、なんなの?」
「この子は、次の世代を残そうと思っている蚕です。次の代がいなければ、養蚕なんてすぐに廃れますからね……綿花は、畑いっぱいに作れるけど、養蚕はそういうわけにもいきませんから……」
おかえりと大事そうに虫かごのなかに入れる。タンザの視線が、我が子を見守る親のようだったので、どこも同じようなものなんだなと頷いた。
「次の代と言いますと、成虫にするということですか?」
「そうですよ!なるべく、発育のいい子を見て、選別しているんです。品種改良もしながらなので……ちなみに、この子は、お婿さんが気に入らなかったようで、虫かごから逃げ出したのですよ」
「どこかで、聞いたことあるような?」
「なんで、私を見るの?私、ジョージア様のこと大好きだけど?」
「そうだったんですか?」
「えっ?何?違うの?」
「領地のみんな……そうは、思っていないと思います」
「本当?それ、困る……ジョージア様、それ、知ってるの?」
「知らないと思いますけど……、アンナは、どこにいくにも、ジョージア様は一緒にいませんからね?」
「そんなことないよぉ……」
「存在感的にいえば、ウィル様がいますからね?あの人の存在感は、ありすぎますよね!」
「あぁ、あのおにぃちゃん?」
「そうそう、そうです。いつも、どこにいくにも、ウィル様と一緒ですから。危ない南の領地へ向かったときでさえ、ジョージア様でなく、ウィル様と一緒に行かれましたからね?」
「待って!あれは、仕方なくだよ?ジョージア様は、病気になったことがなくて免疫がなかったし……」
と、いいわけじみたことを言い始めると、タンザが何か思い出したように、あの人ですか?と言い始める。
「どの人か知らないけど……たぶん、そうでしょうね?」
「アンナ様が帰られてからしばらくしたころ、ヨハン教授のところで、何やらされてました。すぐ、高熱で寝込まれてましたけど……噂の方でしたか」
納得しているタンザに、待ってと言いたい。
「なんで、みんな、ジョージア様との仲を悪くなるように噂をするのかしら?確かに、離れていることも多いけど、いつも心には、ジョージア様や子どもたちのことばかり想っているのに」
「もっと、二人で、出かけられたらいいんじゃないですか?」
「話題になるなら、夜会ですよね?こんな田舎でも、アンナリーゼ様の話が巡ってきますし」
「そういえば、この前、公とダンスをされたとか……どんな方ですか?」
「……一言で言うと……」
「きっと、素敵な方なのでしょうね?お若いって聞いてますし!」
「た、タンザさん、それ以上は。アンナは、公にいろいろと貸しが多いですし、家族の時間を無くされるなんて、しょっちゅうですから、あまりいい印象はないと思いますよ?」
「えっ?そうなのですか?」
「ほら、顔を見てみてください!公ときくだけで、物凄く顔が引きつっていますから」
「今度の夜会、ジョージア様と踊りまくるわ!おしどり夫婦の称号を欲しいままにアンバーにもコーコナにも広げてみせる!」
別の方向へ燃え上がる私をほうったまま、三人が話を進めて行く。ナタリーの考えたドレスの図案やフレイゼンからきたクーヘンの話で盛り上がる。布や糸に関係しているだけあって、熱量がすごい。
コンコンとノックされる扉に入るよう許可をタンザが出すと、顔を出したのは警備隊隊長である。
「よろしかったでしょうか?」
「えぇ、呼んだのは私だから、ちょうどよかったわ!少し話をしましょう」
そういってスピアの話をする。納得した隊長に了承を得て、明日にでも書類を渡すよう伝えておく。
「ところで、あの副隊長二人なんだけど」
「……手が付けられなかったですよね。大変、申し訳ございません」
「ん、のしたからいいわ。ちょっと、スッキリしたし。それでね、あの二人ももらえる?あれほど、腕のあるものはいらないでしょ?貴族の私に対して、お咎めなしっていうわけにもいかないだろうから」
「……そうですね。何をなさるつもりですか?」
「少し人手が欲しかったから、ちょうどいいわ!明日にでも、屋敷に来てくれるよう伝えておいて。移動するから、馬もお願いね?」
「かしこまりました。他に何かいりますか?」
「うーん、現地に行ってみないとわからないわね?」
楽しみにしているわ!と言えば、新しい副隊長を選ばないといけませんね……とため息をついているので、誰か、まわしましょうか?と尋ねるのであった。
「アンナ様、そ、そ、そのこぉー!」
私の指先の大きな蚕を見て、タンザが指さす。瞳孔まで開いてしまっているのじゃないかと思うほど、目を見開いている。
「……大丈夫?」
「大丈夫です!ここ2ヶ月ほど、ずぅーっと、この子を探していたのです!」
「この子?」
「アンナ様が、触っている、その子です!」
視線の先が、大きな蚕へと向かう。アデルもコットンもちょっと引き気味ではあるが、タンザだけは、生き別れの子に出会ったかのようである。
「この子は、なんなの?」
「この子は、次の世代を残そうと思っている蚕です。次の代がいなければ、養蚕なんてすぐに廃れますからね……綿花は、畑いっぱいに作れるけど、養蚕はそういうわけにもいきませんから……」
おかえりと大事そうに虫かごのなかに入れる。タンザの視線が、我が子を見守る親のようだったので、どこも同じようなものなんだなと頷いた。
「次の代と言いますと、成虫にするということですか?」
「そうですよ!なるべく、発育のいい子を見て、選別しているんです。品種改良もしながらなので……ちなみに、この子は、お婿さんが気に入らなかったようで、虫かごから逃げ出したのですよ」
「どこかで、聞いたことあるような?」
「なんで、私を見るの?私、ジョージア様のこと大好きだけど?」
「そうだったんですか?」
「えっ?何?違うの?」
「領地のみんな……そうは、思っていないと思います」
「本当?それ、困る……ジョージア様、それ、知ってるの?」
「知らないと思いますけど……、アンナは、どこにいくにも、ジョージア様は一緒にいませんからね?」
「そんなことないよぉ……」
「存在感的にいえば、ウィル様がいますからね?あの人の存在感は、ありすぎますよね!」
「あぁ、あのおにぃちゃん?」
「そうそう、そうです。いつも、どこにいくにも、ウィル様と一緒ですから。危ない南の領地へ向かったときでさえ、ジョージア様でなく、ウィル様と一緒に行かれましたからね?」
「待って!あれは、仕方なくだよ?ジョージア様は、病気になったことがなくて免疫がなかったし……」
と、いいわけじみたことを言い始めると、タンザが何か思い出したように、あの人ですか?と言い始める。
「どの人か知らないけど……たぶん、そうでしょうね?」
「アンナ様が帰られてからしばらくしたころ、ヨハン教授のところで、何やらされてました。すぐ、高熱で寝込まれてましたけど……噂の方でしたか」
納得しているタンザに、待ってと言いたい。
「なんで、みんな、ジョージア様との仲を悪くなるように噂をするのかしら?確かに、離れていることも多いけど、いつも心には、ジョージア様や子どもたちのことばかり想っているのに」
「もっと、二人で、出かけられたらいいんじゃないですか?」
「話題になるなら、夜会ですよね?こんな田舎でも、アンナリーゼ様の話が巡ってきますし」
「そういえば、この前、公とダンスをされたとか……どんな方ですか?」
「……一言で言うと……」
「きっと、素敵な方なのでしょうね?お若いって聞いてますし!」
「た、タンザさん、それ以上は。アンナは、公にいろいろと貸しが多いですし、家族の時間を無くされるなんて、しょっちゅうですから、あまりいい印象はないと思いますよ?」
「えっ?そうなのですか?」
「ほら、顔を見てみてください!公ときくだけで、物凄く顔が引きつっていますから」
「今度の夜会、ジョージア様と踊りまくるわ!おしどり夫婦の称号を欲しいままにアンバーにもコーコナにも広げてみせる!」
別の方向へ燃え上がる私をほうったまま、三人が話を進めて行く。ナタリーの考えたドレスの図案やフレイゼンからきたクーヘンの話で盛り上がる。布や糸に関係しているだけあって、熱量がすごい。
コンコンとノックされる扉に入るよう許可をタンザが出すと、顔を出したのは警備隊隊長である。
「よろしかったでしょうか?」
「えぇ、呼んだのは私だから、ちょうどよかったわ!少し話をしましょう」
そういってスピアの話をする。納得した隊長に了承を得て、明日にでも書類を渡すよう伝えておく。
「ところで、あの副隊長二人なんだけど」
「……手が付けられなかったですよね。大変、申し訳ございません」
「ん、のしたからいいわ。ちょっと、スッキリしたし。それでね、あの二人ももらえる?あれほど、腕のあるものはいらないでしょ?貴族の私に対して、お咎めなしっていうわけにもいかないだろうから」
「……そうですね。何をなさるつもりですか?」
「少し人手が欲しかったから、ちょうどいいわ!明日にでも、屋敷に来てくれるよう伝えておいて。移動するから、馬もお願いね?」
「かしこまりました。他に何かいりますか?」
「うーん、現地に行ってみないとわからないわね?」
楽しみにしているわ!と言えば、新しい副隊長を選ばないといけませんね……とため息をついているので、誰か、まわしましょうか?と尋ねるのであった。
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