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子どもたちⅤ
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「もういいかしら?」
「あぁ、えっと、女の子を欲しい理由ですよね?」
「女の子というより、あの四人がね?」
「……男の子たちの方は、なんとなくですが、勇敢なイメージを持ったので、騎士とか護衛をできるようにするのでは?と思ったのですが、女の子がどうも……」
「正解ね。カイルとダンは、レオと一緒に守るべき人を守るようにしたいわ」
「じゃあ、女の子たちは?」
「位置的にいうと、デリアの位置かしら?」
「デリアさんって……ディルさんの奥さんでアンナの専属侍女の?」
「そう。デリアって、頭もいいし、要領もいいのよ。アデルは知らないけど、ナイフ投げなんて、アデルよりずっとうまいわよ!」
目をパチクリさせながら、こちらを見たり、ディルを見たりする。
「あぁ、言っておくけど、ディルも相当強いから。手合わせすると、アデルが負けるわね。今のままじゃ」
「あの……つかぬことをお聞きしますが……」
「何?」
「アンバー公爵家って、一体どうなっているのですか?」
「貴族の家、特に高位になれば、普通のことよ。命を狙われるとかしょっちゅうだし、アンバー公爵家は、ジョージア様だけしか後継ぎがいなかったからい、いざこざはなかったけど、兄弟で殺し合うっていうのも、普通にあるわ。私は、兄と仲がよかったし、私は外に出ることが決まっていたから、兄の脅威にならなかったわけだけど」
「……兄弟で殺し合いが当たり前。そんな貴族社会、嫌ですね?」
「穏便に病死に見せかけてだから、対外的にはわからないからねぇ?ディル」
「確かに、そうですね。アンバー公爵家は、瞳の色によって、爵位を得ることが決まっていますから、アンジェラ様以外が継ぐことはできませんが……女児である限り、何か波乱があることは、間違いないでしょうからねぇ?」
難しい顔をしながら、ディルは、それでもお守りはしますと微笑んだ。
「それで、マリアとシシリーには、エマ同様、護衛を兼ねたメイドになってもらおうかと思っているの。気配りもできそうだしね?」
「気配りですか?」
「えぇ、そう。教会で、馬車に乗る前、人が集まってきていたでしょ?」
「はい、合図に誘われ、ぞろぞろと来ていましたね?」
教会での騒動のあと、近衛や警備兵たちがウロウロとしていて目立っていた。その中でも、特に私は異質であった。泥だらけな上にドレスは動きやすいように裂いたのだ。何事かあったと覗きにきていた領民から好奇の目で見られ始めたのだ。
気付いていたのは、私とディルくらいだろう。それを感じたのか、ジョーと話をしていたマリアがカイルに耳打ちして、カイルが子どもたちに何か指示を出した。
何だろうと見ていたら、私の周りに自然に子どもたちが輪を作って、私を物見で来ていた領民から見えないようにしてくれたのだ。
この子たちは、なんて優しい子どもたちなのだろうか……、さっきまで、怖い思いをしていたはずなのに。
この気遣いが嬉しかった。マリアが気付き、カイルが指示を出し、シシリーとダンが小さい子たちを気遣いながら上手に誘導していた。大人でもここまできちんと人を動かせる人は、いないのではないかというほど、連携が取れていた。たった数日、同じ場所で震えていただけの子どもたちがだ。
その気力に感服させられ、気遣いに心打たれた。少々おてんばな私の娘には、これくらい気遣いできる子たちが側にいてくれる方がいい。どう見ても、カイルやダンは、私と同じ匂いがするし、マリアは、兄にも劣らずな雰囲気がある。負けん気が強い、そんな目をしていた。シシリーは、どういう立ち位置になるかはわからないが、小さい子たちが頼っているところをみると面倒見がいいように見える。
その説明をおって離すと、アデルがとても驚いていた。
「あんなに小さな子たちが?」
「小さなといっても、レオくらいの年頃よ?もしかしたら、年下の子の面倒をみるとか、していたのかもしれないけど、一緒に来てくれるというなら、私はその手を取り、アンジェラの未来に繋げたいわ!」
そういうことでしたか……と納得したように頷くアデル。今、あのときの状況を思い出しているのか、何度も頷いていた。
「それにしても……今回の件、肝が冷えました」
「どうして?」
「どうして?と可愛く言ってもダメですよ?全く、護衛がいるのに何故、アンナが真っ先に出張っていくのですか!」
「あぁ、アデルもやられたくちか」
「ディルさんもです?驚きましたよ。普通、突撃するにも、応援を待つとか、何か他は考えなかったのですか?公爵としての自覚がないのではないですか?」
「……あるわよ?あるんだけど……頭で思うより、先に手足がでてしまうんだから、仕方がないでしょ?」
アデルが大きなため息をつく。そして、最もな言葉を言われてしまう。
「アンナも三児の母なのです。ご自分のことも省みて、ご自愛頂かないと……ジョー様やネイト様、ひいてはジョージア様が悲しまれますよ!!わかっていますか?」
「……ディルやデリアのようなことをいうのね?アデルも」
「そりゃ、言います。アンナが傷つくことを誰も望んでいません。私も勉強不足でしたが、あんな新しい武器まであるのなら、なおのことです。ご自身が先頭に立って行かれる方が、解決も早いことが多いでしょうが、あぁいうときは、私たち近衛も護衛も、もっと頼ってください。アンナが強いことは知っていますが、失うには早すぎますから」
「……ごめんなさい」
「反省はしても、また、あんなことがあれば、アンナは誰よりも先に駆けていってしまうのでしょうね?」
「我らの主は、守るべき人がたくさんいますからね」
「私たちで、取りこぼさないようにしないと。アンナの背中は、ウィル様にしか任せられませんが、私たちもいること、覚えておいてくださいね?」
もちろんよと微笑む。二人も、笑顔を返してくれたが、アデルとディルは別に頷きあい通じているようであった。
「あぁ、えっと、女の子を欲しい理由ですよね?」
「女の子というより、あの四人がね?」
「……男の子たちの方は、なんとなくですが、勇敢なイメージを持ったので、騎士とか護衛をできるようにするのでは?と思ったのですが、女の子がどうも……」
「正解ね。カイルとダンは、レオと一緒に守るべき人を守るようにしたいわ」
「じゃあ、女の子たちは?」
「位置的にいうと、デリアの位置かしら?」
「デリアさんって……ディルさんの奥さんでアンナの専属侍女の?」
「そう。デリアって、頭もいいし、要領もいいのよ。アデルは知らないけど、ナイフ投げなんて、アデルよりずっとうまいわよ!」
目をパチクリさせながら、こちらを見たり、ディルを見たりする。
「あぁ、言っておくけど、ディルも相当強いから。手合わせすると、アデルが負けるわね。今のままじゃ」
「あの……つかぬことをお聞きしますが……」
「何?」
「アンバー公爵家って、一体どうなっているのですか?」
「貴族の家、特に高位になれば、普通のことよ。命を狙われるとかしょっちゅうだし、アンバー公爵家は、ジョージア様だけしか後継ぎがいなかったからい、いざこざはなかったけど、兄弟で殺し合うっていうのも、普通にあるわ。私は、兄と仲がよかったし、私は外に出ることが決まっていたから、兄の脅威にならなかったわけだけど」
「……兄弟で殺し合いが当たり前。そんな貴族社会、嫌ですね?」
「穏便に病死に見せかけてだから、対外的にはわからないからねぇ?ディル」
「確かに、そうですね。アンバー公爵家は、瞳の色によって、爵位を得ることが決まっていますから、アンジェラ様以外が継ぐことはできませんが……女児である限り、何か波乱があることは、間違いないでしょうからねぇ?」
難しい顔をしながら、ディルは、それでもお守りはしますと微笑んだ。
「それで、マリアとシシリーには、エマ同様、護衛を兼ねたメイドになってもらおうかと思っているの。気配りもできそうだしね?」
「気配りですか?」
「えぇ、そう。教会で、馬車に乗る前、人が集まってきていたでしょ?」
「はい、合図に誘われ、ぞろぞろと来ていましたね?」
教会での騒動のあと、近衛や警備兵たちがウロウロとしていて目立っていた。その中でも、特に私は異質であった。泥だらけな上にドレスは動きやすいように裂いたのだ。何事かあったと覗きにきていた領民から好奇の目で見られ始めたのだ。
気付いていたのは、私とディルくらいだろう。それを感じたのか、ジョーと話をしていたマリアがカイルに耳打ちして、カイルが子どもたちに何か指示を出した。
何だろうと見ていたら、私の周りに自然に子どもたちが輪を作って、私を物見で来ていた領民から見えないようにしてくれたのだ。
この子たちは、なんて優しい子どもたちなのだろうか……、さっきまで、怖い思いをしていたはずなのに。
この気遣いが嬉しかった。マリアが気付き、カイルが指示を出し、シシリーとダンが小さい子たちを気遣いながら上手に誘導していた。大人でもここまできちんと人を動かせる人は、いないのではないかというほど、連携が取れていた。たった数日、同じ場所で震えていただけの子どもたちがだ。
その気力に感服させられ、気遣いに心打たれた。少々おてんばな私の娘には、これくらい気遣いできる子たちが側にいてくれる方がいい。どう見ても、カイルやダンは、私と同じ匂いがするし、マリアは、兄にも劣らずな雰囲気がある。負けん気が強い、そんな目をしていた。シシリーは、どういう立ち位置になるかはわからないが、小さい子たちが頼っているところをみると面倒見がいいように見える。
その説明をおって離すと、アデルがとても驚いていた。
「あんなに小さな子たちが?」
「小さなといっても、レオくらいの年頃よ?もしかしたら、年下の子の面倒をみるとか、していたのかもしれないけど、一緒に来てくれるというなら、私はその手を取り、アンジェラの未来に繋げたいわ!」
そういうことでしたか……と納得したように頷くアデル。今、あのときの状況を思い出しているのか、何度も頷いていた。
「それにしても……今回の件、肝が冷えました」
「どうして?」
「どうして?と可愛く言ってもダメですよ?全く、護衛がいるのに何故、アンナが真っ先に出張っていくのですか!」
「あぁ、アデルもやられたくちか」
「ディルさんもです?驚きましたよ。普通、突撃するにも、応援を待つとか、何か他は考えなかったのですか?公爵としての自覚がないのではないですか?」
「……あるわよ?あるんだけど……頭で思うより、先に手足がでてしまうんだから、仕方がないでしょ?」
アデルが大きなため息をつく。そして、最もな言葉を言われてしまう。
「アンナも三児の母なのです。ご自分のことも省みて、ご自愛頂かないと……ジョー様やネイト様、ひいてはジョージア様が悲しまれますよ!!わかっていますか?」
「……ディルやデリアのようなことをいうのね?アデルも」
「そりゃ、言います。アンナが傷つくことを誰も望んでいません。私も勉強不足でしたが、あんな新しい武器まであるのなら、なおのことです。ご自身が先頭に立って行かれる方が、解決も早いことが多いでしょうが、あぁいうときは、私たち近衛も護衛も、もっと頼ってください。アンナが強いことは知っていますが、失うには早すぎますから」
「……ごめんなさい」
「反省はしても、また、あんなことがあれば、アンナは誰よりも先に駆けていってしまうのでしょうね?」
「我らの主は、守るべき人がたくさんいますからね」
「私たちで、取りこぼさないようにしないと。アンナの背中は、ウィル様にしか任せられませんが、私たちもいること、覚えておいてくださいね?」
もちろんよと微笑む。二人も、笑顔を返してくれたが、アデルとディルは別に頷きあい通じているようであった。
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