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子どもたちⅣ
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破れ汚れたドレスを着たままの私に、入浴をするようディルが促すので、私はココナに頼み、用意をしてもらう。
モクモクと白い湯気が肌にまとわりついてくるが、今は、そんなことでもホッとする。
「アンナ様」
「どうかして?」
体を洗ってくれているココナを振り向くと、顔が強張っているがわかる。
「私は侍女である前に、アンナ様の護衛であり、盾です。どうか、今回のような荒事はお避けいただいたうえで、私をお連れください。物騒な武器を持っている輩がいたと聞いています」
「新しい武器ね……確かに、今まで以上に物騒ではあるわ。今は、まだ、普及していないから、脅威というまでもないけど、ゆくゆくは……命を狙われる側として、対策を練らないといけないことね」
「そのために、私たちがいるのです。私たちを盾に……」
「できるわけないわ。私にとって、あなたも……ココナも守るべき私の大切な領民ですもの。ディルがどんなふうに言っているかはわからないけど、決して、自身の命を私のために使おうなんて、言わないで?」
泡だらけだった手をお湯ですすぎ、水を少し切ってからココナの頭を撫でる。濡れた手で撫でられれば、迷惑だろう。何も言わず、私に撫でられてくれるココナに、自分を大切にしてね?と囁いた。
目を見開き、ココナは驚いていたが、微笑み頷けば、はいと力強く返してくれる。
風呂から出たあと、ココナに整えてもらい、そのまま、執務室へ向かう。そこには、すでにアデルとディルが部屋におり、少々難しい顔をしていた。
「もう、来ていたの?」
「お戻りでしたか?」
「えぇ、見苦しい恰好を見せていたわね。ごめんなさい」
「いえ、そんな……」
私は、執務机に座り二人にも適当に座るように言えば、近場にあった椅子を持ってきて、かけた。ココナが飲み物を用意してくれ、私は、それに手をつける。いつもと違う茶葉の香りに驚く。
「この茶葉は、エルドアのものね?これは?」
「セバスチャン様から、届きました。手紙と共に……」
「そう。手紙にはなんて?」
「はい、話し合いの途中ではありますが、血の気の多いエルドアの騎士たちが、戦争を先に仕掛けてはどうだ?という話が持ち上がり、今、抑えているところだそうです。パルマは、セバスチャン様から少し離れ、別の情報を探していると」
「なるほどね。手紙、貸してくれる?」
ディルから手紙を預かり、内容を確認すれば、頭が痛くなりそうな内容だ。ただ、セバスとパルマの意見が一致したとも書いてある。だから、パルマが別行動をしているらしい。
「なるほど、パルマにはキースがついていってくれているのね。小鳥からの情報をセバスに送っておいて。これを読む限り、エルドアの騎士……それも、地位の高いところが、何か怪しい動きをしているみたい。疑いくらいでは、罰せられないから、証拠集めをしているってところかしら?」
「その証拠が出た場合、我が国から情報提供すると、エルドアとの溝も生じませんか?」
「そのためのクロック侯爵でしょ?手は打ってある。クロック侯爵にも、前クロック侯爵にも、しっかり働いてもらうから。私、使えるものは使うわよ?直接、クロック侯爵が摘発すると、こちら側の陰謀に見えるから、そこはうまくしてねってエレーナには伝えてあるし、時間はかかっても、なんとかなるでしょう。まだ、動くべきでもないしね」
「それは、監視がついているからですか?」
「……監視がいなかった日なんて、ないよね?」
クスクス笑うと、ディルがため息をつく。対応してくれているディルの方が詳しいのだから、そのため息の意味も笑って済ませる。
「話は、変わりますが、連れて来た子どもたちの件、どうなさるおつもりですか?」
「とりあえず、子どもたちには、選択をとは思っているの。私と一緒にくるのか、この領地に残るのか、親元へ帰るのか。乳飲み子は、どうしようもないから、探している親がいなければ、養子にだそうと思っているわ。物心ついている子ではないから、子の方は、受け入れられると思うから。大きくなってから、事情を説明するかは、その養父母に任せるつもり」
「わかりました。あとは、どうですか?気に入ったものはいますか?」
「……ディルって、目ざといわよね?」
そんなことありませんよと笑っているが、本当に笑っているわけではない。大きくわざとらしくため息をついた。
「欲しいのは、四名」
「……年かさの子らですね」
「それって……あの、女の子を守っていた男の子二人ですか?」
「えぇ、当たり。あの二人は必ず欲しいわね。あと、妹のマリアと姉のシシリー」
「……男の子はわかりますが、女の子もですか?」
アデルは小首をかしげて、どうしてだろうと考え込んだ。答えは簡単だ。
「答えをいっても?」
アデルに視線を向けると、もう少し待って!と言わんばかりであるので、もう少しだけ待つことにした。
答えに辿り着けるとは、とてもじゃないが思えないので、あまり待たないよ?と茶化してやると、焦りだすアデルにクスクスとディルが笑っていた。
モクモクと白い湯気が肌にまとわりついてくるが、今は、そんなことでもホッとする。
「アンナ様」
「どうかして?」
体を洗ってくれているココナを振り向くと、顔が強張っているがわかる。
「私は侍女である前に、アンナ様の護衛であり、盾です。どうか、今回のような荒事はお避けいただいたうえで、私をお連れください。物騒な武器を持っている輩がいたと聞いています」
「新しい武器ね……確かに、今まで以上に物騒ではあるわ。今は、まだ、普及していないから、脅威というまでもないけど、ゆくゆくは……命を狙われる側として、対策を練らないといけないことね」
「そのために、私たちがいるのです。私たちを盾に……」
「できるわけないわ。私にとって、あなたも……ココナも守るべき私の大切な領民ですもの。ディルがどんなふうに言っているかはわからないけど、決して、自身の命を私のために使おうなんて、言わないで?」
泡だらけだった手をお湯ですすぎ、水を少し切ってからココナの頭を撫でる。濡れた手で撫でられれば、迷惑だろう。何も言わず、私に撫でられてくれるココナに、自分を大切にしてね?と囁いた。
目を見開き、ココナは驚いていたが、微笑み頷けば、はいと力強く返してくれる。
風呂から出たあと、ココナに整えてもらい、そのまま、執務室へ向かう。そこには、すでにアデルとディルが部屋におり、少々難しい顔をしていた。
「もう、来ていたの?」
「お戻りでしたか?」
「えぇ、見苦しい恰好を見せていたわね。ごめんなさい」
「いえ、そんな……」
私は、執務机に座り二人にも適当に座るように言えば、近場にあった椅子を持ってきて、かけた。ココナが飲み物を用意してくれ、私は、それに手をつける。いつもと違う茶葉の香りに驚く。
「この茶葉は、エルドアのものね?これは?」
「セバスチャン様から、届きました。手紙と共に……」
「そう。手紙にはなんて?」
「はい、話し合いの途中ではありますが、血の気の多いエルドアの騎士たちが、戦争を先に仕掛けてはどうだ?という話が持ち上がり、今、抑えているところだそうです。パルマは、セバスチャン様から少し離れ、別の情報を探していると」
「なるほどね。手紙、貸してくれる?」
ディルから手紙を預かり、内容を確認すれば、頭が痛くなりそうな内容だ。ただ、セバスとパルマの意見が一致したとも書いてある。だから、パルマが別行動をしているらしい。
「なるほど、パルマにはキースがついていってくれているのね。小鳥からの情報をセバスに送っておいて。これを読む限り、エルドアの騎士……それも、地位の高いところが、何か怪しい動きをしているみたい。疑いくらいでは、罰せられないから、証拠集めをしているってところかしら?」
「その証拠が出た場合、我が国から情報提供すると、エルドアとの溝も生じませんか?」
「そのためのクロック侯爵でしょ?手は打ってある。クロック侯爵にも、前クロック侯爵にも、しっかり働いてもらうから。私、使えるものは使うわよ?直接、クロック侯爵が摘発すると、こちら側の陰謀に見えるから、そこはうまくしてねってエレーナには伝えてあるし、時間はかかっても、なんとかなるでしょう。まだ、動くべきでもないしね」
「それは、監視がついているからですか?」
「……監視がいなかった日なんて、ないよね?」
クスクス笑うと、ディルがため息をつく。対応してくれているディルの方が詳しいのだから、そのため息の意味も笑って済ませる。
「話は、変わりますが、連れて来た子どもたちの件、どうなさるおつもりですか?」
「とりあえず、子どもたちには、選択をとは思っているの。私と一緒にくるのか、この領地に残るのか、親元へ帰るのか。乳飲み子は、どうしようもないから、探している親がいなければ、養子にだそうと思っているわ。物心ついている子ではないから、子の方は、受け入れられると思うから。大きくなってから、事情を説明するかは、その養父母に任せるつもり」
「わかりました。あとは、どうですか?気に入ったものはいますか?」
「……ディルって、目ざといわよね?」
そんなことありませんよと笑っているが、本当に笑っているわけではない。大きくわざとらしくため息をついた。
「欲しいのは、四名」
「……年かさの子らですね」
「それって……あの、女の子を守っていた男の子二人ですか?」
「えぇ、当たり。あの二人は必ず欲しいわね。あと、妹のマリアと姉のシシリー」
「……男の子はわかりますが、女の子もですか?」
アデルは小首をかしげて、どうしてだろうと考え込んだ。答えは簡単だ。
「答えをいっても?」
アデルに視線を向けると、もう少し待って!と言わんばかりであるので、もう少しだけ待つことにした。
答えに辿り着けるとは、とてもじゃないが思えないので、あまり待たないよ?と茶化してやると、焦りだすアデルにクスクスとディルが笑っていた。
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