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襲撃

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「おにぃーちゃーーーーん!!!やだやだ!!助けて!!」


 街はずれの孤児院へついたところ、女の子が男に引きずられ孤児院から出てきた。そこには馬車があり、馬車からも子どもの泣き声が聞こえてくる。
 いうことを聞かない子どもたちを男は、棒を振り上げ、恐怖でいうことを聞かせようとしていた。

 異変を感じさっと警戒態勢をとる私とエマ。それぞれ手元に武器となる短剣を握る。エマが、レッグフォルダーに手を掛けて何かを出そうとしている。


「エマ、もう少し草むらのほうに隠れて、ジョーを守っていて。私は、様子を見てくるわ」
「アンナ様、危ないです。ここは応援を」


 私は首を横に振り、エマに指示をした。そこに脱走をはかった私を追いかけてきたアデルが馬をひき向かって来る。


「アデル?」
「アンナ?こんなところに……出かけるなら、言ってくださら……」


 アデルも女の子の泣く声が聞こえたようで表情を変えた。私は頷き、アデルとエマでサッと打ち合わせする。


「今から、私が様子を見に行ってくるわ!」
「ダメです。私も行きますから!」
「ここで、ジョーを守って欲しいのだけど……」
「そのお役目は私一人で大丈夫です。アンナ様だけでは、子どもたちを守りながらは戦えませんよ?」
「わかったわ。アデルは私と。エマは、私たちが中に入ったら、後追いで来るはずの近衛たちにわかるように、これを道に置いて、アデルが乗ってきた馬でジョーと一緒に屋敷へ戻りなさい」
「かしこまりました。ご無理はなさらないように」
「もちろんよ。無事に帰るわ!帰ったら、ココナにも叱られるから、謝っておいて!」


 はいと元気のない声で返事をして、アデルに馬へとジョー共々乗せてもらう。

 それじゃあと手を振り道へでた。たまたま通りがかった恋人をアデルと演じながら、騒ぎになっている教会へ足早に向かう。顔は恋人と散歩をしていて幸せいっぱいの笑顔とで、アデルに指示を出すと、これでいいですか?と少々不安げだったので、リアンのことでも考えていれば?とからかってやる。


「先程、遠目で見えた感じ、馬車の中にも子どもがいるわ。馬車には見たところ御者と積み上げている男2人。昏倒させて縛りあげておいて」


 今にも馬車に入れられようとしている女の子は、大暴れして男たちを蹴り飛ばしている。それでも小さな女の子なので、抵抗も厳しく気絶させられ馬車に乗せられた。


「急ぎましょう!」


 後ろから1人の男の子がほうきを持って男たちに立ち向かっている。


「マリアを返せ!!!この、このぉ!!!!」


 めちゃくちゃに振り回しているが、そのうち、男の顔に当たった。


「くそがきが!!何しやがる!!!」


 男の子は、人攫いの男に簡単に蹴り飛ばされてしまった。そのまま壁にぶつかり意識が飛びそうだ。それでも、必死に自分を奮い立たせている。


「マリア……マ……」


 その姿が、私の逆鱗に触れる。もっと早く助けなければならなかった。人攫いにもう一度けられそうになっている男の子がマリアという女の子が乗せられた馬車の方向へ手を伸ばしている。
 目の前に男が来て蹴るために足を上げる。ダメだと思った男の子は目を瞑っていた。
 いつまでたっても蹴られることなく、かわりにふわりといい匂いがして、柔らかい感触が頬を撫でる。恐る恐る目を開け、そこには人攫いの男ではなく、優しく微笑んでいる私がふわふわしたストロベリーピンクの髪を揺らしていた。


「よく頑張ったね。後は、任せて!!」


 私は男の子に笑いかけ、次の瞬間には、鬼の様な顔つきになり怒りを宿した瞳が燃えるようにあやしく紫色に光る。


「アデル、御者は落としたわね。応援は呼べたかしら?」
「えぇ、エマはのぼりをたてて、街の方へ向かいました」
「そう。人数は大したことなさそうだけど、子どもたちの命を取られるのは困るわ。迅速に片づけるから、倒した片っ端から縛りつけてってくれるかしら。馬車に縛るロープか枷かなかったかしら?」


 アデルに再度指示を出す。慣れていない短剣でアデルを戦わせるのは怪我の元だ。怪我で済めばいいが、命を失うこともある。あくまでも補佐をするよう指示する。
 アデルが馬車を漁り、たくさんのロープを持ってきた。まだ、古びた教会の中では、抵抗している子どももいるようで中からは、ひっきりなしに何かが割れる音や人攫いの怒号が聞こえる。動きにくいスカートのすそをナイフで切って裂く。


「アンナ!何をなさるのですか!!!」


 アデルのあまりの驚きに嗤う。


「邪魔だから、裂いたまでよ。それより、私の前に出ないで。私、力がないから縛ることはできないの。人攫いを全て昏倒させていくわ。アデルは、片っ端から縛ってってくれるかしら?そっちの短剣貸してくれる。このナイフじゃちょっと短いわ」


 アデルから短剣を譲りうけ、さて行きましょうかと勇ましく中へ入っていく。護衛であるアデルが先を行くならわかるが、公爵みずから危険地帯に突っ込んで行くなんて聞いたことがない。
 アデルは唖然とさせらていると、ぐずぐずしない!と叱った。
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