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ダメと言われて……
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気持ちのいい晴れだった。先日からアデルと一緒に柔軟や剣の練習、おもしろい戦法などをお互いに教え合いながら、日が登ってから1時間ほど、汗を流した。
「だいぶ、短剣にも慣れてきた?」
「……そうですね?剣に比べれば、まだ、しっくり馴染んでいる感じはしませんが、それなりには使えそうです。ナイフは、芋の皮むきくらいならいいのすがね……まだまだ、精進します」
「そうね!これから、覚えて行けばいいわ!先は、長いのだし。さてと、朝食へ向かいましょうか!」
それぞれ、一旦部屋に戻り、服を着替えてくる。夏だといっても、汗をたくさんかいた後なので、少し体も拭きたかったので、食堂によって、ココナに水おけとタオルをお願いした。
ココナがすでに、着替えを用意してくれてあったので、確認する。
「動きにくそうなものを選んであるわね。本当に抜け目がないわ……」
扉がノックされ、ココナがお持ちしましたと頼んだものを持ってきてくれた。手伝うかと聞かれたので、私はいいわと返事をして、下がらせた。
「……ふぅ。水が、冷たくて気持ちいいわ……」
全身濡れたタオルで拭きとっていくと、とても気持ちがいい。柑橘系の香りを水にとかしてくれたようで、とても爽やかだった。
「これは、うちで使っている香水とも少し違うわ。オレンジでもないし……何かしら?」
夏にぴったりな爽やかな香りに包まれ、用意された服に着替える。
……思った以上に軽いわね。これなら、外にも行けそうね。
ディルにもらったナイフもつけて、朝食を食べに食堂へ入った。
「ママ!」
「おはよう、ジョー」
ご飯を先に食べ始めていたらしく、口回りにケチャップがついていた。
「可愛らしい娘さんは、ほっぺにケチャップがついているわ!」
置かれていたナプキンで頬を拭きとってやると目を細める。可愛らしいアンジェラの頭を撫でてやる。
「私も同じものを」
食卓にアンジェラと同じものが、少しだけ多めによそわれてくる。それを食べ、お茶を飲んでいると、アンジェラもやっと食べ終わったようだ。満足したのか、お腹をさすっている。
少し休憩をしたあと、エマに手をひかれ、私と一緒に部屋へ戻った。今は、男装をさせているので、いつでも出かけられる状態だ。
私の部屋に戻って麦わら帽子を持ってきて、子ども部屋へと滑り込む。エマと一緒にいたので、ジョーに麦わら帽子を被せてやると、出かけることがわかったのか、蜂蜜色の瞳がが輝く。
「アンナ様、あの、どちらに?」
「お散歩よ!エマも一緒に行く?」
お仕着せを着ていたエマは、どうしようかと悩んだようだが、私を見上げ頷いた。
ジョーの手を左右で私とエマで握り、玄関から堂々と出ていく。
「今日は、どこへ向かうのですか?」
「昨日教えてもらった場所。ダメと言われて、諦める私じゃないよ!それに、ジョーにも確認してほしいし」
私はエマがついてきたことで、レナンテでの移動を諦め、屋敷から少し歩いた場所から、乗合馬車に揺られることにした。貴族の馬車に比べれば、揺れるし座席は固いしと、快適さなんて微塵もないが、私は嫌いではなかった。ジョーも膝に乗せれば上機嫌で足をバタバタさせていたし、エマは、これに近い馬車に乗ることもあるので、何も言わなかった。
「可愛い子だね?」
「ありがとう」
「小さな子を見ていると、自分の子どもが小さかったことのことを思い出すよ」
子に愛情をたくさんかけていたのか、アンジェラを見て優しく微笑んだ。
「最近、人さらいがおおいからね。こんな可愛い子だと狙われるよ。気を付けてね?」
「多いの?」
「そうだね、わりと多いね。ここ数ヶ月で、近くの村でも十人近く連れ去られたって。本当に、子を生むだけでも大変なのに、大事に育ててきた子を奪われるだなんて、想像しただけで、怖くなるよ」
「そうよね。一体何を考えているのやら……とっちめてやりたいわ!」
「確かに!ただ、組織的な人さらいじゃないかって話がでているから、本当に気をつけてね?」
「ありがとう。子どもを奪われたりしないわ!」
「そうだね。コーコナの領主様は、子を大切になさる方だと聞いているのよ。きっと、人さらいのことも力になってくれると信じているわ!」
それじゃあと、馬車から降りていく。そのおばさんに、さようならと声をかける。優しく手を振って見送ってくれた。もうしばらく行けば、目的地だ。時間にして1時間半の場所にある少し寂れた村で、降りた。少し歩き回り、村人に話を聞いて、目的地である教会の場所を教えてもらった。
三人で道を並びながら歩く。アンジェラは、楽しそうに飛び跳ね、エマは繋いだ手を離すまいと握り直している。
アンジェラを見ていると、本当に小さいときの私みたい……。
道を右往左往しながら興味のあるものを指さして、エマに笑いかけている。そのとき、耳に、女の子の泣く声と、男の子が誰かを庇う声、男性の罵声が聞こえてきた。私は、そちらをチラリと見て、エマとジョーを草影に隠した。私も声の方を見てみると、振り上げた棒をまさに振り下ろそうとしているところであった。
「だいぶ、短剣にも慣れてきた?」
「……そうですね?剣に比べれば、まだ、しっくり馴染んでいる感じはしませんが、それなりには使えそうです。ナイフは、芋の皮むきくらいならいいのすがね……まだまだ、精進します」
「そうね!これから、覚えて行けばいいわ!先は、長いのだし。さてと、朝食へ向かいましょうか!」
それぞれ、一旦部屋に戻り、服を着替えてくる。夏だといっても、汗をたくさんかいた後なので、少し体も拭きたかったので、食堂によって、ココナに水おけとタオルをお願いした。
ココナがすでに、着替えを用意してくれてあったので、確認する。
「動きにくそうなものを選んであるわね。本当に抜け目がないわ……」
扉がノックされ、ココナがお持ちしましたと頼んだものを持ってきてくれた。手伝うかと聞かれたので、私はいいわと返事をして、下がらせた。
「……ふぅ。水が、冷たくて気持ちいいわ……」
全身濡れたタオルで拭きとっていくと、とても気持ちがいい。柑橘系の香りを水にとかしてくれたようで、とても爽やかだった。
「これは、うちで使っている香水とも少し違うわ。オレンジでもないし……何かしら?」
夏にぴったりな爽やかな香りに包まれ、用意された服に着替える。
……思った以上に軽いわね。これなら、外にも行けそうね。
ディルにもらったナイフもつけて、朝食を食べに食堂へ入った。
「ママ!」
「おはよう、ジョー」
ご飯を先に食べ始めていたらしく、口回りにケチャップがついていた。
「可愛らしい娘さんは、ほっぺにケチャップがついているわ!」
置かれていたナプキンで頬を拭きとってやると目を細める。可愛らしいアンジェラの頭を撫でてやる。
「私も同じものを」
食卓にアンジェラと同じものが、少しだけ多めによそわれてくる。それを食べ、お茶を飲んでいると、アンジェラもやっと食べ終わったようだ。満足したのか、お腹をさすっている。
少し休憩をしたあと、エマに手をひかれ、私と一緒に部屋へ戻った。今は、男装をさせているので、いつでも出かけられる状態だ。
私の部屋に戻って麦わら帽子を持ってきて、子ども部屋へと滑り込む。エマと一緒にいたので、ジョーに麦わら帽子を被せてやると、出かけることがわかったのか、蜂蜜色の瞳がが輝く。
「アンナ様、あの、どちらに?」
「お散歩よ!エマも一緒に行く?」
お仕着せを着ていたエマは、どうしようかと悩んだようだが、私を見上げ頷いた。
ジョーの手を左右で私とエマで握り、玄関から堂々と出ていく。
「今日は、どこへ向かうのですか?」
「昨日教えてもらった場所。ダメと言われて、諦める私じゃないよ!それに、ジョーにも確認してほしいし」
私はエマがついてきたことで、レナンテでの移動を諦め、屋敷から少し歩いた場所から、乗合馬車に揺られることにした。貴族の馬車に比べれば、揺れるし座席は固いしと、快適さなんて微塵もないが、私は嫌いではなかった。ジョーも膝に乗せれば上機嫌で足をバタバタさせていたし、エマは、これに近い馬車に乗ることもあるので、何も言わなかった。
「可愛い子だね?」
「ありがとう」
「小さな子を見ていると、自分の子どもが小さかったことのことを思い出すよ」
子に愛情をたくさんかけていたのか、アンジェラを見て優しく微笑んだ。
「最近、人さらいがおおいからね。こんな可愛い子だと狙われるよ。気を付けてね?」
「多いの?」
「そうだね、わりと多いね。ここ数ヶ月で、近くの村でも十人近く連れ去られたって。本当に、子を生むだけでも大変なのに、大事に育ててきた子を奪われるだなんて、想像しただけで、怖くなるよ」
「そうよね。一体何を考えているのやら……とっちめてやりたいわ!」
「確かに!ただ、組織的な人さらいじゃないかって話がでているから、本当に気をつけてね?」
「ありがとう。子どもを奪われたりしないわ!」
「そうだね。コーコナの領主様は、子を大切になさる方だと聞いているのよ。きっと、人さらいのことも力になってくれると信じているわ!」
それじゃあと、馬車から降りていく。そのおばさんに、さようならと声をかける。優しく手を振って見送ってくれた。もうしばらく行けば、目的地だ。時間にして1時間半の場所にある少し寂れた村で、降りた。少し歩き回り、村人に話を聞いて、目的地である教会の場所を教えてもらった。
三人で道を並びながら歩く。アンジェラは、楽しそうに飛び跳ね、エマは繋いだ手を離すまいと握り直している。
アンジェラを見ていると、本当に小さいときの私みたい……。
道を右往左往しながら興味のあるものを指さして、エマに笑いかけている。そのとき、耳に、女の子の泣く声と、男の子が誰かを庇う声、男性の罵声が聞こえてきた。私は、そちらをチラリと見て、エマとジョーを草影に隠した。私も声の方を見てみると、振り上げた棒をまさに振り下ろそうとしているところであった。
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