900 / 1,458
いい汗かいた!
しおりを挟む
「ご婦人って、もっと、朝が遅いのだと思っていました」
軽く屋敷の内周を走ってきた後、休憩をしていると、アデルが約束の時間になり、中庭に現れた。その表情は申し訳なさそうにしていて、遅くなったと謝ってくるが、私は首を横に振る。
「時間通りでしょ?私が少し、早くにきただけよ?」
「……それなら、呼んでくださればよかったのに」
「んー、ギリギリまで自分の時間を持つ方がいいでしょ?」
「そう言って、置いていこうとする……すでに、アンナはすごい汗をかいているじゃないですか?来る前には体を動かしていたっていうことですよね?」
私の様子を見ながら、誘ってくれれば……と、嘆いていたので、苦笑いをする。
「私の準備って結構かかるから、先に始めただけよ?アデルは気にしないでちょうだい?」
「気にします!明日は、その準備から、ご一緒させてください!じゃないと、一緒に訓練をお願いした意味がない気がします」
「わかったわ!では、柔軟から始めましょう。朝だから、動きにくいし、体が硬いと怪我の元だし」
「アンナはすでにしたのではないですか?」
「えぇ、もうしたけど……何度してもいいわよ。走ってきたから、少し足が重いし」
「……それにしても、近衛に柔軟って、初めて聞きました」
「そうなの?ウィルの隊は柔軟を入れているって聞いていたけど……剣を振るにしても、体が硬いのと柔らかいのでは、随分と体の使い勝手が違うのよ!」
「……どういうふうに違うのですか?」
「実際にアデルが剣を振ってみて!その方が、わかりやすいと思う。ただ振り下ろすだけでいいわ!その後横薙ぎにして、最後に切り上げてみて。見本いる?」
是非と言われるので、地べたに置いていた木剣を拾って軽く足を開き、ふぅ……と息を吐く。練習なので、気負うこともない。すっと息を吸って……1.2.3と重心を落とし足を運ぶ。もちろん、上半身で、さっき、アデルに言ったとおりの動きをする。
ただの振り下ろし、ただの横薙ぎ、ただの切り上げ。
ただのであるはずなのに、アデルは目を瞬かせながら、驚いている。
「アンナ……様?」
「どうかして?」
「いえ、あれほど、大きく動かれているのに、息ひとつ乱れていないだけでなく、なんですか?そのきれっ!」
「体が柔らかいと体全体を使えるから、変な場所に力が入らなくていいのよ。女である私は、どうしても戦場にでれば、力負けしてしまうから、早く剣を振れるとか、振れる範囲を広げるとか、遠心力で力を上乗せするとか……いろいろしているの。あと、集中力も高めると、そこそこ長い時間でも戦えるわよ?」
「……もう、言葉が見つかりません。同じようにしたとしても、それほど、私の力では風きりをしたように空気が震えたりしない」
「そうなの?これくらい、誰でもできるようになるわよ?」
「……誰でも。それだけで、お腹いっぱいですけど、長時間戦えるというのは、ウィル様の隊が時々やっている囲みの練習ってあるんですが、もしかしなくても……人数が不利なときに、長く戦えるような訓練なのですか?」
私は考えながら、んーと唸った。ウィルの隊がどんなことをしているのかわからないが、私が近衛に遊びに行くときにするのを真似しているのかもしれない。
「私は実際見たわけじゃないからわからないけど……あれかな?私が、百人の対人で模擬戦をする辺りから、ウィルも取り入れているのかしら?」
「百人を一人で……疲れませんか?」
「さすがに疲れるけど、戦場にでれば、百人どころか、もっとたくさんの中で戦わないといけないこともあるから」
「……確かにそうですけど、ウィル様の隊なら、そうなるとは思えませんけど」
「戦場でのことは、わからないわよ!人の生き死にがかかっていたら、変わってしまうからね。アデルのように悠長にはしていられないわ!」
「……別に、そういうつもりで言ったわけではないのですが……そうか、あれも訓練のひとつだったのですね?」
「たぶん。小隊ごとに人を割り振ってしているなら、連携の練習も兼ねているのかもしれないわ。同じ小隊どおし組むことで、信頼とそれぞれの役割分担を明確にしておくことも出来る、すごい訓練の手法ね。イチアあたりが、教えたのかもしれないわ」
「イチアさんが?」
「えぇ、小隊を使うだけでも、いろいろな戦術があるし、いろいろな方法で、王様の首を取ることだってあるわ。正直、そんな練兵をしているなんて、驚きね。ウィルなら、全体の盤面を見ることもあるからね。そのとき、たくさん戦術を知っていることは、指示を出すウィルにも必要だし、指示を出される側も指示された後ろまで読み取れるように訓練されているのでしょう」
「……戦っている最中に、次はどこを攻めるとか考えている余裕なんてないですよ?」
「だから、練習を積み重ねて、お互いの信頼を深めていくのだと思うけど」
「なるほど……そういうことですか。無意味なことはしないと思ってしまいましたが、わからなかったことを聞いてみれば、納得です」
話しながら柔軟をこなしていく。話し終えたとき、アデルに剣を先程のように振ってみてといえば、今までと違うような風を着るような音になっていたので、驚いていた。
軽く屋敷の内周を走ってきた後、休憩をしていると、アデルが約束の時間になり、中庭に現れた。その表情は申し訳なさそうにしていて、遅くなったと謝ってくるが、私は首を横に振る。
「時間通りでしょ?私が少し、早くにきただけよ?」
「……それなら、呼んでくださればよかったのに」
「んー、ギリギリまで自分の時間を持つ方がいいでしょ?」
「そう言って、置いていこうとする……すでに、アンナはすごい汗をかいているじゃないですか?来る前には体を動かしていたっていうことですよね?」
私の様子を見ながら、誘ってくれれば……と、嘆いていたので、苦笑いをする。
「私の準備って結構かかるから、先に始めただけよ?アデルは気にしないでちょうだい?」
「気にします!明日は、その準備から、ご一緒させてください!じゃないと、一緒に訓練をお願いした意味がない気がします」
「わかったわ!では、柔軟から始めましょう。朝だから、動きにくいし、体が硬いと怪我の元だし」
「アンナはすでにしたのではないですか?」
「えぇ、もうしたけど……何度してもいいわよ。走ってきたから、少し足が重いし」
「……それにしても、近衛に柔軟って、初めて聞きました」
「そうなの?ウィルの隊は柔軟を入れているって聞いていたけど……剣を振るにしても、体が硬いのと柔らかいのでは、随分と体の使い勝手が違うのよ!」
「……どういうふうに違うのですか?」
「実際にアデルが剣を振ってみて!その方が、わかりやすいと思う。ただ振り下ろすだけでいいわ!その後横薙ぎにして、最後に切り上げてみて。見本いる?」
是非と言われるので、地べたに置いていた木剣を拾って軽く足を開き、ふぅ……と息を吐く。練習なので、気負うこともない。すっと息を吸って……1.2.3と重心を落とし足を運ぶ。もちろん、上半身で、さっき、アデルに言ったとおりの動きをする。
ただの振り下ろし、ただの横薙ぎ、ただの切り上げ。
ただのであるはずなのに、アデルは目を瞬かせながら、驚いている。
「アンナ……様?」
「どうかして?」
「いえ、あれほど、大きく動かれているのに、息ひとつ乱れていないだけでなく、なんですか?そのきれっ!」
「体が柔らかいと体全体を使えるから、変な場所に力が入らなくていいのよ。女である私は、どうしても戦場にでれば、力負けしてしまうから、早く剣を振れるとか、振れる範囲を広げるとか、遠心力で力を上乗せするとか……いろいろしているの。あと、集中力も高めると、そこそこ長い時間でも戦えるわよ?」
「……もう、言葉が見つかりません。同じようにしたとしても、それほど、私の力では風きりをしたように空気が震えたりしない」
「そうなの?これくらい、誰でもできるようになるわよ?」
「……誰でも。それだけで、お腹いっぱいですけど、長時間戦えるというのは、ウィル様の隊が時々やっている囲みの練習ってあるんですが、もしかしなくても……人数が不利なときに、長く戦えるような訓練なのですか?」
私は考えながら、んーと唸った。ウィルの隊がどんなことをしているのかわからないが、私が近衛に遊びに行くときにするのを真似しているのかもしれない。
「私は実際見たわけじゃないからわからないけど……あれかな?私が、百人の対人で模擬戦をする辺りから、ウィルも取り入れているのかしら?」
「百人を一人で……疲れませんか?」
「さすがに疲れるけど、戦場にでれば、百人どころか、もっとたくさんの中で戦わないといけないこともあるから」
「……確かにそうですけど、ウィル様の隊なら、そうなるとは思えませんけど」
「戦場でのことは、わからないわよ!人の生き死にがかかっていたら、変わってしまうからね。アデルのように悠長にはしていられないわ!」
「……別に、そういうつもりで言ったわけではないのですが……そうか、あれも訓練のひとつだったのですね?」
「たぶん。小隊ごとに人を割り振ってしているなら、連携の練習も兼ねているのかもしれないわ。同じ小隊どおし組むことで、信頼とそれぞれの役割分担を明確にしておくことも出来る、すごい訓練の手法ね。イチアあたりが、教えたのかもしれないわ」
「イチアさんが?」
「えぇ、小隊を使うだけでも、いろいろな戦術があるし、いろいろな方法で、王様の首を取ることだってあるわ。正直、そんな練兵をしているなんて、驚きね。ウィルなら、全体の盤面を見ることもあるからね。そのとき、たくさん戦術を知っていることは、指示を出すウィルにも必要だし、指示を出される側も指示された後ろまで読み取れるように訓練されているのでしょう」
「……戦っている最中に、次はどこを攻めるとか考えている余裕なんてないですよ?」
「だから、練習を積み重ねて、お互いの信頼を深めていくのだと思うけど」
「なるほど……そういうことですか。無意味なことはしないと思ってしまいましたが、わからなかったことを聞いてみれば、納得です」
話しながら柔軟をこなしていく。話し終えたとき、アデルに剣を先程のように振ってみてといえば、今までと違うような風を着るような音になっていたので、驚いていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
122
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる