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青い空を見上げて
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領地の館に帰ってきてから、一人で中庭に散歩へ出た。ダドリー男爵家の屋敷だったこの館は、実のところ、まだ、全部を見ていなかった。
……意外と、こっちに来ると忙しいのよね。
中庭の小道を歩いていけば、その先に休憩できるように東家があった。ベンチに腰掛けると、中庭から屋敷を見ることができる。
「……いい眺めね。屋敷が一望できるわ。ソフィアもここでお茶をしたりしたのかしら?」
かつての住民に思いを馳せながら、周りを見渡す。東家のところに、ナイフで掘られたような古ぼけた傷があった。雨風に晒され、もううっすら都しか見えないそれに、私はなぞるように指を押し付ける。
「ソフィア、ジョージアは永遠に?……これを彫ったとき、ソフィアは、ジョージア様のことを好きだったのかしら?誰が見るかわからない、こんな場所に掘るだなんて。意外と乙女なところがあったのかしら?それとも、男爵に見せつけたかった?」
返事のない質問をすれば、優しい風が東家を通り抜けて行った。まるで、返事をしてくれているようで、一人でいるはずなのにおしゃべりをしているようだ。
「ふふっ、今は、独占しているもの。誰にも渡さないから安心して。たまには、子どもたちには譲るけどね」
クスクス笑いながら、ぐぅっと伸びをする。
「去年の今頃は、この領地は雨ばかりだったからなぁ……こうして、天気が続くととても気持ちいいわね!」
「天気もだけど、アンナにお小言をいう人が誰もいないからね?」
足音で、アデルが近づいてきていることは知っていた。が、酷い言われようだ。ムスッとしながら見上げる。いつまでも隣に立たれているのも居心地が悪いので、言葉にはせず、隣に座るようベンチをポンポンと叩く。なんとも言えない微妙な顔をしながら、アデルは隣に座った。
「アデルも散歩?」
「違いますよ?これでも、アンナとジョーの護衛なので。距離をとって見守っていたのですけど、急に一人で話し始めたので、確認をしにきました」
「……物騒ねぇ?ひとり言って。そういえば……、アデルも私の護衛って、大変ね?」
「ご自身で大変だと言われますか?ジョーの護衛も似たり寄ったりだとエマも言ってましたが……母娘そろって、もう少し、控えることはしないのですか?」
うーんと青い空を見上げ、考えこむ。
私の頭の中にあるのは、子どものころにみた『予知夢』。ゆっくり目を瞑る。真っ暗になった瞼の裏には、『予知夢』が鮮明に浮かんできた。
「私は、私がしたいことを生きているうちに、できるだけ終わらせたいのよ。精一杯頑張ったとしt、それには、私の生きてる時間が足りないの。ディルにも言われたけど、生き急いでいるというより、私の人生における予定を目いっぱい詰め込んでいるだけなんだけど、そうは見えないのよね?みんなには」
「確かに、生き急いでいると言われれば、そう感じますね。危なっかしさというか、危うさを時折感じることはあります。気のせいかとも思っていたのですが、そうでもないのですか……それにしても、アンナはひと所にはいられない性格というか」
「……それは、私の元からの性格だと思う。外で遊ぶのが好きだったし、危ないことも大好きだから。これでも、ジョーたちの親になって、だいぶ控えているのよ?剣も朝の習慣以外は振ってないし、危ないことには、なるべく首を突っ込まない。」
「それても、十分すぎるほど強いですよね?」
そうかしら?ととぼけると、横から睨まれた。羨ましいとポツリというので、まだまだ、これからだよとはけます。
「アンナについて歩いたら、強くなるでしょうか?」
「それは、どうだろう?私とアデルでは、根本的に違うし……」
足を投げやりに出す。デリアやリアンがいたら、怒られてしまうことも、アデルがそばにいても、叱るようなことはしない。
「レオには教えているんですよね?」
「そうね。ゆくゆくはウィルに師事するでしょうけど、今は、まだ、体が出来上がっていないから、不可のかかりにく軽い、されど基本的な動きとか……応用に繋がるような戦い方とかを押しているわ。体つきを見ていれば、レオは、ウィルと同じような体型に落ち着くような感じがするからね」
「なるほど……では、私にもレオと同じ訓練をつけてくださいますか?朝は、剣を握っているんですよね?」
珍しく食い下がるアデルに、仕方がないなぁ……と許可を出し、翌日から私の朝の練習に参加することになった。
「アデルほど、しっかりし練習はしないわよ?」
「それでもいいです。教えてください!」
「わかったわ!私も少し体が鈍っているから、ちょうどいいかもしれないわね」
「聞いてもいいです?」
「何かしら?」
「ウィル様をアンナリーゼ杯で負かしたときの話、聞いてみたいです。私、まだ、そのときは、違う場所の護衛に出ていて、出られなかったので」
「そうだったんだ?どおりで、見たことなかったと思ったのよね」
クスクスっと笑い、アンナリーゼ杯のことを思い出す。優勝までの道のりが大変だったこと、とても楽しかったこと、ウィルと本気で戦ったこと、ウィルとセバスを手に入れた時のことを懐かしみながらアデルに話すと、とても羨ましそうに聞いていた。
……意外と、こっちに来ると忙しいのよね。
中庭の小道を歩いていけば、その先に休憩できるように東家があった。ベンチに腰掛けると、中庭から屋敷を見ることができる。
「……いい眺めね。屋敷が一望できるわ。ソフィアもここでお茶をしたりしたのかしら?」
かつての住民に思いを馳せながら、周りを見渡す。東家のところに、ナイフで掘られたような古ぼけた傷があった。雨風に晒され、もううっすら都しか見えないそれに、私はなぞるように指を押し付ける。
「ソフィア、ジョージアは永遠に?……これを彫ったとき、ソフィアは、ジョージア様のことを好きだったのかしら?誰が見るかわからない、こんな場所に掘るだなんて。意外と乙女なところがあったのかしら?それとも、男爵に見せつけたかった?」
返事のない質問をすれば、優しい風が東家を通り抜けて行った。まるで、返事をしてくれているようで、一人でいるはずなのにおしゃべりをしているようだ。
「ふふっ、今は、独占しているもの。誰にも渡さないから安心して。たまには、子どもたちには譲るけどね」
クスクス笑いながら、ぐぅっと伸びをする。
「去年の今頃は、この領地は雨ばかりだったからなぁ……こうして、天気が続くととても気持ちいいわね!」
「天気もだけど、アンナにお小言をいう人が誰もいないからね?」
足音で、アデルが近づいてきていることは知っていた。が、酷い言われようだ。ムスッとしながら見上げる。いつまでも隣に立たれているのも居心地が悪いので、言葉にはせず、隣に座るようベンチをポンポンと叩く。なんとも言えない微妙な顔をしながら、アデルは隣に座った。
「アデルも散歩?」
「違いますよ?これでも、アンナとジョーの護衛なので。距離をとって見守っていたのですけど、急に一人で話し始めたので、確認をしにきました」
「……物騒ねぇ?ひとり言って。そういえば……、アデルも私の護衛って、大変ね?」
「ご自身で大変だと言われますか?ジョーの護衛も似たり寄ったりだとエマも言ってましたが……母娘そろって、もう少し、控えることはしないのですか?」
うーんと青い空を見上げ、考えこむ。
私の頭の中にあるのは、子どものころにみた『予知夢』。ゆっくり目を瞑る。真っ暗になった瞼の裏には、『予知夢』が鮮明に浮かんできた。
「私は、私がしたいことを生きているうちに、できるだけ終わらせたいのよ。精一杯頑張ったとしt、それには、私の生きてる時間が足りないの。ディルにも言われたけど、生き急いでいるというより、私の人生における予定を目いっぱい詰め込んでいるだけなんだけど、そうは見えないのよね?みんなには」
「確かに、生き急いでいると言われれば、そう感じますね。危なっかしさというか、危うさを時折感じることはあります。気のせいかとも思っていたのですが、そうでもないのですか……それにしても、アンナはひと所にはいられない性格というか」
「……それは、私の元からの性格だと思う。外で遊ぶのが好きだったし、危ないことも大好きだから。これでも、ジョーたちの親になって、だいぶ控えているのよ?剣も朝の習慣以外は振ってないし、危ないことには、なるべく首を突っ込まない。」
「それても、十分すぎるほど強いですよね?」
そうかしら?ととぼけると、横から睨まれた。羨ましいとポツリというので、まだまだ、これからだよとはけます。
「アンナについて歩いたら、強くなるでしょうか?」
「それは、どうだろう?私とアデルでは、根本的に違うし……」
足を投げやりに出す。デリアやリアンがいたら、怒られてしまうことも、アデルがそばにいても、叱るようなことはしない。
「レオには教えているんですよね?」
「そうね。ゆくゆくはウィルに師事するでしょうけど、今は、まだ、体が出来上がっていないから、不可のかかりにく軽い、されど基本的な動きとか……応用に繋がるような戦い方とかを押しているわ。体つきを見ていれば、レオは、ウィルと同じような体型に落ち着くような感じがするからね」
「なるほど……では、私にもレオと同じ訓練をつけてくださいますか?朝は、剣を握っているんですよね?」
珍しく食い下がるアデルに、仕方がないなぁ……と許可を出し、翌日から私の朝の練習に参加することになった。
「アデルほど、しっかりし練習はしないわよ?」
「それでもいいです。教えてください!」
「わかったわ!私も少し体が鈍っているから、ちょうどいいかもしれないわね」
「聞いてもいいです?」
「何かしら?」
「ウィル様をアンナリーゼ杯で負かしたときの話、聞いてみたいです。私、まだ、そのときは、違う場所の護衛に出ていて、出られなかったので」
「そうだったんだ?どおりで、見たことなかったと思ったのよね」
クスクスっと笑い、アンナリーゼ杯のことを思い出す。優勝までの道のりが大変だったこと、とても楽しかったこと、ウィルと本気で戦ったこと、ウィルとセバスを手に入れた時のことを懐かしみながらアデルに話すと、とても羨ましそうに聞いていた。
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