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コーコナ領のお出かけ
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動きやすいドレスに着替える。
コーコナへ着いた日に、ビルにコーコナ領にある大きな屋敷について、いろいろと聞いてみたが、どうも合うような話がなく、調べてもらうことになった。
私は私で、お散歩という名目で出かけることにする。
飾り気の一切ない領民たちがきているようなドレスに身を包んだ私は、大きめの麦わら帽子を被って長くふわふわしたストロベリーピンクの髪をゆるくみつあみにし、後ろに垂らす。そこに薔薇のピアスが揺れているのを鏡で確認して、よしっと立ちあがった。
手には、男の子の服と子供用の帽子も忘れずにもって部屋を出る。
一応ドアを開けたとき、誰もいないこと確認し、こっそり子ども部屋へと忍び込んだ。
アンジェラは、窓際で一人、本を読んでいた。侍女見習いのエマは、部屋にはいないようだ。
「ジョー、何を読んでいるの?」
「ママ!」
いきなり現れた私を見て、アンジェラは目を瞬かせる。こちらに来たときの約束に名を呼ばないと言っていた。3歳には難しかったかなぁ?と考えていたが、そうでもなく、すんなり受入れている。
ふふふと笑ってアンジェラの頭を優しくなでながら、同じ質問をする。
「よくわからない!」
「これは、絵本ね。字はまだ、覚えきれていないものね。また、帰ってきてから読みましょう。それより……お出かけしましょう」
「お出かけ?」
目を輝かせて私に笑いかける。余程、退屈をしていたのだろう。アンジェラは、どう考えても、残念なことに私に似たようだ。
「じゃあ、お外にいくから、これに着替えて!」
持ってきた男の子の服に手早く着替えさせると、手伝わなくてもきちんと着替えていく。最後に子供用の麦わら帽子渡すと、かぶってにっこり笑っている。本当に可愛らしい。
「さあ、でかけましょうか。みんなにはお手紙を書いておいたから、こっそりね」
ふふっと笑って、しーっと人差し指を口の前にもってくると、アンジェラも真似をした。手をつないで子ども部屋からこっそりでて、屋敷を抜け出す。
一人で抜け出すことはあっても、アンジェラとこうして抜け出したのは初めてだ。二人とも足取りは軽く、アンジェラも外へ行くことにウキウキとしていることがわかる。
「今日は、どっちにいこうかしら? 畑? 山? 街?」
「山っ!」
アンジェラに尋ねると、山の方に行きたいという。そうねぇ……と考えて、アンジェラの言うように山の方へ向かうことにする。
夏にかかろうとしている今、薬草などたくさん採れる時期であり、ヨハンの助手たちが上質な薬草を求めて山を駆け回っている時期でもあった。
あまり多くを採らないよう注意はしているので、程よく来年も収穫できるように考えられていた。
「ジョー、楽しみね。しっかりついてきてね!」
貴族であれば馬車で移動するのが当たり前であるが、屋敷をこっそり出てきた手前、どこに行くのも徒歩である。子どもが歩くには、少々遠いが、時間をかけてゆっくり歩く。歌を歌ったり、おしゃべりしたり……私たちに足りなかった時間を埋めていく。
途中、道端に大きな木があり、木陰になっているところがあったため休憩をはさむ。
「あの木の下で休憩しましょうか?クッキーを持ってきたのよ」
大きな木の下で、二人並んで休憩することにした。すると、女の子が走って追いかけてくる。アンジェラの侍女見習いであるエマだった。
「エマ!」
駆けよっていくアンジェラの背を見送っていたが、抜け出したのがだいぶ早くばれたらしく、アンジェラと母娘の時間が終わり、少し寂しくなった。
「アンナ様、お屋敷を抜け出されては困ります。総出で今、お二人を探しています!」
アンジェラの手を引き近くまで来た幼いエマに注意されるが、私はどこ吹く風。いつものことすぎるので、微笑んでおいた。
「そう。探してくれているのね。では、エマは私たちが無事であることをモレンに報告して、帰りの馬車の用意をしてくれるかしら。今からまだ、山辺のほうへ出かけますから」
それだけ言って、用意していたお茶を飲む。一時間程歩いてきたため、のどが潤った。キッとエマに睨まれたが、主人の言うことは絶対だ。渋々というふうではあったが、きいてくれうようだ。
「かしこまりました。すぐに戻りますので、ここを動かないでください!無駄だと思いますが……」
その言葉とため息を残し、エマは屋敷へ駆けて戻っていく。
「エマ、大丈夫?」
「えぇ、大丈夫よ。さぁ、ジョー先に進みますよ。エマに馬車の手配は頼みましたから、帰りは任せましょう」
気の向くまま、アンジェラの手を引き、山辺の農村部まで歩いていく。
母娘でこんな風に出かけるのは、本当に久しぶりで楽しい。アンジェラも、見たこともない土地にはしゃいでいる。
公都でもアンバー領でも、なかなかこういう時間を取ることが難しかったので、こんな穏やかな日々が続いてくれればいいのにと願ってしまう。
「ママ、天気もよくて気持ちいいね。こんな日のお散歩は、楽しみ!」
にこにこと笑い、アンジェラは手を握り返してくる。
穏やかな時間をすごしているせいか、アンジェラの言葉や仕草に嬉しさと愛しさがぐっとこみあげてくる。手を握り返して、また色々な話を始めて二人は歩き始めた。
コーコナへ着いた日に、ビルにコーコナ領にある大きな屋敷について、いろいろと聞いてみたが、どうも合うような話がなく、調べてもらうことになった。
私は私で、お散歩という名目で出かけることにする。
飾り気の一切ない領民たちがきているようなドレスに身を包んだ私は、大きめの麦わら帽子を被って長くふわふわしたストロベリーピンクの髪をゆるくみつあみにし、後ろに垂らす。そこに薔薇のピアスが揺れているのを鏡で確認して、よしっと立ちあがった。
手には、男の子の服と子供用の帽子も忘れずにもって部屋を出る。
一応ドアを開けたとき、誰もいないこと確認し、こっそり子ども部屋へと忍び込んだ。
アンジェラは、窓際で一人、本を読んでいた。侍女見習いのエマは、部屋にはいないようだ。
「ジョー、何を読んでいるの?」
「ママ!」
いきなり現れた私を見て、アンジェラは目を瞬かせる。こちらに来たときの約束に名を呼ばないと言っていた。3歳には難しかったかなぁ?と考えていたが、そうでもなく、すんなり受入れている。
ふふふと笑ってアンジェラの頭を優しくなでながら、同じ質問をする。
「よくわからない!」
「これは、絵本ね。字はまだ、覚えきれていないものね。また、帰ってきてから読みましょう。それより……お出かけしましょう」
「お出かけ?」
目を輝かせて私に笑いかける。余程、退屈をしていたのだろう。アンジェラは、どう考えても、残念なことに私に似たようだ。
「じゃあ、お外にいくから、これに着替えて!」
持ってきた男の子の服に手早く着替えさせると、手伝わなくてもきちんと着替えていく。最後に子供用の麦わら帽子渡すと、かぶってにっこり笑っている。本当に可愛らしい。
「さあ、でかけましょうか。みんなにはお手紙を書いておいたから、こっそりね」
ふふっと笑って、しーっと人差し指を口の前にもってくると、アンジェラも真似をした。手をつないで子ども部屋からこっそりでて、屋敷を抜け出す。
一人で抜け出すことはあっても、アンジェラとこうして抜け出したのは初めてだ。二人とも足取りは軽く、アンジェラも外へ行くことにウキウキとしていることがわかる。
「今日は、どっちにいこうかしら? 畑? 山? 街?」
「山っ!」
アンジェラに尋ねると、山の方に行きたいという。そうねぇ……と考えて、アンジェラの言うように山の方へ向かうことにする。
夏にかかろうとしている今、薬草などたくさん採れる時期であり、ヨハンの助手たちが上質な薬草を求めて山を駆け回っている時期でもあった。
あまり多くを採らないよう注意はしているので、程よく来年も収穫できるように考えられていた。
「ジョー、楽しみね。しっかりついてきてね!」
貴族であれば馬車で移動するのが当たり前であるが、屋敷をこっそり出てきた手前、どこに行くのも徒歩である。子どもが歩くには、少々遠いが、時間をかけてゆっくり歩く。歌を歌ったり、おしゃべりしたり……私たちに足りなかった時間を埋めていく。
途中、道端に大きな木があり、木陰になっているところがあったため休憩をはさむ。
「あの木の下で休憩しましょうか?クッキーを持ってきたのよ」
大きな木の下で、二人並んで休憩することにした。すると、女の子が走って追いかけてくる。アンジェラの侍女見習いであるエマだった。
「エマ!」
駆けよっていくアンジェラの背を見送っていたが、抜け出したのがだいぶ早くばれたらしく、アンジェラと母娘の時間が終わり、少し寂しくなった。
「アンナ様、お屋敷を抜け出されては困ります。総出で今、お二人を探しています!」
アンジェラの手を引き近くまで来た幼いエマに注意されるが、私はどこ吹く風。いつものことすぎるので、微笑んでおいた。
「そう。探してくれているのね。では、エマは私たちが無事であることをモレンに報告して、帰りの馬車の用意をしてくれるかしら。今からまだ、山辺のほうへ出かけますから」
それだけ言って、用意していたお茶を飲む。一時間程歩いてきたため、のどが潤った。キッとエマに睨まれたが、主人の言うことは絶対だ。渋々というふうではあったが、きいてくれうようだ。
「かしこまりました。すぐに戻りますので、ここを動かないでください!無駄だと思いますが……」
その言葉とため息を残し、エマは屋敷へ駆けて戻っていく。
「エマ、大丈夫?」
「えぇ、大丈夫よ。さぁ、ジョー先に進みますよ。エマに馬車の手配は頼みましたから、帰りは任せましょう」
気の向くまま、アンジェラの手を引き、山辺の農村部まで歩いていく。
母娘でこんな風に出かけるのは、本当に久しぶりで楽しい。アンジェラも、見たこともない土地にはしゃいでいる。
公都でもアンバー領でも、なかなかこういう時間を取ることが難しかったので、こんな穏やかな日々が続いてくれればいいのにと願ってしまう。
「ママ、天気もよくて気持ちいいね。こんな日のお散歩は、楽しみ!」
にこにこと笑い、アンジェラは手を握り返してくる。
穏やかな時間をすごしているせいか、アンジェラの言葉や仕草に嬉しさと愛しさがぐっとこみあげてくる。手を握り返して、また色々な話を始めて二人は歩き始めた。
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