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コーコナへの出発と注意事項

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「では、行ってまいります!留守を頼みますね!」
「お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「数日後には、そちらに向かいますので、くれぐれも……」
「わかっています。ディルは心配性だな……」
「いや、みな、思っていることだと思うから。くれぐれも、大人しくしていて?」
「私を誰だと思っているのですか?」
「アンナリーゼ様ですよ。本当、どこに飛んでいくかわからない人ですから、アデル!」
「はいっ、リアン」
「アンナリーゼ様の手綱をしっかり持ち、アンジェラ様の暴走を止めてくださいね!」


 力なく返事をするアデルに、大丈夫よ!と声をかけると、1番大丈夫じゃない人から大丈夫と言われたと嘆いている。


「そんなのじゃ、アンナの旦那様は務まらないからな!」
「旦那様の役は、今でも返上しますけど……」
「そういうわけにはいかないでしょ?ほら、いきますよ!」


 アンジェラを先に馬車に乗せ、私はアデルを引きずって乗り込んだ。手を振ると少々
 お疲れ気味のみなが、ため息交じりに見送ってくれる。


「さて、これから馬車に揺られてコーコナへ行きます。アンジェラ」
「はいっ!」


 手をあげ返事をするアンジェラの頭を撫でる。


「今日から、ジョーです。いいですか?ジョーと名を呼ぶので、お返事してね?」
「はいっ!」
「そして、今日から、しばらくの間、パパになるアデルですよ!ほら、パパって呼んであげて?」
「……パパ?」
「……アンジェ……」
「アデル?」
「ジョー様、いや、ジョー。ジョージア様みたいなかっこよくはないけど、しばらくはよろしくお願いします」
「……はい?」
「疑問形……」
「仕方がないわよ!まだ、三歳なんだから」
「ジョージア様と比べられるなんて、泣きそうですけど……」
「今だけよ。アンバー領は比較的安全ではあるけど、コーコナ領は、まだ、治安がわるいところもあるから。私が領主だってこともみんなが知っているわけではないし、この子が、私の子どもだっていうのも知らない人が多いくらい。だから、私たちを守ることはもちろんだけど、相手を守ることでもあるのよ。貴族が普通の服を着て出歩いているなんて、夢にも思わないでしょうからね」
「そう思うなら、出歩かなければ、いいだけな気がしますが」
「報告書でも見るものと、実際見るのとは違うから。そこは、現地で見てみたいの。知的好奇心ってやつね」
「……振り回されている感じが、ヒシヒシとします」


 苦笑いをしているアデル。


「あと、アデルには伝えておくわね?」
「……あんまり、朗報な感じはしませんね……」
「そう言わないで!ジョーをつれて、お出かけしようと思うの。ついてきてもいいけど……近衛は、連れてこないでね?さすがに目立つことはしたくないのよね」
「わかりました。どこに向かうのですか?」
「大きな屋敷。今は、それだけしかわからないから、あちらについてから、ビルに聞いてみようかと」
「そういえば、ビルさんがニコライさんの変わりに向かっているんでしたね?」
「そうそう。今年の買い付けはビルに任せてある。新しいものもどんどん出来てくているし、ビルも久しぶりの商売に浮かれていたわ」
「大店の旦那でしたからね、そりゃ楽しみでしょう?」
「そうね、きっと、そうなのよね」
「一つ聞いても?」
「何かしら?」
「ニコライさんって、兄弟がいるのですよね?」
「えぇ、いるわよ?公都で今も店を構えている。ビルを仲介に傘下に入らないかと言ったんだけど、断られちゃったわ。私、最初から嫌われてたし、ニコライの下になるのが嫌なのでしょうね。落ちぶれるまでは行かないけど、細々とした商売にしかなっていなくて、かなり商売的に厳しいと思っているわ」
「商売敵ですか。兄弟で」
「まぁ、ニコライは兄を苦手としていたみたいだけどね。私の仕事を任せるようになってからは、逆に見向きもしなくなった感じで、ビルも引退を考えていた時期だったこともあって、引き抜きしちゃったし……気の毒といえば、気の毒よね。頼れるのが兄弟だけだっていうのが」


 コーコナへ着くまで間、たっぷり時間はあった。アンバーへ来てからのこと、領地でのこと、集まった人たちの話をたくさんする。領地の形が出来上がってから来たアデルにとって、知らないことがたくさんあるようで、話したことに対して質問があり、それに答えてを繰り返す。


「アンバー領のこと、少しわかったつもりでいましたが、こうして話をして見ると、まだまだ知らないことの方が多いようです」
「領地へ着てからしか、知らないものね。ここまで来るのに4年。その間にたくさんの人の手に助けられ、領主に見捨てられた領地からの復活があった。
 公爵になったりもそのひとつだし……ゴールド公爵家への牽制の意味も会ったのでしょうね。私が爵位を得られたのも」
「表立っては出ていませんけど、ゴールド公爵との繋がりは、根深いですからね」


 ニコリと笑い、肯定しておく。
 あと少しで、コーコナにつくころ、ジョーと呼ばれることにもなれたアンジェラは、エマとご機嫌に話をしていた。


「ジョー、コーコナに着いたら、いっぱいお出かけしようね!」
「はいっ!」

 いい返事に私は微笑み、アデルは苦笑いをしたとき、カタンと馬車が停まるのである。
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