ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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家族ごっこ?

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 社交の季節は始まったばかりではあったのだが、今年は先にコーコナ領へ向かうことにした。公に社交の季節が終わるころに帰ってくるよう言われたので、苦肉の策ではある。
 ジョージアの命が狙われていることも考え、ディルの采配を考え、ジョージアが屋敷からでないようにと話はまとまった。
 私は、次の計画や領地運営にも関わってくるので、領地の視察をしないといけないので、出発の準備をする。


「今回、護衛は連れていくんだよね?」


 心配そうにしているジョージアに微笑む。


「領地へ手紙を書きました。アデルがこちらに来てくれるので、到着したら出発を考えています」
「アデルが一緒なら、安心だ。アンナだけだと、無茶をするから……」
「そうですか?そんなこと、ないと思うんですけど……」
「侍従は誰を?リアンは行くのかな?」
「今回は、エマを連れていきます。ディルも後からついてきてくれ、数日の滞在予定です」
「ディルも?」
「えぇ、公都への報告について、指導しないといけないようなので、くるらしいです」
「アンジーの『予知夢』のこと?でも、それって、正確にはよくわからないんだよね?」
「そうです。だからこそ、連絡や報告の強化をはかろうとしているのです」
「確かに、去年は流行り病の話もアンナが領地にいたから、対処できたことだしね?」


 うーんと、悩んでいるジョージアに微笑んでみた。
 どうかした?と尋ねてきたので、私はジョージアに言っていなかったコーコナ領の話をすることにした。


「コーコナ領は、薬の元になる薬草などの宝庫なのですよ!だから、病には負けません。私もあまり知りませんでしたが、質のいい薬草が生えているらしいのです。ヨハンがこっそり手入れのした薬草畑を作っています。
 人に知られるとまずいような薬もあるので、誰かに公開をするつもりはありませんが、ジョージア様のこと、このあたりに関わってくる可能性があるのですよ……」
「アンナには珍しく悩まし気だね?」
「そうですね。その薬草畑には麻薬が含まれているのですよ」
「なんだって?それって……」
「薬草畑の最奥に見えないようにひっそりと。公に栽培は出来ないのですけど、大きな怪我をしたときに、鎮痛剤として使うものもあるのです。そのために、秘密裏に栽培をしています。決して、ジョージア様も口外はしないでください。他に知っているのは、ヨハンを始め、ごく少数とディルのみ。麻薬で快楽を受入れてしまうと、落ちてしまいます。末端価格もとてつもなく高く、みるみるうちに身ぐるみだけでなくいろいろなものが、その手から零れ落ちてしまうでしょう。最悪、命さえも」
「そんなに危険なものが領地にあるの?」
「えぇ、そうですね。元々自然に生えているものではあるのですが、ごくまれにしか、外にでないものです。良質な薬草があるコーコナだからこそ、生息していたと言っても過言ではありません。危険なものであるのは承知していますが、治療に必要なこともあるのです。ヨハンの管理の元ならと許可を出しています。ヨハンのことだから、そのあたりは、きちんとしていますからね」
「信頼されているんだね」


 そっかと、苦笑いをしているジョージア。どこか、羨ましそうである。


「コーコナ領へ向かうのは、アンナとアンジー、アデルと数人の近衛を連れていくんだよね?」
「そうですね。私も、護衛はそれほどいらない気がするけど、そうも言ってられないですからね。ウィルがいない間は、アデルと連携を取るようにしています」
「コーコナへ行っている間は、アデルと三人が家族ごっこしているのかな?」
「……そうかもしれませんね?」


 やきもちをやいているジョージア。護衛となると、ジョージアではどうしようもないので、仕方がないだろう。
 公都でディルと一緒にネイトとジョージを守るようお願いした。


「コーコナか。来年は、また、一緒に向かいたいな。アンバー領とは、気候も人柄も違っていて、去年は少しの滞在だったし、大変な時期だったけど」
「また、行きたいと言ってもらえてよかった。なによりの誉め言葉ですね。領地へ行った人が、また訪れたいと思ってもらえる領地は、繁栄しますから」
「どうして?」
「人の流通は、お金も動きますし、ものが動くのです。コーコナであれば、特産品の布や糸、それらを始めとする衣類や下着など、たくさん作っていますし、実際、そういうお店も多いのですよ。最近では、貴族女性の趣味に刺繍がありますけど、ちょっとした作品展を開こうという話があるくらい、コーコナでは刺繍が流行っています」
「作品展?絵画とかと同じような?」
「えぇ、そうですよ!この夏にコーコナから、そういうタペストリーや掛け布団用の飾りなんかをハニーアンバー店で取り扱うという話もあります。刺繍は、貴族女性だけでなく、領民の中にもかなり上手な方もいるし、かなり斬新なものや驚くほど精緻なものなど、報告で聞く限りでは、心踊るようなものがたくさんあるらしいです。次の冬の手仕事にどうか?って話もあるくらいなので、アンバー領も含め声をかけてみようと思っています。元々、私のドレスの刺繍は、アンバー領の女性たちの力作ですからね!」

 着ているドレスを立ち上がってクルクルと見せると、確かにと頷く。どれもこれも、ナタリーの目にかなった女性たちが、丹精込めて刺繍をしてくれたものばかりである。
 時間があるときにコツコツと仕上げていくので、それほど多くは作れないらしいが、私のドレスは、領地産でなければいけないので、1年かけてでも作ってもらっているらしい。楽しみであった。
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