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むすっとしているあの子のご機嫌
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「じゃあ、セシリア、悪いのだけど」
「はい、お任せください!」
そういってウィルの執務室を出て、訓練場へ足を向ける。今日は、特に目立つドレス姿の私は、近衛たちにあっと囲まれてしまう。
「アンナリーゼ様、次はいつ来られますか?」
「僕にも稽古をつけてください!」
「伝説の百人斬りを……」
私の周りで口々に話しかけてくる近衛たち。いつもなら、ウィルが散らしてくれるのだが、いないものは仕方がない。
ニコリと笑いかけると、それぞれが一歩足をひいた。そのおかげで、足を踏まれたものがいたらしく、痛いとあちこちから声が上がっていた。
「そんなにいっぺんに話されても困るわ。そうね、ウィルが帰ってきたら、一度遊びましょ!私、こう見えて、とても忙しいから」
「わかりました!お待ちしていますね!」
そんなに嬉しそうにされるのも困るのだが、この様子なら、一度、遊びに来たほうがよさそうな雰囲気で、ウィルに相談をしておこうと思っていた。
「ウィル様って、いつ戻るんでしょうね?」
「そろそろ戻ってくるって公も言っていたから、近々かしら?」
「アンナリーゼ様は、その後、アンバー領へ戻られるのですか?」
「いいえ、私はもう少ししたら、コーコナ領への視察へ向かう予定だけど……何か?」
「コーコナですか?あそこもアンナリーゼ様の治める領地だったのですね」
「そうね。それが?」
「いえ、噂なのですが、何やら、あの当たりで、最近、人さらいがあると聞いているんです。アンナリーゼ様の領地でそんなことが出来るほど、気の大きなものがいるとは思いませんけど……気を付けてください」
「……人さらいね。報告は受けていないのだけど、情報をありがとう」
「いえ、不確かな噂話で、申し訳ありません」
「うぅん、それを調べて対処するのは、領主の役目だから。聞けて嬉しいわ」
えへへと照れたように笑う近衛。羨ましそうにしている周りの近衛たちの視線を集めて、小さくなってしまった。
……人さらいか。そんな話、聞かないから、何かあるのかしら?
微笑みながら、頭の中で、考え事をする。それじゃあとその場から去り、馬車へ乗り込んだ。
……コーコナからの報告書でそんな内容聞いたことないのよね……些末なものとして、私のもとまで届いていないということかしら?一応、報告については、全て目を通すようにすると伝えてあるのだけど。領主の館では、把握しきれていない案件なのかしら?それなら、先行しているビルに聞くのがいいかもしれないわ。
ニコライがエルドアについて行くことになり、定例的に向かっていたコーコナへいけなくなったので、変わりに父であるビルが行くことになっていた。
いつものように綿花を中心に今期から来期にかけてのドレスの話や新しく出来た技術などの共有、ナタリーとの連携なども含めて、調整をしてくれることになっている。元々、ニコライに商売を教えたのは、ビルであるので、それほど、やり方に差異はないだろう。
考え込んでいる間に屋敷についた。出迎えてくれたディルに馬車からおろしてもらうと、後ろからじっと見上げるアンジェラがいた。
……なんだか、とてもご機嫌斜めのようね。
朝から出かけていたせいか、アンジェラは怒っているようだ。特に約束をした覚えもないのだが、何故、こんなに怒っているのだろうか?
それに、一人で玄関まで来たことに少し驚いている。
「アンジェラ様、こちらにいらしていたのですね?」
「ん。ママ、どこいってたの?」
膨れっ面をしているので、思わず、その柔らかい頬をつつきたくなるが、グッと我慢をした。
「お城へ行っていたのよ?アンジェラは、私に御用かしら?」
私のてをギュっと握って、引きずるように歩いて行く。どこに向かうのかとついて行くと、執務室へと入って行った。
どうしたのだろう?
機嫌が悪いのはわかるのだが、いつもと違う娘に少し困ってしまう。
「ママ、夢見た!」
「夢?」
きっと、予知夢のことだろうことはわかるだが……何を見たのだろう。私はだんだん力を失っていっている感覚があるのだが、アンジェラが逆に頻繁に見ているような気がする。
「大きなお家に、ママが行くの!」
「私が、大きなお家に?どこのお家かわかる?」
「知らない!」
「……知らないか。それが、どこか、わかるといいのだけど……仕方がないわよね。まだ、小さいのだもの」
ため息をつくと、小首を傾げているアンジェラだったが、ニッコリ笑う。なので、私もつられて笑いかける。
「ママ、とってもかっこいいの!ぴゅんぴゅんとね!」
身振り手振りをしながら話始めるが、どう考えても要領をえなかった。
私、アンジェラとの意思疎通をもっとできるようにならないと……アンジェラのママ失格かしら?
見守りながら話していく内容を確認していく。
なんとなくだけど、アンバー領ではないわね。コーコナ領かしら?コーコナ領に、大きな屋敷……探してみる必要があるわ。一体、何が起こるのかしら?
アンジェラの話を聞きながら、コーコナ領を思い浮かべる。アンバー領に比べると、まだ、回れていないところが多いので、わからない。
「アンジェラ、コーコナ領へ一緒に遊びに行く?」
「……行くっ!」
とりあえず、『予知夢』の場所を特定するためには、アンジェラの夢の記憶が必要となりそうだ。お出かけ大好きなアンジェラと二人で出かけるのいいだろうと、未だ話をしているアンジェラに微笑んだ。
「はい、お任せください!」
そういってウィルの執務室を出て、訓練場へ足を向ける。今日は、特に目立つドレス姿の私は、近衛たちにあっと囲まれてしまう。
「アンナリーゼ様、次はいつ来られますか?」
「僕にも稽古をつけてください!」
「伝説の百人斬りを……」
私の周りで口々に話しかけてくる近衛たち。いつもなら、ウィルが散らしてくれるのだが、いないものは仕方がない。
ニコリと笑いかけると、それぞれが一歩足をひいた。そのおかげで、足を踏まれたものがいたらしく、痛いとあちこちから声が上がっていた。
「そんなにいっぺんに話されても困るわ。そうね、ウィルが帰ってきたら、一度遊びましょ!私、こう見えて、とても忙しいから」
「わかりました!お待ちしていますね!」
そんなに嬉しそうにされるのも困るのだが、この様子なら、一度、遊びに来たほうがよさそうな雰囲気で、ウィルに相談をしておこうと思っていた。
「ウィル様って、いつ戻るんでしょうね?」
「そろそろ戻ってくるって公も言っていたから、近々かしら?」
「アンナリーゼ様は、その後、アンバー領へ戻られるのですか?」
「いいえ、私はもう少ししたら、コーコナ領への視察へ向かう予定だけど……何か?」
「コーコナですか?あそこもアンナリーゼ様の治める領地だったのですね」
「そうね。それが?」
「いえ、噂なのですが、何やら、あの当たりで、最近、人さらいがあると聞いているんです。アンナリーゼ様の領地でそんなことが出来るほど、気の大きなものがいるとは思いませんけど……気を付けてください」
「……人さらいね。報告は受けていないのだけど、情報をありがとう」
「いえ、不確かな噂話で、申し訳ありません」
「うぅん、それを調べて対処するのは、領主の役目だから。聞けて嬉しいわ」
えへへと照れたように笑う近衛。羨ましそうにしている周りの近衛たちの視線を集めて、小さくなってしまった。
……人さらいか。そんな話、聞かないから、何かあるのかしら?
微笑みながら、頭の中で、考え事をする。それじゃあとその場から去り、馬車へ乗り込んだ。
……コーコナからの報告書でそんな内容聞いたことないのよね……些末なものとして、私のもとまで届いていないということかしら?一応、報告については、全て目を通すようにすると伝えてあるのだけど。領主の館では、把握しきれていない案件なのかしら?それなら、先行しているビルに聞くのがいいかもしれないわ。
ニコライがエルドアについて行くことになり、定例的に向かっていたコーコナへいけなくなったので、変わりに父であるビルが行くことになっていた。
いつものように綿花を中心に今期から来期にかけてのドレスの話や新しく出来た技術などの共有、ナタリーとの連携なども含めて、調整をしてくれることになっている。元々、ニコライに商売を教えたのは、ビルであるので、それほど、やり方に差異はないだろう。
考え込んでいる間に屋敷についた。出迎えてくれたディルに馬車からおろしてもらうと、後ろからじっと見上げるアンジェラがいた。
……なんだか、とてもご機嫌斜めのようね。
朝から出かけていたせいか、アンジェラは怒っているようだ。特に約束をした覚えもないのだが、何故、こんなに怒っているのだろうか?
それに、一人で玄関まで来たことに少し驚いている。
「アンジェラ様、こちらにいらしていたのですね?」
「ん。ママ、どこいってたの?」
膨れっ面をしているので、思わず、その柔らかい頬をつつきたくなるが、グッと我慢をした。
「お城へ行っていたのよ?アンジェラは、私に御用かしら?」
私のてをギュっと握って、引きずるように歩いて行く。どこに向かうのかとついて行くと、執務室へと入って行った。
どうしたのだろう?
機嫌が悪いのはわかるのだが、いつもと違う娘に少し困ってしまう。
「ママ、夢見た!」
「夢?」
きっと、予知夢のことだろうことはわかるだが……何を見たのだろう。私はだんだん力を失っていっている感覚があるのだが、アンジェラが逆に頻繁に見ているような気がする。
「大きなお家に、ママが行くの!」
「私が、大きなお家に?どこのお家かわかる?」
「知らない!」
「……知らないか。それが、どこか、わかるといいのだけど……仕方がないわよね。まだ、小さいのだもの」
ため息をつくと、小首を傾げているアンジェラだったが、ニッコリ笑う。なので、私もつられて笑いかける。
「ママ、とってもかっこいいの!ぴゅんぴゅんとね!」
身振り手振りをしながら話始めるが、どう考えても要領をえなかった。
私、アンジェラとの意思疎通をもっとできるようにならないと……アンジェラのママ失格かしら?
見守りながら話していく内容を確認していく。
なんとなくだけど、アンバー領ではないわね。コーコナ領かしら?コーコナ領に、大きな屋敷……探してみる必要があるわ。一体、何が起こるのかしら?
アンジェラの話を聞きながら、コーコナ領を思い浮かべる。アンバー領に比べると、まだ、回れていないところが多いので、わからない。
「アンジェラ、コーコナ領へ一緒に遊びに行く?」
「……行くっ!」
とりあえず、『予知夢』の場所を特定するためには、アンジェラの夢の記憶が必要となりそうだ。お出かけ大好きなアンジェラと二人で出かけるのいいだろうと、未だ話をしているアンジェラに微笑んだ。
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