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それはておき
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「私を呼んだのは、ヨハンのこと以外の相談もありますよね?」
「あぁ、そうだ。それは、そうなんだが、アンナリーゼは、本当にヨハンのことを心配しないんだな?」
「して、どうなるんですか振り回されるだけですよ。それに、ヨハンも一応護身術くらいは習っていますし、本当に危険なことがあれば、公より先に情報がきていますし、ここにはいないでしょ?」
何故ここに連れてこられたのか、わかっていないのは、私だけなのだが、説明がないので待つしかない。
「確かに。まず、何かあれば、指示を出す前に飛んでいくだろうな。じゃあ、せめて、ウィルにだけでも行先を伝えてくれればいいと思わないか?」
「ウィルも一緒に出かけているはずですよ?助手が診療所で動き回っているようですし……」
「一体、何をしているんだ?まだ、終息はしていないのだろう?」
「そうですね……もう少しかかるという見込みではありますけど……今、ヨハンとウィルがしていることは、正規の道順で来るインゼロ帝国経由の人の動き以外の場所を確認しているところだと思います。ヒーナの件もあるので、そのあたりの強化をしてくれていると思いますよ」
うーんと顎を触りながら悩んでいる公。何を悩んでいるのかと見つめ返すと、口を開いた。
「アンナリーゼは、正規の道筋以外にこの国へ入ることが出来ると思うのか?」
「まぁ、入れないことはないですよね?確かに壁によって国境は守られていますが、それすら凌駕する集団が動いているのです。確認しておくに越したことはないですよ?」
「……そうなのか。そこまで、気が回らないな」
「現場にいるものたちが、考えてくれていますから、私たちが指示をする必要はないのかと。今のところは、困ることもないと思います。ただ、」
「ただ……なんだ?」
「国が厳しいときは、特に内政は気を付けてください。インゼロ帝国にローズディアの内情が筒抜けということはないと思いますが……」
「……そこは、何とも言えないな」
「まさか、国を売るということまでは、しないでしょう?民がどれほど困るか……インゼロ帝国の属国になったら。それをわからない人ではないと思いますよ?」
「だといいんだが、どうも、最近二人目をご所望のようでな……」
「公妃とのですか?」
「他にいるのか?」
「で?」
「……押しに弱くてすまぬ。さすがに、もう、逃げられなかったんだ」
「そうですか。別にいいんじゃないですか?お子はいないよりいた方がいいですし、なんなら、預かりますよ?」
「……アンナリーゼが子育て?」
「失礼ですね!これでも、3児の母親ですよ?侍女にお手伝いはしてもらってますけど、乳母は立てずに、育てたんですから」
「あぁ、はいはい。そうですか。よく頑張りましたね?」
「なんか、腹が立つな……」
むぅっと頬を膨らませると、公が笑い始めた。
「そうそう、そろそろプラム殿下に剣術の指南者をつけた方がいいですよ。いつまでも、守ってもらえる立場でいるのは、さすがに、公ぐらいのものですから」
「悪かったなっ!剣術がさっぱりで」
「……プラム殿下は、たぶん、公と違って、筋がいいと思います」
「……誰に教わるのがいいと思う?ウィルか?」
「ウィルは、ダメです。自身の子もいるし」
「アンナリーゼが教えるか?」
「それはちょっと……アンバー領で預かれるならいいですけど……とても忙しく動き回っていますからね?エリックに任せるのがいいと思います」
「エリックか、確かに適任だな。相談しておくとしよう」
満足そうに頷いているが、まだ、何かあるのだろうか?と少し睨む。
「昨日、エルドアへ出立下トライドたちの話もしたかったんだ」
「なんでしょうか?」
「もし、トライドが、何か間違えることがあれば、どう、対処すればいいだろうと思って」
「……セバスの決定は悪いものではないと思いますよ。国への利益優先、国民のこともきちんと考えた上で、話を纏めてくるとでしょう。我が家の軍師殿から、いろいろと心構えも聞いていますし、いざとなったら、非常な決定もするでしょうが、今のところは協議だけなので、どれだけ予算を抑え、対等以上の条件をエルドアからも出せるかって言うのが、目下の課題だと思っていますよ」
「なるほどな。その成果は、完璧だと?」
「どうですかね?多少の穴もあるかもしれませんが、概ね、欲しい答えは集まると考えています。何より、ローズディアは、今の段階での戦争は、国力低下しているところですから、しません。例えば、相手側からの挑発により、何か起こってしまった場合は、速やかにこちらで対処してしまえばいいです」
「トライドのことを信頼しているのだな?」
「当たり前です。頭脳において、この国では5本の指に入るくらいだと思いますよ!将来は、宰相のいるそこに立ってくれれば嬉しいですけどね!友人として鼻が高くなりますからね!」
「トライドは、ほとんど、こちらで仕事をする感じではなさそうだからな。領地に行けば、トライドの本音もわかるってものなのか」
なるほどと公は頷き、宰相は楽しみですねと呟く。
二人とも、セバスが将来宰相になることを想像してくれたようであった。
「あぁ、そうだ。それは、そうなんだが、アンナリーゼは、本当にヨハンのことを心配しないんだな?」
「して、どうなるんですか振り回されるだけですよ。それに、ヨハンも一応護身術くらいは習っていますし、本当に危険なことがあれば、公より先に情報がきていますし、ここにはいないでしょ?」
何故ここに連れてこられたのか、わかっていないのは、私だけなのだが、説明がないので待つしかない。
「確かに。まず、何かあれば、指示を出す前に飛んでいくだろうな。じゃあ、せめて、ウィルにだけでも行先を伝えてくれればいいと思わないか?」
「ウィルも一緒に出かけているはずですよ?助手が診療所で動き回っているようですし……」
「一体、何をしているんだ?まだ、終息はしていないのだろう?」
「そうですね……もう少しかかるという見込みではありますけど……今、ヨハンとウィルがしていることは、正規の道順で来るインゼロ帝国経由の人の動き以外の場所を確認しているところだと思います。ヒーナの件もあるので、そのあたりの強化をしてくれていると思いますよ」
うーんと顎を触りながら悩んでいる公。何を悩んでいるのかと見つめ返すと、口を開いた。
「アンナリーゼは、正規の道筋以外にこの国へ入ることが出来ると思うのか?」
「まぁ、入れないことはないですよね?確かに壁によって国境は守られていますが、それすら凌駕する集団が動いているのです。確認しておくに越したことはないですよ?」
「……そうなのか。そこまで、気が回らないな」
「現場にいるものたちが、考えてくれていますから、私たちが指示をする必要はないのかと。今のところは、困ることもないと思います。ただ、」
「ただ……なんだ?」
「国が厳しいときは、特に内政は気を付けてください。インゼロ帝国にローズディアの内情が筒抜けということはないと思いますが……」
「……そこは、何とも言えないな」
「まさか、国を売るということまでは、しないでしょう?民がどれほど困るか……インゼロ帝国の属国になったら。それをわからない人ではないと思いますよ?」
「だといいんだが、どうも、最近二人目をご所望のようでな……」
「公妃とのですか?」
「他にいるのか?」
「で?」
「……押しに弱くてすまぬ。さすがに、もう、逃げられなかったんだ」
「そうですか。別にいいんじゃないですか?お子はいないよりいた方がいいですし、なんなら、預かりますよ?」
「……アンナリーゼが子育て?」
「失礼ですね!これでも、3児の母親ですよ?侍女にお手伝いはしてもらってますけど、乳母は立てずに、育てたんですから」
「あぁ、はいはい。そうですか。よく頑張りましたね?」
「なんか、腹が立つな……」
むぅっと頬を膨らませると、公が笑い始めた。
「そうそう、そろそろプラム殿下に剣術の指南者をつけた方がいいですよ。いつまでも、守ってもらえる立場でいるのは、さすがに、公ぐらいのものですから」
「悪かったなっ!剣術がさっぱりで」
「……プラム殿下は、たぶん、公と違って、筋がいいと思います」
「……誰に教わるのがいいと思う?ウィルか?」
「ウィルは、ダメです。自身の子もいるし」
「アンナリーゼが教えるか?」
「それはちょっと……アンバー領で預かれるならいいですけど……とても忙しく動き回っていますからね?エリックに任せるのがいいと思います」
「エリックか、確かに適任だな。相談しておくとしよう」
満足そうに頷いているが、まだ、何かあるのだろうか?と少し睨む。
「昨日、エルドアへ出立下トライドたちの話もしたかったんだ」
「なんでしょうか?」
「もし、トライドが、何か間違えることがあれば、どう、対処すればいいだろうと思って」
「……セバスの決定は悪いものではないと思いますよ。国への利益優先、国民のこともきちんと考えた上で、話を纏めてくるとでしょう。我が家の軍師殿から、いろいろと心構えも聞いていますし、いざとなったら、非常な決定もするでしょうが、今のところは協議だけなので、どれだけ予算を抑え、対等以上の条件をエルドアからも出せるかって言うのが、目下の課題だと思っていますよ」
「なるほどな。その成果は、完璧だと?」
「どうですかね?多少の穴もあるかもしれませんが、概ね、欲しい答えは集まると考えています。何より、ローズディアは、今の段階での戦争は、国力低下しているところですから、しません。例えば、相手側からの挑発により、何か起こってしまった場合は、速やかにこちらで対処してしまえばいいです」
「トライドのことを信頼しているのだな?」
「当たり前です。頭脳において、この国では5本の指に入るくらいだと思いますよ!将来は、宰相のいるそこに立ってくれれば嬉しいですけどね!友人として鼻が高くなりますからね!」
「トライドは、ほとんど、こちらで仕事をする感じではなさそうだからな。領地に行けば、トライドの本音もわかるってものなのか」
なるほどと公は頷き、宰相は楽しみですねと呟く。
二人とも、セバスが将来宰相になることを想像してくれたようであった。
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