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自由の身になった元公妃様とのお茶会Ⅳ
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小さくなりすぎてしまうほど、義母とハンナにあれやこれやと言われていると、闖入者が入ってくる。
顔を見た瞬間、私は一体どんな表情をしたのだろうか?
「あら、公がここに何の御用かしら?」
「本当だわ。女性のおしゃべりを邪魔するものではありませんよ?」
「母上、おば上……」
「なんです?その困ったような顔は」
「何処も困っているわけではありませんよ。ただ、おもしろいものが見れたなと思って。今度、ジョージアにも自慢してやろうかと」
「どういうことかしら?」
「おば上、アンナリーゼをみてください。そんな表情、俺は初めて見ましたよ」
公がそんなことをいうので、義母もハンナもこっちを見る。なんてことをしてくれるんだと、公を睨んだが、もう遅い。
「あら、本当。アンナリーゼがこんな顔は珍しいわ!」
「私たち、少々、アンナリーゼをからかいすぎたかしら?」
ふふっと笑いあうご夫人たちが、怖い。
「それくらいにしてあげてください」
「わかりました。あんまり、アンナリーゼが会いに来てくれなかったので、つい。私にとっても甥であるジョージアのですからね。公ばかり会っているなんて、許せませんわ!」
「許すもなにも、俺たちは仲良く遊んでいるわけではないので……母上、公爵として、アンナリーゼには、国のために尽くしてもらっているのですよ」
「はいはい。そういうことにしておきましょう!」
「……そういうって、本当のことですけど?」
「ふふっ、違うでしょ?公は、アンナリーゼと会いたいから呼びつけるのよね。何かとあったら。だから、公妃に睨まれる」
「ハンナ様、公妃だけでなく、ゴールド公爵にとっても、うちのお嫁様は目の上のたんこぶですよ!」
「あら、そうだったのね?私、最近、シルキーに聞いたのですけど……あちらでも、王太子の寝込みを襲ったとかなんとか、聞きましてよ?」
「な……、そうなのか?」
三人の視線が痛い。私が襲ったのではなく、殿下の第二妃が殿下を夜這いしているところへ運悪く部屋に入っただけで、私ではない。
「それ、誤報だと思います!ハンナ様、その話は、シルキー様が死の淵にいらっしゃったときの話ですよね?」
「えぇ、そうよ」
「そのときの話は、ちょっと、違います。私が殿下を襲ったとおっしゃられましたけど……」
「あら、逆に王太子に襲われた?」
「ま、待ってください!殿下は、そんなことする人ではありませんよ!」
「わからないじゃない?王太子の心には、アンナリーゼが住んでおるのじゃ!とシルキーからも手紙が……ほら、あの棚にたくさん」
「……いえ、シルキー様の心にも、私が……じゃなくて……」
「えぇ、もっと、そのあたり詳しく!」
「んもぅ!私にはジョージア様以外に想う人はいません!」
「嘘だな」
「嘘ですよね?」
「母の目は誤魔化せませんよ!」
「お義母様までっ!信じてくださらないのですか?」
優しく微笑む義母が、少しだけ怖い。
「ジョージアから聞いたことがあるもの。アンナリーゼの誰にも見せない心の奥底には、幼いころからずっと蕾のままの咲かない華があると」
「誰です?それは。ウィル・サーラーか?トワイスの王太子か?他には……」
「インゼロ帝国の皇帝か!」
「母上、それは、ないでしょう……さすがに。会ったこともないんじゃないか?」
「……どうだったかな?」
「あるのか?本物に!」
「なかったと思いますけど……あったかもしれません。覚えていないから、ないのでしょう」
とぼけてみたが、義母はなんとなく、見抜いているのだろう。ジョージアが誰のことをさして、咲かない華があると言ったことを。
「いいではありませんか……心の中には、秘密のひとつくらいあっても」
「ダメでしょ?」
「ダメだろ!」
「いいのではなくて?」
「お姉様っ!」
「おば上っ!」
「二人は、ダメだというけど、女は多少の秘密があった方が、魅力的に見えるものですよ。公はそんなだから、アンナリーゼに振られるのですよ。うちのジョージアを見習いなさい」「おば上は、そう言いますけど、ジョージアはいつも置いてけぼりですよ?それでもいいのですか?」
「いいのではなくて?アンナリーゼがいるから、領民が潤っているのですもの。ジョージアが、アンナリーゼの側にいたからといって、あの優秀な方たちに敵うとは思えません!」
公は目を見開いた。領地のことは、話をすることはあっても、それほど多くは離さないので、興味を持ったようだ。
「おば上は、アンバー領へ行ったのですか?」
「えぇ、しばらく滞在させてもらいましたわ。公都の屋敷と変わらぬ時間を過ごすことができて、私はとても、満足でしたわ!」
「お義母様、お褒めにあつかり、ありがとうございます!」
「正当な評価ですよ。私も正直、驚いているのですから。私自身、領地に寄り付かなかったので、あまり知りませんが、メイドたちが教えてくれましたから」
「行ってみたいわ!アンバー領」
「ハンナ様はお時間があるのですから、出かけられたらいいではないですか?宮にこもるのもいいですけど、たまには旅もいいものですよ?」
「おば上、それほど、旅を進めないでください。母上が出かけるとなると、それなりの警護も必要になりますから」
それもそうね?とことなさげに言う義母に、公はため息をつき、私は苦笑いをする。でも、義母の妹だ。何かしら、考えているかもしれないという顔を、ハンナはチラリとのぞかせていた。
顔を見た瞬間、私は一体どんな表情をしたのだろうか?
「あら、公がここに何の御用かしら?」
「本当だわ。女性のおしゃべりを邪魔するものではありませんよ?」
「母上、おば上……」
「なんです?その困ったような顔は」
「何処も困っているわけではありませんよ。ただ、おもしろいものが見れたなと思って。今度、ジョージアにも自慢してやろうかと」
「どういうことかしら?」
「おば上、アンナリーゼをみてください。そんな表情、俺は初めて見ましたよ」
公がそんなことをいうので、義母もハンナもこっちを見る。なんてことをしてくれるんだと、公を睨んだが、もう遅い。
「あら、本当。アンナリーゼがこんな顔は珍しいわ!」
「私たち、少々、アンナリーゼをからかいすぎたかしら?」
ふふっと笑いあうご夫人たちが、怖い。
「それくらいにしてあげてください」
「わかりました。あんまり、アンナリーゼが会いに来てくれなかったので、つい。私にとっても甥であるジョージアのですからね。公ばかり会っているなんて、許せませんわ!」
「許すもなにも、俺たちは仲良く遊んでいるわけではないので……母上、公爵として、アンナリーゼには、国のために尽くしてもらっているのですよ」
「はいはい。そういうことにしておきましょう!」
「……そういうって、本当のことですけど?」
「ふふっ、違うでしょ?公は、アンナリーゼと会いたいから呼びつけるのよね。何かとあったら。だから、公妃に睨まれる」
「ハンナ様、公妃だけでなく、ゴールド公爵にとっても、うちのお嫁様は目の上のたんこぶですよ!」
「あら、そうだったのね?私、最近、シルキーに聞いたのですけど……あちらでも、王太子の寝込みを襲ったとかなんとか、聞きましてよ?」
「な……、そうなのか?」
三人の視線が痛い。私が襲ったのではなく、殿下の第二妃が殿下を夜這いしているところへ運悪く部屋に入っただけで、私ではない。
「それ、誤報だと思います!ハンナ様、その話は、シルキー様が死の淵にいらっしゃったときの話ですよね?」
「えぇ、そうよ」
「そのときの話は、ちょっと、違います。私が殿下を襲ったとおっしゃられましたけど……」
「あら、逆に王太子に襲われた?」
「ま、待ってください!殿下は、そんなことする人ではありませんよ!」
「わからないじゃない?王太子の心には、アンナリーゼが住んでおるのじゃ!とシルキーからも手紙が……ほら、あの棚にたくさん」
「……いえ、シルキー様の心にも、私が……じゃなくて……」
「えぇ、もっと、そのあたり詳しく!」
「んもぅ!私にはジョージア様以外に想う人はいません!」
「嘘だな」
「嘘ですよね?」
「母の目は誤魔化せませんよ!」
「お義母様までっ!信じてくださらないのですか?」
優しく微笑む義母が、少しだけ怖い。
「ジョージアから聞いたことがあるもの。アンナリーゼの誰にも見せない心の奥底には、幼いころからずっと蕾のままの咲かない華があると」
「誰です?それは。ウィル・サーラーか?トワイスの王太子か?他には……」
「インゼロ帝国の皇帝か!」
「母上、それは、ないでしょう……さすがに。会ったこともないんじゃないか?」
「……どうだったかな?」
「あるのか?本物に!」
「なかったと思いますけど……あったかもしれません。覚えていないから、ないのでしょう」
とぼけてみたが、義母はなんとなく、見抜いているのだろう。ジョージアが誰のことをさして、咲かない華があると言ったことを。
「いいではありませんか……心の中には、秘密のひとつくらいあっても」
「ダメでしょ?」
「ダメだろ!」
「いいのではなくて?」
「お姉様っ!」
「おば上っ!」
「二人は、ダメだというけど、女は多少の秘密があった方が、魅力的に見えるものですよ。公はそんなだから、アンナリーゼに振られるのですよ。うちのジョージアを見習いなさい」「おば上は、そう言いますけど、ジョージアはいつも置いてけぼりですよ?それでもいいのですか?」
「いいのではなくて?アンナリーゼがいるから、領民が潤っているのですもの。ジョージアが、アンナリーゼの側にいたからといって、あの優秀な方たちに敵うとは思えません!」
公は目を見開いた。領地のことは、話をすることはあっても、それほど多くは離さないので、興味を持ったようだ。
「おば上は、アンバー領へ行ったのですか?」
「えぇ、しばらく滞在させてもらいましたわ。公都の屋敷と変わらぬ時間を過ごすことができて、私はとても、満足でしたわ!」
「お義母様、お褒めにあつかり、ありがとうございます!」
「正当な評価ですよ。私も正直、驚いているのですから。私自身、領地に寄り付かなかったので、あまり知りませんが、メイドたちが教えてくれましたから」
「行ってみたいわ!アンバー領」
「ハンナ様はお時間があるのですから、出かけられたらいいではないですか?宮にこもるのもいいですけど、たまには旅もいいものですよ?」
「おば上、それほど、旅を進めないでください。母上が出かけるとなると、それなりの警護も必要になりますから」
それもそうね?とことなさげに言う義母に、公はため息をつき、私は苦笑いをする。でも、義母の妹だ。何かしら、考えているかもしれないという顔を、ハンナはチラリとのぞかせていた。
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