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セバスの目論み
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「アンナリーゼ様は、どこにいってもアンナリーゼ様ですね?」
「……キースのこと?」
「えぇ、まさか、政敵の一族っを味方につけようだなんて、誰も思いませんよ」
「確かにそうよね。こっちに帰ってきてから、調べてみたんだけど、名ばかりが残っている感じね。本当に末端の枝葉って感じで、公爵家とは薄すぎる血で繋がっているみたい。ゴールド公爵家との繋がりが巧妙に隠されている感じはしなかったし、今後もなさそう。家系図を辿ればくらいなものなのだけど、珍しくファミリーネームが……」
「ゴールドですか?」
「そうなのよ!油断はできないかもしれないけど……人となりは悪い人間には思えないから、今回の交渉の場の護衛なら、いいと思うわ」
「アンナリーゼ様、ひとつお願いが……」
「何かしら?」
「お守りをいただけませんか?後ろ盾がわかるようなものを」
「……なるほど。向こうは王族が後ろ盾ですものね」
「こちらも、そうなのですが……この三国の中なら、公よりアンナリーゼ様の名の方が後ろにあったとき、身を守れるような気がするので」
「そういうことが、ないに越したことはないけどね」
クスクス笑いながら、私は何がいいか考える。身を守るものなら、ナイフなどを渡すのがいいのかと思ったが、後ろ盾が誰なのかと言う話なら、武器は必要ない。ただ、特別なものでなくてはならないので、考える。
この前、公が小旗を作ってくれたのよね。紋章も入っているし……あれでいいのかしら?あれだけじゃ弱い?
「アメジストはつけていくのよね?」
「つけていくというより、肌身離さずいつもつけていますよ?」
袖口のカフスボタンを見せてくれたので、頷き返す。
「この前、公が作ってくれた小旗をまずは、渡すわ。あと、そうね……私の後ろ盾だとすぐわかるものがないと困るわよね。当日は文官の制服を着て席につくのよね?」
「そうですね。じゃあ、嫌でも目につくものをつけましょう」
「何をするのですか?」
「考えていたのは、タイにつける飾りを渡そうかと。もちろん、アメジストの薔薇で作ったものを」
「えっ?わざわざですか?」
「えぇ、必要なものは、作りましょう!」
手元にあったベルを鳴らすとリアンが執務室へ入ってきた。
「お呼びでしょうか?」
「えぇ、ニコライを呼んでもらえるかしら?ティアに急ぎの仕事をお願いしたいと伝えて欲しいの」
「かしこまりました」
部屋から出ていくリアンを見送り、セバスに向き直る。
「今回、ニコライもついて行くことになっているから、ニコライの分も含めて作る必要があるわ。あと……」
「ニコライも一緒なら、道中話す機会もあるかもしれないですね」
「なかなか難しいと思うわ。なんたって、宰相代理ですからね。ニコライがセバスに近づけるとは思えないわ。警備は厳重になるはずだから。
もし、何かに巻き込まれて、身代金やお金が必要だってなったら、私を頼って」
「公の命令で行くので、それは、できかねますよ?」
「そうだったとしても、セバスを失うわけにはいかないから!お金も救出隊も、私が手配するし、なんなら、私がお迎えに行くからね!」
あはは……と空笑いするセバス。
「危ないところにはこないでください。それこそ、僕たちはアンナリーゼ様を旗印に集まっているものばかりなのですから!」
「……わかった。こっそり、後ろから援護くらいに留めておく」
「全くもう……」
そうこうしているうちに、ディルがお茶を用意してくれたので、一口ずつ喉を潤す。
「今回の話、どうなると思いますか?」
「うーん、私の考えだと、セバスがいかなかったら、エルドアに言いくるめられて、いろいろな負担をかけられたうえに、言い負かされて帰ってくるんじゃないかなって思ってる」
「そんなに酷いですか?」
「……酷いと言うか、経験がまずないのもあるのよね。年の功といって、経験から答えを導き出すことはあるかもしれないけど、それにしたって、ローズディアの文官は、圧倒的に経験不足だなって思っているのよね。領主との交渉とかもしたことないって話だし、セバスの方が、たくさん経験を積んでいると思うのよね。イチアが側にいるだけで、全然違うでしょ?」
「確かに、イチアさんほど、何でも出来る人はいませんからね」
「セバスも十分出来ているわ。それに、インゼロ帝国は、年々地図を書き換えるほど大きいから、ノクトの軍師と言えども文官と同じような仕事もしているはずなのよね。アンナ優秀な人、使わない手はないもの!」
「受入れるとき、だいぶ渋っていましたけど?」
「そうね。結果的に見れば、ノクトとイチアがこちらに来てくれたおかげで進んでいる事業が多いと思うの」
「僕たちの計画だと、まだまだ時間がかかる目論みだったからね。今では、数倍物は早さでことが進んでいるし、イチアの提案について行くのが精一杯だけど……」
「そんなふうには見えないけど……イチアと対等に渡っている思うわ!」
「手加減されていますからね。まだまだ、成長途中です」
「イチアも、セバスから刺激を受けているって言っていたけど……二人とも成長しているのだから、いい変化をもたらしてくれているのよね」
ふふっと笑うと、確かにとセバスも笑う。
「今回の協議については、うまくまとまれば、セバスにとって、とても成長出来る機会だと思うし、不完全だったとしてもいい経験になるわ!」
「ありがたいことです」
難しい表情から、少しだけいつものセバスに戻った。これなら大丈夫だろう。
「……キースのこと?」
「えぇ、まさか、政敵の一族っを味方につけようだなんて、誰も思いませんよ」
「確かにそうよね。こっちに帰ってきてから、調べてみたんだけど、名ばかりが残っている感じね。本当に末端の枝葉って感じで、公爵家とは薄すぎる血で繋がっているみたい。ゴールド公爵家との繋がりが巧妙に隠されている感じはしなかったし、今後もなさそう。家系図を辿ればくらいなものなのだけど、珍しくファミリーネームが……」
「ゴールドですか?」
「そうなのよ!油断はできないかもしれないけど……人となりは悪い人間には思えないから、今回の交渉の場の護衛なら、いいと思うわ」
「アンナリーゼ様、ひとつお願いが……」
「何かしら?」
「お守りをいただけませんか?後ろ盾がわかるようなものを」
「……なるほど。向こうは王族が後ろ盾ですものね」
「こちらも、そうなのですが……この三国の中なら、公よりアンナリーゼ様の名の方が後ろにあったとき、身を守れるような気がするので」
「そういうことが、ないに越したことはないけどね」
クスクス笑いながら、私は何がいいか考える。身を守るものなら、ナイフなどを渡すのがいいのかと思ったが、後ろ盾が誰なのかと言う話なら、武器は必要ない。ただ、特別なものでなくてはならないので、考える。
この前、公が小旗を作ってくれたのよね。紋章も入っているし……あれでいいのかしら?あれだけじゃ弱い?
「アメジストはつけていくのよね?」
「つけていくというより、肌身離さずいつもつけていますよ?」
袖口のカフスボタンを見せてくれたので、頷き返す。
「この前、公が作ってくれた小旗をまずは、渡すわ。あと、そうね……私の後ろ盾だとすぐわかるものがないと困るわよね。当日は文官の制服を着て席につくのよね?」
「そうですね。じゃあ、嫌でも目につくものをつけましょう」
「何をするのですか?」
「考えていたのは、タイにつける飾りを渡そうかと。もちろん、アメジストの薔薇で作ったものを」
「えっ?わざわざですか?」
「えぇ、必要なものは、作りましょう!」
手元にあったベルを鳴らすとリアンが執務室へ入ってきた。
「お呼びでしょうか?」
「えぇ、ニコライを呼んでもらえるかしら?ティアに急ぎの仕事をお願いしたいと伝えて欲しいの」
「かしこまりました」
部屋から出ていくリアンを見送り、セバスに向き直る。
「今回、ニコライもついて行くことになっているから、ニコライの分も含めて作る必要があるわ。あと……」
「ニコライも一緒なら、道中話す機会もあるかもしれないですね」
「なかなか難しいと思うわ。なんたって、宰相代理ですからね。ニコライがセバスに近づけるとは思えないわ。警備は厳重になるはずだから。
もし、何かに巻き込まれて、身代金やお金が必要だってなったら、私を頼って」
「公の命令で行くので、それは、できかねますよ?」
「そうだったとしても、セバスを失うわけにはいかないから!お金も救出隊も、私が手配するし、なんなら、私がお迎えに行くからね!」
あはは……と空笑いするセバス。
「危ないところにはこないでください。それこそ、僕たちはアンナリーゼ様を旗印に集まっているものばかりなのですから!」
「……わかった。こっそり、後ろから援護くらいに留めておく」
「全くもう……」
そうこうしているうちに、ディルがお茶を用意してくれたので、一口ずつ喉を潤す。
「今回の話、どうなると思いますか?」
「うーん、私の考えだと、セバスがいかなかったら、エルドアに言いくるめられて、いろいろな負担をかけられたうえに、言い負かされて帰ってくるんじゃないかなって思ってる」
「そんなに酷いですか?」
「……酷いと言うか、経験がまずないのもあるのよね。年の功といって、経験から答えを導き出すことはあるかもしれないけど、それにしたって、ローズディアの文官は、圧倒的に経験不足だなって思っているのよね。領主との交渉とかもしたことないって話だし、セバスの方が、たくさん経験を積んでいると思うのよね。イチアが側にいるだけで、全然違うでしょ?」
「確かに、イチアさんほど、何でも出来る人はいませんからね」
「セバスも十分出来ているわ。それに、インゼロ帝国は、年々地図を書き換えるほど大きいから、ノクトの軍師と言えども文官と同じような仕事もしているはずなのよね。アンナ優秀な人、使わない手はないもの!」
「受入れるとき、だいぶ渋っていましたけど?」
「そうね。結果的に見れば、ノクトとイチアがこちらに来てくれたおかげで進んでいる事業が多いと思うの」
「僕たちの計画だと、まだまだ時間がかかる目論みだったからね。今では、数倍物は早さでことが進んでいるし、イチアの提案について行くのが精一杯だけど……」
「そんなふうには見えないけど……イチアと対等に渡っている思うわ!」
「手加減されていますからね。まだまだ、成長途中です」
「イチアも、セバスから刺激を受けているって言っていたけど……二人とも成長しているのだから、いい変化をもたらしてくれているのよね」
ふふっと笑うと、確かにとセバスも笑う。
「今回の協議については、うまくまとまれば、セバスにとって、とても成長出来る機会だと思うし、不完全だったとしてもいい経験になるわ!」
「ありがたいことです」
難しい表情から、少しだけいつものセバスに戻った。これなら大丈夫だろう。
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